St.Gallen on Line, also


2年に一度開催されるSt.Gallen Breast Cancer Conferenceも今年はご多分に漏れずOn lineでの開催です。会期は3月17日(水)から21日(日)、予め録画した「On Demand Session」は3月13日からいつでも学ぶことができます。2年前の開催以降、公表されたエビデンスを専門家がわかりやすく(一部、とてもへたくそな専門家もいる)、プレゼンしてくれるのでとても助かります。3月17日からはリアルタイムのセッションが1日2-3あり、日本時間で夜の8時から11時まで「OnAir」というアプリケーションで放送されます。司会者、演者はそれぞれ自宅からの参加、時々犬の鳴き声が聞こえたりします。司会者の多くは手際よく6-8名のパネリストにテーマに関係したコメントを促します。質問する司会者のほとんどは歯切れ良くパネリストを指名しわかりやすい質問をしてわかりやすくコメントが帰ってきます。しかし、例外もあり、司会者が起きているのやら眠っているのやら、映されていることがわかっていないような奇妙な顔をしたり、質問ももごもご、きょろきょろきょろしてわかりにくく、おにごっこの「おとうふ」のようなのも一人いました。例年、最終日の土曜日午前中に開催される本学会の目玉「コンセンサスカンファレンス」、今回は土曜日と日曜日の2回に分けて行われます。私は今回、2007年以来連続7回目のパネリストに指名されました。Voting(投票)は、例年はリアルタイムで、当日の会場で行われますが、今回はVoteAtHomeというアプリケーションで事前に200近い質問に回答して、当日それをまとめた結果について討論することになっています。また、今回初の企画として、Audience(聴衆)専用に用意された質問もあり、予め登録をしておけば投票することができます。2年に一度のSt,Gallen、急速に進歩する乳がんの診断と治療ですが、今回は時勢を反映してとりわけGenomics(遺伝学)とNeoadjuvant Therapy(術前薬物療法:より適切にはPrimary Systemic Therapyですが)に関する質問がかなり多いです。日本時間マイナス8時間で開催されるので、日本での午前、午後の外来は通常通り、加えて夜から深夜に及ぶOn line参加ですが、丸い地球をオンラインで繋ぐことがこれからは当たり前になるでしょうから、学会参加のためにわざわざウィーンに行くということも無くなるでしょうね。

大橋先生も心配されているでしょう


大橋先生と共に作り上げた臨床試験グループ「CSPOR(シースポア)」、そのグループで実施した臨床試験「NSAS-BC(乳がん)、GC(胃がん)、CC(大腸がん)」は新時代を画した活動でした。この活動の運営を担当してくれたパブリックリサーチセンター、とくに当時事務局長であった中山淑子さんは親身になって我々の活動を支えてくれましたhttps://watanabetoru.net/2013/02/01/。CSPORでは臨床試験の実践の他にも年会(ANNUAL MEETING)、CRCセミナーなどの活動を通じて多くの人たちとの交流、新人発掘、人材育成、など「組織は人なり、人は宝なり」だからね、と誰からともなく浸透した理念を確固たるものとしてきました。

私は2005年に郷里浜松でオンコロジーセンターを開設し、高機能がん診療所、街角がん診療を基本理念として今日までがん診療を実践してきており、それ以降CSPOR、NSASとは直接の接点はなく、遠くで汽笛を聞きながら、過ごしてきました。

ところが、日曜日の大橋先生のお通夜でお目にかかった大橋先生ゆかりの多くの方々から、「CSPORどうにかしてくださいよ、たいへんなことになっていますよ」というお話を伺いました。お話を総合すると、今のCSPORは昔のCSPORとは全然異質の組織になっており、臨床研究に必要な、倫理も科学もなく、透明性、公共性も失われ、経理も不明朗、どうにも成らない状況なのだそうです。確かに良き跡継ぎに恵まれなかったことは残念なことでした。大橋先生もお亡くなりになってCSPORは、組織を私物化して横暴に振る舞う大馬鹿者が、今後どうやっていくのか、大橋先生もきっと心配されているでしょう。こんな異常な組織に決して業務委託をしないように、是非、製薬企業等、健全な社会を育んでいくべきお立場の方々、ご留意頂きたいと思います。

