閑古鳥


ミルマスカラスはついにマスクをとった。如何に周囲から浮いていたかということがやっとわかったみたいだ。同時に今年のASCOはやはりスワインフルゥの影響で日本人も少ないが全体的に参加者はかなり少ない。プレナリーセッションの発表抄録が配られた。卵巣がんでCA125 を頻繁に測定して再発を早めに診断しても予後は変わらないという日ごろ、勝俣先生が言っている通りの結果がでた。以上閑古鳥のなくASCO会場より

シカゴ空港風物詩


日本から11時間のフライトでシカゴ空港についてオーランド行き乗換まち。成田から一緒の飛行機できたFJTさんは機内でずっとマスクをしていて降りてからもマスクを外さずまるでミルマスカラスのようだ。こちらではマスクをしている人はいない。ミルマスカラスはいつまでマスクをするのだろうか、興味深い。例年、ASCO前日はSJO先生やSMD先生、SSK先生、NKGW先生などと空港で行きかうのだが今年は組織に生きる人たちにはほとんど見かけない。リスクを上回る経済的利益が期待できる企業開発担当者は命がけでマスクして乗り切ろうという構図と読める。ゲートB10で出発をまっているとオーランドからの到着便から続々、いままでビーチにいたよ、という感じの日焼けした健康そうな家族連れ、カップルなど降りてきた。だれもマスクなんかしていない。これに乗って私はASCOに行く。ディズニーランドもエピコットセンターもユニバーサルスタジオもシーワールドも・・、今回は無縁だね。

僕の病診連携構想(1)


病診連携の構想は、常に病院側が原案を作り地域の診療所に「これでいいでしょうか」という具合に諮問される。原案を考える側の病院は、病院のもつ本来の機能とは何かとか、診療所はどうあるべきか、というような本質的な議論や考察を全く行っていない。今の自分の立場で、診療所の先生に業務を分担してもらうとすれば、どのような形になるか、というような、きわめて近視眼的、現実妥協的な形でしか、考えていないのが実態である。したがって出来上がった病診連携パスとかは、残念ながら全く使い物にならない。患者の視点から見れば、はなはだ不便な診療を強いられることになる。

 

究極の病院機能

病院の機能を究極的に考えれば(1)手術、(2)画像診断、(3)処置入院、(4)分娩、(5)ホスピスケア。(6)二次以降救急医療、(7)放射線照射に限定される。

 

(1)  手術室、回復室機能をもち、それに付随する医師(外科医、麻酔科)、看護師、薬剤師、検査技師などのスタッフがいればよい。手術をするのは、必ずしも病院医師の必要はない。

(2)  PETCT,MRIなどの大規模検査機器および医師(放射線診断医)、看護師、診療放射線技師などのスタッフがいればよい。入院設備は不要。

(3)  処置入院は、胸水、腹水排液など。これは、小手術と考えて(1)に分類してもよい。

(4)  分娩は、在宅でも可能であるが、NICUを使用しなくてはならない、リスクの高い分娩には、医師(産科、新生児科)、助産師、看護師、薬剤師などのスタッフがいればよい。入院設備は必要。

(5)  終末期医療は在宅でも可能である。今後、在宅での看取りがふえてくるだろうから、この機能は診療所に移行できる。

(6)  一次救急は必ずしも病院で提供する必要はない。

(7)  重厚な機器が必要な放射線照射は、病院機能として提供する。通常は、通院、長くて1泊二日程度の入院が必要。

 

これらの「病院機能」は、単独で存在することも可能である。たとえば、サージカルセンター、として、(1)の機能のみを有する施設を設置することも可能である。しかし、入院設備など、他の機能との共有が可能なので、上記をまとめて、病院として、入院部門を設置すればよい。

 

外来は、24時間対応で、上記の機能の受け入れ窓口として機能するだけでよく、継続通院機能は、全く不要である。

手前勝手な病診連携構想

外来通院はすべて、診療所で行い、病院機能を使用する必要があるときだけ、患者は病院に行くようにすればよい。その変わり、診療所の機能充実、とりわけ、医師の専門性の強化が不可欠となってくる。現在のように、病院が忙しいからとか、教授になれなかったからとか、お金を儲けたいとかといった不純な理由で、診療所を開設してもうまくいくはずがない。実際、お金はほとんどもうからないのだ。やってみてわかった。まず、赤字である。大切なことは、正しい思いを持ち続けることができるかどうか、それが、よい診療所経営の基本である。

