St.Gallen2017の最中(2)


今日の午後は薬物療法のセッションが続いております。ホルモン療法のところは、閉経後のアロマターゼ阻害剤、タモキシフェン、どれをどのように、5年、10年、15年^^^、どれぐらいの期間、つかえばよいのか、どうなのか、それを判断するのに、オンコタイプDXがいいのか、マンマプリントがいいのか、プロシグナがいいのか・・ すっきりしたデータはまだでていないのですけど、ミッチーダウセットが例によってトランスATACのデータをあれこれといじくり回したデータを提示しながら、いろいろな生存曲線を示しているうちに、これがハイリスクで、これがローリスクで、いやいや、このスライドは間違いで、こっちがこっちで、いれかえて、みたいな話になりなにがなんだか分からなくなった。話している本人も混乱しているぐらいだから、聴衆は誰ひとり理解できていないだろう。当面、AI5年でその先、AIを続けてもよし、タモキシフェンに変えてもよし、というところです。閉経前は、SOFT・TEXTトライアル以上のデータはないので、あの2つの論文をきちんと理解していけばよろしい、ということです。マシューエリスは、ルミナルAには、術前治療は細胞毒性抗がん剤ではなく、ホルモン剤を使う、と当然のごとく説明しておりました。

細胞毒性抗がん剤については、アンソラサイクリンとタキサンが必要、とくにHER2病とトリネガはで、と言う程度です。ルミナル乳がんでも、TNBCでも、HER2病でも、「若い人は予後が悪いから細胞毒性抗がん剤をしっかり使う」という考えは、都市伝説であることも、複数の演者がやっと主張するようなりました。閉経前のルミナル乳がんではホルモン療法を10年間、さらにもっと長く続けること、TNBCだから、乳房全摘、温存はしない、というのも、BRCA変異がないのなら、正しい考え方ではない、ということも、きちんと説明されていました。改めて「35才以下は抗がん剤が必要」というような考え方は間違っているということを確認しなければいけません。明日はいよいよコンセンサスカンファレンスです。このブログの読者に方には特別に、明日の質問(235も質問があります)をお教えしましょう。添付します。Masterfile_Session_St.Gallen_Panel_20170310_V3 GC

徳永祐二先生を偲ぶ


あまりに突然の訃報に現実を受け入れることができない。帰国すればまたあの笑顔に会えるような気がする。しかし現実は本当に悲しい。妙子がお通夜に参列して「故徳永祐二儀」と書かれた葬儀式場案内の写真だけをラインで送ってきた。悲しい写真だね、と返信したけど既読にならない。徳ちゃん、安らかにお休みなさい。12年間ありがとう。

St.Gallen 2017の最中


いま、会場で2日目の病理のセッションを聞いております。断端陽性の定義、浸潤がんではtouch on inkでなければよろしい、とSSO-ASTRO-ASCOコンセンサスになっている、というのは数年前から。再切除にならなければよいのであって、断端にがんは絶対に残ってはいけない、ということである。がんけんは未だにマージン5mmと言っているらしいが完全に時代遅れである。会場にはちらほらがんけん一派がいるけどこのような国際的コンセンサスを日本人の乳がんは特殊だ、で逃げ切るのだろうか。DCISではマージン2mmで十分でこれ以上取る必要はないというのも耳にタコができるほど聞いた。腫瘍内科医の耳にもたこができるものだ。

今回のテーマは、Escalating and De-Escalating Treatment、つまり、足りない治療は加え、過剰な治療は削減しよう、ということ。つまり、原発病巣のマージンも腋窩も取り過ぎはやめようぜ、必要なケモはしっかりやろうぜ、患者との情報共有はもっとふやそうぜ、というような方向で話が進んでいます。

お先にどうぞ ぼくは後からゆっくりね


アメリカで生活していたときに「yield」(前回ブログ参照)という交通標識が合流地点にあり、それが「徐行」という意味だということが分かりました。日本語の徐行は、道路交通法第二条で「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。」 と定義されています。つまり、ゆっくり走行するという意味ですが、「yield」を英和辞書で引くと

