年末肉体労働


大晦日の今日は終日、肉体労働に没頭しました。朝はとなりびとの長谷川晴久君がスズキの高級車「キザシ」とスズキの頑丈車「SX4」を洗いたいのでケルヒャーを貸してちょうだいということで我が家のBベンツと三台、加えてスズキバイクを洗いピカピカにしました。そのあと、ロビンのトイレ部屋と共用部屋となっているわが書斎、足の踏み場が乏しくなっていたものを徹底的に整理整頓、トイレ部屋の一部で仕事ができるようになり新年を迎える準備が整いました。来年も一生懸命仕事をして乳癌学会を大成功に導きたい! 

年老いたイグアナママ


今週はセカンドオピニオンでインフォームドコンセントのアリバイ体質、学会理事会で学会の隠ぺい体質をつよく認識しました。その理由はあきらかです。結果責任を不適切に追求する間違った社会通念、愛(ストルゲー、アガペー、フィリアだがエロスではない)の枯渇した日本社会が原因ではないでしょうか。しかし時代は確実に動いています。この動きをリアルタイムで受け入れていかないとガラパゴスになります。年老いたイグアナママのようにはならないよう、自分にも言い聞かせていきたい。

驚きの訪問者


このブログ、不定期連載なので、しばらく書かないと訪問者がぐっと減り500ぐらいになりますます。反対にせっせと書き込むと1500人ぐらいに増えますがとくに増やそうとも思わないので気が向くままに時間のある時に書いています。最近、更新してませんねェ、と言われることもよくあります。そんな状況の中、12月19日に訪問者が13000人を超え、なにやら大変なことになっていて、ブログ炎上か!?とあわてました。調べてみたら、他のブログに、このサイトのリンクがはってあったのが原因とわかり、基本的に善意にリンクであったのでほっと一安心。そのサイトを見て頂いたらわかりますが、例の週刊朝日のいい加減な病院ランキングの件で、他でも週刊朝日関係の広告業者が不適切なことをした、というものです。肝胆膵外科学会にも迷惑をかけているようですね。「朝日」という冠がついていれば、誰だって信じてしまうので、そこは、朝日もつべこべ言わずに非を認めるべきでしょう。あきれた週刊朝日増刊後号で名前の出ているSKTさんから広告をとりしまることはできないなど自己弁護、朝日弁護の激しく、長いメールが来ましたが、さすがにそれを転載したら、どんな仕打ちをうけるかわからないので、この辺でこの話題おしまい!!!

がん内科医の独り言


朝日新聞静岡版に「がん内科医の独り言」と題して、このコラムをすこし、まじめにしたような連載、2010年11月26日から始まって、2年を過ぎました。過去1年間の連載(2011年12月~)は、http://www.asahi.com/area/shizuoka/articles/list2300036.html  で読むことができます。このコラムに転載したものもあります。興味があればご覧ください。

京阪電車に乗って


昨日は、大阪医薬品協会に乳癌学会への寄付のお願いに伺ってきました。歴代の乳癌学会会長は、西日本なら大阪道修町の大阪医薬品協会、東日本なら東京日本橋の日本製薬団体連合会詣でをするというルーチンになっているそうです。道修町というのは、江戸時代、清、オランダから入ってくる薬を扱う薬問屋が店を構え、そこを通さないと薬を商えない、という感じで、そのころから、武田、塩野義、田辺三菱の前身が商いをして威張っていたらしい、いまでも威張っているけど。それで、メッド伊藤、ペンシル小川と連れ立って出向いたわけです。先方のご担当者2名様にあらかじめ用意し、事前に目を通しておいて頂いた募金趣意書にそって、懇親会や展示など、華美にならぬように、いかに出費を抑える努力をしているか、懇親会も質素に、晴れたらお城、雨ならホテルなんて無駄な二重出費は計画しておりません、晴れても雨でも室内でこじんまりと、など15分間、汗だくでご説明申し上げました。その後、ご担当者から、13項目にわたるありがたい注意項目について20分間ご教授頂き、感謝に持ち足りた気持ちで大阪の街を後にしたのでした。
その後、北浜から京阪本線に乗り、淀川沿いの田園風景の中を1時間近くかけて、京都の出町柳まで移動。こんな鉄道があったんだって感じ、京都大学の佐藤俊哉、恵子ご夫妻にお目にかかり、乳癌学会のワークショップ「臨床試験の倫理 -インフォームドコンセント学ぶ- 」、「生物統計を学ぶ」、「看護師と臨床試験」について、相談し、大枠を決めて参りました。ワークショップは、チケット制として、各回 100名までとして、(肉体的または精神的)若手医師、看護師、薬剤師のみなさんを対象に、臨床試験に積極的にかかわっていただけるように企画しています、ご期待ください。佐藤ご夫妻といえば、ベストセラー、統計学のわかりやすい書籍「宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ」シリーズの著者としても有名です。