病院のエゴイズム


吹けば飛ぶような弱小診療所で孤軍奮闘していると病院のエゴにムカつくことがしばしばだ。最近遭遇したゲゲゲのあきれたストーリーです。HER2陽性乳癌でハーセプチンが効かないような場合に効果が期待できるラパチニブ(タイケルブ)がもうじき発売になる。今日、薬価算定会議があった。患者さんにしてみれば待望の薬剤だし我々も心待ちに処方開始の秒読み段階である。ところが、びっくりするような話を聞いた。「うちの病院ではラパチニブが承認されても最初の1年は使用しません。安全性が確認できるまでは、われわれの病院(とある鵜飼で有名な県立病院だが)では新薬は導入しないという病院の方針です。」と言われた患者さんがはるばるセカンドオピニオンを求めてやってきた。家の近くだし県立だし、きっと力になってくれるだろうと今後の診療を託したのに、木で鼻をくくったように「病院の方針」ということで突き放され、患者さんは涙にくれている。この対応は明らかにおかしい。まちがい(1)そのような方針がどうして許されるのか? 新薬は確かに使用経験が少ないから未知の副作用がでる可能性だってある。使用経験を積むのは、では、いったいだれなんだ? 県立病院がやらなくて、どこがやる? しかも、その病院は、がん診療拠点病院なのだ。がん診療の実力はないに決まっているが、拠点病院となっている以上、癌治療の新薬を積極的に導入しないとは何事だ。大バカ者だね。まちがい(2)かりにそのような間違った方針だとしてだ、どうして医師はその方針に従うのか? おかしいと思わないのか。拠点病院としての社会的使命を果たしていない病院に勤務しているその医師の意見はないのか? 病院の方針ですから、としおらしく言うが、それなら、病院の方針にすべてしたがっているのか? 同じようなことが別件でもあった。輸血拒否の宗教団体の患者さんの抗がん剤治療を関西のがんセンターに頼んだところ、そこの腫瘍内科医が、病院の方針ですからお引受けできません、と事務サイドを通じて断ろうとしてきた。その腫瘍内科医は優秀な男でとても信頼できるので頼んだのだが、その対応でこちらも切れた。その腫瘍内科医に直接電話し、「断るのなら自分で患者さんに説明しなさい。しかし、抗がん剤治療をやるのに輸血が必要になったことなんかないのだから、引き受けてほしい。」というと「病院の方針ですから、僕の一存ではどうすることもできません。」と答えた。そこでさらに熱をこめ「いいか、先生を信頼して、他の病院でことわられた患者さんをお願いしているのだから、そこのところ、よく考えてみなさい。医療はそもそも社会的な活動であり、別に滅私奉公をする必要はないが、社会のニーズに対しては責任をもってきちんと答えなくてはいけないだろう。説教を聞きたくはないかもしれないが、もう一度よく考えてみなさい。」
病院の方針というのが間違っていることが多いのは、よく知られた事実です。そういう方針を打ち出すような病院も、医療機能評価でまる適マークをとっているのだから、評価するほうもされるほうも、終わっているね、ゲゲゲのゲッ!!!

医局に人生を預けるな


書籍タイトル(予定) 医局に人生を預けるな

目次 新書版 250ページ

 

1       医師不足の現況は

(ア)  医局管理から自己管理への移行

(イ)  自己管理ができていない医師

(ウ)  医局(=置き屋)の崩壊

2       教授さまさま時代の終焉

(ア)  古きよきごっつあん体質

      学位授与のお礼

      仲人のお礼

      開業おゆるしのお礼

      製薬企業たいこもちのお礼

      あご足つき国際学会の実態

      鴻池官房副長官とおんなじだよ

(イ)  人事権の喪失

(ウ)  置き屋の崩壊

3       三丁目の医局: 入局から定年、非常勤、嘱託、顧問・・・・

     医大外科助教の優雅な生活

      時間はなんのため

       バイトに明け暮れる青春の日々

       研究やる気あんの?

       カンファレンスは不要ですか?

4       ある回顧録

定年は想定外? 〇藤○一の信じられない感性

5       独立開業のすすめ

6       夢破れて開業なし

7       お前こそもったいないだろう

いつまで奴隷をつづけるの?

