よく頑張った平成時代


平成最後の月はめまぐるしく過ぎ去りました。先月の20日から23日までの4日間に開催された第16回St.Gallen Consensus Conferenceがありパネリストしての責務を果たすべく事前の準備をしっかりやろうと、パネルディスカッションでの質問スライドのドラフトが送られてくるのを待っておりました。今までは、クリスマスホリディが終わる頃に送られてきましたが、今回は、なかなか来ず、1月下旬には送りますとアナウンスがありましたが来ず、2月半ばになってやっと送られてきました。すぐにコメントを送りました。なぜそんなに遅くなったのかというと、今回からSt.Gallenのfacultyが入れ替わり、几帳面な老人たちが退き、ずぼらな後継者が担当したことがその原因であった、と判明しました。勝手な判断ですが、間違いないでしょう。コンセンサスカンファレンス当日のquestionも途中で入れ替わったり、やり直したりと、準備の悪さにほとほとうんざりとしてしまいました。

今回は何かの分類が新しく定義されたとか、新たなコンセンサスが形作られた、と言うことはありませんが、術前薬物療法がますます標準的な取り組みであることが確認されたことが一番大きなプログレスといえるでしょう。Neo adjuvant というたかのひでみ先生が嫌う「薬物療法が補助」という概念は払拭されつつありPST(Primary Systemic Therapy)という用語が多様されています。また、例外的にまず手術をすることを「Surgery first」という用語をEric Winerは用いていました。

全体的に誰でも知っているトライアル結果をどう解釈するか、たとえば、閉経前乳がんのSOFT/TEXTトライアルとか、HERAトライアルなどの一連のハーセプチン治療とか、また、術前治療後残存病巣のあるTNBCを対象とした我らがますだしんぞうのりかずくんのCREATEXや、術後カドサイラの効果を検証したKATHERINE試験、TNBCでatezolizumabを評価したImpassion130試験などを下敷きにしたQuestionなど、エビデンスがある領域では、根拠が明確な質問にパネリストたちが、そのエビデンスをどのように解釈するか、というようなポイントが見えてきました。

前回、2017年の第15回に続いて、今回もスライドドラフトを元に多地点カンファレンス参加施設で事前のVotingを実施、その結果と本番での結果を対比してみると、いろいろとおもしろいことが見えてきました。

St.Gallen カンファレンスから帰ってきて、シャンパンカヤック社員向けの講義、福岡での講演、多地点カンファレンスでの発表、浜松オンコロジーフォーラムでの講演、そして京都東山での講演、など、あちこちで少しづつ味付けを変えて、しかも講演の度に深まる理解をテーストに加えて、大いに勉強になった1ヶ月でした。その間、日々の診療は言うまでもなく、浜松医大の卒後研修医師の地域医療1ヶ月研修の指導、それから厚生労働省医薬審査第二部会会議とか、青森出張とか杏雲堂病院とか、とにかく超多忙を極めた1ヶ月、ブログの更新も途絶えてしまいました。平成も明日でおしまい。あっという間の31年間でした。よくがんばりました、と自分にご褒美をあげたい気持ちです。