mission 2011 completed


本日、今年最後の外来を終え2011年の業務が終了しました。今年はSt.Gallen 2011で事前の準備をしっかりしてLuminalB(HER2陽性)とLuminal B(HER2陰性)のカテゴリーをわけることが主張できてすっきりしたこと、再来年の乳癌学会会長を任せられたこと、SanAntonioでもNSASBC02のよいデータを発表することができたこと、あちこちの講演で言いたいことが言えたことなどなど、やるべきことやったね、という感じで年末の締めくくりとしては自分をほめてあげたい! レベルかと思います。一昨日、青森でいつもの秀鮨から帰るとき、吉田院長、川嶋先生、橋本先生に1年間ほんとうにお世話になりましたと、深々と頭を下げてもらって、まんずまんず、いかったべさ~(津軽弁?) という感じ。おや!今年はまだ年賀状作成業務の積み残しがひとつありました。いっか~ん!!!

朝日新聞連載40回 家族のがん


私は3年前に父を口腔がんで、2年前に姉を乳がんで、また、21年前の義母を大腸がんで亡くしました。それぞれの家族のがん治療に主治医として関わった長い歳月の間、治療や処置の選択に迷うことも多くありました。しかし、自分ひとりで悩まず、同僚や先輩、後輩の意見を聞き、最善と考えられる判断を下すように努めました。また、家族と相談することもありましたし、相談しなくても自然に良い判断ができたこともありました。
義母の大腸がんは、小細胞がんという珍しいタイプで、抗がん剤もほとんど効かず、発症から半年足らずで、国立がんセンター病院で亡くなりました。悲しみの中で妻に病理解剖が必要なことを話したところ、あなたが必要だというのなら構わない、と同意してくれました。内科医であった父は、亡くなる3か月前まで診療所にも毎日顔を出し、昔馴染みの患者さんと雑談を交わしていましたし、医師会の勉強会にも毎週欠かさずに参加していました。最後の数日は、トイレから立ち上がることもできず、私が抱えてベッドに移したこともありました。その時、脈がとても弱くなっていたので、脈、微弱だな、と思わずつぶやいたところ、そうか、微弱か、と父もつぶやきました。それが父の発した最後の言葉になりました。姉は乳がん手術後1年半で再発し、その後10年近く、私の専門とする薬物療法を続けました。姉は弟である私に、すべて任せるから一番いいと思うことをやってほしいと言っていました。ある時、抗がん剤に対するアレルギー反応のため呼吸が止まりかけ、6時間近く人工呼吸を続け、ようやく呼吸が戻り、救急車に同乗し浜松医療センターに搬送しました。1か月後に退院、その後、姉は約1年の人生を送ることができたのでした。
義母、父、そして姉の闘病生活を主治医として見守り、出来ることはやった、出来ないことはしかたない、他にできることは見当たらないし、結果はすべてよかったのだと思っています。家族の死は、医師としての私の人生に貴重な教訓を与えてくれました。

