「祈り」の違い


サンアントニオスパーズ対ロスアンジェルスレイカーズのバスケットボールの試合、ほずみんに誘われて観戦してきました。101対101で決着がつかず、延長戦でレイカーズが辛勝、スパーズは惜敗という結果、ものすごくもりあがった一戦でした。ほずみんは、かつてムルアカとよばれた林先生に誘発されてNBA の試合観戦は毎年行っているそうで、おおはし先生もフロアレベルの最前列で毎年観戦しているらしい。わたしは、今まで、サンアントニオでは、毎晩、委員会とか、セミしゃんしゃん勉強会に駆り出され、夜の時間を浪費していたのだが、ボレロ三試験、いずれもポシャリの結果で委員会も終わりになり、セミしゃんしゃんもやらないことになり、夜の時間をやっとすこし楽しむゆとりとことりができたわけです。その白熱した試合展開の最中に気づいたこと、日本だと、楽天対巨人、まーくん連続登板最終回、ツーアウト、最後のバッターは、あべしんぞう、という場面でスタンドが大写しになると、多くのファンがお祈りのポーズを取っている。また、クイズ番組やバラエティ番組なんかでも、結果発表します、でけでけでけ・・というときは、三流芸能人が、みんなお祈りのポーズをとる。それが習わしとなっています。ところが、白熱したスパーズ対レイカーズ戦、あと1分という場面でも、スタンドでお祈りポーズを取っている人はだれもいないのですね。クリスチャン大国のアメリカだから、たかがバスケットボールの勝ち負けぐらいでは神へは祈らないのでしょう。神様だって、ゲームの勝ち負けまで祈られたって困るよ、って感じでしょうか。芸能人がクイズ番組の結果発表でお祈りのポーズをとっている姿をみると、目先のご利益を求める日本の複合宗教のお祈りと、神を畏れ、隣人を愛するクリスチャンのお祈りでは、全く意味が違うのかなー、と感じたのでした。サンアントニオ雑感でした。

聞かれなくても話します


セカンドオピニンで治療のことを聞きにきた人たちにも次のようなことは聞かれなくても押し付けがましく話します。

(1)アガリクス、メシマコブ、フコイダンなどのサプリメントとか健康食品とかいわれるものは、何の意味もありませんから手をださない方がいいですよ。(2)がんと診断されると、肉がいけない、牛乳がいけない、と惑わされて、栄養失調になってしまうひとがいます。どんな食材でも、バランス良く摂れば問題ありませんよ。(3)抗がん剤治療中は、なまものがいけないっていっている病院もありますが、それもまちがってますよ。新鮮なお刺身、よくあらった生野菜、あたらしめの生卵など、全く問題ありませんよ。その他、旅行に行ってもいいし、温泉(注:玉川温泉は除く)にいってもいいし、日常生活になんら、制限はありませんよ。など、他になにかあったっけ? それと、多くの患者に真正面から向き合って接してきて習得したご教訓、「がんになったことは不運かもしれないけど、だからといって不幸になるわけではないですよ、まえを向いていっしょに進みましょう」も伝えることが多いです。

チームビルディングのこころ


愛する友へ:寒い毎日が続いていますが、お仕事、ありがとうございます。多くの人間が同じ目標に向かい、全力で走っていると、ついついお互いに対する配慮が薄くなります。新しいメンバーも、一生懸命、真剣に、誠実に仕事を覚えようとしていますが、まだまだ、うまくできない、何回教えてもできなということもあります。指導する人たちも一生懸命だと思いますが、全体に忙しいとついつい、言葉もきつくなったり、態度も意地悪に見えたりすることがあり、それを受け取る側も悲しい思いをしていることがあります。大切なのは「愛」です。キリスト教では、「神を畏れて、隣人を愛せよ」と、この二つだけを守ることが、人類の平和、繁栄をもたらすとされています。愛してください。あなたの周りの人が困っているかもしれない、いじめれているかもしれない、心配しているかもしれない、おちこんでいるかもしれない。大丈夫ですかの一言が、上手にできるようになりましたね、の思いやりが、わからないことがあればなんでも聞いてくださいね、遠慮しなくてもいいですよ、というふところ深い受け入れが大切です。それが、周囲の人に愛を伝える表現です。神を畏れるとはわかりますか? ちっぽけな自分の能力だけでは、到底、できないこと、わからないこと、それを神には、わかっている、あなたがどこで何をしていても、神はあなたのことを見ている、知っているのです。神にはかなわない、とてもかなわないのです。空の彼方から、あるいはあなたの心の中から、あなたの行い、言葉、思いを、じっと見守ってくれています。もっともっと優しい人間になるようにするにはどうすればいいか、考えてみましょう。それが、よいチームを形成し、維持するために、最も大切なことです。よろしくたのみます。