大橋先生との30年


大橋靖雄先生のご逝去の報に触れ悲しさに暮れております。

大橋先生との出会いのエピソードは本ブログ「大橋先生との26年」に書きましたhttps://watanabetoru.net/2017/10/。1週間のがんの臨床統計学セミナーがイタリア北部のオルタ湖畔で開かれ武山大陸さんのお世話で参加しました。武山さんからは「日本からもうひとり参加者がいますから」と言われていましたので初日のレセプションで見かけた日本人らしき男性に話しかけたのが大橋先生との出会いでした。毎日毎日臨床試験のこと、Oncologyのことなど大橋先生と共に学び友好を深めたのでした。帰国後、大橋先生は勝どきのご自宅から国立がんセンターで毎週火曜日朝7時から開催されていた「Oncology Conference」にほぼ毎週参加され益々親交を深めたのでした。阿部薫先生の指導の下、大橋先生と二人三脚で臨床試験グループCSPOR(シースポア)を立ち上げ、臨床試験「N・SAS(エヌサス)」を計画・実施・解析・公表するまでに成長させることができました。大橋先生は、ひょーひょーとした気さくなお人柄で、前例や形式に囚われず、いいと思った事はどんどんと推し進め、周囲の人を、いいね、いいね、よしっ、それやろう、とほめてほめて、引っ張り上げ、オンコロジスト、スタティスティシャン、データマネージャーなど、おおくの人材を育て上げてくれました。振り返ればすべてが楽しく充実した日々でした。大橋先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

かつまたがんばれ! かつまたがんばれ!!


きのうのたちてんかんごでは民間療法、放置療法(そんなんあらへん)に走る患者に苦慮した看護師の悲痛なる叫びを聞きました。同施設の外科医の説明では、「患者さんはなんだか東京の方のこんどうまこととかいう人の意見を聞いたとたんに放置療法(そんなんあるわけないやろ)をうけたいと言い出して予定治療をすべてキャンセルした」とのこと。さもありなん(そういうこともあるだろうな)と、この件については驚きませんでしたが、驚いたのは外科医があの悪名高き悪魔のようなこんどうまことを、・・とかいう人、程度の認識したしていないんだ、ということです。私は勝俣範之先生が体をはって戦い、悪魔のわなから患者さんを救おうと懸命になっている姿を見るまでもなく、突然の予定治療をキャンセルしたという患者さんの話を聞いたとたん、こんどうまことの影を感じ取ったのですが、災厄は未だ潰えておらず信じてはいけないものを信じてしまったかわいそうな患者さんが未だにいるんだなあ、とせつなくむなしい思いを感じた勉強会でした。

空も陸もだめよだめだめ


今日の青森出張は不可能になりました。空路は名古屋小牧空港からのFDAがCOVID-19禍のため早々と欠航宣言。ならば陸路でと、東海道新幹線→東北新幹線を乗り継いで新青森までの移動を予定していた矢先に昨日の地震に見舞われ、東北新幹線の電柱・電線がダメージを受け陸路での移動は不可能となりました。ならば、羽田からのJALで、と調べたところ、行きは確保できましたが、明日の帰りのフライトが朝10時発の一便のみ、あとは全部欠航ということで仕方なくCANCEL ALLとなりました。青森地方は大雪の予想、自然の猛威には刃が立ちません。晴耕雨読ということで時間を有効に使いたい。

釈然としない不合理


久々の投稿でごんす

リュープリンという注射薬は、乳癌、前立腺癌のホルモン療法として上皇陛下の治療にも使用された優れた薬です。それが昨年の春過ぎから、供給制限がかかり、いろいろな関係者に話を聞くと、「埼玉県の製造工場で、規定外の工程で作成されていたことが判明したため、工場の稼働を止めている」という状況が浮かび上がってきました。規定外の工程で作成されたものも上皇陛下の治療に使われたのかどうか、それはわかりませんが、「当局からの指示」というのが理由でした。そんなに間違ったことをしていたのだろうか? 武田薬品の態度が横柄なので当局からにらまれたのだろうか?・・・ など、いろいろな憶測が飛びました。当局というので「あーせーこーせーろーどーショウ」のやくじの方にきいたところ、どうもFDAからの査察がはいり、規定外の工程であることがバレて、改善命令だか、廃業命令だか、が下された、とのことでした。(FDAとは、Fuji Dream Air Linesではなく、Food and Drug Administration(米国食品医薬品局です)。「あーせーこーせーろーどーショウ」のやくじの方は、私たちも詳しい状況はわかりません、ということでした。それでもリュープリンはどうにか、健全在庫があるため、年明けまで需要を満たすだけの供給はありましたが、いよいよ在庫が底をつき、今までリュープリンを使用していた乳癌、前立腺癌の患者さんが治療を打ち切られざるをえない、という逼迫(ひっぱく)した状況になってきました。泣く子と地頭には叶わぬ、とか、黒船来航的圧力とか、言われるような状況で、泣きを見るのが武田薬品工業だけならいいのですが、消費者である患者さんたちの運命がかかっている状況ですから、とてもとても看過できるものではないのですが、世の中、COVID-19禍でそれどころではないようで、マスコミも問題視していないみたいです。外圧には厚生労働省も沈黙を守らざるを得ないようです。規定外の工程であったことを、厚生労働省は見過ごしていたのでしょうか?