  1. 〔農産物や鉱物が〕産出する
  2. 〔努力や投資によって〕収益が出る、利益が挙がる
  3. 〔戦いなどで相手に〕降伏する、屈服する
    ・The younger man yielded to his colleague’s superior knowledge and experience. : その年下の男性は、同僚の優れた知識と経験に屈しました。
  4. 〔自然の力で〕押し戻される、へこむ
  5. 〔議論・説得・懇願などに〕折れる、応じる、譲歩する
    ・I might yield a bit on price. : 価格に関して少し譲歩してもかまいません。
  6. 〔他のものに〕取って代わられる
  7. 〔他の車を通すために〕停止する、速度を落とす

という意味で、7番目に速度を落とす、とありますが、他の意味、産出する、収益がでる、と、意味がつながらないように思いました。でも、降伏する、屈服する、譲歩する、という意味と、先に譲る、すなわち、相手を先に行かせるために「ゆっくり走行する」ことが徐行という意味につながることを学びました。

それで、前回の術前化学療法後の病理診断の表記方法ですが「ypT0 ypN0 ycM0 stage 0 」Tは腫瘍を表すTumor、「0」は「なし」を表すゼロ、Nはリンパ節を意味するLymph Node、Mは遠隔転移を表すMetastasis, 「p」はpathologyのp、つまり顕微鏡で見た病理学的診断ということ、それで「y」の意味がこのyieldなのです。yがついているということは、病理診断に外科切除標本が回る前に、別の修飾が加わっているということ、手術が○○に譲歩した、徐行しているうちに何かが先に行われた、という意味。ここにたどり着くまでに何年もかかりました。病理の先生に聞いても分かっている人はいませんでした。「さー、何でしょう?」という答しか帰ってきませんでした。

手術の前に抗がん剤治療をする、つまり、オレが一番偉いと思っている外科医が、控えめな腫瘍内科医に、「どうぞお先に」と、徐行して道を譲って先にやらせてあげる、ということで、あー、なるほどね、と思ったわけです。1990年代には、手術の前に抗がん剤治療をやるなどけしからん、感染症のリスクは高まるし、出血も多くなって手術はやりにくくなる。それに一刻も早く悪い物を取りのぞかなければならないがん患者に3ヶ月も6ヶ月も抗がん剤をやっていて、その間に転移が進んだらいったい誰が責任をとるんだ!!と、それはそれは、怖くて、譲ってくれるなんてみじんも感じさせない外科医が大手をふるっていた時代です。それが今のように、外科医がどうぞ、と、優しく、物わかりよく、術前化学療法が許されるようになったのは、微小転移の考え方、つまり、タンポポの種の存在が明らかになり、触って分かる乳房の腫瘍より、全身に拡がっている目には見えない転移が命取りになるという考え方が定着したからなのです。しかし、今でも、地域によっては、あるいは時代遅れの病院では、術前薬物療法などまったく実施していない所もあります。たとえば、プロレスラーHが治療をうけた病院など。 まるで、未だに縄文時代の生活をしているようなものだな〜と感じます。「お先にどうぞ、患者さんのためには先に全身に効果の及ぶ薬物療法をした方がいいですよね、僕は後からゆっくり手術しますからね、という術前薬物療法が、今度のSt.Gallenでは主役を演じます。そのうち、手術はもう必要なしとなるでしょう。時代の変化を感じますね。外科医も必要ありませんね、おっと、これを言うと痛い目にあうかも・・・

術前薬物療法の効果


ypT0, ypN0(sn),  ycM0, yp-stage 0 の意味を正しく理解している人は医師の間でも少ないと思います。病理医も正しく説明出来る人はそれほど多くはないと思います。今日の独り言はとても専門的な話なのでがん治療に興味のない人にとってはとても退屈だと思います。