8       人生設計 15年かける5

9       医療は社会主義

10    開業は立ち去りがたサボタージュか

11    お局様(おつぼね様)の老後

12    新しい時代の新しい医療

13    もつべき3感覚とは

14    医局に人生をあずけるな

 自分の付加価値を高めよう

自己研鑽のすすめ

医学生は子供として扱うべし


医学部学生のお父さん、お母さん方へ
浅○君、君は授業中に小説を読んでいたね。読書は大切だ。しかし、授業中に、先生の話を無視して最初から最後まで読んでいた。それから、そっちの君。西○くんといったね、授業の半分を過ぎた頃にテニスラケットをかついでこれからクラブ活動にいくついでに教室に入ってきたね。運動は大切だ。しかし、さすがにあのときは先生も見過ごしてはいけないとおもったよ。だから、君には教室から出て行ってもらったんだ。いいか、わかるか、君たち。大学から授業を頼まれて、忙しい診療をやりくりしてだな、しかも、とんでもない安い給料で3時間、君たちのために講義をする。事前の準備だって大変なんだよ。そとから先生が来てくれるのだから失礼のないように気をつけよう、というような気持は君たちにはないね。また、相変わらず半分以上の学生が激しい恰好で居眠りをしている。大学生は大人だから、という扱いで、生活指導、社会人教育、人間教育には全く意を注いでいない大学の姿勢にも問題があるだろう。大学生を大人として扱うことが間違っているみたいだ。いいか、とくに医学生は、将来医師という社会で誰からも信頼され、社会的にも尊敬される職業に就くのだ。なぜ、信頼され尊敬されるのか、わかるか。それは、君たちが自分のためよりも、社会のために力になりたい、他人の力になりたい、という心意気を持ち、それを実践するために、絶えず自己研鑽を積んでいるからなのだ。それが、授業中に小説を堂々と読んでいたり、テニスの恰好をして、何の授業なのかもわからず、へらへらと教室に入ってくる。君たちを大人扱いすることはどうやら間違っているようだ。君たちは、もう一度、自分の置かれている立場を考え、自分たちの行動を反省してみたまえ。    お父様、お母様方もご家庭でかわいいお子様たちとよくお話しください。

5月のがぜ掲示板


今年の連休は、晴れ~曇りで、浜松まつりの人出も例年以上のようだ。5月からあれやこれやのバージョンアップがある。
(1) 東京勤務
東京勤務は、5月から金曜日にお茶の水の杏雲堂病院にお世話になることになった。杏雲堂病院は創立125周年を迎える老舗病院で、母体の佐々木研究所は吉田肉腫が有名。現在の院長は、海老原敏先生、国立がんセンター東病院名誉院長で、私ががんセンターに勤務していたころから大変お世話になった先生である。秋葉原で一緒にやってきた看護師(中田さん、佐々木さん)と薬剤師(森くん)も一緒にチームとして移動することができた。金曜日には杏林大学から井本滋先生も乳腺外科外来に来ているので、今後は乳がん診療激戦区のお茶の水で最強の乳がん診療チームを構築するつもりだ。セカンドオピニオン外来や外来化学療法、術後のフォローアップなどは従来通り。
 
(2) 青森勤務
毎月第4火曜日に青森県立中央病院で腫瘍内科の外来を担当することになった。担当といっても月一回なので、薬物療法のコンサルテーションとか、患者相談などが主な仕事になる。院長の吉田茂昭先生の構想、展望を実践できるように頑張りたいと思います。青森弁も習得したいと思います、んだ、んだ。
 
(3) 浜松勤務
4月から参加している田原梨絵先生が診断、治療に安定した力を発揮してくれ患者の評判もよろしい。薬剤師(宮本くん)も参加し、抄読会や勉強会も開催することができ学会への抄録もおくることができるようになった。また、5月からは診療放射線技師(新井さん)も参加し、これで当院も「ピンクリボン活動」の仲間入りでございます。でも、無意味なマラソンやあちこちピンクに染める活動とは一線を画したい。
 
 

4周年記念特別ひとりごと「理想の病診連携とは」


QOLを損なわない癌診療を行うポイントとして病院と診療所の効率的な役割分担がある。固形癌の化学療法の9割は外来通院での実施が可能である。ということは癌化学療法をうける患者は、大部分の時間を日常生活、社会生活を送りながら過ごすということになる。以前、このブログに「まるでやくざのなわばり争いのような病診連携の会」についてのひとりごとを書いた。その後、問題意識をもちながら、癌の外来化学療法における病診連携について考えている。癌化学療法における病診連携は次の3型に分類できる。I:病院外来で化学療法実施、副作用対策を診療所が担当する、II:病院外来で化学療法の主たる部分を実施、化学療法の従たる部分と副作用対策を診療所が担当する、III:診療所外来で化学療法および副作用対策を実施、重篤な副作用のため入院が必要な場合、病院が対応する。理想形はIII型、やはり、患者の生活圏内における高機能診療所を主として、その後方支援施設、あるいはインフラストラクチャーとして病院を位置づけるのが良いと思う。病院の下請け的に診療所を位置づけている現在の考え方ではうまくはいかないだろう。

いずれの型においても、患者のための安心、安全の確保が最も重要であるが、診療所、病院においても、しかるべきベネフィットが得られなければならない。病院としてのベネフィットは、限られたリソースを有効活用し、病院としての機能すなわち、外科手術、放射線照射、大規模画像診断検査、ICU、終末期医療の提供などに特化することにより収益構造を保ちながら、求められる医療を提供し、研究、教育にも寄与できる点にある。診療所としてのベネフィットは、地域密着による高品質の医療を提供することによる自己実現と収益構造の確保である。このように効率的な病診連携により癌患者の外来化学療法を実践するためには、患者病院診療所がWIN-WIN-WINの関係を築くように配慮しなくてはならないと思う。5月の連休で浜松オンコロジーセンターも4周年を迎える。毎年、この時期には初心に返り街角癌診療構想のバージョンアップに思いを巡らせるが考えれば考えるほどますます、なんて素晴らしい構想を思いつんたもんだ、どんなもんだい!と自我自賛でハッピーエンドだ。よかった、よかった。