焦点はどこに?


2013年の乳癌学会では、情報・知識・理解を共有というテーマに焦点を当て、主たる3会場に絞り原則プレナリーセッション形式とし、よい一般演題を厳選し最大会場で2000人の聴衆が聴く形とし、ポスターディスカッションは、ディスカッサントの腕前、知恵が発揮されるような構成にしました。海外演者は4人に厳選しmeet the Professor形として、将来性のある研究者が海外留学の足がかりとなるようにface to face の時間を持ってもらえるようにしました。名誉会員の先生方には日中の観光ツアー、夜のディナーパーティーを企画し十分にお楽しみ頂き、現役世代との親睦を深めることができました。いずれの切り口でも、情報・知識・理解の共有が達成されたのでした。さて、今年2015年は・・・と、みると、厳選講演はあるもののパラレルセッションで、はたしてどれだけの聴衆が集まるのやら? さて、無数の海外演者を呼んでいるけど、はたして、どれだけの交流、情報交換が、できるのやら? なにを目指しているのかと、テーマは、ひとりはみんなのために、みんなはひとりとのために、チーム医療を考える? みたいは、どうもフォーカスの絞り切れていないような、ふわふわとした、総花的な、八方美人は八方ブス、のような、予想はしていたものの、あまりにも焦点深度の浅い構成ですが、はたして、どのような味付けになるのか、まあ、良ーく勉強してみましょう。

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プレナリーセッションの重み


今年はメラノーマに対するニボルマブとイピリムマブのランダム化比較試験、小児がん治療のサバイバーの長期フォローアップ研究、頭頸部扁平上皮がんにたいする頚部リンパ節郭清を最初からやる場合とリンパ節転移が出てからやる場合とのランダム化比較試験、脳転移に対して低位脳照射(ガンマナイフなど)に全脳照射を加えるか、加えないか、のランダム化比較試験の4演題、内容も充実していて疾患領域、地域性のバランスも良い選択でした。ランダム化比較試験が臨床研究でもっとも重視されるのは、バイアス、偶然を排除し、真実をあぶり出せるからです。4演題のうち小児がんサバイバーの追跡研究は、この時点ではランダム化比較という手法では検証できない臨床的命題を対象としていますが、他の3題は、臨床的平衡がなりたつ臨床的命題を対象としており、同意取得など、かなりの困難さを伴うものですが、見事にやり遂げたという感じです。現実の厳しさを知らないで育ったぼんぼんのように、ランダム化比較試験の意義や困難さも知らず、与えられた宿題をこなしただけで、いいこいいこ、と褒められて有頂天になっているようでは話になりません。もっとも宿題すらきちんとできないようでは困りますけどね。最初の演題は、今、もっともホットなホットモットな「Immune Checkpoint Blockade」がテーマであり、10社以上が関連薬剤の開発にしのぎを削っており、日本からも多数の製薬企業の開発担当者が最前列近くに陣取っておりました。彼らは、商売に結びつく自らの仕事、会社の死活、自らの将来、家族の生活がかかっているから必死で、会場がオープンするや、バーゲン百貨店玄関の破廉恥おばさんさながら我先に、と席を陣取っていました。また、最初の演題が終わると、大潮が引くようにどーっと会場を出て行き、約1/3の席が空きました。彼らにとっては、それ以降の演題は全く興味がないのですからそれも仕方ありません。オンコロジーを広く、深く学ぼうという姿勢は彼らには必要ないのであり、それで当然です。しかし、4演題の最後にDr.Leonard SaltzがPerspectives on Valueというタイトルで、要するに「薬が高すぎる!! どうにかしなくては」というレビューがありました。この問題は、アバスチン問題で、大間のマグロとマクドナルドハンバーガー、あるいはメルセデスベンツSクラスとスズキスイフトの比較を例にとり「値頃感(ねごろかん)」をテーマに、私もさんざん主張してきていますが、ASCOでも同じ切り口での問題提起がなされました。しかし、企業の開発担当者の中には「薬価は私たちには関係のない話、管轄外ですよ」と言い切るぼんくらちゃんもいるぐらいで、なかなか現実の厳しい問題に目がむいていないようでした。今回は、乳がんも肺がんもプレナリーセッションには取り上げれていませんので、カピパラ・ホズミン・ジュニアは部屋で自習していたそうです。それもいいかもしれませんが、学会の目玉であるプレナリーセッション、25年間、ASCOで学んできて、いつも強い感動を覚えます。