さらばサンアントニオまた来年 これで帰ります


サンアントニオ乳がんシンポジウムも終了となり、とりあえずとり急ぎここに二つの演題についてまとめた感想と独り言をお伝えして帰国の途につきます。

(1)TIL Tumor Infiltrating Lymphocyte(腫瘍浸潤リンパ球)

乳がん組織にリンパ球の浸潤があることは、昔から病理医の目には止まっていました。最近、リンパ球浸潤の多い乳がんは予後がいいとか、様々な治療による効果の良し悪しもリンパ球浸潤の多寡と相関するという研究が多数報告されるようになりました。ザンクトガレンコンセンサスカンファレンスでも2011年から、間質のリンパ球の多寡は予後因子か?という質問がでています(1)。また、昨年には、乳がん組織中のリンパ球浸潤評価に関しての推奨が出ました(2)。今回のサンアントニオでも、イーデス・ペレーツが、術後trastuzumabの有用性を検討した報告(3)で対象となった臨床試験N9831に参加した症例のうち945症例(AC-paclitaxel:489症例、AC-paclitaxel+trastuzumab:456症例)のアーカイブマテリアルを使用して、間質のリンパ球浸潤の程度と予後を検討して報告しました。リンパ球浸潤の多い症例群(全体の10%)と少ない症例群(全体の90%)にわけて、いろいろな検討を試みてしまいました。まず、AC-paclitaxel群では、リンパ球浸潤が多い症例の10年無再発率は90.9%、少ない症例は64.3%(HR 0.22, P<0.009)と差が出ていますが、AC-paclitaxel+trastuzumab群では、リンパ球浸潤が多い症例の10年無再発率は80.0%、少ない症例は79.6%(HR 1.13, P=0.79)と差がありませんでした。なんということでしょう。次に、リンパ球浸潤が多い症例で、抗がん剤治療だけの症例と、抗がん剤+trastuzumabの症例をくらべてみました。抗がん剤だけでは、10年無再発率は90.9%、抗がん剤+trastuzumabの症例は80.0%(HR2.43, P=0.22)と,有意差はありませんが、trastuzumabをくわえると、かえって予後が悪い、という結果でした。リンパ球浸潤の少ない症例では、抗がん剤だけでは、10年無再発率は64.3%、抗がん剤+trastuzumabの症例は79.6%(HR0.49, P<0.0001)と、trastuzumabを追加することの効果がはっきりでたのであります。この現象は、多変量解析(ホルモン受容体、腫瘍径、リンパ節転移などの因子を加えて)でもかわならいという結果でありました。リンパ球ががん細胞をやっつけようとしているのに、trastuzumabが、その作用を弱めてしまうのでしょうか?

  1. Goldhirsch A, Wood WC, Coates AS, et al. Strategies for subtypes—dealing with the diversity of breast cancer: highlights of the St Gallen International Expert Consensus on the Primary Therapy of Early Breast Cancer 2011. Ann Oncol 2011; 22(8): 1736-47.
  2. Adams S, Gray RJ, Demaria S, et al. Prognostic Value of Tumor-Infiltrating Lymphocytes in Triple-Negative Breast Cancers From Two Phase III Randomized Adjuvant Breast Cancer Trials: ECOG 2197 and ECOG 1199. J Clin Oncol 2014; 32(27): 2959-66.
  3. Romond EH, Perez EA, Bryant J, et al. Trastuzumab plus Adjuvant Chemotherapy for Operable HER2-Positive Breast Cancer. N Engl J Med 2005; 353(16): 1673-84.