便利な羽田空港に感謝


羽田空港に朝5時につく全日空機で帰国、新横浜駅6時発のひかりで浜松へ。現在、外来診療中。なんでいままであんな不便な思いをして成田空港まわりでかえってきていたのか、というか、なんで、成田空港など、不便な空港ををつくったのか、と思う。いろいろな政治的思惑で迷惑をこうむるのは一般国民である。成田空港を縮小して、羽田空港拡張するとか、静岡空港の真下を通っている東海道新幹線、そのトンネル内に駅を作って、垂直エレベーターで直結し、静岡空港発着便を大幅にふやして、ハブ空港にするとか、便利を追求して悪いことはないだろうと思う。

サンアントニオの冬 最終回


BEATRICE Study: A Study of Avastin (Bevacizumab) Adjuvant Therapy in Triple Negative Breast Cancer の中間解析の結果が発表され、虫たちは厳しい冬を迎えることになりました。試験はしっかりしたグローバルトライアルで日本からも超一流の名だたる先生方が参加されており、試験のデザイン、コンダクト、アナリシスの基本三要素は完璧であります。術後のケモは、アンソラ+タキサン、アンソラ、タキサンなど、施設毎に決めておけばよく、それにアバスチンをケモとの併用から初めて1年間、1週間あたり5mg/体重あたり、に等しい投与量を加えない群、加える群のランダム化比較試験。しかし、結果は、「無病生存、全生存とも統計学的に有意差なし」でありました。口演では結果は次のように発表されました。 IDFS HR = 0.87 (95% 信頼区間: 0.72‒1.07; p=0.1810)
IDFSは、この試験の主たるエンドポイントです。Invasive Disease Free Survivalの略ですが、日本語に訳せば、無浸潤疾患生存、次のいずれかが発生した場合に、イベント(事象)あり、となります。[1] 同側乳房の浸潤がん、[2] 同側腋窩、領域リンパ節、胸壁、皮膚の再発、[3] 遠隔臓器転移、[4] 原因を問わない死亡(ドラム缶のコンクリート詰めされた場合も事象として数えます)、[5] 反対側の浸潤性乳がん、[6] 他臓器の原発性浸潤癌。
HRはハザード比、わかりやすく言えば、上記のイベントが起きるスピードの比です。カプランマイヤー曲線の傾きの比ととらえてもいいです。0.87ということは、100㎞/時で定速走行のできる車を基準車として、新型車が1÷0.87=115㎞/時で走る性能という感じです。「115㎞の方が速いじゃん、新型車の方がいいじゃん」というのが山蛾流、で、そうではありません。第二東名を走るときにスピードは一定ではないように、新型車の定速走行性能は、115㎞/時(1÷0.87)から93㎞/時(1÷1.07)の可能性があると考えれば、どうでしょう。100kmで走れる車と、どっこいどっこいだろうかね、と言うことになります。また、P=0.1810ということは、P,すなわち、プロバビリティ、すなわち、おこりそうな確率、なにが、起こりそうかっていうと、100㎞/時が今までの車の性能のところに、新しく開発した車が、実は性能は全く同じで、車体の色だけを変えただけど、たまたま115㎞/時で定速走行するということが、偶然に起きる確率は0.18である、5回に1回は偶然に起きることがある、ということです。なので、統計学的にきっちり考えると、化学療法化学療療法+生理食塩水でも、同じ試験を5回やれば1回はこの程度の差、となることあるよ、ということです。また、そもそもこの試験は、 IDFSイベントのハザード比が0.75となることを有意差(P値0.05以下)として検出できるように症例数(イベント数)を388と設定しており、393イベントがすでに発生しており、そうすると5%以下の有意差にはならない、ということになり、結果はネガティブ、ということになります。統計学のもっと詳しいことは、鳥打帽の似合わない大橋先生に聞いてみましょう。
生存期間についても、ハザード比0.84 (95% 信頼区間: 0.64‒1.12; p=0.2318)で、結果を出すために必要なイベント数(死亡数)の59%しか、未だ発生していない、ということですが、おそらく、生存期間で差がつくことはないと思います。
アバスチンに関しては、「本当に効かないのか?」なんていうタイトルで話して大丈夫ですか、と、いろいろな方に言われます。確かに副作用はあまり重篤ではないので安全な薬とは言えますが、如何せん、効果がはっきりしないわりに高い、これが1瓶150円ぐらいならいいかも知れません。二代目エビデンス侍の相原先生は、「関西人は、効きもしない薬、誰が150円で買うねん」というでしょう。最近、特にしつこいし。
虫たちよ、大腸癌では、アバスチン;転移性では○、術後では×(AVANT, NSABP B08)、ベクティビックス(管轄外虫);転移性では○、術後では×(N0147 trial)(総合2勝2敗)、乳癌では、アバスチン;転移性で×、術後で×、ハーセプチン;転移性では○、術後では○ (総合2勝2敗)、ということで、第一世代分子標的薬剤、まずまずの成績と言うことでどうだろうか。