COVID-19 の功名


怪我の功名とは、失敗や過失、あるいは何気なくしたことなどが、偶然によい結果をもたらすことのたとえです。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)もGo To トラベルや、Go To イートによる人々の移動が原因で爆発的に第三波が襲来しています。病院設備を、COVID-19感染者の入院に優先使用するため、がん患者の計画入院に支障をきたしています。とくに手術患者は待機手術を余儀なくされていますが、おかげで無駄な手術を回避できるかも、という好ましい結果もあるようです。乳がん患者に対しては待機の間、「術前薬物療法」を行い時間を稼いでほしい、という要請を外科医からうけますが、術前のつもりで治療を続けていたら、がんは消え去り、それでも一応、手術しましょう、ということで手術をすると、「がんは完全に消えていました。」という結果になることが多々あります。怪我の功名ならぬ、COVID-19の功名かな、と感じています。とくにHER2陽性乳がんでは、「手術で取ってみたらがんは完全に消えていた」つまり病理学的完全効果、英語ではPathlogical Complete Response(PCR)と言いますが、2005年に浜松オンコロジーセンター開院後、「ハーセプチンの専門の先生が浜松に帰ってきた」ということで、多くのHER2陽性の進行乳がん(肝転移、肺転移、脳転移など)の患者さんが当院に紹介され、ハーセプチンを主体に治療を行い、「がんが完全に消えた、その後、15年近く、無治療でも再発せず、完全に治った」と言える患者さんが多くいらっしゃいます。今ではHER2陽性乳がんではハーセプチンに加え、パージェタ、カドサイラなど、パワフルな薬剤を使用することで、転移があっても治る、いう時代を迎えています。そしてさらにCOVID-19で手術を待機しているうちに抗HER2治療でCTでもMRIでもがんが消えた、という情報も私の耳に入ってきています。セカンドオピニオン外来を受診する患者さんから、手術をしなくてもいいでしょうか? と問われると、「いいです」と胸を張っては言えませんが、「注意深くみていきましょう」と対応しています。COVID-19も悪いことばっかりではない、そんな思いを持つ、今日この頃です。

コロナ時代の初体験


先日、毎年担当している浜松医大病理学の講義をしました。COVID-19感染蔓延の最中ですので、ZOOMを使用した遠隔講義、新しい時代の新しい取り組みという感じで、学ぶ事も多かったです。昨年まで、大学の講堂に行って講義をしたときは、学生諸君は、講義を始めてもざわざわ、がたがた、途中で入ってきたり、出て行ったり、はじめから終わりまで机に突っ伏して居眠りしていたり、最後列で、数人でおしゃべりしたり・・・、このブログでも何回か、愚痴ったことがありましたっけ。先輩にその話をしたところ、「そんなもんだ、埼○医大の学生講義に行ったときなんて、まるで駅の待合室で話すようで誰一人、こっちの話なんて聞いてないんだから、やんなっちゃうよ」という話も聞きました。一方、講義終了後、2-3名の学生が演壇のところに質問に来ることがあり、鋭い質問だったり、細かくメモをとってあって、「ここのところ聞き逃したのですが・・」と尋ねる学生もいて、「おっ、すごいね」と手応えを感じることもありました。

遠隔講義だと、そのいずれも経験することがありません。今回のZOOMでは100名近くの参加者があることは、画面の「参加者数のカウント」でわかりました。参加者は10×10個ぐらいの区画に、囚人番号のように番号で表示されておりましたが、設定すれば、各自の顔写真も表示できるはずです。せめて顔写真でも表示されていれば、学生の存在を意識した講義ができるのですが、がら空きの講義室で中空に向かって話しをしているような空虚さを感じました。もうすこし、工夫ができるのではないか、と思います。また、教務担当者から、「時間が来たら始めて下さい」「終了したら終わって下さい」との指示が予めあり、開始、終了を案内(宣言)したり、演者を軽く紹介したり、質問の有無を学生に尋ねたりするような進行役(教室の若い先生など)も無くて、夜行列車が駅に静かに到着し静かに発車するような感じでおごそかといえばおごそか・・でした。教室の秘書さんに、上記の感想をお伝えしたところ、学務課にも伝えてくれて、学務課からは、学務課らしいお返事がきました。