乳がん治療では他のがんに先駆けて「術前薬物療法」というのを1980年代から取り組んで来ました。体の表面に発生するがんで、しかも、頻度が最も多く、女性にとってはとても気になる病気である乳がんは、日本人でも最も多いがんとして、現在、どんどん増えています。芸能人が乳がんになったというと新聞、週刊誌、ワイドショー、NHKの7時のニュースでも大騒ぎをしますが、治療内容が適切かどうか、という辺りには鈍感で、未だに「一刻も早く手術をしなくては」とか、「手術できたことで安心しました」という論調を支持しています。1980年代は確かに「乳房のがんも大きく、脇の下のリンパ節、鎖骨の下のリンパ節にまでも転移が及んでいるような『局所進行乳がん』で、どこを手術してよいかもわからないような状況に対して、それをまず、抗がん剤を使って小さくして、狭い範囲に病気を押しとどめ手術に持ち込む、という「手術不能乳がん」を「手術可能にする」という考え方がありました。アドリアマイシン、エンドキサンが出始めた頃です。しかし、その頃は、「命にかかわるのは微小転移である。目には見えないような微小転移は、乳房にがんのしこりが形作られるのと同時に、まるでタンポポの種が風に吹かれて遠くの土地に飛んでいくように全身にばらまかれていく」という考えはなく、乳房にしこりを見つけたら「一日も早く手術しなくては」という古典的な考え方に支配されていた時代でもありました。そのため、「手術を可能にする」ということが大義名分であったわけです。しかし、時代が進み2010年代、薬物療法も進歩しました、乳がんの特徴や分類に関する認識も定着しました。そんな現在、術前薬物療法が標準的治療と位置づけられ、まず手術してそのあと、効果のありなしも確認できない状況で目には見えない敵である微小転移を駆除するために薬物療法を闇雲に行うーという「術後薬物療法」が行われる頻度は減ってきている現状であります。では、術前薬物療法の効果はどの程度か? ということが問題となり、そこで注目されるのが、ypT0, ypN0(sn),  ycM0, yp-stage 0なのです。

 

 

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天下りは日本の文化なり


文部科学省官僚の天下りが問題となっていますが、厚生労働省でも、国土交通省でも、県庁でも、市役所でも、所轄の役所とのパイプがあれば情報も入手しやすい、便宜も図ってくれる、など、「ひとつよろしく」の関係で何かと便利なわけです。また、人材の有効活用ということで知識、経験をもち人生経験も豊富なお役所OBは人気の的であります。天下りに目くじらを立てても仕方ないように思います。成田に医学部をつくった大学は、まさに天下り大学そのものだけど・・・。それよりも、現役大学教授が研究費の配分を所轄する国立研究開発法人日本医療研究開発機構〔略称 えーめど〕の業務を併任するというのが最近はやっているけど、これはお金を配分する機構とお金を受け取る大学職員がつながっているというおかしな構図に感じるけれどどうだろうか???

なぜ公表? 施設名


インフルエンザA型が大流行です。先週の日曜日、休日当番診療日、朝8時から夜8時まで86人の受診、そのうち44人がインフルエンザA型、一人がB型。ワクチンを打っていない人が4割でした。院内の動線をわけて入り口、待合室、出口を変えててんやわんやの対応でしたよ。今日のNHKニュース、老健施設でインフルエンザが流行、二人の高齢者が死亡したと、施設名を公表していました。この季節、どんなに注意したって、ワクチンを打ったってインフルエンザには罹ります。高齢者はそれが原因で死亡することもよくあります。それがまるで、施設の落ち度であるかのようにNHK7時のニュースで施設名まで公表するのはいったいなぜなんでしょうか? 国民に何を伝えたいのでしょうか? 昨年末の11月〜12月ごろ、そろそろインフルエンザワクチン接種をしないといけない時期、ニュースもワイドショーもワクチンを打ちましょう、の話は全く出ませんでした。日曜日にインフルエンザA型に感染した小学生を連れてきたおかあさんに問診したところ、聖○病院の看護師をしているお母さんはワクチンを打ちました、息子は打っていません、と言う話。どうしてですか、と聞くと、お母さんは病院でただで打ってくれた、子どもは自費になるし、テレビでも言っていなかったからという、理由がおかしい。看護師は予防が必須だから打つ、お金がでるから、が理由ではないですよ、○隷の看護師さん、息子のワクチン接種は「任意」であって「義務」ではありませんが、自費でも打つのが「親の義務」ではないでしょうか? 数年前、年末12月にA型が流行したことがあり、その年はニュースやワイドショーで少し騒いだことがあってその年はワクチン接種率が高かったと報告されていました。マスコミの報道姿勢は、おもしろければいい、騒ぎはさらに大騒ぎになればいいというもの、NHKのニュースも同じです。これから2月〜3月にかけて、B型が流行します。B型はA型と比べて症状がわかりにくく、熱もあまり高くない、お腹の症状がでるといった感じです。ワクチン打っていない人は今からでも4価のワクチンをうったらいいと思いますがマスゴミはそんな警告は一切だしていません。がんにしても、生活習慣病にしても、インフルエンザなどの感染症にしても予防が一番、予防に勝る治療なしです。感染症が流行してから大騒ぎして、しっかり対応している施設名を公表してまるで魔女狩りのようなもり立て方、全くおかしいと思います。