若手医師との往復書簡


渡辺 亨 先生

いつも楽しくブログを拝見させて頂いております。SPIKES研修医版は山本君が問題を解決していく様子が面白く、また私も非常に勉強になります。厚生労働省の役割分担の件についての先生のブログに啓発されました。当院も病棟クラークを導入してもらい、入退院計画書や先渡し処方、手術申込書等々の殆どの事務作業を、お願いすることになりました。今まで事務作業で忙殺されていたのが、かなり負担が減るのではないかと思います。また勉強会の方も宜しくお願いします。先生のシャープなご講演も楽しみにしております。日程調整をしたいと思いますので、ご都合をお聞かせください。

 えすがら

 

えすがら先生

ご連絡ありがとうございました。喜んで講演、伺いたいと思います。原則として、土曜日の夕方から、という形で最近は講演をお引き受けするようにしています。というのは、土曜日の午前中に外来化学療法を希望する患者が多く、土曜日外来をやらなくてはなりません。よろしくご検討ください。

 渡辺 亨

 

 渡辺亨先生

ご講演の件も了解致しました。先生も土曜日お忙しいのですね。当院でなにか企画出来ればいいなと思っております。また、ご連絡致します。

 えすがら

 

えすがら先生

 週休二日制が完全に定着し、ゆとり教育で小学生までもが土曜日休みです。そして、医療機関も土曜日休診があたりまえのように考えられています。しかし、はたしてそれでいいのだろうか、と最近、疑問を感じています。JCOGなど、非常識にも土曜日の朝8時から会議を開催しています。あほかと思いますね。基本的には、医療はサービスですからいつでも利用できるという体制を提供するほうがよいと思います。しかし、それを実現するには、医師の自己犠牲が前提とならざるを得ないほど、現在の保険診療報酬体系は厳しいものがあります。自己犠牲ではなしに「いつでもサービス」を提供するには、医師も2交代制とか、3交代制になる必要があるでしょう。しかし、そうするには、人件費などから、採算が合わないということになります。ほとんどすべての公立医療機関が赤字経営となっているという現実は、どう考えても異常ですね。私も昔は、経営効率などは全く考えていませんでした。しかし、現在、経営者の立場になって周りを見渡してみると、公立病院勤務の医師たちが、如何に効率の悪い働きをしているか、ということを痛切に感じます。ということで、土曜日午前中は、公立病院がどこも休診のため、医療過疎の状態になるのです。特に癌治療がきちんとできるような病院は、ただでさえ少ないため、土日で抗がん剤治療を行うことのできるような病院も、これからはニーズが高まるのだろうと思います。ところで、先生の病院では、外来化学療法加算1を算定していますか。浜松オンコロジーセンターでは、もともとカンファレンスで、レジメンの検討をしており、「レジメン検討委員会」という要件は満たしていますので、加算1の算定を届け出ました。しかし、算定要件である「レジメンを検討する委員会が開催されていること」、というのも、誰が考えたのかわかりませんが、全く形骸化した、形式的なものであるようにも感じます。どうして、小役人は、こうまで考えが浅いのだろうかと、呆れてしまいます。私が国立がんセンターで、コンピューターオーダリングを導入を検討する係をやっていました。当時は、医師の数だけ化学療法レジメンがある、ACでも、投与量はまちまち、吐き気止めはばらばら、薬を溶かすのも生食だったり5%ブドウ糖だったり、100ccだったり250ccだったり、10分でおとせ、だったりワンショット静注だったりでした。コンピューター処方導入するにはこれでは、どうにもなりませんので、ACならACで統一レジメンを作るように、各診療グループに依頼したのですが、これがまた大変で、おれの処方が一番だ、みたいでさらにどうにもなりませんでした。そこで、数名の専門家でレジメンを審査するという委員会を立ち上げたわけです。それは今でも国立がんセンターではきちんと機能しているはずですが、おそらく、今回、平成20年度の診療報酬改定で、外来化学療法加算1と2をわけたのは、いずれ「2」を廃止にするという形で、従来よりグレードアップするにはどのような要件を加えればよいか、そのあたりを目先の利く小役人が、国立がんセンター中央病院にでも相談したのではないだろうかと、直感しました。木を見て森を見ずみたいな行政はやめにして、もっと現場の状況をもう少し考慮したほうがいいと思いますけどね。長くなりましたが、土曜の夕方から、ということでよろしくお願いします。

 渡辺 亨

 

 渡辺 亨 先生

 当院も外来化学療法加算1はなんとか取ることができました。申請に関しては、私の5年間のがん診療経験を証明し、通常行っている術後カンファレンスや外来化学療法ミーティングで、従来から外来化学療法室連絡委員会を開催していますので、その内容で申請したと聞きました。先生のおっしゃるとおり、医療はサービスだと本当に同感いたします。「リッツカールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと」林田正光著を読まれたことがありますでしょうか? 非常に感銘を受けた本です。まさに病院は、ホスピタル、その語源はホスピスやホテルと同じホスピタリティーですので、手厚いもてなしを提供しなくてはと思います。それに加えて、専門性や知識も備え、経営感覚も持たないといけないので医者って本当に大変な仕事だなと痛感しています。 私が一番今許せないのが、がん拠点病院の制度です。地方のがん治療をあまり行っていない国立・県立病院ががん拠点病院に認定されるのは、効率の悪い赤字経営や技術を余り持っていない高給な大奥看護師の給料を、補う為だけのものだと思います。当院もがん専門病院の自負はありましたので、申請したのですがもちろん却下でした。浜松オンコロジーセンターも非常に高い専門性があると思います。がん拠点病院の制度がそのようなクリニックや専門病院に少し考慮していただきたいと思っています。

えすがら

 

えすがら先生

 がん診療拠点病院については、私も同意見です。行政がやることはいつもこんな具合です。内容よりも外形基準で判断します。がん診療拠点病院は、肺癌、乳癌、胃癌、大腸癌、肝癌の5癌腫について、診療体制がととのっていることが条件となります。そのため、先生の病院のように乳癌の専門病院は、いくら実績があり内容が充実していても、がん診療拠点病院の条件を満たさないということになります。つまり、がん診療拠点病院は、三流の百貨店であり、先生の病院は一流の専門店なわけですが、三流でも百貨店を尊重し、専門店は対象としないという姿勢です。患者にとってみれば、乳癌で診療を受ける際、その病院で肝臓癌診療をやっていようが、胃癌の専門家がいようが、まったくと言っていいほど関係ないですよね。だから、どうして、なんでもそろった百貨店でなくてはならないのか、われわれには理解できません。世間では、がん診療拠点病院のほうがレベルの高い診療を行っている、というふうに理解する人は多いと思いますが、実際、がん診療拠点病院に指定されているこの地域の病院の中にも、目を覆いたくなるようなひどい診療をやっているところがあります。詳しくは言えませんがね・・・(えへへのへ)。とはいえ、がん対策基本法という法律ができたことは、評価してよいと思いますね。法律ができると区役所レベルでも、豆役人がそれなりにがん医療について仕事をするようになりましたからね。しかし、肝心なことは、地道に日々の診療を行い、EBMを学び、最新の情報を把握し、臨床試験にも参画していく姿勢をきちんと守っていくことです。そうすれば世の中に役立つ医療、医学の実践ができるということは間違いありません。そのことを肝に銘じて、もてなし、優しさ、公正、正義を心に据えてやっていきましょう。今日は、息子が帰省しているので、これから家族でお買い物です。先生も休日、楽しくお過ごしくださいね。

 渡辺 亨

 

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