Bird/Bat Score


Bird/Bat Scoreの有用性の検討
 
ブログ先週号で掲載した「鳥なき里のコウモリ」話は、予想以上の反響がありました。我が地域はどうなんでしょう、というお尋ねが最も多かったのですが、お叱り、お褒めもありました。
鳥 = 本物、専門家、コウモリ = 偽物、非専門家なのに専門家として振る舞う者、というくくりは、確かにわかりやすく、人々の心を捉えたのだろうと思います。これを、もう少し具体的にするために、鳥およびこうもりの数、質を根拠に、AA、A、B、C、Dと、概念的ではありますが、乳癌診療について、地域の分類を考えてみました。
 
AA: 領域毎に腫瘍内科医が配置されており、薬物療法は、すべて腫瘍内科医が担当する地域、あるいは、病院。米国のがん専門病院では、このような形が当たり前です。乳癌、肺癌、婦人科癌、頭頚部癌、消化器癌、などに特化した腫瘍内科専門家が配置されているのは、日本では、国立がんセンター、癌研など、極めて限られた医療機関です。がんセンターと名の付く地域のがん専門病院では、AAスコアをみたす病院はありません。
 
A: 複数のがん疾患を担当する腫瘍内科医が配置されており、がんの薬物療法の基本方針は、腫瘍内科医が決定し、治療の実際のおおかたは、腫瘍内科医が行いますが、外科医、泌尿器科医、婦人科医なども、薬物療法に携わる病院、地域。地域がんセンターでも、Aスコアをみたす施設は、九州がんセンター、埼玉県立がんセンター、栃木県立がんセンター、新潟県立がんセンターなど、極一部です。
 
B: 腫瘍内科医が配置されていないが、がんの薬物療法は、外科、外科系医師が担当している病院、地域。乳癌を例にとれば、乳腺外科、あるいは乳腺科という診療科の中で、外科医が薬物療法に専門的に取組んでいる地域、病院。外科医であっても、手術以外に薬物療法も十分にトレーニングを積んでいるので、まずまず、標準的なアプローチができるが、難解な場合や、こみいった場合には、つい、こうもりの足がちらつく。具体的には、「では、切除しましょう。」となる。
 
C: 腫瘍内科医、乳腺外科医、乳腺科医は配置されておらず、一般消化器外科医が、がんの薬物療法を担当している病院、地域。地方の基幹病院などでは、5人から10人いる外科医のなかで、乳癌診療の責任番として、一般消化器外科医のなかで、かなり乳癌薬物療法の知識と経験を有する医師がおり、通常の薬物療法に関する判断と実践は可能だが、複数の薬剤を使い切った後での治療に関するソリューションを提供するなどの、高度の助言はできない。
 
D; 腫瘍内科医、乳腺外科医、乳腺科医、乳癌診療責任番が配置されておらず、複数の一般消化器外科医が、それぞれ独自の考えで乳癌診療を実践している地域、病院。これぞ、まさに鳥なき里のコウモリなり~! いっか~ん!! 薬物療法も当然、標準治療とは程遠い。
 
Bird/Bat の比率は高いほうがいいがAAスコアをみたすようなところでは鳥がやや小粒で頼りない場合もある。とくに、羽化したての雛が店番をやっていることがあるので要注意。こっわ~い、きゃわい~い。