情報統制に従うべきか


某社のMRくんがやってきた。「ご講演に際してのお願い」と書いた営業部長名のはいった文書を持ってやってきた。そのお願いには、講演に際しては、わが社製品に関しては本邦における承認外の情報は言ってはいけない、また、他社製品を誹謗・中傷するようなことはは言ってくれるな、と書いてある。さらに、講演に使うスライドは事前に会社のしかるべき部署が検閲し、不適切と判断した場合はその部分を削除するから覚悟しておけ、とも。これは、すさまじい言論統制である。しかし、コンプライアンスとかコーポレートガバナンスということで守らないわけにはいかない。よし、わかったよ。では、そのような観点から、今回のサンアントニオの主だった演題、注目された演題を見てみよう。
(1) SWOG S0226:この試験は、閉経後ホルモン感受性を有する症例の初回治療でアリミデックス単独とアリミデックスとフェソロデックスを併用した場合、PFSのみならずOSにおいても併用の方が優れており、併用効果はとりわけ、術後タモキシフェンを使用していない症例で顕著、というもの。この試験、アストラゼネカから依頼された講演では、「アリミデックスとフェソロデックス」と併用は、本邦承認外の情報となる。また、他社がスポンサーの場合、「アリミデックスは単独では十分な効果が発揮できない薬剤として位置付けることだできます」などというと、他社製品を誹謗したということで黒塗りにされる。したがった、この試験について一切語ってはいけない。
(2) GeparTRIO試験:これは今回、最も感服した演題であるが、ゼローダ、ナベルビンはともに、「手術不能又は再発乳癌」が適応であるので、術前化学療法での使用は適応外となり、中外、協和キリン発酵的には禁止である。また、他社の場合、TACが効いているような場合には、ゼローダ、ナベルビンなどというようなやわな薬剤を使用するのはナンセンスです。」なんて言おうものならたちどころにレッドカード。
(3) CLEOPATRA試験:これは、HER2陽性の、転移性乳癌の初回治療として、ハーセプチン+ドセタキセルとこの2剤にペルツズマブを併用した比較試験。当然ペルツズマブは、本邦でも他邦でも適応外なので、中外的には、語ってはならない。また、他社も、「もはやハーセプチンの時代は終わりと言っても過言ではない」なんて言ったら即退場。
(4) BOLERO2試験:これは、再発後のホルモン感受性陽性閉経後乳癌で、アリミデックスまたはフェマーラが効かなくなった症例を対象に、アロマシン単独、対、アロマシンにアフィニトールを併用した場合の比較試験。ノバルティスは当然、乳癌にアフィニトールを使うとよい、などとは言えない。アロマシンが対照薬なのでファイザーは自社になるのか他社になるのか、製薬協に聞かないとわからないが、アリミデックスまたはフェマーラが効かない場合、アロマシン単独で使用しても奏効率は1.3%ととても低い、などというと、誹謗中傷にあたる。

というような具合で、この取り決めを守らなければいけないということになると、製薬企業がスポンサーとなる講演会では一切、最新情報を提供できなくなる。こんなことで本当にいいのだろうか? 医師は、製薬企業により統制された情報だけをおとなしくまじめに暗記していればいいということなのだろうか? まるで北朝鮮のような情報統制ではないか。いったい、だれのためのと内部規定なのか?? 冬空にひとりで考えれば考えるほど、愚か者の愚かな判断が国を滅ぼし、民族を壊滅させた忌まわしき過去の事例がよみがえるのである。

物事の優先順位は各人の感性なり


サンアントニオからLA→羽田経由で帰国し、今日は朝9時から外来診療中。昨年、この時間にこの便で帰ると月曜日に仕事ができるよ、と話したら、それを聞いていた斎藤毅先生とか、渡辺たかのり先生も、今年はそうしました、昼から外来やりますよ、患者さん待ってますからね、と気合を入れて、空港で、じゃまたと。一方、同じ便で帰ってきて、月曜日は東京で買い物、休みとったんだ~、といったような甘あまの先生がたもおり、それはそれで、各人の物事の優先順位は他人がとやかく言う話ではないが、それにしても、人生の重要な局面で憂いを残さないように上中下、松竹梅の優先順位を踏み外すことのないようにしたいものです。

