術前薬物療法の効果


ypT0, ypN0(sn),  ycM0, yp-stage 0 の意味を正しく理解している人は医師の間でも少ないと思います。病理医も正しく説明出来る人はそれほど多くはないと思います。今日の独り言はとても専門的な話なのでがん治療に興味のない人にとってはとても退屈だと思います。

乳がん治療では他のがんに先駆けて「術前薬物療法」というのを1980年代から取り組んで来ました。体の表面に発生するがんで、しかも、頻度が最も多く、女性にとってはとても気になる病気である乳がんは、日本人でも最も多いがんとして、現在、どんどん増えています。芸能人が乳がんになったというと新聞、週刊誌、ワイドショー、NHKの7時のニュースでも大騒ぎをしますが、治療内容が適切かどうか、という辺りには鈍感で、未だに「一刻も早く手術をしなくては」とか、「手術できたことで安心しました」という論調を支持しています。1980年代は確かに「乳房のがんも大きく、脇の下のリンパ節、鎖骨の下のリンパ節にまでも転移が及んでいるような『局所進行乳がん』で、どこを手術してよいかもわからないような状況に対して、それをまず、抗がん剤を使って小さくして、狭い範囲に病気を押しとどめ手術に持ち込む、という「手術不能乳がん」を「手術可能にする」という考え方がありました。アドリアマイシン、エンドキサンが出始めた頃です。しかし、その頃は、「命にかかわるのは微小転移である。目には見えないような微小転移は、乳房にがんのしこりが形作られるのと同時に、まるでタンポポの種が風に吹かれて遠くの土地に飛んでいくように全身にばらまかれていく」という考えはなく、乳房にしこりを見つけたら「一日も早く手術しなくては」という古典的な考え方に支配されていた時代でもありました。そのため、「手術を可能にする」ということが大義名分であったわけです。しかし、時代が進み2010年代、薬物療法も進歩しました、乳がんの特徴や分類に関する認識も定着しました。そんな現在、術前薬物療法が標準的治療と位置づけられ、まず手術してそのあと、効果のありなしも確認できない状況で目には見えない敵である微小転移を駆除するために薬物療法を闇雲に行うーという「術後薬物療法」が行われる頻度は減ってきている現状であります。では、術前薬物療法の効果はどの程度か? ということが問題となり、そこで注目されるのが、ypT0, ypN0(sn),  ycM0, yp-stage 0なのです。

 

 

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天下りは日本の文化なり


文部科学省官僚の天下りが問題となっていますが、厚生労働省でも、国土交通省でも、県庁でも、市役所でも、所轄の役所とのパイプがあれば情報も入手しやすい、便宜も図ってくれる、など、「ひとつよろしく」の関係で何かと便利なわけです。また、人材の有効活用ということで知識、経験をもち人生経験も豊富なお役所OBは人気の的であります。天下りに目くじらを立てても仕方ないように思います。成田に医学部をつくった大学は、まさに天下り大学そのものだけど・・・。それよりも、現役大学教授が研究費の配分を所轄する国立研究開発法人日本医療研究開発機構〔略称 えーめど〕の業務を併任するというのが最近はやっているけど、これはお金を配分する機構とお金を受け取る大学職員がつながっているというおかしな構図に感じるけれどどうだろうか???