全部答えた市民講座


日曜日に第8回の浜松乳がん情報局市民講座を開催しました。200名をこえる参加者で会場は少し手狭でした。次回はもう少し広い部屋をとります。事前に寄せられた53の質問にたいしてパネリストで分担して全問回答を達成しました。もともとこの市民講座は、あなたの疑問になんでも答えます!というコンセプトで2006年から開催しています。事前に質問を募集する→ある程度集まったところで準備会①でパネリストに割り振る、会の1週間ぐらいまえに準備会②で各パネリストの回答をみんなで見て聞いてあーだこーだ、と批評して、そして会の当日の午前中に、準備会③で最終チェック、といった手順で、質問に真正面からどっしりと答える、ということを旨としてきています。終了後に、参加者からの意見を読みながらの中華料理を食べながらの反省会で、改善できるところは改善していこう、つぎはどうしよう、ということを相談する、といった流れであります。
 
全部答えるためには、かなりぐいぐいと進めなくてはいけませんが、参加者からの意見はおおむね、よかった!! 全部答えてくれたありがとう!! という花丸評価でした。中には、あつい、さむい、せまい、時間が長すぎる、とか、いろいろと文句が書いてあるのもありますが、そういうのはそういうので、一応は読んでおくけれど、こっちもこれだけ一生懸命やっているのだからつべこべ言う人はこなくてもいい、というのがちらっと見える本音なのかもしれないという意見もあったりなかったりと、難しい問題で、まあまあまあ、というとこどろです。次回は2月14日です。つべこべいわない方々のご参加をお待ちしています。
 
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治験やめたらどうよ?


CRCの方からのお尋ねがあった。「CRCとして治験業務はかなり忙しく興味もあるのだがいまひとつ、やりがいが感じられない。」ということである。その方は看護師であり内科病棟などで10年近くの勤務歴があり、病院が治験に積極的に取り組むことになったので治験管理室に配属となったそうだ。がん治療薬の治験も手掛けているが、モニターとのちまちましたやり取りや、意味があるかどうかわからない取り決めやら、また、自分の判断で進めていはいけないことが多かったりと、フラストレーションの毎日なんだそうだ。CSPORの臨床試験の仕事には関与していないそうだ。医師、看護師といった医療職を数年経験すると「患者さんに感謝される」ということがやりがいの根源であるということに気づく。日々の診療ではその連続であり仕事の主たる目標は「社会貢献」であり、その直接的な目印が患者さんからのありがとうございましたの言葉である。CRCとして被験者と接することは多いだろうし、CRCセミナーなどで話を聞いていると、治験業務を通じて、被験者である患者から深く感謝されるということもあるにはあるようだが、それほど多いことではない。自分が手掛けている治験によりよい薬が世の中に出て、それによって不特定多数の患者から感謝される、ということは理屈としてあるわけだが、最近のように、愚にもつかないような「承認申請のための治験」は、やってもやらなくてもいいわけで、製薬企業には利用され感謝されるが、看護師という医療職に身を置くものからしてみると、うれしくもなんともないだろう。その点、標準治療を変えうるような医師(研究者)主導型の臨床試験では、CRCとして参画した場合、被験者との接触も長期間に及ぶし、得られた結果が、多くの患者にとって役に立ちうるものである、ということを体験し実感できるのである。治験で雇われたCRCは治験以外の臨床試験には関与してはいけない、というみみっちいことを言っている病院は数多いが、そういうところでは、CRCの自己実現を通じた満足度はとても低いのだ。やりがいがないとかんじるのは、医療職としての活躍の場があたえられていないからなのだ。しょうもない治験の業務などやめて、CSPORの臨床試験業務を担当してみると、きっと、自分の立ち位置が見えてきて、さっそうと病棟や外来を動きまわる美しい自分の姿を見つけることができるだろう。製薬企業のお先棒をかつぐようなみみっちい治験なんて、やめてしまったらどうよ? とその方に言ったところ「そうですね、かんがえてみます。ありがとうございました。頭の中がすっきりしました。」と言っていました。しかし、治験を受託しないと病院に収入にならないし、あなたの給料もでないでしょうから、「治験は治験、ビジネスとして割り切り、CSPORの臨床試験の仕事を通じていきがいを見つけたらどうよ。」というのが現実的な助言となります。

CRCセミナーから透かしてみえてくること


世界的不況のなかでの生き残りをかけた製薬企業の強烈なエゴ、分子標的薬剤の乱発、手順主義の過剰重視、植民地支配的グローバルトライアルの横暴、あんぽんたんな開発モニターによる頓珍漢な対応・・・などに振り回されるかわいそうなCRCの姿を今回も認識しました。とくに分子標的薬剤が無秩序、無限にまるでガン細胞のように節操なく、各社のエゴで乱発される結果、グローバルトライアルの美辞麗句のもと、質の低いモニターが雇われて、行われる治験が多数行われているのが現状です。治験、治験に追いまくられ、本当に患者のためになる臨床試験に参加する機会を与えれず、自らの社会参画の成果を体感することなく燃え尽きていく哀れなCRCも多数いるようでした。

若い医師に送ることば


Mくんへ

医師としての人生は、患者からの要望や質問、恩師の助言や指導、同僚からの意見や批判、後輩からの質問や突き上げなど、周囲からの様々な刺激などをきっかけとしながら、自己研鑽を継続していくことがとても大事です。だれでも50歳近くになると、なんとなく、自分だけでなんでもできるし、他者からの批判や意見はうっとうしくなり、いつの間にかカンファレンスや学会などにも出なくなる医師がいます。医師という職業を選択した以上、勤務医であっても開業医であっても、患者に対して社会的責任を果たさなくてはなりませんから、決して自己都合や個人の欲望だけで行動していてはいけません。医師としての社会的責任を全うするには、ある程度、厳しい環境に身をおきながら、周囲と自分との相対的な距離みたいなものを意識しつつ、生涯にわたり学習を続けていかなければなりません。そうしないと唯我独尊的行動に陥ります。そのような状況に気がつかないことも多く、そうなると、そこから先の伸びがありません。医師としての長い人生を最後までさわやかに生き抜くことは容易なことではありません。軌道を逸脱してしまった事例をたくさん見ていますが、決して他人事ではなく、あすはわが身と心得なくてはいけません。これからの人生、integrityを失わず、研鑽に励んでください。

 

8月3日 先輩医師より