サンアントニオ二日目


今日の午前中の一般演題3、午後の一般演題4では、大規模臨床試験の結果が次から次から次から次から発表された。

GEPAR-TRIOはGBG(German Breast Group)von Minckwitzの発表。術前化学療法は、いまや、初期治療における標準治療と位置付けられている。術前化学療法のメリットとしてよくいわれるのが「in vivo chemo-sensitivity test」つまり感受性を確認することができるということだが、一般臨床で行う形態はどうだろうか。たとえば、TACを6サイクル実施すると決めて取りかかった場合、通常よほどのPDでない限り、既定の治療を続けるのが一般的である。この試験は、途中で効果が思わしくないとき、あるいは、逆に1サイクル目からすごくよく効いた場合にどうするかという状況において、明確な指針を提示した優れた試験だ。サブタイプ別治療が導入される前の試験なのでER,HER2状況によらず、対象となった2072症例に、まず、TACを2サイクル実施、NCならば、そこでランダム化割り付けを行い、TACをさらに4サイクル実施(合計TAC6サイクル)か、ナベルビン+ゼローダ(TAC2→NX4サイクル)を行う。つまり、効きは悪いが続けてTACするか、効きがわるいのでTACは見限ってNXに切り替えるかの比較。最初のTAC2サイクルを行ってPRまたはCRが得られた場合には、そこでランダム化割り付けを行い、TACをさらに4サイクル実施(合計TAC6サイクル)か、TACをさらに6サイクル実施(合計TAC8サイクル)を行う。。つまり、効きはよいが、TACを6サイクルでとどめるか、効きが良いので、よく効いているTACを8サイクルまで引っ張るかの比較。効きがわるいのでTACは見限ってNXに切り替える群と、効きが良いので、よく効いているTACを8サイクルまで引っ張る群を、Response Guided Arms と呼び、これと、効果に関係なく、TAC6サイクルを行った場合をconventional treatmentと呼ぶ。結果は見事で、Response guided treatment とConventional treatmentの比較では、DFSは、HR0.71、logrank p<0.001と、Response guided treatmentが優れ、OSでもHR0.79, Logrank p=0.048と有意差に至った。この試験は、実に洗練されていて、素晴らしい試験だし、結果もいろいろと閑雅させられるものがあります。
(つづく)
興味のある方は、von Minckwitz G, Kümmel S, Vogel P, et al. Neoadjuvant Vinorelbine–Capecitabine Versus Docetaxel–Doxorubicin–Cyclophosphamide in Early Nonresponsive Breast Cancer: Phase III Randomized GeparTrio Trial. J Natl Cancer Inst 2008;100:542-51. をまず、読んでおいてください。

2011 サンアントニオ1日目


サンアントニオは真冬の寒さ、今年のホテルは会場から少し歩く距離で、今朝は凍える思いで会場に向かった。なので、増田慎三先生が会場のパソコンで、先生できますよ、と教えてくれたので、来年は、学会会場となりのホテルをすでに予約した。さて、今年は、景気後退のせいか、製薬企業の自主規制のためか、展示ブースがとても地味で、まるで大学の学園祭のような感じ。よく考えてみると、今までが過剰、華美で、やっと正常に是正されたということだろう。

今日の午前中は、Eric Winerのホルモン療法のレビューから始まった。TAM,AIなど、それなりの効果はあるが、閉経前のLHRHアゴニストの意義が今一つ確立しないことや、晩期再発の問題など、解決すべき問題は多い。現状の問題について、Ericは、乳がん細胞の多様性、晩期再発の問題、耐性の複雑なメカニズムについて、そこそこにまとまったレビューを展開したが、いま一つ、ありきたりでインパクトが弱い。

午前中のgeneral sessionには、8つの演題が含まれているが玉石混交の感がある。
① 最初の演題は、SWOGの共同研究S0226で、閉経後ホルモン感受性乳癌症例で、転移後の初回ホルモン療法として、707症例を対象にアナストロゾール単独5年(352症例)対 アナストロゾール+フルベストラン(250mg/4w)5年(355症例)との併用個年の比較。アナストロゾール群で増悪後フルベストラントへのクロスオーバーしたのは345症例のうち143症例(41%)であった。結果は、PFS(HR=0.80, 95%CI 0.68-0.94, Logrank p=0.007),でも、OS(HR=0.81,95%CI 0.65-1.00, Logrank p=0.049),でも全症例を対象とした検討で併用の方がよい、という結果だった。さらに、術後タモキシフェンを使用ありとなしのサブセットで分けてみると、タモキシフェンなし(414症例)、していない場合にはOSでもHRは0.74、生存期間中央値がアナストロゾール単独で39.7ヵ月のところ、併用で47.7か月と10か月もの延命効果が認められたというもの、つまり、術後のタモキシフェン使用の有無が効果予測因子となっている、という推論であるが、何らかのバイアスがからんでいる可能性もあるので、とりあえず、そこは慎重に見ておく方がよいだろう。毒性としては、併用群で2例が肺塞栓で、1例が脳出血で死亡したが、そのほかは特段、併用に強いものがでたというわけでもなかったようだ。
レビューしたJim Ingleは、practice changing とはいかない、とくにサブセットアナリシスには注意が必要と釘をさしたが、全症例でも有意差がでていので、今後、アナストロゾールとフェスロデックスの併用を求める意見も強くなるだろう。適応外使用や自社に好ましくないデータは発生源で抑え込もうとするAZですが、このような場合、加藤さん、エビデンスには逆らえないね、どうする、これからますますAZしないといけないですね。

