ありがとうジャニーズ事務所


ジャニーズ事務所から浜松オンコロジーセンター宛に医療用マスクなどが段ボール一杯送られてきました。厚く御礼申し上げます。当院でも、発熱や体調不良で新型コロナウイルス感染心配症候群の方々が受診されます。幸い心配だけで感染者はいませんが、それでもPPE(Personal Protective Equipment:個人防御用具)は不可欠です。あべのますくよりもずっとはやい贈り物です。あべのますくと違い、鼻から顎まで、心地よく覆うことができます。元気がでます、ありがとう!! 天国のジャニーさん

まるで落語だね


ホームセンターで買い物して帰ろうと外に出たところ土砂降りの雨。そんな雨の中で小学生低学年ぐらいの女の子が大泣きしていました。お母さんが近くで「どうしてマスク持ってこなかったの 馬鹿だね!! ウイルス吸ったら死んじゃうよ」と、叫んでいます。女の子はさらにパニックになり、自分の鼻と口を小さな手で押さえようとしています。すると、なんていう事でしょう、お父さんが走ってきて、女の子の鼻と口を後ろから押さえつけたではありませんか!!! すぐに、おかあさんが車から戻ってきて女の子にマスクをつけ、家族でホームセンターに入っていったからよかったものの、私はその状況をずーっと唖然として見ておりました。密閉・密集・密接状況では感染者からのしわぶき、くしゃみ、おしゃべりで吹き出されるエアロゾルからCOVID-19ウイルスを吸い込む可能性があります。しかし、屋外で、適度に風があって、そんなに混み合っていないところで、ウイルス吸うなんてこと、死んじゃうなんてことは絶対にない、と断言できます。どうも、ワイドショーなどが、中途半端な、間違った情報で、視聴者の恐怖心をあおっているのが原因でしょう。また、国民のリテラシーの欠如、つまり、物理とか、化学とか、生物とか、自然科学の知識がこんなにも乏しいのか、こんな落語みたいな話、あるんだなー、と思いました。今日の感想でした。

実態不明の「免疫力」


新型コロナウイルス感染(COVID-19)蔓延に際して、マスコミなどでは、やたらと免疫力という単語が飛び交ってます。「乳癌手術・放射線照射後の女性が免疫力が低下したのでCOVID-19に感染した」という報道にはあきれます。術後の放射線照射では感染抵抗力が低下するような免疫細胞(好中球、リンパ球、単球など)数の変化は通常認められず、放射線肺臓炎が見過ごされていた状態でCOVID-19肺炎が合併したと考えるのが妥当ではないか、と思います。また、抗がん剤治療では、好中球は減少して細菌感染に対する抵抗力は低下する可能性はあるけれどウイルスに対して抵抗力が低下する、ということはありません。また、抗がん剤治療には、好中球減少を防ぐ長期間効果持続型の好中球増多因子(ジーラスタ)を使いますからいちいち好中球数を測定しないで安心、安全な抗がん剤治療を行う事ができます。

免疫力という耳障りのよい単語は、一人歩きして、ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品をたべると「免疫力」が増強する、とかいう根拠の乏しい特集がやたらと目につきます。免疫力という単語は、精神力、と同じぐらい、実態不明だと思います。個々の食品がいい、わるい、という話ではなく、バランス良く多くの食材を取り入れた豊かな食事を楽しむことが大切であろうか、と思います。

思い違いと勘違い


抗がん剤治療終了後の患者で連携パスに従ってフォローしている患者の一人から電話があり「こんなコロナウイルスで大変な時におたくは何を考えているんだ。外出自粛というのに受診しろというのか!!」という怒りの論調。当方からの返事は「なにか心配なことがあればお越し下さい、お大事に・・・」 別に無理に来なさいとは言ってはいないのですよ。あなたのためを思って予約枠をとっているだけですからね。お気に召すままどうぞ、どうぞ。

耳にたこができるほど聞かされた話は間違いだった〜 の巻


2025年を過ぎると「団塊の世代」が後期高齢者となり国民総医療費がさらに膨らむ。また国家予算は100兆円を超え、その三分の一は医療費などの社会保障費である。そのため、とにかく、医療費を抑えて抑えて抑え続けるため「二次医療圏(近在の市町村を束ねた区域)毎の総ベッド数を減らし、入院日数を短くしなさい」という横暴とも思える行政指導が行われてきました。最近では、当事者にも知らされていない病院統廃合の提案が全国の病院に関して厚労省から突然発出されました。似たような病院(例:遠州病院と浜松労災病院)はまとめて一つにしなさい、患者数が少ない病院(例:湖西市立病院)は廃止しなさい、ということで全国の多くの病院でざわめきが起こりました。また、「診療所は専門的な医療は行わず、大きな病院に患者を紹介しなさい」といった、患者にとって不便に、不便になるような医療計画が推進されてきました。街角がん診療を目指す我が社団は、風に立つライオンの如く、理不尽な「大病院崇拝」に立ち向かっていますが、もはやドンキホーテ(注:激安の殿堂ではなく、どんなに不運が襲い掛かり、旅先でボコボコに叩きのめされようとも、光を失わずに冒険、挑戦を続ける騎士ドン・キホーテのことです)のような状態かも知れません。入院期間の短縮圧力も強烈です。現在の保険診療報酬体系は、病院の全患者の平均入院日数が規準を超えて長くなると、その病院の収入が大幅に減るような仕組みになっています。例えば、がん性胸膜炎になって息が苦しい、という患者の場合、一時的に胸水を抜くことは診療所でも実施可能ですが、くだを入れて数日間胸水を抜いてタルクなどを胸腔に入れる胸膜癒着術といった処置は入院しないとできません。その処置が一段落して、では、引き続き抗がん剤治療を、といった段取りは、「入院期間が長引くから一旦、退院させ、後日、再度入院という形」にしなくては、とち凹医長先生が認めない、ということになっています。平均入院期間が長くなると、病院の収入が下がるからです。私たちは、そのような「医療費削減のためベッド数を減らす」とか「病院あたりの医療収益を増やすため入院期間は短くする」といった厚生労働省の施策と、その施策の中で如何にして医療収益を上げるかという病院の手順について、それが常識だから従いなさい、という感じで耳にたこができる程、聞かされてきたことです。

