月: 2009年5月
シカゴ空港風物詩
僕の病診連携構想(1)
病診連携の構想は、常に病院側が原案を作り地域の診療所に「これでいいでしょうか」という具合に諮問される。原案を考える側の病院は、病院のもつ本来の機能とは何かとか、診療所はどうあるべきか、というような本質的な議論や考察を全く行っていない。今の自分の立場で、診療所の先生に業務を分担してもらうとすれば、どのような形になるか、というような、きわめて近視眼的、現実妥協的な形でしか、考えていないのが実態である。したがって出来上がった病診連携パスとかは、残念ながら全く使い物にならない。患者の視点から見れば、はなはだ不便な診療を強いられることになる。
究極の病院機能
病院の機能を究極的に考えれば(1)手術、(2)画像診断、(3)処置入院、(4)分娩、(5)ホスピスケア。(6)二次以降救急医療、(7)放射線照射に限定される。
(1) 手術室、回復室機能をもち、それに付随する医師(外科医、麻酔科)、看護師、薬剤師、検査技師などのスタッフがいればよい。手術をするのは、必ずしも病院医師の必要はない。
(2) PETCT,MRIなどの大規模検査機器および医師(放射線診断医)、看護師、診療放射線技師などのスタッフがいればよい。入院設備は不要。
(3) 処置入院は、胸水、腹水排液など。これは、小手術と考えて(1)に分類してもよい。
(4) 分娩は、在宅でも可能であるが、NICUを使用しなくてはならない、リスクの高い分娩には、医師(産科、新生児科)、助産師、看護師、薬剤師などのスタッフがいればよい。入院設備は必要。
(5) 終末期医療は在宅でも可能である。今後、在宅での看取りがふえてくるだろうから、この機能は診療所に移行できる。
(6) 一次救急は必ずしも病院で提供する必要はない。
(7) 重厚な機器が必要な放射線照射は、病院機能として提供する。通常は、通院、長くて1泊二日程度の入院が必要。
これらの「病院機能」は、単独で存在することも可能である。たとえば、サージカルセンター、として、(1)の機能のみを有する施設を設置することも可能である。しかし、入院設備など、他の機能との共有が可能なので、上記をまとめて、病院として、入院部門を設置すればよい。
外来は、24時間対応で、上記の機能の受け入れ窓口として機能するだけでよく、継続通院機能は、全く不要である。
手前勝手な病診連携構想
外来通院はすべて、診療所で行い、病院機能を使用する必要があるときだけ、患者は病院に行くようにすればよい。その変わり、診療所の機能充実、とりわけ、医師の専門性の強化が不可欠となってくる。現在のように、病院が忙しいからとか、教授になれなかったからとか、お金を儲けたいとかといった不純な理由で、診療所を開設してもうまくいくはずがない。実際、お金はほとんどもうからないのだ。やってみてわかった。まず、赤字である。大切なことは、正しい思いを持ち続けることができるかどうか、それが、よい診療所経営の基本である。
病院のエゴイズム
医局に人生を預けるな
書籍タイトル(予定) 医局に人生を預けるな
目次 新書版 250ページ
1 医師不足の現況は
(ア) 医局管理から自己管理への移行
(イ) 自己管理ができていない医師
(ウ) 医局(=置き屋)の崩壊
2 教授さまさま時代の終焉
(ア) 古きよきごっつあん体質
① 学位授与のお礼
② 仲人のお礼
③ 開業おゆるしのお礼
④ 製薬企業たいこもちのお礼
⑤ あご足つき国際学会の実態
⑥ 鴻池官房副長官とおんなじだよ
(イ) 人事権の喪失
(ウ) 置き屋の崩壊
3 三丁目の医局: 入局から定年、非常勤、嘱託、顧問・・・・
医大外科助教の優雅な生活
時間はなんのため
バイトに明け暮れる青春の日々
研究やる気あんの?
カンファレンスは不要ですか?
4 ある回顧録
定年は想定外? 〇藤○一の信じられない感性
5 独立開業のすすめ
6 夢破れて開業なし
7 お前こそもったいないだろう
いつまで奴隷をつづけるの?
8 人生設計 15年かける5
9 医療は社会主義
10 開業は立ち去りがたサボタージュか
11 お局様(おつぼね様)の老後
12 新しい時代の新しい医療
13 もつべき3感覚とは
14 医局に人生をあずけるな
自分の付加価値を高めよう
自己研鑽のすすめ
医学生は子供として扱うべし
5月のがぜ掲示板
4周年記念特別ひとりごと「理想の病診連携とは」
QOLを損なわない癌診療を行うポイントとして病院と診療所の効率的な役割分担がある。固形癌の化学療法の9割は外来通院での実施が可能である。ということは癌化学療法をうける患者は、大部分の時間を日常生活、社会生活を送りながら過ごすということになる。以前、このブログに「まるでやくざのなわばり争いのような病診連携の会」についてのひとりごとを書いた。その後、問題意識をもちながら、癌の外来化学療法における病診連携について考えている。癌化学療法における病診連携は次の3型に分類できる。I型:病院外来で化学療法実施、副作用対策を診療所が担当する、II型:病院外来で化学療法の主たる部分を実施、化学療法の従たる部分と副作用対策を診療所が担当する、III型:診療所外来で化学療法および副作用対策を実施、重篤な副作用のため入院が必要な場合、病院が対応する。理想形はIII型、やはり、患者の生活圏内における高機能診療所を主として、その後方支援施設、あるいはインフラストラクチャーとして病院を位置づけるのが良いと思う。病院の下請け的に診療所を位置づけている現在の考え方ではうまくはいかないだろう。
いずれの型においても、患者のための安心、安全の確保が最も重要であるが、診療所、病院においても、しかるべきベネフィットが得られなければならない。病院としてのベネフィットは、限られたリソースを有効活用し、病院としての機能すなわち、外科手術、放射線照射、大規模画像診断検査、ICU、終末期医療の提供などに特化することにより収益構造を保ちながら、求められる医療を提供し、研究、教育にも寄与できる点にある。診療所としてのベネフィットは、地域密着による高品質の医療を提供することによる自己実現と収益構造の確保である。このように効率的な病診連携により癌患者の外来化学療法を実践するためには、患者–病院–診療所がWIN-WIN-WINの関係を築くように配慮しなくてはならないと思う。5月の連休で浜松オンコロジーセンターも4周年を迎える。毎年、この時期には初心に返り街角癌診療構想のバージョンアップに思いを巡らせるが考えれば考えるほどますます、なんて素晴らしい構想を思いつんたもんだ、どんなもんだい!と自我自賛でハッピーエンドだ。よかった、よかった。