② ABCSG12の追跡期間中央値84か月の時点最新解析では、ゾメタの追加効果が相変わらずはっきりと出ている。OSでも、ゾメタ併用(6か月に一度、6回、つまり三年間)により、HRは0.63、p=0.049だそうです。とくに、40才以上では、HR0.57とより差がでているという結果です。

③ ZO-FAST試験は、閉経後1065症例を対象に、手術後のレトロゾールに加えてすぐにゾメタ4mgを6か月ごとに投与するか、それとも、レトロゾールだけで、もし、骨密度の低下(Tスコア2以下)とか、骨折とかが起きた場合に、ゾメタを使用する群とのランダム化比較で、主たるエンドポイントは、骨密度、二次的エンドポイントとして、再発を検討したものであります。約1000例の比較で、DFSでは、HR=0.66, logrank p=0.0375と有意差がありました。OSでは、HR=0.69,logrank p=0.196 と有意差には至っておりません。この試験でも、最近閉経した患者よりも、しっかりと閉経している患者でしっかりとした差がでていますので、やはり、エストロゲンがうすい女性では、ゾメタの効果が出やすいということでしょうか。

レビューしたJim Ingleも「New Standard of care」と断定しました。しかし、10月13日号のNEJMの掲載されたAZURE試験では差が出ていなくて、結論でもまだ、一般的に使用する時期ではないと言っていますが、閉経後5年以上たっている女性では、ゾメタの追加により、生存期間の延長も認められていることから、エストロゲン濃度がそれほど強くない閉経後女性とか、ゾラデックスで卵巣がしっかり押さえられてエストロゲンが少なくなっている40才以上の女性の場合、破骨細胞に対するエストロゲン刺激作用がうすく、そこに持ってきて、ゾメタで破骨細胞機能が抑えられると、骨からの増殖因子ががん細胞へ供給されなくなる、という仮説もあるかもしれません。そのあたりについては玉岡さんから考察があると思います。

前々から気にとめていることですが、NEJMに報告されたABCSG12 試験では、アナストロゾール群での死亡27、タモキシフェン群での死亡が15例と約2倍の差がありました。その後、この差は、OBESITYによる影響、つまり「大女、総身にAIまわりかね」という川柳で象徴される現象で説明できる、という発表もあASCOだかでありました。今回、その件について質問してみましたところ、やはり、死亡はアナストロゾールで多いようなのですが、あまり歯切れのよい答えはありませんでした。そのあたり、やはり、適応外使用や自社に好ましくないデータは発生源で抑え込もうとするAZが影で圧力をかけているのでしょうか、と意地悪してくる企業にはつい、ひねくれてものを見てしまうのは、私だけでしょうか。しかし、この問題、STAGEトライアルとの絡みもあるので、AZとしてもきちんと対応してもらいたいと思います。

