小さい子供が、何かやろうとしてうまくできない時、ママが悪い、と癇癪(かんしゃく)を起こすことがよくあります。そんなとき、「ママは悪くないの!! 自分でやってごらん」と見守って自分でやらせてうまくいったときに褒めてあげると子供は成長すると思います。しかし、うまくいかない時は、何をやってもうまくいかない時がある、そんな時は、誰かをせめるのではなく、その現実を冷静に受け入れること、そんな精神構造を成長の過程で形成できたらどんなにか心の平穏が得られるものでしょう。その助けになるものとしてしばしば引用する「ラインホルド・ニーバーの祈り」があります。その原文は『God、grant me the serenity to accept the things I cannot change, the courage to change the things I can, and the wisdom to distinguish the one from the other. – Niebuhr, Reinhold』、訳は「神よ、我に与えたまえ。自分の力で変えられないものを受け入れる平静な心と、変えられるものを変える勇気と、そしてこの両者、すなわち変えられないものと変えられるものとを識別する知恵を。」というものです。
昨日開催された看護師ネットカンファレンスで、提示された症例に学んだことです。その患者さんは、うまくいかない現実に直面し、どうにもこうにもならない状況でもがき苦しみました。
どんな治療をしてもよい効果があらわれず、医師も看護師も一生懸命に誠実に説明し、時間をかけて寄り添い、支え続けても、理解してもらえず、結局、医師がまるでサンドバッグのようにぼこぼこに罵られ、蔑まれて、あげくの果てに「ひどい目にあった。どうしてあんな薬を出したのか。何回こんなことされるのか。家族に「全然よくならないし、変な薬出されるし、医者を変えたほうがいい」と言われ、法外な値段で自家ワクチンとやらをやっている医療機関に移っていった患者さん。その患者さんの精神構造に踏み込むところまでは行きませんでしたが、私たち医療者は、日々、こんな状況で悩みながらもどうにか解決策を、光明を見出したいともがいているのです。