久々のエビデンス侍 見参3 


先日の朝日新聞一面に「アガリクスなどのいわゆる健康食品について、あたかも効果があると宣伝しているような書籍がある。厚生労働省の班研究でも、アガリクスなどが有効、という根拠はない、と結論づけられていることから、このようなまぎらわしい宣伝は控えるべきである」という記事が出ていました。私は、以前から「すべての健康食品は不健康食品と思え」と言ってきました。多くの患者さんが惑わされないようにしなくてはいけません。

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浜松オンコロジーセンター発展計画


  1. 祖父の代からの渡辺内科医院(EBMの原点)に腫瘍学診療を60%程度加え渡辺内科医院://浜松オンコロジーセンターとしてバージョンアップする。
  2. 腫瘍学診療は乳癌を中心にした外来薬物療法、セカンドオピニオン提供、癌万相談(がんよろずそうだん)などを行なう 。
  3. 生活習慣改善のための地域啓蒙活動を行なう(日の出クラブなど) 。
  4. 乳腺外科医との高品質な連携を図り地域の乳癌診療を高レベルに持って行く。
  5. 合併後の浜松(Greater Hamamatsu)のがん診療レベルの均填化を図る。
  6. 中部腫瘍学研究グループ(Central Oncology Group: COG)を設立し浜松発世界行のエビデンスを発信する。

 

浜松オンコロジーセンタービル


浜松オンコロジーセンタービル完成間近

急ピッチで建設がすすめられている浜松オンコロジーセンタービルが、いよいよその姿を現しました。煉瓦タイルの外観は、お菓子の家のようなイメージです。1-2階にクリニック、オフィス、レクチャーホールなどがあります。3階はレジデンスです。5月6日のオープンに向けて、内装工事、電気工事、外構工事が急ピッチです。

がんの診断


がん診療の患者さん向けガイドラインを作成することにしたいと思い、いろいろと考えています。まず、がんの診断ということを考えてみました。

がんの種類に関係なく、まず、いろいろな症状がでたり、定期的に検診をうけてその結果でだったり、たまたま受けた検査での異常があったり、など、ひょっとしたら、がんかも知れない、という段階があります。これを、①疑い診断、と言います。次に、医療機関に行き、がんなのか、がんではないのか、を調べます。がんかがんではないか、を確定するには、がんかもしれない部分(通常しこり、といったり、影といったりしますが、とにかく、がんが疑われる病変部位です)から、組織、あるいは細胞を取ってきて、がんがあるかどうかを病理的に調べます。組織あるいは細胞を取るのには、針を刺してとってきたり、皮膚を小さく切開して、組織の一部を切り取ってきたりします。また、肺癌では、痰の中に癌細胞が出てくる場合もあるし、膀胱癌では尿中に癌細胞が出てくる場合もあるし、子宮頚癌では、膣分泌物中に癌細胞が出てくる場合もあります。とにかく、がんの決め手は、癌細胞の有無を顕微鏡でみることです。これを、②確定診断、と言います。がんとわかったら、今度は、どんな性格を持ったがんなのか、ということを調べます。性格、といっても怒りっぽいとか、ひねくれているとかいう、人間の性格ではありません。がんの性格です。たとえば、分化度、悪性度、異型度、などという表現は、癌細胞あるいは癌組織が、正常の組織とどの程度、異なった見かけをしているか、ということで判断します。正常の組織と非常によく似た見かけのがんは、分化度の高い、悪性度の低い、異型度の低い、おとなしい、性格のよいがん、と表現されることがあります。また、乳癌では、ホルモン受容体が陽性か陰性か、HER2過剰発現があるかないか、消化管間質腫瘍ならば、KIT陽性か陰性か、悪性リンパ腫ならば、CD20陽性か陰性か、などの特徴から、どのような薬が効きそうか、ということを推測することができます。このような診断を、 ③性格診断、と言います。確定診断がついて、性格がわかったら、最後に、がんが、どの程度拡がっているか、を検査しなくてはいけません。他の臓器に転移があれば、原発病巣を手術する意味はありません。原発病巣が小さくて、周囲のリンパ節に転移がなければ、狭い範囲の手術だけで完治させることができます。原発病巣が大きいとか、周辺のリンパ節に転移がある、というような場合には、まず、抗癌剤治療を行なって小さくしておいてから、手術で取る、というような方法もあります。拡がり診断を行なう際には、どの臓器に転移がありそうか、と言うことによって、用いる検査方法が異なります。肺転移を知るには胸部CTが適しています。脳転移は脳MRI、肝転移は、肝臓のMRIが適しています。骨転移のありなしを知るには骨シンチが適しています。 ④ 拡がり診断 検査の結果、原発病巣はどれぐらいの大きさで周辺への拡がり具合はどうか、と言うことについては、腫瘍を表す英語のTumorのTをとって、T0~T4の5段階で表します。つぎに、周辺のリンパ節、これを専門的には所属リンパ節あるいは領域リンパ節に転移があるか、あるとすればどの程度か、ということについて、リンパ節をあらわす英語のNodeのNをとって、N0~N3の4段階で表します。そして、遠隔臓器に転移があるかどうか、ということについては、転移を表す英語のMetastasisのMをとって、M0またはM1で表します。TとNとMの組み合わせで表現する拡がり診断の結果をTNM分類と呼びます。TNM分類では病気の拡がりを、0期からIV期までの5期で表します。通常、0~II期までを早期がん、III期を局所進行がん、IV期を遠隔進行がんと区別し、各期毎に選択する治療方法、使用する順序が異なります。

