10月5日の僕のひとりごとで腫瘍内科医から患者への注文12か条に触れました。数人の患者さんから、「12か条全部守っていますよ」という反応を頂きました。また、もっと詳しく教えてほしいという要望もありました。なので少し詳しく注文の中身をお伝えしたいと思います。むかつく内容もあるかもしれませんが炎上させないでください。では、きょうは第1条「できるときにできることに立ち向かおう」です。
がんと診断がついて最初に行う治療を初期治療と呼びます。一方、初期治療が終了した後、他の臓器に転移が出た、もともとあったところに再発した、という場合を再発後治療と言います。腫瘍内科医の注文ですから、ここで言う治療とは、初期治療も再発後治療も主に薬物療法を指しますが、決して手術や放射線治療を否定するものではありません。初期治療の目標は「治癒、すなわち、病気を治してしまおう」ということです。ここで多くの人が勘違いしていることは、手術をすれば病気が治るということです。手術で治る場合もあります。それは「非・浸潤がん」の場合でしょう。しかし、浸潤がん、つまり、まわりのリンパ管や毛細血管の近くまでがんがにじみ出ていって管のなかに入り込み、さらに、その先に拡がっていくような場合には、手術だけで治まるような状況ではないのです。明らかでも明らかでなくても全身に転移が広がっていると考えて治療を計画しなくてはいけないのです。そんな場合、全身に効果の及ぶ治療をしなくては病気を治してしまうことはできないのです。全身に効果の及ぶ治療の中には、脱毛とか吐き気とか下痢とか手足の痺れとか皮膚の傷みなど、不愉快で不都合な副作用を伴う治療がありますが、このような治療を受ければ治る、受けなければ治らない、という状況で、副作用がきついからといって治療受けないという選択肢は正しいでしょうか? できるときにできることをしない、ということはあるでしょうか? 初期治療の目的は治癒であってそのためには全身に及んでいる微小転移を駆除しなくてはなりません。