春はもうすぐ そこまで 恋は今終わった この長い冬がおわるまでに何かをみつけて生きよう 何かを信じていきてゆこう この冬がおわるまで(サボテンの花)

サンアントニオ day 3 抗HER2の虫たち


CLEOPATRA試験、すなわちHER2陽性転移性乳がんを対象とした、ドセタキセル+トラスツズマブにペルツズマブ(商品名:パージェッタ)を加えるか、加えないかのダブルブラインド・ランダム化比較試験の結果は、昨年のサンアントニオで発表されました。今回は、それに関連したバイオマーカー研究で、ホセバセルガの発表、あまりぱっとしない発表だったけど、とくに、どのような症例でペルツズマブを加えて効果が高まる、という結果はでなかったようです。ただ、PIK3CAに変異があると、PFSは短いという結果は報告されていました。昨年のサンアントニオでも、パクリタキセルとラパチニブの併用で、PIK3CAの変異があると生存期間が短い、という報告がありましたので、そういう場合に抗HER2療法がよく効くということになるのか、今後、エビデンスの構築が必要です。

5時からのポスターでは、CLEOPATRA試験の全生存期間の決定版の発表がありました。昨年の発表でも、全生存期間は有意に延長しておりましたが、まだ未熟、ということでした。しかし、E-2100のようなこともあるので、1年後のコンファームということで、ハザード比0.66(95%CI 0.53-0.84)P=0.0008でした。よい結果でこれは害虫たちも喜んでいました。

午前中にはHERA試験のトラスツズマブ1年と2年の比較結果が発表され、1年でOKという結果でした。続いて、発表されたフランスのPHARE試験では、HERAと同じような対象にトラスツズマブ6か月と12か月を比較。その結果は、ほぼ1年でよろしいというものです。ER陽性、でケモとトラスツズマブを同時に投与開始した場合には、とりわけ、6か月で結果が劣っており・・という結果も報告されましたが、それはサブセット解析だし、つべこべ言わなくて、1年できまり、ということでいいと思います。ただ、術後の場合も、PIK3CAワイルドだぜ、のほうがいいのかもしれません。PHARE試験は研究者主導の試験ですが、その理由はもし6か月でいい、ということなると、売り上げは半減するわけで、そんな試験に親虫ロッシュがスポンサーをするはずがありませんね。まあ、1年で十分、ということで落ち着きました。 それと、もうひとつ、害虫には悲しいお知らせがあります。