 (2)65歳以上の高齢者を対象としたイバンドロネート ± カペシタビン

65才以上の高齢者では、骨粗鬆症を高率に伴うので、イバンドロネート(日本では売ってません)を術後に使い、それに、抗がん剤「カペシタビン(日本ではよく売れています)」を加える、加えない場合の、PFSを検討した試験がドイツのフォンミンクウィッツ率いるGBG(German Breast Group)により発表されました。イバンドロネートだけ群(707人)、イバンドロネート+カペシタビン(702人)が対象です。結果は、浸潤がん再発、遠隔転移を見ても両群間に差がありませんでした。つまり、65才以上の高齢者では、カペシタビンの効果は認められなかった、というネガティブデータでありました。フォンミンクウィッツは、カペシタビンが無効であった原因として、対象症例でLuminalが多く、長期間のフォローアップ結果を見ないとわからないと考えています。CG製薬のこぐまさんは、これはCG製薬がやった試験ではないからと考えています。CG製薬のかわうそさんは、これはカペシタビンの投与期間がたった12週間と短すぎるからだと考えているようです。カペシタビンの投与期間の比較試験をやるのでしょうか? やらないのでしょうか?

医師の本分


我ながらいいこと言ってるね(自我自賛の落とし穴)

オンコロジストの独り言

医師は患者を診るのが仕事である。臨床力「Clinical Expertise」とは、知恵と知識と経験とたゆまぬ努力によって熟成される能力で、それには、診断力、治療力、コミュニケーション力、洞察力、情報処理力、忍耐力、判断力、指導力など、様々な成分が含まれる。臨床力は、一朝一夕に身につくものではないが、単に長期間、臨床に携わっていればよいというものではない。患者を診ることと、患者を対象とした臨床研究を行うことは車の両輪、コインの裏表と言うような感じで、両方の能力と活動を併せ持っていくのが望ましいかな、と常々思っている。先日、メディアセミナーで大野善三さんから、「渡辺先生は、立場が変わる度に、新しい問題点を見出して取り組んでいますね。先生の話が面白いのは、常に、現場を持っていることなんだなと思いますね。」と言われた、大野さんは、医学ジャーナリスト協会の重鎮で、NHKにいらっしゃった1990年代前半から取材を受けたり、メディアセミナーで講演を聞いてもらったりと、年に数回だがお目にかかる機会がある。西條先生とはしばらくご無沙汰していたが、先日、日経新聞の座談会でお目にかかった、「いかがですか、先生」と聞いたら、「暇や、暇やから、勉強ばっかりしとる。」と。確かに、分子標的薬剤の最新情報の詳細まで、よくご存じだが、今一つ、話に迫力がない。ご本人もおっしゃっていたが「知識は吸収できるが、現場に携わっていないから、頭でっかちや。」ということだ。昨日、引退牧師と話をする機会があった。彼は、信州の方の教会で長年、牧師をしており、その時に入院、手術を経験した。内科医として担当したのが、有名な○田實先生だという。手術前に、「頑張ってください」、といわれたそうだが、牧師先生は、「私は、全身麻酔をかけられて、いわば、冷凍マグロのようなもの。何を頑張れというのですか?」と思わず聞いてしまったそうだ。また、「彼は、最近、有名医になって、頑張らない人生、なんて言っているが、冷凍マグロの私に頑張ってくれ、といった同じ人間とは思えないな。」と。また、面白いことをおっしゃった。「有名医だけど、彼は全然、名医じゃあないよ。名医になってから有名医になるのが筋だけど、先に有名医になっちゃったものだから、講演とかで忙しくて、名医になりきれないんだな。」 これは、まさに、他山の石とすべき指摘である。この1カ月ぐらいで出あった、大野さんも西條先生も引退牧師先生も、人生の先達は、大切なところをきちんと評価しているな、と感心した。やはり、本分をわきまえ、それに情熱を持って取り組むこと、まさに、MISSIONを心得て! PASSIONをもって臨み、HIGH TENSIONで取り組むことが大事であると理解した。本分をないがしろにしては足元すくわれるぞ、ということは常に、あんきもに銘じておくよ。

