役人の自覚と責任


今日、厚生労働省16階での会議に参加した後、1階に下りたらたばこのにおいが充満していて、なんだこりゃー!!! 1階に喫煙室があるらしい。そういえば、ついこの間まで、たばこの自動販売機が2階に設置されていましたね。厚労省の公務員は全員禁煙しなくてはいけないし、厚労省の敷地内は全面禁煙にしなくてはいけない。同様に健康関連産業である製薬企業社員は禁煙しなくてはいけない。頼みますよ、KZWさん。
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見えてきた事、見えていない人


第44回日本癌治療学会が新宿京王プラザホテルで開かれています。東京での学会で京王プラザホテルに来たのは何十年ぶり。ちょっと郷愁。一日目の午後、癌治療専門医についてのパネルディスカッションがありました。昨年来、この問題はとても次元の低いところでのいさかいとしてあきれられ、NHKのニュースでも、困ったもんだ、という視点で取り上げられた全世界注目の問題でした。今年は、それでも幾分の進歩があったようで、本質がみえてきたところも感じました。しかしやっぱり、なにもわかっていない人、全く見えていない人もおりました。あっ、また、言ってるぅ、みたいな。日本語勉強してからでなおしてこい、なんて言われたりして。言う方も言われる方も、今日のお昼は、おこちゃまらんち、といったか~んじ。
 
さて、制度論だとか、外形論だけに終始しがちなこの手の議論ですが、なるほどね、と感じたのは、お二人のパネリストのお話でした。広島の西山先生がいいことを言っていました。彼は「バトンタッチ」をキーワードに責任ある癌医療を主張していました。その通りだと思います。要するに、癌治療に専門的に取り組む上で大切なことは、臨床医として、責任持って、患者を引き受けることができ、また、引き渡すことができるかといった力量で、臨床力と責任感、親切な心、社会正義意識を持たなくてはいけない、そうようような医師を育成しなくてはいけない、ということです。幸い、私は国立がんセンターでのトレーニング期間中に、外科手術、放射線治療、内視鏡治療、病理診断など、内科以外の癌診療の実際も深く、長く、直接経験することができたので、外科医が何を考えているか、術後、あるいは、再発後の患者を外科からどのようにして、引き受けることが大切なのか、ということがよくわかっています。また、放射線治療は、どんな場合に必要なのか、どんな効果があり、どんな副作用があるのか、また、放射線治療医に依頼する際には、どのような情報を伝達すればいいのか、ということもわかっています。一方で、外科医がどうして、抗癌剤治療をいつまでもやっているのか、それもよくわかります。受け皿となる腫瘍内科医がいない、少ない、ということとも大きな問題ですが、それはこのパネルディスカッションでも取り上げられているように、時間が経てばそのうちに解決されてることだと思います。要は、外科医は、自分でいつまでも診る、ということが、責任を持つということだ、と勘違いしている場合があります。よくわかっている先生は、「抗癌剤は、私のような外科医がやるよりも先生にお任せした方が患者のためになりますから」と、明快な紹介状とともに、その旨を患者に説明し、患者さんも喜んで紹介されてくる場合もあります。つまり、旨くバトンを渡せる、受け取ることができる、ということです。バトンの受け渡しで、気になることは、「宛名なしの紹介状」です。これは、責任を持たないでバトンを投げ出すことに近いと思います。「ご担当先生」宛の紹介状から感じ取れることは、「どーか、他の病院に行ってください、私は、貴方の診療を、できれば他に回したい」という逃げの姿勢です。逃げてはいけません。これが、癌難民を産む最大の愚行です。信頼できる医師、力量のある医師にきちんと、継ぎ目なく、責任をもって紹介することができれば、患者も幸せだろうと思います。また、任せられた場合も患者の要求に応えること、終末期医療に移行する場合には、不連続にならないように、シームレスな対応をすることが大切です。
 
