ST.Gallen投稿しました!


恐るべし、Goldhirsch! St.Gallen 2007 Meeting Highlight論文が、昨日、Annals of Oncologyに早くも投稿されました。パネリスト間で2回の原稿チェックが行われ、学会終了後、わずか1ヶ月での投稿です。私が、Goldhirschにしつこくしつこく提案した、「24の箱」の表も、APPENDIXとして採用されました!!! どんなもんだい!!
最終投稿原稿は浜松オンコロジーセンターホームページに載せておきます。どこよりも早く、誰よりも早くSt.Gallen 2007を勉強して下さい。これで、私は連休はゆっくりと休めます、と思いきや、乳癌学会ガイドラインの最終チェックをしなければ・・・、とほほのほ。貧乏暇なし。でも遊んでいる暇はあるもん。

臨床EBM研究会 第12回公開セミナー


演劇部第2回公演「ある日医局で、そして外来で」から始まった臨床EBM研究会第12回公開セミナーin 浜松、劇団員の林直輝(林医師役、普段通りのそのまんま)、森玄(外科医石頭金策役、勤務先病院外科医を彷彿)、猿丸修平(60才猿丸修子役、妙にはまり役)そして、中外MR役のアストラゼネカ田村MR,アストラゼネカMR役の中外まじめMRの、よく練られたシナリオと自然な演技に、65名の参加者は一気に引き込まれました。その次は、勝俣範之先生の司会で「みんなで立てようPECO」セッション。参加者は、みじかな話題から患者の臨床的問題まで、なんでもかんでもPECOで表現することができるようになりEBMのステップ1(問題の定型化)を学びました。スポンサードセッションでは、ユサコプレゼンツ「エンドノートバージョン10」の使い方のデモ、コネクト機能を使ってPUBMEDにアクセスし、論文検索、論文抄録ダウンロード、JCOなどのホームページにとんで、PDFを取り込んだりと、EBMのステップ2「文献を検索する」が、これを使えば自由自在です。私はエンドノートマック版のバージョン2とか3ぐらいから使っているヘビーユーザーですが、引用文献が一瞬で論文の最後に現れる、あの魔法のようなフォーマットをみて感激した遠い昔の感激は今でも忘れません。途中、ジャパナイザーというのがついて、日本語が扱えた時期もありましたが、その後、ウィンドウズに乗り換えたら日本語が扱えなくなりました。マックから移したライブラリの中に、何の論文なのかもわからない化け文字で残っている日本語文献が今でもいくつかあります。バージョン10では、日本語も自由自在に扱えます。EBMerにとっては、エンドノートは必須アイテムですね。ステップ3「論文の批判的吟味、徹底的読みこなし」からは、スモールグループに分かれての勉強です。上塚芳郎先生、井上忠夫先生、中村清吾先生、矢形寛先生、猿丸修平先生、勝俣範之先生、向井博文先生、河野勤先生、林直輝先生、渡部一宏先生、そして渡辺亨がチューターとして、約10人づつの6グループで、「猿丸修子さんにアナストロールを処方するか、レトロゾールを処方するか、それともタモキシフェンでいくか」、それと「スタチンのがん予防効果をどう考えるか」をとことん学びました。うな炭亭のウナギを食べながらの二日目のランチョンディスカッションでは、6グループがそれぞれのとらわれない自由な形式で、討議内容を発表、のびのびとした雰囲気で、二日間の学びを終えたのでした。思い返せば1999年、第1回臨床EBM研究会公開セミナーを中村清吾先生と共に、聖路加国際病院、国立がんセンターのコラボで旗揚げしました。厚生省(当時)からも担当者が参加し、現在でも続いている「エビデンスを創る、伝える、使う」という観点から研究助成を始めるきっかけになったように思います。臨床EBM研究会の最初の頃は、まだ、ステップ2に力点が置かれていました。しかし、頻回に講師をお願いした名郷直樹先生の御薫陶のおかげで 「楽して学ぶ」、「二次資料を活用する」という流れが定着し、今では、PUBMEDなどの一次資料は、二次資料がそろっていない時に使用するという感じに変わってきたように思います。エビデンスをどう活用するか、患者の診療にどのように役立てるかというEBMのステップ4については、リベラルな取り組みもあれば、コンサーバティブな取り組みありますが、それはそれで、議論の争点となるので良いことだと思います。問題なのは、いつまで経ってもエビデンスに無頓着でEBMを勉強もしない人々、EBMの真髄もわからずにEBMを批判する人々、NBMをEBMの対立概念だと勘違いしてエビデンスを軽視する人々、自分で情報処理も試みず、何も考えないたたずみ型サボタージュの人々などがあまりにも多いということです。これはいけません。臨床EBM研究会は、これからも癌診療に関するEBMをとことん考え続けるでしょう。そして、たたずみ型の医療者を教育し、日本の癌診療力の総合的強化に取り組んでいきます。次回は11月16日(金曜日)、東京のほうで開催予定、多数のご参加をお待ちしています。なお、今回使用したスライドは、浜松オンコロジーセンターホームページに載せておきます。St.Gallen2007の進化をお楽しみください。最後になりましたがスポンサーのアストラゼネカ、中外製薬、ブリストルマイヤーズのご支援に心より感謝申しあげます。どうもありがとうございました。