ASCO乳がんで感じたこと


乳がんの口頭発表のセッション二つ(ER陽性HER2陽性 と TNBC/LOCAL THERAPY)が同じ日の午前と午後の割り当てられたのは25年でもはじめてでしたが、他の日には泌尿器科系とか消化器系とかのセッションを新鮮な感覚で聴講できたのでそれはそれで良かったかな、と。内容は、しかし、全体的には輝きは乏しかったと思う。NSABPB35(NRG Oncology)のDCIS手術後の再発防止効果でTAM対アナストロゾールの話も副作用まできっちりと見ていて緻密だけど、昔のNSABPのダイナミックなインパクトが感じられなかった。CALGB40503(Alliance)のLetrozole vs. Letrozole+Avastinの話は、例によってAvastinを加えてもPFSは有意に伸びるけどOSは変わらないというもので、AVADO試験などのホルモン療法版で、一般臨床で積極的に使おうとは思わないけど。。。PALPMA3もパルボシクリブを加えると激しくPFSは伸びるし、副作用もそれほど激しくないという結果。でもさーOSはどうなりそうなの? BORELO2のようにアフィニトールを加えたらPFSは延長したけどOSは全然伸びず、口内炎が強くてそれが研究対象となるほどのインパクトだけはある、といようなこともあったし。。 術後患者6000人ほどを対象として、飲み薬「クロドロネート」、「イバンドロネート」これらは飲み薬、それとゾレドロン酸、これは点滴、の三種類をランダムに割り付けて、PFSや副作用はどうでしたか、という検討。結果は効果(PFS、OS)は差がない、差がないというか、そもそもABSG12 も長期のフォローアップのデータをみるとゾレドロン酸の効果はだんだん薄れて有意差はなくなっているので、差がでないのだろう。顎骨壊死は、ゾレドロン酸がやや高い、ということ。骨密度などは調べていないようで、話に出ませんでいしたから話になりません。患者様々のプレファランスを治療開始前と終了後の2回伺ったところ、飲み薬がいーい!ということで、やはり飲み薬がいいでしょう、という結論でしたしかし、昔で言うコンプライアンス、今でいうアドヒアランスはどうなのよ、ということで、それなら、次の演題のマイケルグナントの半年に一度のデノスマブの方が、確実に骨粗鬆症は抑制できるので、いいのではないでしょうか?という印象です。それで、次のABCSG18試験は、例のABCSG12で検討したように、Bone-Modifying agentをゾレドロン酸からデノスマブに変えて、閉経前を閉経後に変えて、ホルモン療法の比較は(アナストロゾールで死亡率が高かったというややこしい結果がでたのでかどうかわかりませんが)やらないで、エンドポイントは、骨粗鬆症およびそれによる圧迫骨折をプライマリーにおき、セカンダリーエンドポイントに、PFSとOSをいれています。結果は、デノスマブ60mgを半年に1回注射すると、骨粗鬆症も骨折も大幅に減った、ということで、ポジティブリザルトだ!と、マイケル・はったり・グナントは胸をはって頭を光らせていました。しかーし、そもそも、もそもそ、デノスマブ60mg半年に1回注射は「プレリア」という商品名で日本でも承認されている「検証された骨粗鬆症予防・治療薬」ですから、それでその通りの結果が出た、のは当たりまえです。問題は、ついでに見て、二匹目の「駒形どぜう」をねらって、60mg半年に一回投与で、運良く差がでれば、また、あの調子ではったり・おおいばりをされてもかなわんと、質問したのでした。要は、どうしてその投与量を選んだのか、その根拠はなんなの、投与量検討のために、2容量ぐらい設定したらどうなの、と思ってきいたわけですが、納得のいく答えはありませんでした。そんなこんなでスペースがなくなったので相良やっちゃんの活躍は、みんなが褒めまくっているので、それに水をさすようなことはいいませんが、やはり、科学的には、おおざっぱデータであるSEERプログラムを使って、レトロスペクティブに検討したものでは、明日から日常臨床を変えるものではないとモニカモロウも言っていました。あれだけのデータを良い指導者についてきちんとまとめたことは、パブリックヘルスの勉強としてはこれ以上のものはないでしょう。問題はその経験を用いて、これから、日本でどれほどの臨床試験臨床研究、そして科学的臨床医学の実践ができるか、ということですね。また、ついでに言わせてもらお、やはり発音がわるい。THの発音が全部Zになっています Sの発音がほとんどSHになっています、すわるのsitを、シット(SHIT)というとそれは、畜生!!とかうんちとかおしっこのことですから、ちゃんとSとSHは注意して発音する癖をつけなくてはいけません。SEERもSHEERに聞こえました。RとLの区別はまったくついていません・・・。しかし、これらは、練習すれば確実に修正できるのでがんばらなければいけませんよ。1日1TEDを帰国後も続けるなど、継続は力です。なんとなく、みんなで、最高、すばらしいと、言うのも乳がん学会らしくていいけど、EBMと同じで、Critical Apraisal (徹底的吟味)が必要なんですよ、本当に友達のためを思うのならね!!!! ということで後、プレナリーセッションの話を近いうちに載せます。