むくみと日焼け
① 体内の流れ
心臓から出て全身に運ばれる血液は動脈から毛細血管ネットワークに流れます。毛細血管ネットワークは動脈側から入った血液が静脈側から出ていき、静脈となって心臓にもどります。毛細血管ネットワークでは、血液の成分の内、血漿成分が血管外にしみ出し、組織を潤したり、栄養を運んだり、老廃物を回収したりして、リンパ管に入り、リンパ管ネットワークを経て、胸管となって心臓の近くで静脈に合流します。つまり、体の中の血液などの流れは、行きは動脈だけの一系統、帰りは静脈とリンパ管の二系統あるわけです。リンパ管ネットワークの要所要所にリンパ節があり、リンパ管を流れるゴミを濾過します。また、リンパ節はリンパ球の駐在所のような働きもあります。リンパ管を流れるゴミとは、癌細胞、細菌などです。
② 腋窩リンパ節郭清の意味
ハルステッド理論(古典的)では、乳がんの治療の一環として腋窩リンパ節郭清(脇の下のリンパ節を取り除くこと)が重要であると考えられていました。しかし、近代外科学では、腋窩リンパ節郭清を治療と考える外科医はいません。腋窩リンパ節郭清は検査と見なされています。何を調べる検査か、というと、肺、肝臓、骨などの遠隔臓器への転移がおきていそうか、いなさそうか、を推察する為の検査です。腋窩リンパ節転移がある、ということは、同時に血液の流れにのって、癌細胞が他の臓器へ転移している可能性もある、ということです。腋窩リンパ節転移が多い、ということは、同時に血液の流れにのって、癌細胞が他の臓器に転移している可能性が高い、ということです。したがって、腋窩リンパ節転移がある場合、多い場合は、術後の薬物療法により、遠隔転移の可能性を、低く、低くすることが大切となります。
③ 腋窩リンパ節郭清の代償
乳がんで腋窩リンパ節郭清をした側の腕はリンパ還流が悪いのでむくみがおきます。むくみがおきた腕では、とげを刺したり、切り傷をして、細菌感染が起きると、腕全体に炎症が波及して、腕が真っ赤に腫れて、痛くなる、熱がでる、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という状態になることがよくあります。ですから、むくみがある腕は大切にしなくてはいけません。愛護的にあつかわなくてはいけません。けがをしないことが大切です。蚊に刺されたり、犬に咬まれたり、へびににらまれたり、かえるになめられたり、ということも避けたいわけです。日焼けをしすぎて、水ぶくれがおきるぐらいになると、そこからは、きっと細菌が入りやすくなりますから、あまり激しい日焼けは避けた方がいいでしょう。しかし、ふつうの日焼けをしてはいけない、というのは、うそ、です。
骨折と骨転移
骨転移があると骨折をすることがありますが、骨折があっても骨転移はおきません。骨折した部位を調べたら骨転移あった、ということはあります。骨転移、と 骨折 との因果関係が、どこかで逆転して、待合室で語られているのでしょう。
「乳がん術後の患者さんは、骨折すると骨転移がおこりやすくなるのでスキーに行ってはいけない」ということは、明らかに、うそ、です。
骨折しても癌細胞が集まってくることはあり得ません。
結論
がん患者だからといって「禁止事項」は何もありません。ふつーの生活をすればいいのです、ふつーの。しかし、もちろん、たばこは吸ってはいけません。ところで、ふっと思いだしたのですが、国立がんセンター中央病院の田村友秀君は肺癌が専門なのにいまだにたばこを吸っています。これでは示しがつきません!
いっか~ん!