そんな状況が長い間続き、日本の医療は極度に劣化してしまいました。とくに地域の医療は住民の安心、安全を守ることとは反対の方向、つまり不便でいじわるで不安を感じる方向に向かってきました。ところがです、今般のCOVID-19 pandemicに直面し、地域医療はもろくも崩壊しています。市民は不安におののいているのです。医療崩壊が深刻化するなか、その元凶は厚生労働省の誤った地域医療計画にあるということを、誰が指摘し、誰が反省するのでしょうか。心苦しい毎日です。

日々の鍛錬


小さい子供が、何かやろうとしてうまくできない時、ママが悪い、と癇癪(かんしゃく)を起こすことがよくあります。そんなとき、「ママは悪くないの!! 自分でやってごらん」と見守って自分でやらせてうまくいったときに褒めてあげると子供は成長すると思います。しかし、うまくいかない時は、何をやってもうまくいかない時がある、そんな時は、誰かをせめるのではなく、その現実を冷静に受け入れること、そんな精神構造を成長の過程で形成できたらどんなにか心の平穏が得られるものでしょう。その助けになるものとしてしばしば引用する「ラインホルド・ニーバーの祈り」があります。その原文は『God、grant me the serenity to accept the things I cannot change, the courage to change the things I can, and the wisdom to distinguish the one from the other. – Niebuhr, Reinhold』、訳は「神よ、我に与えたまえ。自分の力で変えられないものを受け入れる平静な心と、変えられるものを変える勇気と、そしてこの両者、すなわち変えられないものと変えられるものとを識別する知恵を。」というものです。

昨日開催された看護師ネットカンファレンスで、提示された症例に学んだことです。その患者さんは、うまくいかない現実に直面し、どうにもこうにもならない状況でもがき苦しみました。

どんな治療をしてもよい効果があらわれず、医師も看護師も一生懸命に誠実に説明し、時間をかけて寄り添い、支え続けても、理解してもらえず、結局、医師がまるでサンドバッグのようにぼこぼこに罵られ、蔑まれて、あげくの果てに「ひどい目にあった。どうしてあんな薬を出したのか。何回こんなことされるのか。家族に「全然よくならないし、変な薬出されるし、医者を変えたほうがいい」と言われ、法外な値段で自家ワクチンとやらをやっている医療機関に移っていった患者さん。その患者さんの精神構造に踏み込むところまでは行きませんでしたが、私たち医療者は、日々、こんな状況で悩みながらもどうにか解決策を、光明を見出したいともがいているのです。

アブラキサンの投与方法と疾患


大鵬に聞く

アブラキサンは「より安全なパクリタキセルである」ことは間違いありません。自分の姉をはじめとしてパクリタキセルのアナフィラキシー反応で厳しい局面を繰り返した経験からアブラキサンの登場は朗報でした。また、癌種に関係なくパクリタキセルもアブラキサンも週1回投与の方が3週1回投与法よりも薬剤特性を正しく引き出せる方法であることは肺がん、乳がん、卵巣がんなどで検証されています。乳がんでは「Dose Dense Chemotheray」の有用性がmeta-analysisでも検証されています(The Lancet 2019;393:1440-52)。ですから、アブラキサンの添付文書にB法として記載してある週1回の投与方法 (:通常、成人にはパクリタキセルとして、 1 日 1 回100mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、 少な 2くとも 6 日間休薬する。週 1 回投与を 3 週間連続し、これを 1 コースとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。)は、何も非小細胞肺がんに限定して推奨する投与方法ではないはずです。今般、乳がんを対象にテセントリクとの併用において使用されるアブラキサンはこのB法ですから、乳がんでアブラキサンを使用する場合には週1回の投与方法が既に海外では標準とされているわけです。疾患毎に認められる投与方法が異なる、ということが果たして正しいことでしょうか? また、週1回投与方法が優れているパクリタキセルを、より安全な剤形であるアブラキサンとして投与することを禁じて、パクリタキセル裸剤形で投与させる、あるいは、効果が減弱する3週1回投与方法をアブラキサンで強制することは果たしてサイエンスとしてレギュラトリーとして倫理として正しいことでしょうか。大鵬の高木さん、教えて下さい。