NSAS試験 - 日本のがん医療を変えた臨床試験の記録- (小崎丈太郎著、日経メディカル開発)が、著者の小崎さんから送られてきました。アマゾンでも「ただいま予約受付中」になっています。(アマゾンへ)。この本、ドキュメンタリーとして、丁寧な取材に基づいて書かれており大変読みごたえがありますし、がんの臨床試験に携わる方々には是非、読んで頂きたいと思います。あらためて、患者の皆さんをはじめ多くの人たちの協力で臨床試験が計画され、実践され、解析されて、その結果が世に問われ、そして、診療が改善されていくということがわかります。私も、この本を読んで、初めて知ったことがたくさんありました。たとえば; 103ページ、坂元吾偉先生に最初にお目にかかった時のエピソードの紹介のところ 『「これは間違いなく慶応ボーイだ」坂元は渡辺を慶応義塾大学出身の医師と誤診した。「あとで北大だと聞いて腰がぬけるほどびっくりした。」というのが坂元の渡辺評だ。』 これはどういうことでしょうか???、褒められているのか、だめだしされているのか、微妙であります。また、だいぶあとになって佐藤恵子さんのところにイデアフォーのメンバーがやってきて「申し訳ないと謝罪した」話(119ページ)。ちなみに、佐藤恵子さんが作ってくれたNSASBC01の説明同意文書に宇宙怪人シマリスがデビューしました(アマゾンへ)。また、大鵬の高木茂さんが患者を名乗る人物からNSASBCを非難する執拗なメールが、まるでストーカーのように送られてきた、それは、半年以上続いたそうです。高木さんが、私の知らないところで、そんなに頑張ってくれていたことを知り大変感銘を受けました。ところでこのストーカーのような人物、思い当たるところあり、イニシャルで言えばIKではないかと。などなど、つらかったけれど、中身の濃い長い歳月が走馬灯のようによみがえってきます。この本の副題 「日本のがん医療を変えた臨床試験の記録」は、当事者としてまさにその通りだと思います。しかし、最初から最後までの緻密な青写真を書いたのは阿部薫先生なのです。この本の最後に、阿部先生の使徒である吉田茂昭先生と私がそれぞれの立場で書いている阿部先生の追悼文を読むと、涙でパソコンの画面が曇ります。阿部先生、どうもありがとうございました。
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学生講義はあいかわらず気が重い 朝日新聞連載 2月3日朝刊
学生講義ネタを時々このブログに書いているので、「渡辺先生も学生の講義で苦労しているようですね~」と言われる。今回もそのネタです。朝日新聞の連載にも書いたので、そのうち、○松医大から「もう来なくてもいい」と言われるかもしれません(-_-;)
医師になるには医学部6年間の勉強をしなくてはいけません。私も、腫瘍内科学の講義を頼まれることがしばしばありますが、正直言って気が重いのです。先日も朝九時前から九十分の講義を十分休憩をはさんでお昼まで2講義、医学部学生を対象にしてきました。
朝の開始時刻に教室にいた学生はたったの三人、十分待って、講義を始め三十分も経つとようやく八割ぐらいが出席。そのころになると、大胆に居眠りをする学生、階段教室の一番後でおしゃべりをする学生、教室を出たり入ったりする学生が目につきます。携帯電話をいじったり、文庫本を読んだりと、いろいろなことをする学生もいます。私の同僚や先輩にも、学生講義に駆り出される人は結構います。この話を先輩にしたところ、「それぐらいなら、まだましだよ、この前行った大学なんて、だれも聞いてなくて、まるで駅の待合室で大声張り上げているようなものだったよ。」と慰められました。
一講目がおわり休憩に入ると、数名の女学生が入ってきました。まわりのお友達とも、おはよう、とのんきな挨拶をかわしています。二講目が始まっても、後ろの方では、数人がたむろして、わいわいがやがやと騒いでいます。前の方で真剣に聞いている学生も迷惑そうに振り返っていましたし、いくらなんでも度が過ぎます。やや(かなり)大きな声で、静かにしなさいと注意しますと、とりあえず席についたようですが、二講目の終わりには、騒いでいた連中は全員、姿を消していました。こちらの言い分としては、忙しい外来を午前中休診にして出向かなくてはいけませんし、講義資料の準備には1か月ぐらい前から取りかからなくてはいけません。いつも、こんなことの繰り返しなので、学生講義というと、気が重くなるわけです。 それでも、講義終了後に鋭い質問したり、夏休みに実習、見学に、オンコロジーセンターに来る学生もいます。未完成なだけに将来を期待し、気を取り直して、暖かく見守り、育て、導いて行きたいと思います。
今年の癌治は・・・
癌治療学会が今週の後半に京都で開催される。薬剤師の宮本君、看護師の角谷さんの発表のリハーサル、阿部薫先生仕込みの徹底的な磨きこみをした。スライド一枚一枚について「読むなら書け、書くなら読め、読まないなら書くな、書かないのなら読むな」の原則や、「1枚1分の見当で発表、一枚には9行まで」とか、「レーザーポインターはくるくるやるな、目が回るじゃないか、ピタッと止めろ、ピタッと」などなど。私の出番はというと1日目のランチョンと、二日目のプライムオンコロジーと3日目のイーデス・ペレツの司会の三つ。2日目のプライムオンコロジーは昨年同様、お仕着せスライドが送られてきてシナリオが決められていて洗脳大会の様相である。