明後日の金曜日のgeneral session 5で、世界のドラッグハンター ホセ・バセルガによって発表されることになっている、HER2陽性転移性乳がんに対して、トラスツズマブ 対 パーツズマブの比較試験の結果が、今日のNew England of Medicineに載っている。パーツズマブ(Pertuzumab}は、オムニターグ(Omnitarg)という商品名になる予定の抗HER2モノクローナル抗体第二号、ハーセプチンと同じジェネンテック社によって開発された。つまり、日本では、話題の中外の手による優雅な開発がすすめられている薬剤で、今回の試験も、日本からの登録症例が多数が含まれているので、海外のデータというわけではなく、世界同時承認にならなければ、国際共同治験を進めてきた意味がないということになるので、山口さん、そこのところ、一つよろしく頼みます。出発前に、薬剤添付文書の「国際誕生日」と「日本誕生日」についてしつこく山口さんに聞いたのは、この関係のことです。添付文書に書いてあるこの二つの年月日の差が、マスコミにも登場するようになった「ドラッグラグ」である。しかし、ハーセプチンの記載が不明確であるので、今のうちに整理しておいて、パーツズマブが出たら同じフォーマットで比べられるようにしなくてはいけません。また、パーツズマブに関しては、「国際誕生日」イコール「日本誕生日」となるように申請・承認手続きを進めなければ、あのこうるさい患者団体が黙っていないでしょう。重ねて、山口さん、よろしくお願いします。この比較試験については、岩田先生の「このご時世にいつまでやるの?朝までサンアントニオ生テレビ」で詳しく紹介することになるので、皆さん、ぜひ、全国の中外支店から参加して、「国際誕生日イコール日本誕生日になるって聞きましたが本当でしょうか?」という質問をたくさんお寄せください。

同じ号のNEJMに、同じく、世界のドラッグハンター、ホセ・バセルガによるBolero2試験の結果も載っています。これは、ホルモン感受性のある転移性乳癌で、アナストロゾール、レトロゾールといった非ステロイド型のアロマターゼ阻害剤に耐性となった場合、エキセメスタン単独 対 エキセメスタン+エヴェロライムスの第三相試験で、先のESMOで第一報は報告済み。商品名、アフィニトールとして、すでに日本でも腎癌治療薬として使用されています。ですから、乳癌に対しては適応拡大ということになります。この試験にも日本からの症例が多数登録されているので、国際適応拡大年イコール日本適応拡大年となるように、ノバルティスのFJTさん、ちょっとご無沙汰していますが、よろしくお願いしますね、

朝日新聞連載 38回


最善努力の原則
食道がん、喉頭がんで亡くなった落語家、立川談志を偲ぶ報道で、食道がん術後の記者会見映像が流れました。驚いたことに本人は威勢よくタバコを吸い、同席した執刀した外科医が記者からタバコについて問われると「本人の希望ですから。今からタバコやめてもなってしまった食道がんは治りませんしね」と答えていました。本人の行動はともかく、私はこの医師の発言はどうも納得がいきません。
喫煙は、肺がんだけでなく、食道がん、喉頭がんの原因です。食道がんが手術で切除されても、食道の別の部位に新しくがんができることもありますし、また喫煙を続ければ喉頭がんの発症につながる可能性もあります。喉頭全摘術となったら声を失いますから、落語家にとっては重大な問題です。そこまでの情報を十分に提供し、本人が正しく理解し、それでも喫煙を続けるなら、本人の選択として尊重しなくてはなりません。しかし、記者会見の場で医師は、タバコはやめるべきです、と発言しなくてはいけなかったと思います。確かに、タバコをやめたら、食道がん、喉頭がんに絶対にならないとは言えませんが、ならないよう可能な限り努力するという姿勢が大切だと思います。
同様のことは術後の抗がん剤治療についても言えます。目には見えない微小転移があるかも知れず、それを撲滅するため半年間、抗がん剤治療をするという状況ですが、微小転移はないかも知れない、また、抗がん剤治療をしたとしても再発を100%抑えるということは約束はできないのなら、つらい抗がん剤治療は受けたくない、という選択肢もあります。しかし、後で再発を心配し、あの時、抗がん剤治療を受けておけばよかった、としきりと悔やむ人がいます。何事も絶対大丈夫、ということはありません。しかし、できる時に、できることをやっておくことが後になって、自信と安心につながるということもありますので、私は、常に、最善努力の法則に基づいてを患者さんにはお話ししています。