がんの診断には、①疑い診断、②確定診断、③性格診断、④拡がり診断の4つがあります、という今回の話、参考になりましたか? 表現など、わかりやすいでしょうか? このようなことをガイドラインに書いてもいいでしょうか? ご意見を下さい。

連載にすると、続けないことが批判され、それがプレッシャーになるので、今回は、これでおしまいです。おやすみなさい。

CSPOR豆が煮えるまで(3)


抗癌剤市販後研究班

国立がんセンター総長阿部薫先生が班長となって、抗癌剤市販後研究班が発足したのは、1995年4月のことでした。その3か月ぐらい前に、国立がんセンター中央病院の内科スタッフが集められ、阿部先生から、経口抗癌剤の有用性を科学的に評価するには、どのような研究方法があるか、アイデアをだすようにと、概略の説明がありました。私は乳癌術後の抗癌剤治療の効果を比較するランダム化比較試験の概略を考えて、仲間と相談して提出しました。乳癌の他に、大腸癌、胃癌の試験が提案され、4月の時点では、乳癌と大腸癌の試験を行なうことが決まったのでした。乳癌の試験は、私が、大腸癌は、同期の島田安博先生が、研究代表者をつとめるよう阿部薫先生から指示がありました。私たちは、当時、まだ、40才の若さ、体力も活力ありましたが、そんな若さで、大きな試験の責任者をやるなんて、前例も後例もありません。島田先生と相談して、ふたつの試験をNSAS(National Surgical Adjuvant Study)と名付け、乳癌の方をNSAS-BC01、大腸癌の試験をNSAS-CC01と名付けました。そして、抗癌剤市販後研究班が始まりました。

CSPOR豆が煮えるまで(2)


わすれてはいけないよ、ソリブジン事件

(2) ソリブジン発売中止

ソリブジンによって分解が阻害された経口フッ化ピリミジン系薬剤は、5FUの血中濃度が異常に上昇するために、骨髄抑制が増強した結果、死亡患者が出ました。それで安全性を重視した厚生省は、ソリブジンの発売を中止してしまいました。ソリブジンがなくても帯状疱疹の治療薬には、不自由していませんから、要するにあまり意味のある薬剤でもなかった、と言うことかも知れません。

(3) 厚生省の対応策

ソリブジン禍をうけて、厚生省安全対策課は、経口フッ化ピリミジンの使用を抜本的に見直すために、いくつかの対応策を講じました。そのひとつが、抗癌剤市販後研究班を組織したことでした。抗癌剤市販後研究班は、当時の国立がんセンター総長、阿部薫先生とし、大腸癌、乳癌、胃癌を対象とした、臨床研究を推進しました。ソリブジン禍で問題となった、経口フッ化ピリミジン系薬剤のひとつ、大鵬薬品工業株式会社のUFTの術後補助療法における有用性を検討することになりました。私は、乳癌の臨床試験である、NSASBC01試験の研究責任者を任されたのでした。当時、私は若干38才、とても荷の重い仕事でした。いろいろなことがありました。しかし、このプロジェクトを推進する仕事を通じて、ふつうなら定年までかかっても得られないような貴重な経験をしました。

(以下次号)

地方講演(2)


昨日は熊本に行った。熊本は4回目で、すこし前に福岡にいって、若手のための癌EBM入門の話をしたばかりなので、今回、どのような話にしようかしらん、と少し考えた。「エビデンスに基づく乳癌薬物療法」という西村先生からの依頼だったが、エビデンスがない、あるいはエビデンスが確立していない状況で何を根拠に治療を選択し、組み立てていくかという練習問題を二題、それとオンコロジーセンターでの2年間のセカンドオピニオンの実態を話した。実臨床に則した話とおおむね好評であった。西村先生には、「渡辺先生は、立場が替わる毎に、新しい視点で少しづつ話の中身が成長しますね。すばらしいと思います。」とお褒めの言葉をいただきました()。また、来て下さいといわれました。はい!