外科医改造計画 「さらば消一くん」


11月の1か月間、卒後8年目の外科医が浜松オンコロジーセンターに研修にきました。徒歩1分のところの「ホテルDayByDay」を研修宿泊施設として、朝8時30分から夕方6時までの外来見学、毎日、外来の合間や、昼休み、外来終了後の時間などを利用してマンツーマン指導による医師心得指導(教科書は小川道雄先生の「研修医早朝講義」)、患者とのコミュニケーションの取り方(教科書はSPIKES BC)、腫瘍内科学の真髄教育(教科書は渡辺亨)、人生哲学(教科書はジェームスアレンの「原因と結果の法則」)、EBMの実践方法(教科書は名郷直樹先生の「実践EBM」、薬物療法ABC(教科書はDeVitaのPPO)、,スライド作成の秘訣、プレゼンテーションの心得、保険医が心得ておくべき「療養担当規則」、コンピューターの上級者的活用術、アップトゥデート、ファイルメーカープロ、エンドノートなどの知的ソフト、ネットワークの使い方、などについての講義、実習を行いました。また、地方講演(今回は沖縄)に同行し、症例呈示を担当しての実践応用、地域のカンファレンス参加、食事会でのご教訓講話などを通じて、徹底的に指導したわけです。もっとも驚いたことは、有名大学を卒業して著名大学で卒後研修を済ませた外科医は、確かに、腕は鍛えられてきたかもしれないが、頭の使い方、知恵の使い方を全く知らないということでした。また、NEJMやJCOのホームページがあることも知らない、というのには思わず絶句してしまいました。いままで、学生、腫瘍内科医希望の若手医師、ある程度できあがった外科医などに対しては、数時間から数日の研修指導はしたことがあるのですが、今回、初めて消一くんを1か月間に亘り指導してみて、世の中の癌薬物療法がなぜ、うまくいっていないのか、ということがよくわかりました。それは、消一くんに、消一くんのままで癌の薬物療法をやらせていてはいけないのだということです。そこで考えたのが外科医改造計画、題して「さらば消一くんパッケージ」。消化器一般外科医(消一くん)からの脱皮、脱却をはかり、頭を使うことのできる外科医師に改造する「消一くんブラッシュアップパッケージ」、消一くんを腫瘍外科医に改造する「消一くんチューンアップパッケージ」、そしてさらに消一くんを腫瘍内科医にまで華麗に改造する消一くんバージョンアップパッケージ」の三つのパッケージをご用意しました。本人のご希望、ご施設の実情にあわせてお選びください。「老犬、芸を覚えず」とはいいますが、柔軟な姿勢があれば、年齢、経験は問いません。渡辺亨まで、ご連絡ください。

唯我独尊 問答無用


11月9日に日曜日、浜松市の防災訓練がありました。東海大地震を想定して負傷者の対応でトリアージを行う訓練です。患者役の一般市民、医師は、リアルなメークで、クラッシュ症候群だったり、目にガラスが刺さったり火の粉をかぶってやけどをしたりと、それはそれはど迫力でした。私は最初、振り分け担当で、黒、赤、黄、緑に分類するかかり。二回目は黄色のテント、つまり軽傷患者の対応のかかりを担当しました。黄色では医師4人ぐらいで、次から次へやってくる負傷者の対応をするのですが、医師のなかで一人、自分は災害医療の専門だ、みたいなふるまいと言動の若いのがおり、自分でかってにルールを決めて重い人から順番に「赤」のテントに近い方に移動させてください、とかってに指示をだしており、災害救急のチューターの医師が、それは必要ありません、といっても最後まで自分の主張を押し通しました。田舎の方の開業医師らしいのですが、これっきりの間柄だし、喧嘩する相手でもないので、知らん顔しておりました。往々にして他者からの評価や批判を受けないような立場にいるとあのような人間になるようです。あるいは、あのような人間だから他者からの評価や批判を受けないような立場にいるのかも知れません。これも大事なご教訓、他山の石なり。