相変わらずの不適切


乳癌の領域では、シャンシャン大会とか、メーカーお抱えのよいしょの会が未だに横行しています。それもひとえに乳癌学会総会が参加者のニーズを満たしていないからだと思います。来年はそこに小さいけれど一石を投じたいと、日夜企画、計画、に励んでいます。昨日、N社のMRクンが、10月の終わりに若手を中心にしたシャンシャン大会を開催しますので一応、お耳に入れておきますと持ってきた。見ると、土日の二日間かけての若手洗脳シャンシャン大会である。ああ、嘆かわしくも嘆かわしく、情けなくもなさけなし。主催者は私が信じてきたO先生であるが、これでは信頼も失われるというものだ。この時代に一社お抱えで泊りがけで、一社製品の刷り込み洗脳大会をいったいどんな神経で計画するのか、わたしはとても不適切だと思う。

新幹線込み合っております


今日は東京勤務、杏雲堂外来です。朝、6時54分浜松発の新幹線に乗って出勤ですが、車中は超満員! 東京ディズニーリゾートに行く人ばかりのようで、隣も前も後ろも旅行ガイドを見ながら楽しそう。とうちゃんたちはつかれているようですがかあちゃんとお子達は元気そう。がんばれ日本、チョウセンやシナに負けるな!!

乳癌学会ホームページ


こんなセミナーを僕たちは学びたい
熱心に議論する地元企画委員会のメンバーたち

第21回乳癌学会のHPができています。ご覧ください。 http://www.med-gakkai.org/21jbcs/
さて、今日も夜遅くまで乳癌学会の打ち合わせがありました。地元の企画委員会のメンバーで主たる3会場(治療、診断、看護)でのセッション企画案や、モーニングセミナー(三日間で約10題)、ランチョンセミナー(三日間で約25題)、イブニングセミナー(三日間で約15題)の基本企画を策定しました。今までの学会でもモーニング、ランチョン、イブニングの内容の決め方は、それぞれに工夫を凝らしていましたが、今回はまず、私たち企画委員会側が、こんなセミナーを学びたいな、という案を立て、それを9月7日の企業説明会で提示し、スポンサーとして手を挙げてくれる企業とさらに詳細を詰める、という方法を取ることにしました。もちろん、企業各社から、こんなセミナーはどうだろうか、という提案があれは、それを出してもらい企画委員会のメンバーで揉むことにします。情報、知識、理解の共有にためにも、各種のスポンサードセミナーが有意義なものとなるように準備をすすめたいと思います。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

ガイドラインからの旅立ち


乳がん看護学会のニュースレターに以下の文章を投稿したところ、岩田広治先生の目にとまって、あれ、いい文章だね、と言われましたので、夏枯れの昨今、転載いたしましょう。
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来年の乳癌学会総会は、6月27日~29日の三日間、浜松市で開催します。看護のセッションは第三会場で三日間、開催します。多数の皆さんのご参加をお待ちしています。さて、最近、世の中がなんとなく住みにくくなっていると思いませんか。細かな規約とか、ガイドラインとか、手順書とか、私たちの仕事を束縛するようなルールがあまりに多すぎて息が詰まるように感じます。こういう私も乳癌診療ガイドラインや、取扱い規約を作る立場にあります。では、自分でガイドラインを作りながら、なぜ、そんなことを言うのでしょうか? その答えは、ガイドラインは、階段の手すりのようなもの、ということです。足元がおぼつかない場合には、手すりにつかまればいいですが、自分の足でどんどんと歩ける人は、利用する必要はないのと同じです。先日の乳癌学会でこんな発表がありました。「ドセタキセルとシクロフォスファミドを併用したTC療法は、中程度の催吐作用(吐き気をもよおさせる作用)があり、制吐剤のガイドラインには、グラニセトロン+デカドロンを併用することが推奨されているので、併用したら急性期悪心・嘔吐は100%おさえることができました。」というものです。私が「100%抑えることができるのなら、グラニセトロンは使用しなくてもいい、ということは言えませんか? ドセタキセルでは、むくみ予防のためデカドロンは併用するわけですし、グラニセトロンによる便秘も懸念されることから、グラニセトロンの必要性について、お考えを聞かせてください。」と質問すると演者は、きょとんとした顔で「ガイドラインで推奨されているのに、使わなくてもいいんでしょうか?」とお答えになりました。そういう姿勢がどうも息の詰まる原因で、もっと自分の頭を使って工夫しようよ、と思ってしまうわけです。いくら優れたガイドラインでも、完璧というものはありません。毎日の診療や看護の経験を通じて蓄積される智恵に基づいて、ガイドラインから少しづつ手を離して独り立ちする、つまり、必要のないことは割愛していく、という自発的な工夫も必要だと思います。自発的な工夫をする際も、工夫の結果を広く普及できるようにすることが大切です。自分だけで、グラニセトロンは割愛できるんだよね、とオレ流を自慢するのではなく、「TCにはグラニセトロンは不要」という仮説を検証することが重要なのです。仮説を検証する、という表現が出てくるとたちどころに、引いてしまう人がいるでしょう。でも難しく考える必要はありません。「TCの患者は、確かにグラニセトロンを使って吐き気はないけど、便秘で苦しむ患者が結構いる。だったら、グラニセトロンなしで治療した場合、吐き気はどれぐらいの頻度、程度なのだろうか?」という臨床の現場にいるものだけが、疑問に感じることのできる問題をしっかりと確かめていくのです。グラニセトロンを使用しないでも全く吐き気のなかった一例を経験したことが、上記の疑問を持つきっかけになることはあります。注意すべきは、しかし、もし、その患者が、たまたま、めっぽう酒がつよく、しかも、妊娠した時のつわりが全くなかった人であったら、アドリアマイシンでも、シスプラチンでも、吐き気は出ないかもしれません。このような「たまたま」を偶然と呼びます。偶然の反対は「必然」です。また、デカドロンが入っているから大丈夫ですよ、と言われると、ああ、吐き気は大丈夫なんだ、と思ってしまう「プラセボ効果」ということもあり得ましょう。偶然、バイアス、思い込み、プラセボ効果などが、入り込まないようにするための最も確実な研究方法は、ランダム化比較試験です。看護の課題をランダム化比較試験で検証したい、そのためのプロトコールの書き方を学びたい、という方、来年、浜松の学会でお教えしますね。