薬剤師の粘り勝ち


骨転移治療薬「ゾメタ」の外来化学療法加算が静岡県社会保険支払基金で査定されました。「査定された」というのは、日本語としては正しくはない表現ですが、支払基金側が「ゾメタ点滴では外来化学療法加算は算定できない」と、400点の保険請求を却下してきたのです。しかも6人分の請求が却下されたのです。これは、我が社のような弱小法人では致命的なことです。しかし、おかしな事に同じ月に点滴の抗癌剤を行っている場合はゾメタの外来化学療法加算算定はOK、ホルモン剤の内服だけのような場合は、ゾメタの外来化学療法加算はNO、というわけのわからない対応に、我が社の薬剤師が社会保険支払基金に問い合わせたところ「厚生労働省に確認してくれ」とのことでした。ふつうはここで「長いものには巻かれろ」的発想の一般ピープルは引き下がるところ、我が社の薬剤師は違った、厚生労働省に電話し担当者を突き止めたのです。その担当者(H局I課T氏)が言うには「抗腫瘍効果がない薬剤なので外来化学療法加算の対象とはならない」との見解だとのこと、薬剤師はがっかり気味で私のところに報告に来ました。

そこで私は厚生労働省H局I課T氏に電話し、「先ほど、うちの薬剤師が問い合わせたゾメタの件ですが、その理由についてご説明願えますか?」と尋ねたところ、「ゾメタには抗腫瘍効果はありませんから外来化学療法加算は算定できません」とおっしゃる。「いいえ、そんなことはありません。ゾメタは、癌の骨転移に対して抗腫瘍効果があります。」と返すと、「作用機序から見ても直接作用はありませんから」とのお答え。「だったらこれから出てくるアバスチンはどうですか? 作用機序は間接的ですよね。それも、外来化学療法加算はとれないのですか? では、Lアスパラギナーゼはどうですか? 直接作用ではありませんよね、でも外来化学療法加算は認められていますよね?」と(我ながら見事に)反論すると、「担当のモノが席を外しているので戻ったら確認して連絡します」とのお返事でした。な~に~、あ・ん・た・は・担当者じゃないってかぁ~!! え~? んで、そんな決定的なこといっていいのかよ~、と、思わず電話機を床にたたきつけたくなりましたが、そこは冷静に電話を切ったわけです。それで、あちこちに確認し、根回しできるところには根回しをして連絡を待ちました。

翌日の17日は東京勤務、我が社の薬剤師から「今、厚生労働省のTさんから電話があって、骨病変における抗腫瘍効果が認められるので、ゾメタは外来化学療法加算の算定ができるそうです。これから静岡県支払基金に電話します。」とのメール連絡がありました。早速「ごくろうさん、ごくろうさん、それで、支払基金はなんだって?」と我が社の薬剤師に電話したら、「厚生労働省に確認してみます、ということでした。」とのこと。薬剤の粘り勝ちぃ~! ということで、お持ち帰りメッセージは:

(1) 顔の見える厚生労働省H局I課T氏の対応はすばらしい

(2)           (2)    「長い物には巻かれないぞ」という粘り腰の姿勢が望ましい

現実の世界に


St.Gallen Consensus Conferenceの論文の一回目の手直しも終わり、パネリストとしての情報の整理がとりあえずひと段落しました。Endcrine response uncertainにかわりpartially endocrine responsiveという呼び方になるなど、表面上にも少しの変更が加わることになりそうです。それよりも基本的な考え方が「まず、ターゲットより始めよ!」というアプローチになりずいぶんとすっきりしてきたように思います。乳癌治療もずいぶんと整理されてきたもんだと、はればれした気分でここ数日を過ごしながら春の陽気も感じつつ、ツバメ君の第一偵察隊も確認し、すこしうきうきした気分で過ごしておりましたが、強烈なセカンドオピニオンで現実の世界に呼び戻されてしまいました。昨日は浜松の外来で「HER2強陽性乳癌肝転移、ハーセプチンとパクリタキセルで肝転移が消えたので完全治癒を目指して肝左葉を切除する!」という治療方針を貫く和歌山の先生の患者さん、紹介状はよそ宛のコピー、患者さんも当惑至極です。医学教育が悪いのか、それとも医師としてのセンスが悪いのか、とにかく、まったく理解もできず、賛同もできず、「後医は名医」といえども、こればかりは、「この先生、間違っています」といわなくてはいけないでしょう。今日は飯田橋、埼玉から来たCTやMRIを持参された患者さん、「私の転移はどこにあるのでしょうか?」ということでしたので、画像を見ながら、どこどこ、どこどこ、頸部を触診したら、ウィルヒョウリンパ節も腫れています。「担当の先生からは、説明はお聞きになっていないのですか?」とたずねると、「説明してくれないんです。質問すると怒り出すから、怖くって・・・。専門的なことを聞いてどうする! 医者にでもなるつもりか!」と言うんだそうです。その先生のことは、昔からよくよくよくよく知っており、JCO○や、NSA○などでもよく協力してくれ、JCO○では、かつてベスト何とか賞とかをもらっていた、控えめな先生です。「他の病院に行きたければ行ってくれ、あんたがいなくなれば、ひとり、他の患者さんを診ることができるんだから」とも。「看護師は、なにか説明してくれないんですか?」と聞くと「看護師に聞くと、先生が説明しないことは、聞いてもしょうがないでしょう」と、相手にしてくれないそうです。この病院は、チーム医療とかでも売出し中だぜ。病院ランキングとかでトップに君臨、それで、患者さんが殺到して、かえって、医療の質が急降下ということらしい。ジェームスアレン著「原因と結果の法則」 正しい思いをもてば、それが行動に現れ、行動を繰り返すことで習慣が形作られ、その習慣から人格が完成し、人格を慕って、また、人が集まる - O先生、I先生、見かけは歳でもまだ、私より若いんだから、もう一度、原点に立ち戻り、医師としての「思い」はどうあるべきか、ということをお考えになってくださいね。