耳にたこができるほど聞かされた話は間違いだった〜 の巻


2025年を過ぎると「団塊の世代」が後期高齢者となり国民総医療費がさらに膨らむ。また国家予算は100兆円を超え、その三分の一は医療費などの社会保障費である。そのため、とにかく、医療費を抑えて抑えて抑え続けるため「二次医療圏(近在の市町村を束ねた区域)毎の総ベッド数を減らし、入院日数を短くしなさい」という横暴とも思える行政指導が行われてきました。最近では、当事者にも知らされていない病院統廃合の提案が全国の病院に関して厚労省から突然発出されました。似たような病院(例:遠州病院と浜松労災病院)はまとめて一つにしなさい、患者数が少ない病院(例:湖西市立病院)は廃止しなさい、ということで全国の多くの病院でざわめきが起こりました。また、「診療所は専門的な医療は行わず、大きな病院に患者を紹介しなさい」といった、患者にとって不便に、不便になるような医療計画が推進されてきました。街角がん診療を目指す我が社団は、風に立つライオンの如く、理不尽な「大病院崇拝」に立ち向かっていますが、もはやドンキホーテ(注:激安の殿堂ではなく、どんなに不運が襲い掛かり、旅先でボコボコに叩きのめされようとも、光を失わずに冒険、挑戦を続ける騎士ドン・キホーテのことです)のような状態かも知れません。入院期間の短縮圧力も強烈です。現在の保険診療報酬体系は、病院の全患者の平均入院日数が規準を超えて長くなると、その病院の収入が大幅に減るような仕組みになっています。例えば、がん性胸膜炎になって息が苦しい、という患者の場合、一時的に胸水を抜くことは診療所でも実施可能ですが、くだを入れて数日間胸水を抜いてタルクなどを胸腔に入れる胸膜癒着術といった処置は入院しないとできません。その処置が一段落して、では、引き続き抗がん剤治療を、といった段取りは、「入院期間が長引くから一旦、退院させ、後日、再度入院という形」にしなくては、とち凹医長先生が認めない、ということになっています。平均入院期間が長くなると、病院の収入が下がるからです。私たちは、そのような「医療費削減のためベッド数を減らす」とか「病院あたりの医療収益を増やすため入院期間は短くする」といった厚生労働省の施策と、その施策の中で如何にして医療収益を上げるかという病院の手順について、それが常識だから従いなさい、という感じで耳にたこができる程、聞かされてきたことです。

そんな状況が長い間続き、日本の医療は極度に劣化してしまいました。とくに地域の医療は住民の安心、安全を守ることとは反対の方向、つまり不便でいじわるで不安を感じる方向に向かってきました。ところがです、今般のCOVID-19 pandemicに直面し、地域医療はもろくも崩壊しています。市民は不安におののいているのです。医療崩壊が深刻化するなか、その元凶は厚生労働省の誤った地域医療計画にあるということを、誰が指摘し、誰が反省するのでしょうか。心苦しい毎日です。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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