サンアントニオ day1 ②


アトラス試験の、どうやらこれで決まりか、という結果が発表になりました。これは、かなり緩い基準の試験で、適格条件も、乳がんである、手術でとりきれたと思う、タモキシフェンを数年内服していて多少の中断は構わなくて、臨床的に再発してしない、遠隔転移がない、タモキシフェンを5年で終了したものやら、10年まで続けた方がよいものやら、医師も本人のよくわからない、という程度でOK.。年齢とか、どんな手術したとか、組織型とか、ホルモン受容体の状態とか、腋窩リンパ節転移がどうとか、他の治療がどうだとか、そういうことはつべこべ言わない。このような緩い基準で間口の広い試験をプラグマティック(実利的、実際的)な試験と言い、JCOGとは対極をなします。ただ、なんでもありありか、というとそうではなく、プロトコールには、妊婦、授乳中の産婦は除外、網膜症は凝固療法をうけるべし、子宮内膜肥厚など、タモキシフェンの重篤な副作用と考えられる場合は除外、乳癌再発のリスクがきわめて低いような場合は対象としない、その他、生命を脅かすような疾患を併発しているような場合は除外、となっています。アトラス試験は、何でアトラスというか、というと、Adjuvant Tamoxifen: Longer Against Shorterの頭文字です。タモキシフェン5年位で終了するか、それともそれ以上10年、さらにもっと長期と内服するか、をランダム化比較したもので、1996年から2005年の間、36か国から12 894 人が登録され、結果は以下のとおりであります。
乳癌の再発は、 5年内服;711人、長期内服;617人(p=0.002)、乳癌による死亡は、5年内服;397人、長期内服;331人, (p=0.01), 原因に関係なくすべての死亡は、5年内服;722人、長期内服;639人, (p=0.01)だったとのことです。また、とくに気になる副作用では、子宮内膜癌は、5年内服;1.6%に発症、0.2%で死亡、長期内服;3.1%に発症、0.4%で死亡。 総合的にみると乳癌による救命効果は、子宮癌による死亡の30倍のベネフィットがある、とのことでした。 このような試験は、2度とできないような内容(あまりにゆるゆる)と規模ですから、学ぶところはたくさん学ぶ必要が有ります。しかし、会場からの質問はMA17試験の結果との対比をどう考えるかと言う点に集中しました。MA17試験は、5年間、タモキシフェン内服した患者をランダム化して、それで終了とするか、その後5年間、レトロゾールを内服するかの、比較です。形はアトラス試験と似ています。その結果は、生存期間でもレトロゾールを追加した方がよい(ハザード比0.61、P < .001) という結果でした。また、最近では、最初からアロマターゼ阻害剤が使われるので、今後、アトラス試験の結果は、あまり日常診療には生かせないかも知れません。しかし、タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤の差は、それほど大きくないし、また、アロマターゼ阻害剤の関節痛、骨粗鬆症の問題などを考えると、タモキシフェンでいいじゃん、(いいんでないかい、いいっしょや、よかたい、いいら、いいんちゃうなど)ということで、二代目エビデンス侍、相原先生などは、ええんちゃう、ということで、タモキシフェンを使い続けるかも知れません。

サンアントニオ day1  ①


BIG 1-98 試験、すなわち、閉経後ホルモン受容体陽性患者を対象に、タモキシフェンとレトロゾールを比較して、無病生存期間も全生存期間も、レトロゾールに軍配のあがった大規模な比較試験を覚えている人も多いでしょう。全体で8000人ぐらい対象として、最初はタモキシフェン5年とレトロゾール5年の比較で始まりましたが、途中からタモキシフェン2年後レトロゾール3年に切り替える群と、その反対にレトロゾール2年後タモキシフェン3年に切り替える群が加わり、4群比較の試験で継続した、ということを忘れた人もいるでしょう。それで、今回、5年同志の比較の部分で対象とされた浸潤性小葉癌324症例にフォーカスを当てて、のこり2599症例の浸潤性乳管がんと比べて、レトロゾールの効果はどうか、と言うのを検討した結果をのっぽのMetzgerくんが発表しました。見たことも名前も聞いたことがありませんが、しっかりした発表でした。結果は、なかなか興味深いもので、浸潤性小葉癌の方が浸潤性乳管癌よりも、レトロゾールの相対的効果が良好であったと。つまり、無病生存期間も全生存期間も乳管癌は、ハザード比が0.8~0.7ぐらいなのに対して、小葉癌では0.4~0.5ぐらいであったそうです。しかも、小葉癌のうち、Ki67が高い方が、ハザード比が高かったとのことです。会場からの質問で、閉経前で術後2年間、ゾラデックスとタモキシフェン使っている浸潤性小葉癌患者がいるのですが、レトロゾールに変更した方がいいでしょうか、という思い切った質問がありました。さすがに、これには、今回の解析がサブセットの後付け解析であるし、閉経後での検討なので、何とも言えない、というのがのっぽのMetzgerくんの回答でした。それにしても、あれだけののっぽなら、林先生のように、今までも会場の人ごみのなかで、頭ひとつ、ふたつ目だったはずなのですが、名前も聞いたことがない、謎の新人でした。

12月5日 乳癌学会演題締め切りとサンアントニオ day -1


12月5日正午で演題を締切ました。1847演題です。どうもありがとうございます。さっそく査読にまわして採用(厳選演題、ポスターディスカッション、ポスター、e-ポスター)、不採用の分類作業に取り掛かります。サンアントニオは今年は暑くて日本の10月の陽気です。なので今日はマイナス1日なので気軽にポロシャツで出向いて教育セッションを学びました。館内は冷房が効いており若干冷えておりましたが、高野先生はコート、マフラーのいでたちはちょっとやりすぎかと。教育セッションでは、術前のMRIはルーチン検査とすべきではない、とか、センチネル数個陽性程度なら腋窩廓清はしないほうがいい、とか、また、間質細胞の腫瘍退治力とか、ドルマント細胞、微小転移への取り組みとか、なかなか面白い話を聞くことができました。

さて、day1 から始まるポスターディスカッション、サンアントニオに来ている皆さんは是非、参加してレビューワーとしてのコツを習得してもらいたいと思います。というのは、この形式で浜松乳癌学会では、情報・知識・理解の共有をしようと思っているからです。藤澤先生、鈴木先生、有賀先生とか、会場で行き会った人には、タノムヨ、と言っておきました。Ballroom Aでは「Endocrine Resistance」,Ballroom Bでは「HER2」がテーマです。17時過ぎからですので、ヨロシクタノムヨ。

それと、木曜日、金曜日のお昼には、恒例定番のCase Discussion 1、2が12時30分から13時35分まで、Ballroom Aで開催されます。このような形式も取り入れることができればと考えています。柏葉先生とか、会場で行き会った先生には、タノムネと言っておきましたが、サンアントニオに来ている皆さん、臨床力の発露を体験してみてください。