サンアントニオは冷静だった


G1 SG2MG1SG2M(ジーワンエスジートゥエムジーワンエスジートゥエム) と念仏のように唱えて細胞周期を覚え、細胞毒性抗がん剤の作用機序を一生懸命に覚えたのはレジデントの頃でした。サイクリンABDEというタンパクがサイクリン依存性キナーゼにより活性化されたり、即座にタンパク分解酵素で消滅したり、細胞周期は複雑な仕組みによりG1 SG2Mが調節されているというのもだいぶ前に学びました。細胞周期を止めるというのは原発を止める、みたいに、そんなに簡単にできるの?という思いで、この演題を聞きました。PD0332991は、天下のファイザーが開発している経口薬で、サイクリン依存性キナーゼ4と6を阻害することで、サイクリンDの作用が減弱し、細胞周期がG1期からS期に移行するポイントを抑えるというものです。確かに、PFSが大幅に伸びています。でも、OSは今のところ差はありません。2009年のASCOで和尚ネッシーが、イニパリブの画期的なデータを報告した、あの日の空虚な感動が蘇ってきました。大丈夫かな、中途半端な規模のランダム化第Ⅱ相試験をして、それで、ポジティブデータと大騒ぎをして、すぐにでも第Ⅲ試験を、取り組んだ結果が、OSは差がないし、PFSも今一の差ということで、おいおい、どうしたどうした、ということになりはしませんか? と気がかりです。期待は確かに大きいけれど、どうかなー、あのときだまされたからなーという目で冷静に受け入れる方がいいと感じますね。会場の雰囲気もそれほどにはエンシュージアスティックではなかったように思います。

サンアントニオ day1 ③(惨の一)


乳がん治療におけるアバスチンは、パクリタキセル、ドセタキセル、アドリアマイシン、カペシタビンなど、乳がんに効果のある細胞毒性抗がん剤の効果を増強する「ターボチャージャー」という位置付けと認識することにしています。ただ、ターボチャージャーだけに、効果は長続きしないようです。つまり、アバスチンは、細胞毒性抗がん剤との併用で、腫瘍縮小効果とか、無増悪期間を延長させることは証明されていますが、それが、生存期間を延ばすところまではいかないというのが乳がん治療におけるステータスです。大腸癌では生存期間延長効果があるのですが、乳がんでは短期効果どまり、というのがよくわからないという人も多いのですが、それは、疾患の特性というよりも治療環境の問題ではないか、と感じます。。相対的に、乳がんは有効な薬剤がたくさんあるので、なかなか活躍できない、読売巨人軍のような環境です。大腸癌の治療薬は、5FU,オキサリプラチン、イリノテカンしかなく、選手層の薄い横浜ベイスターズのようなものなので、活躍のチャンスは十分にあるわけです。では、読売巨人軍で活躍するにはどうしたらいいか、ということですが、たとえば、どんな局面に代打で出るのがいいのか、つまり、効果予測因子を探す努力が続いています。しかし、選手層が厚い球団で、実力が乏しいのに契約金だけは誰にも負けない選手は、早晩、戦力外通告が言い渡されるのではないでしょうか。そこで、考え付いたのが、野球ではなく、ソフトボールの試合なら勝てるかもしれない、と検討されたのが、ホルモン療法剤との併用でどうか、ということです。ドイツとスペインの臨床試験グループが協力して、レトロゾール(またはフルベストラント)単独 と レトロゾール(またはフルベストラント)にアバスチンを加えて、ホルモン療法感受性のある閉経後症例の再発後初回治療として検討したのが、LEA trialです。無増悪生存を主たるエンドポイントとしていますが、全生存期間なども控えめなエンドポイントに挙げています。結果はどうだったか。とうちゃん、ごめん、やっぱりだめだった。ソフトボールでも活躍できなかった。無増悪生存期間でも差がなく、ましてや全生存期間でも差があるはずがありません。今後、どうすればいいのか、邪魔蛾代理人の戦いは続きます。悲惨がまっているのか、飛躍がまっているのか、次の試合は、金曜日午後4時15分から、検討を祈ります。