アバスチンは今日も駄目だった


 二日目の午後:

抄録番号500:oral session (ER/HER2) 発表者は、Kathy Miller, E2100トライアル論文の著者です。再発乳がんではPFS、奏功割合は向上するがOSの延長はないということで相原先生には認知されていないのだが、今回、術後での検討が行なわれた。果たして、相原先生の認知なるか?
方法は、AC→weekly paclitaxel+placebo vs. 同ケモ+ケモ期間にアバスチン vs.同ケモ+ケモ期間中とケモ終了後10サイクル分のアバスチンプライマリーエンドポイントは、Invasive Disease Free Survival (局所の非浸潤癌再発だけ除く)結果は、4994名の登録したけど、IDFS、OSにさはなく相原先生の認知ならず。結論:乳がん術後のAC-PTXにアバスチンを加える意義はない。

抄録番号501: 次の演題は、ER陽性の再発がんで、パクリタキセル+アバスチンが効いている症例を対象にそのまま、パクリタキセル+アバスチンを続けるか、それともエキセメスタン+アバスチンに変更するかをけんとうしたしょぼい試験である。ER陽性の局所進行または再発乳がんで、16-24週間、一次治療のパクリタキセル+アバスチン治療でPDにならなかった症例を対象、方法は、パクリタキセル+アバスチンを継続する群と、エキセメスタンとアバスチンに切り替える群にランダム割り付け、PFSをプラマリーエンドポイント、OSをセカンダリーに置き198イベント(再発=死亡)を目標に実施したよ。結果は、113が登録され98症例を解析対象としたということだから質は低そうだ。ランダム割り付け後、6ヶ月の時点でのPFSは、P+BEVで70% (95 CI 54-81.5)、ET+BEVで54% (95% CI 38.5,-67.2(p=0.56)。つまりケモ続けた方が効果持続は長いということ。抄録の時点ではOS曲線はメディアンに至っていない。副作用は推して知るべし。症例数も少なすぎるので、こんな試験、やっても無駄だ。

 

 

 

 

 

コンプライアンスを考える


「コンプライアンス」ということばを考えましょう。英語で「compliance」、英辞郎には、次の5通りの意味があげられています。(1)〔規則などの〕順守、コンプライアンス、従おうとすること、(2)〔規則などへの〕適合性、準拠、整合性、(3)〔過度に相手に〕合わせること、従順であること、(4)《医》服薬順守、コンプライアンス◆患者が定められた服薬を守ること。(5)《物理》弾性コンプライアンス◆物体の変形のしやすさで、弾性率の逆数で表される。

私が最初に出会ったのは北大第一内科の研修医の頃に(5)の弾性コンプライアンスの意味です。呼吸機能検査で肺の柔らかさを表すときに、コンプライアンスが高い肺、低い肺、という使い方で使います。肺繊維症、間質性肺臓炎などは、肺が膨らみにくくなる、硬くなる、コンプライアンスが低くなる病気、一方肺気腫などは、コンプライアンスが低くなる病気と習いました。次に出会ったのが 4)の服薬順守、患者が定められた服薬を守ること、です。国立がんセンターレジデントのとき、UFTなどの経口剤を巡る議論の中でした。がんの告知もなく、胃がんの患者にたちの悪い胃潰瘍と言って処方しても、患者は内服すると具合が悪くなるので内服しないで、すべてゴミ箱に捨てている。このようにコンプライアンスが悪い状況で、年間1000億円を稼いでいる柏戸薬品はけしからーんという話になりました。この服薬状況を意味するコンプライアンスは、「医師が主人として一方的に定めた服薬スケジュールを患者が下僕として言われた通りに服薬する」という意味なのでよくない、ということで「adherence: アドヒアランス」を使いましょうということになりました。しかしこれも「医師が冷徹に定めた服薬スケジュールに患者が几帳面に執着して言われた通りに服薬する」というような意味でたいした違いはないように感じます。それで最近では、医師と患者が一致して協調して理解し合って薬剤の服薬をしっかりしていこう、ということで「concordance: コンコーダンス」を使ったらどう、ということになっていますが、なんか、意味が曖昧だなー・・・。

それで、最近うっとうしく感じていることに関する意味が(1)〔規則などの〕順守、コンプライアンス、従おうとすること、です。意味のある正しい規則ならば順守するのは当然ですが、くだらない、馬鹿げた、製薬業界の取り決めに対してコンプライアントである必要があるのか!!! というのが私の主張ですが最近ではこの主張もむなしくこだましています。詳しくは、「小粒コンプライアンスばばあ」の話を参照してください。

正義はどこに


韓国には「先生の日」というのがあって、子供たちが学校の先生に感謝するように、ということで、その日は、親も子も学校の先生に「つけとどけ」をするようになっているそうです。そんな風に子供のころから、袖の下、賄賂が当たり前、として育つから、正義がゆがめられ、行政も便宜をはかり、その結果、客船沈没、地下鉄衝突などの惨事が起きた、と言っても間違いではないと思います。中国だって、日本だってそのような文化を共有していますし、開拓時代のアメリカだって保安官が賄賂で動いたり、ソルジャーブルーという映画に出てくる兵士はみんな、先住民族を相手に悪の限りを尽くしたりと、そのような罪は、人間が共通して持つ弱さ(アダムとイヴの原罪)に根ざしているのでしょう。野場崩壊の原因となったディオ番の臨床試験もどきのデータねつ造は、科学を知らない医師が透明性を確保するという科学の基本的手順を怠ったのが問題であり、科学を知らないのは単なる勉強不足、臨床試験の「り」の字も知らない教徒不律とか自警とかの医師が不勉強ゆえの「無知の涙」、無垢なおぼっちゃんたちが知らなくてやったことを、したたかな野場社はディオ番が優れていると宣伝に使って大もうけしたという大罪、「正義(justice)」を欠いた行為と言う事で責任を追求されているのです。多σの問題も、売らんがための臨床試験もどきの検体の運搬に「プロパー」が関与した、というところに「不正」が指摘されているようですが、そんなのは日常茶飯事だよ、不正といえば不正かもしれないけど罪っちゃあ罪だけど、小罪だよね、医師会に持って行く検診のフィルムの運搬を「プロパー」にやらせるのがあたり前の医師の社会、何が不正なのか、わからなくなっちゃっているようです。野場社といえば、乳がんでの染他の術前治療の臨床試験もどきでも、データ解析にノバうさぎが関与したとか、試験用にと提供された薬剤でもって保険請求がなされたりなど、大中小、すべてのサイズを取り揃えた罪の噂が絶えません。過日、講演のスライドはすべて事前校閲を完全に義務づけますと、社長以下幹部が一新され、これからコンプライアンス向上を目指しますと新生野場社が通告してきました。講演スライドの内容は、私の「知の統合」であって、適応外の使用を云々する話ではないだろう、そんなこと言うんだったら、あんたんところの講演は断る!! お前に言われたくないね!!と、Ph社に次いで野馬社とも袂をわかつ結果とあいなり候事、致し方なく候ことなれど、そんなくだらない講演だったら営業の若造くんがやるだれも聞いていない「製品説明」で十分だっちゅうの。