ナイチンゲールは泣いている(2)


ナイチンゲール誓詞は次の5つの誓いからなっています。第一の誓いは「われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん、わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを」です。これは、全知全能の神の前に神から与えられた看護師としての使命(ミッション)を忠実に行うことを誓うという信仰告白のようなものです。自分をガラス張りにして謙虚に生きる、仕事をするということです。
第二の誓いは「われはすべて毒あるもの、害あるものを絶ち、悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし」です。清原に聞かせたい誓いであります。また、第三の誓いは「われはわが力の限りわが任務の標準を高くせんことを努むべし」ということで、ワーク・ライフバランスではなく、ワーク・ライフ・スタディバランス、スタディ無くして向上なし、ということを述べています。そして第四の誓いは「わが任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて、わが知り得たる一家の内事のすべて、われは人に洩らさざるべし」で、これは守秘義務を述べています。医療者は法的には刑法第134条と保健師・助産師・看護師法42条で守秘義務が定められていますが、今一度、この第四の誓詞と法律の条文を確認しておきましょう。そして最後の誓いが「われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん 」で、あの手のおばさんたちが目くじらをたてるところ。しかし、これはチーム医療の真髄を伝えているもので謙虚な気持ちで受け入れなくてはなりません、もうわかりましたね。

ナイチンゲールは泣いている(1)


  • 日本国際ギデオン協会という団体が医療者向けに無料で配布している新約聖書があります。この最初のページに「ナイチンゲール誓詞」が印刷されています。しかし、ナイチンゲール誓詞を多くの反体制看護師はその最後の条文が気にくわない、といって頭っから否定しています。国立がんセンター病院に赴任した年に新人看護婦の中沢静香さんという活発な女性がいて「ナイチンゲール誓詞は間違っています」と息巻いていたことがきっかけでそれ以来、私はナイチンゲール誓詞を折りを得ても得なくても読んで我が成長とともにその解釈を深めているように思います。時どきの問題意識を持ってナイチンゲール誓詞を読むと、やはりいいことが書いてある、医療者は心にとどめておくべき誓いの言葉だと感じます。
  • 反体制看護師が気にくわない最後の条文とは「われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん 」というところ。看護師は医師の下働きではない、看護と医療は別物だ、など、いかにもあの手のおばさんたちが言いそうなこと、しかしそれはあまりに了見が狭すぎると思います。看護師は医師を助け、医師は看護師を助ける、それぞれの専門性を尊重しあうことがチーム医療の原点である、と考えれば、ナイチンゲール誓詞の本質が見えてくるでしょう。

個人輸入の効能


ハーセプチンの日本での治験が終了して、学会で第I相試験の結果を発表した頃、つまり1990年台後半ですが、どうしてもハーセプチンを使いたいという若い女性患者がいました。その方は胃がんの肝転移、ある大学の基礎系研究室の秘書さんで、そこの教授が「HER2タンパクを染色したら陽性だったので是非使えないでしょうか。胃がんには効かないのでしょうか?」と、当時私が奉公していた国立がんセンターまで尋ねて来られました。胃がんでもHER2タンパクが染まるという話は当時既に知られていましたし、♪赤い鳥小鳥、なぜなぜ赤い、赤い鳥小鳥、あーかい実を食べた♪、の歌にあるように、胃がんだからこの薬、乳がんだからあの薬、という話ではなく、HER2タンパク陽性ならハーセプチン、赤い鳥なら赤い実と思っていましたので、その教授と一緒にいろいろと考えて見たのです。しかも、おのやくではないので、適応外は認められません、とか、お宅は認定施設ではありません、なーんていうことは、言わずにね(笑い、^0^)。
国内での流通経路はまだ無く、当時のロッシュも親身になって検討してくれましたが、国内に薬がないのでどうにもなりません、ということで、個人輸入の方策をいろいろと検討したのです。そのころは、インターネットがやっと普及し始めたころで、WEBで検索とかホームページは、まだ、あまり普及していませんでした。米国の友人にpharmacyを教えてもらい、電子メールで問い合わせたところ、担当者からの返信は、主治医のcertificate (証明書)、主治医の処方箋を遅れ、金を振り込め、という簡単なものでした。ASCOの会員番号でOKで、処方箋も簡単なものでOK、お金は、間に入るとややこしいので、本人から直接電信で振り込んでもらいました。担当者は、Bob といって、メールはHi. DOC で始まります。それで入手したハーセプチンで肝転移はみるみる縮小して、元気になりました、という連絡があり、その後も、何回か輸入をしたように覚えています。個人輸入は便利な手立てですが、税関通過に数日を要するなど、まだまだ障壁があります。しかし、障壁を撤廃すれば、海外から高い薬を利用者の個人負担で輸入できるわけですから、医療費の削減に貢献するとも言えるでしょう。

恐れいります


渡辺先生
すっかりご無沙汰しております。オプジーボの納品に関しましては、非常に不快な対応となりコ・プロモーション会社(日・韓・台)としてもお詫び申し上げます。ニボルマブ・ヤーボイ納品についてのロック解除は 施設要件(全例調査協力の契約も含む)・医師要件 を当局に届け、進めているのですが第一の目的は適正使用・安全性確保ですが、裏ではとんでもない施設には納品しないという考えもあるようです。日本での製造販売がおのやくひんなのでOncologyシロートぶりを出してしまったようで、改善は何度も申し入れております。しかしながら最終決定はおのやくひん299年の歴史、ちょっとやそっとじゃ考え変えない)!! 医師要件の一つに 日本臨床腫瘍学会の「がん薬物療法専門医」であることという記載があるのですが試験問題作ったり口頭試問やっている先生に、あなたは「暫定指導医」で「がん薬物療法専門医」ではないので駄目です。と言ったとか・・・

BMSITSGTNM様
わざわざ、ご連絡ありがとうございました。御社はこの件では弱い立場なんですね。以前、厚生省が決めたタキソールの薬価を「やってられねーや!」とちゃぶ台返ししたような勢いはもうないのか、それとも、大人の対応になったのか、いずれにしてもお気遣い下さりありがとうございました。恐れいります。患者さんは自費診療でもいいです、ということですので、海外から輸入して治療と言うことになりました。これならおのやくひんは、うちは関係ありませんといえるわけですからね。299年の歴史っていうのはそういう保身の術を構築している、ということなんですね。すごいですね。でもサービスは二の次なんですね、よくわかります。今後とも弱き我らをご支援ください。