個人の感想でしょ


「個人の感想です」というような注意書きがテレビショッピングなどの画面に必ず出ます。肌がきれいになる、視力が回復する、など、え、そうなの、使ってみようかな、と思わせるような巧みなコマーシャル。しかし、言い訳のように「普遍的な事実、真実ではありませんよ。あくまで出演している一個人の感想ですから、全ての人に当てはまるものではありませんよ。」と責任逃れなのか、消費者庁の指導なのか、わかりませんけどね。

一方、芸能人のがん体験、治療体験には、そのような但し書きがつきません。まるで、全ての人に当てはまるように、個人の限られた体験、感想が綴られ、語られます。ワイドショーなどがそれを究極の真実のようにあおり立てます。特に気になる、というか問題だなと思うのは、治療内容が間違っている、明らかに不適切で、いったいどこの病院? どこの医師?がこんな不適切ながん治療をしているの、感じる内容があたかも「標準的治療」として受け止められるような扱い方で報道されていることがあります。あるトークショーを聞いていたら、自分の治療は自分にあったものを自分で選びました、なんて吹聴して、ハーセプチン治療を勝手にやめたことを自慢している芸能人がいました。それはだめだよ、再発の可能性が2倍、2.5倍になっちゃうよ、という正論を語る場はなく、そうですね、それでこんなにお元気ではつらつとしていらっしゃるんですね、と変な相づちをうつ司会者。あげくの果てにそのトークショーはテレビドラマの番組宣伝(いわゆるばんせん)収録の一部だったみたいな話題作りに。芸能人ががんになることは別に珍しいことではありません。また、芸能人が不適切な病院で間違った治療を受けていることも多いです。あくまで、「これは個人の感想です」「これは個人の限られた経験です」という受け止めをしないと、不安、心配の種が増えてしまいます。