以下、許可なく転載致します。

・学生のカメラのONについて 時々同様のご意見をいただきますが、全体に向けてカメラの常時ONを強制しますと、 精神的負担に感じる学生もいるようです。 (Zoomの導入当時、カメラは常時ONでなくてはならないのかという学生からの問合せが学務課に多く寄せられました。) 現時点では、学生の様子を見ながら講義されたい場合には、先生からカメラのONを呼び掛けていただいて、 学生には、先生からの指示があれば従ってくださいと伝えております。 ただし、学生が使用しているPC等の端末によっては、カメラ機能を持たないものもあり、 呼びかけに対応できない場合もございます。

(はい、よくわかりました、学生様のご希望通りに致しますデス、はい しかし、それだとネットでつなげておいて遊びに行ってもわかりませんね 大人として扱う、という方針ですかね)

・開始・終了の案内について 講義開始までのミーティングのセット(資料共有、音声等の確認)は学務課職員が行っておりますが、 同時進行で複数の科目が動いておりますので、 セットができたものから「時間になりましたら始めてください」とお願いしています。 開始時刻ちょうどに学務課からご案内をする等は、他の講義のセット状況の兼ね合いもあり、申し訳ありませんが難しいです。

(はい、よくわかりました。ご多忙のところ、恐縮デス、はい)

 非常勤講師をお招きいただいている場合は、リモートで構いませんので講座から冒頭に講師紹介をいただくなど、 始め・終わりのエスコートをいただけますと幸いです。

(そうだったらいいですね、でも、教室の先生方もお忙しいので・・・・・。私も忙しい中、時間をとっているので、よくわかりますデス、はい)


学務課としましても、医学教育推進センターとも協力しながら、よりよいWeb授業の展開に努めてまいります。引き続きのご協力を賜れますと大変幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

(こちらこそ、よろしくお願い致します。学生諸君が、私たちのこのような尽力をどれぐらい、認識しているか、わかりませんが、「子を持って知る親の恩」といったところでしょうか。学務課の皆さん、教室の皆さんの懐の深さに感銘をうけております。

久々のMR君たちの訪問 part 2


ニュース その二 ひどいニュース

「えっ!!? そんな馬鹿な話があるの??」と、この事件の話をはじめて聞いたのが数日前、診療の現場は、かなりざわつき、動揺し、対応策を模索し始めましたが、とても対応できる状況ではない、こんなことが許されるの??? という前代未聞の事件であります。

乳がん、前立腺がんの治療薬として、不可欠のホルモン剤であるリュープリンが、7月から8月にかけて市場から消えて、使えなくなるという、狐につままれたような話、本日、ナショナルフラッグカンパニーがその理由を説明に来ました。話をきくと、リュープリン生産工場が、厚生労働省に届け出た製造工程を「逸脱した」ことのお仕置きで、逸脱した工程で造られたリュープリンを販売すること、まかりならん、との当局の裁断がくだり、市場から消えるという、NHKニュースで取り上げてもおかしくない程の、大事件なのです。じゃあどうすればいいの? 薬がなくなる以上、昭和の時代に戻って、閉経前乳がん患者でホルモン療法が必要な場合は、「卵巣摘除術」を行う、前立腺がん患者では、「睾丸摘除術」を行うわけ??? 説明に来た担当者も、ただただ、うつむくばかりで、「私たちとしてもどうしたらいいのか・・・・(涙)」、よくよく話を聞くと「製造されたリュープリンは、品質には問題はないのですが、逸脱した工程で製造したものは、やはり・・・・」と、はぎれわるーい、のです。今のままいけば、何十万人という患者が、とんでもない迷惑を被るわけだから、当局もいわゆる「東大話法」で物事の筋道を立てようとしていいのか? 意地を張らず、「特例措置」で今回は製造した薬剤の使用は認める、ぐらいの緊急避難的対応をしなくてはいけないのではないか? あるいは、ナショナルフラッグカンパニーの社長自ら、中央合同庁舎第5号館前で土下座をするぐらいして、謝意を示したらどうか? 独眼竜正宗が死に装束で豊臣秀吉に詫びた、あのシーンのように。患者団体:いわゆるアドボカシーの皆さんも黙っていないで抗議活動を興したらどうですか? ひとつの扇動ですが・・・