国立がんセンターの土屋了介院長は、レジデントの大先輩で、現場感覚を重視し、臨床でのトレーニング、教育、鍛錬、精神論に関しては、一家言ある先生です。彼は「癌診療専門家は、診療所に多く重く配置されるべきである」と主張、街角癌診療をめざす私としては、「おっ、そのと~り!!」と激しく頷く場面でした。実際、1年半になりますが、浜松オンコロジーセンターをやってみて感じるのは、抗癌剤治療や、術後のフォロー、再発後の症状緩和医療など、癌医療の中核をなす部分は、日常の中にあるので、おうちの近くの診療所できちんと対応してくれるのが、それは、それは、大切だ、やっぱり大切だ、そうだ、そうだ、ということです。検査や、手術、といった非日常のイベントは、たまに行くことだから、築地の大病院でもいいのです。日常の診療がよくわかっている土屋先生ならではの発想で、先の院長の口からは、決してこういう発言は出てこないと思います。しかし、土屋ビジョンも「認定施設」という話になると急にトーンダウンしてしまいます。「認定施設」とは、専門医、認定医となるために一定期間、そこで診療をして、実績を積まなければいけません、という病院です。これは、専門医や認定医を認定する学会が求めている医療機関で、すべて「病院」であり「診療所」は、認定されないのです。認定されるには、病理医師が常勤している、とか、複数の認定医、専門医が勤務しているとか、診療所では充たすことのできない要件多く含まれます。実際、私が、山王メディカルプラザでオンコロジーセンターを立ちあげたときに、乳癌学会の専門医を申請したところ、認定施設ではない、ということで認められませんでした。そこでもかなり高質な乳癌診療を実践していたにも関わらず認定施設ではない、病院ではないという理由のようです。これでは、専門医をとりたくても施設が認定されていないのでとれない、施設を認定してほしいが専門医がいないので申請できない、ということになり、地道に診療所を立ち上げて街の癌診療を目指す場合、永遠に専門施設として認められないことになってしまいます。認定施設として、病院ならこれこれ、診療所の場合はこれこれ、と、別立てで充たすべき要件を明確にすることが大切で、そうすれば、診療所の努力目標も明確になるのではないでしょうか。外来化学療法が積極的に推進されている時代、なんでんかんでん病院たい!というのは時代錯誤だべさ、ということで、新宿よりお伝え致しました。
 

ゆがんだ医療


新しい医療機器を導入すると、従来の方法に比べると「すごーい!」というような効果が得られる場合が確かにあります。しかし、バカとはさみは使いよう、というのはまさにこのことで、「トモセラピー」がいい例です。トモセラピーとは、放射線照射装置で、CTスキャンのような形をしており、ドーナッツの輪から回転しながら放射線が照射され、機械の中に横になった患者がベッドごと出し入れされながら、病変に放射線が集中的に照射されるため、正常組織には影響が少ないという、優れものではあります。脳転移など、本来放射線照射が有効な場合には、卓越した有用性を発揮するでしょう。価格も5億円ぐらいする、お高い機械です。そのため、導入した医療機関では、よほど運用資産に余裕がない限り、元をとらねば、と対象患者を増やそうとするわけです。
HER2強陽性の乳癌、多発肺転移の患者さんが、マスコミで紹介されたトモセラピーを知り、治療を受けに行きました。その病院では「ペットで見つけた癌をトモセラピーでやっつけるので、どこにがんが潜んでいてもみつけてたたきのめして、完治させることができる」として5億円の設備投資を回収すべく、全国から広く患者を集めています。それで、その患者さんは、肺転移に7か箇所、トモセラピーを受けました。しかし、終了後、1ヶ月足らずで、別の転移が出現、また、トモセラピーをやったほうがいい、と言われ、もとの主治医に相談したところ、浜松オンコロジーセンターでセカンドオピニオンを聞いたら、ということになり、私のところにいらっしゃいました。
賢い読者なら、私が何を言いたいか、おわかりのことと思います。久しぶりに「いっか~ん!!」 ハーセプチン治療を開始し、肺転移は当然のごとく消失しています。「乳癌の肺転移には手術も放射線照射もやってはいけない 推奨グレードAAA」。しか~し、肺転移、肝転移、骨転移に対して、不適切なゆがんだ医療がまだまだ横行しています。みなさん、ご用心くださいませ。