元の投稿を表示

SABCS恒例CASE DISCUSSION


サンアントニオ乳がんシンポジウムは、毎年、少しづつ、時に大幅にプログラムが変化しています。学会は時代のニーズに応えて、あるいは時代の変化を先導する形で成長するのは当然です。しかし、SABCSで長年、変わらないのが、二日目、三日目のお昼に開催されるCase Discussionです。このブログでも過去に何回か、触れていますが「一流の研究者は一流の臨床家」というのがこのセッションに参加するたびに、再認識されます。モニカモロウ、リサカリー、マシューゴエツなど、よく知られた人たちが、ぶっつけ本番で会場からの治療相談に応じました。今回関心したことは、今日の午前中のジェネラルセッション3の発表を聞いて、判断が難しくなったという2症例が提示されたことです。30才女性、BRCA1変異のあるT2N1M0のTNBC.。午前中のセッションで、イギリスの無精髭TUTTの発表で、カルボとドセタキセルの比較試験、BRCAの変異ありでは、カルボが良いと。症例数も少なく、エビデンスとしては弱いものですが、それでも、今日の今日なので、質問者も「カルボを含んだ術前化学療法は必要か?」との問いかけでした。リサカリーは、自分でも、コンサバですから、といって、手術→パクリ・ACみたいな標準を選ぶべき、との答え。つまらん、こいつのはなしはいつもつまらん、そんなんだったらGKITでもいえる。マシューは、術前のカルボ+パクリも選択肢の一つでしょう、とのよい答え。これぐらいの柔軟性がいいなあと思いますね、腫瘍内科医は。もう一例は38才、8cmの大きさの局所進行乳がん、ER陽性、PgR陽性、HER2陰性、肥満。術前化学療法でAC・パクリをやって手術した。その後の治療、どうしようか。今日の午前中のセッションで発表されたSOFTトライアル、TAM vs. TAM+LHRHアゴニスト、全対象症例では、PFSのP値は0,1、35才以下のサブセットでは有意差あって、併用がよろしという結果。しかし、それよりも、エキセメスタン+LHRHアゴニストの方がよいことが、今年のASCOのプレナリーセッションで発表されたのは、ご存知のとおり。しかーし、肥満女性では「おおおんな、そうみにAIまわりかね(大女AI不可循環於総身)がABCSG12で示されているので、この症例では判断が難しい。AI+LHRHアゴニストがよいか、それともTAM+LHRHアゴニストがいいのか。意見がまとまらなかったが、TAM+LHRHアゴニストで良いだろうと私は思った。そんな感じで1時間ちょっとのセッションで、9例のディスカッションがあって「臨床医の真髄は科学的推論である」ことがあらためてに示されました。若い先生とかに、CASE DISCUSSIONは、がちんこ道場だから、出た方がいいよ、と毎回勧めるのですが、日本の若者はどうも臨床の現場での真剣勝負は興味がないようで日本人の参加者はまばらでした。ざーんねーん!

検体(過去の資産)+ 最新機器(現在の財力)± 知恵


前号でも触れたように、すでに「主たるエンドポイントとしてのPFSとかOSが報告された大規模臨床試験」に参加した被験者のアーカイブマテリアル(過去の資産)を使用して、最新鋭の分析機器(がん組織の遺伝子変異解析)を財力に物を言わせてガンガンおこない、その結果、あまりぱっとしないデータが報告されて、いささかうんざりしているSABCS2014です。そんな発表では、会場から全然質問がでなくて、司会者が時間調整するために四苦八苦してどうでもいいような質問をするというまるで、日本の学会のような感じです。「過去の資産」と「現在の財力」にきらりと輝く知恵が加わると、似たように発表でもVogel from New Yorkが多少頓珍漢でも質問をするという状況です。去年のサンアントニオでVogel from New Yorkに質問され、キャッキャッと騒いだお嬢さんがいましたが、ドイツのミカエルウンチも、今日そうでした。ふてぶてしい態度は相変わらずで、質問にも真面目に答えません。しかしVogel from New Yorkが質問したら「I did it! I did it!!」と喜んでいました。そんなわけで、oral presentationは、知恵のない発表がめだっていますが、ポスターではちょっと知恵が感じられる発表がありましたね。例えばω3不飽和脂肪酸によって、アロマターゼ阻害剤による関節症状が軽減した、というオハイオ州立大学の発表。20症例 vs. 20症例ぐらいのランダム化・盲検化比較試験で、QOLの客観的評価や炎症サイトカインの測定もきっちりやっています。ω3不飽和脂肪酸は、処方薬では「ロトリガ」ですが、サプリメントとしてもEPAやDHAなど簡単に入手できるものです。この検討は症例数が少ないので、真実・バイアス・偶然のうち、偶然を見ているのかもしれません。検証するための大規模比較試験は、武田がプラセボとの比較試験といった形でやる気を出してくれれば、QOL評価をきちっとできる下妻晃二郎先生にお願いして立派な臨床試験が成立するでしょう。この知恵は二番煎知恵ですけど。Good Morningをオハイオといえばいいよ、とか、What time is it now?を、掘った芋、いじるんでねー、といえばいいよというようなちょっと気の利いた知恵が感じられる発表でした。