井上博道先生へ


井上先生から頂いたコメントも示唆に富んだ内容でしたので、私からのお答えを掲載致します。

PACS01はCEFx6 vs. CEFx3>DOCx3 の比較でER or PgR陽性症例が8割近くふくまれています。全体ではDFSもOSもCEFx3>DOCx3 の方が良好でしたがサブセット解析では閉経前より閉経後の方がCEFx3>DOCx3 がよさそう、gradeは関係ないみたい、・・という結果でした。ケモは閉経前の方が閉経後よりも効くという相場になっていますが、このPACS01の観察では、エンドキサンによる卵巣抑制効果がCEFx6の方が強いから、ということなのかもしれません。グレードの高低とは関係ないと言う結果はKi67の高低とは関係ない、ということを意味するものなのかもしれません。個人的には、ということでやるのも結構ですがサイエンス井上を目指すなら、術前治療でCEFx6 vs CEFx3>DOCx3 を比較してKi67 が高いポピュレーションはCEFx3>DOCx3 の方がpCRが高い、というような検討をすればいいでしょう。しかし、あまり、矮小な、薬剤だけに目を向けた課題に取り組むのもMSD的に陥りますので御留意下さい。

後藤 剛先生へ


貴重なコメントをありがとうございました。よいコメントでしたので、お答えを皆さんにも読んでもらいたいと思います。
比較試験はER陽性症例を対象としてホルモン療法 対 ホルモン療法+化学療法 というランダム化比較試験が複数実施されました。これらの試験では化学療法の上乗せ効果があってもごくわずか、という結果が得られています。有意差にはなっているけどその差はごくわずか、ということです。これらの試験のいくつかを対象に、Oncotype DXの性能評価が行われたのは御存知でしょう。その結果は、Recurrence Scoreが低い症例では化学療法の上乗せ効果はない、Recurrence Scoreが高い症例でのみ化学療法の上乗せ効果があるという結果でした。また、RSの低い症例では、Luminal Aの特性も有していると言うことも明らかになっています。一方、Dan BerryのJAMAの論文、Dan HayesのNEJMの論文でも、サブセット解析でやはりER陽性、HER2陰性といったLuminal Aの特性を有する症例群では、強いケモ、長いケモ、複雑なケモの有用性は認められていません。頭を使ってこれらの情報を包括的に判断するとLuminal Aには、化学療法は不要という、好ましい結論がコンセンサスとして導きだされたわけです。なにも、当惑するはなしではなく、もし、御不満なら、北海道地区ででも、Luminal Aを対象としたProspective randomised trialで、Chemo vs. Endocrineを検討されたらどうでしょうか?

入り口が変わって歓迎すべき方向へ どうよ GKITは?


St.Gallen 2011が終了して2週間ちょっとだが、今回はすでに「ハイライト論文」の第1回のドラフトがパネリストに配信され意見を求められた。今回は、前回のブログでお話したように、従来のリスクカテゴリーという表が全く消えさり、その変わり、表2として、Intrinsic subtypeと臨床的近似型の対比、つまり、Luminal A、Luminal B(HER2陰性)、Luminal B(HER2陽性)、Basal Like、HER2-richの5病型分類が示されている。これが、入口が変わりました、ということである。腋窩リンパ節転移云々、腫瘍径云々という解剖学的拡がりに着目したリスク分類は完全に姿を消したのである。表3には、各病型別に推奨する治療が示されている。luminal Aには化学療法は原則として用いない、と書いてある。それは、術前でも術後でも同じことである。振り返ると2007年には24病型分類が表として掲載され、その時はまだ、年令が考慮されていた。今でいうLuminalAでも若ければケモをがんがんいく、という癌研スタイルの治療が行われる根拠となっていた。2009年には年齢が外されたが、その後も癌研では癌研スタイルの治療ががんがん行われていた。GKITの信念だろうが、それはやはりあらためるべきであろう。今回は、完全にバイオロジーに着目して、無駄なケモはやめよう、無駄な手術はやめようという方向性が明確に打ち出されたのはとても歓迎すべき方向だと思う。

学生からのメール


先日、名古屋市立大学の6年生学生、豊原祥資君、松本真悟君が春休みを利用して研修に来ました。彼らは腫瘍内科に興味をもっており知人のつてを頼って連絡を取ってきました。今まで、浜松医大の学生の選択ポリクリなどで定期的に学生研修を受け入れてきましたので、現代学生気質は良くわかっておりますが、今回の二名は問題意識を持って取り組んでいるためか、たった1日の研修でしっかりとポイントをとらえ、また、この1日で自分たちの将来への道しるべを見付けたようです。また、直後にきちんとお礼のメールが送られてきました。社会人としてもしっかりしています。学生からのメールを以下に転載しました。

渡辺医院 浜松オンコロジーセンター
渡辺 亨 先生

本日はお忙しい中、見学実習させていただき誠にありがとうございました。先生の診察のご様子やお話を伺い、将来医師として目指すべき姿を見たよう気がします。学生としてまだまだ勉強不足ではありますが、今後も勉学に励み、学問だけでなく人間としての視野も拡げたいと思います。
腫瘍内科を選ぶことに不安もありましたが、今日の実習でこの不安も払拭された気がします。また是非夏にもお伺いさせていただきたいと思います。その際はよろしくお願い申し上げます。
スタッフの皆様にもよろしくお伝えください。取り急ぎ、お礼を申し上げたくメールをさせていただきました。本当にありがとうございました。

浜松オンコロジーセンター 院長 渡辺亨先生
こんばんは、名古屋市立大学医学部6年の松本真悟です。
 一昨日は、私共の診療見学を受け入れて下さり、誠にありがとうございました。今回初めて腫瘍内科専門医の先生の診療を見学させていただき、先生の豊富な経験と、常に最新の医療情報を収集、分析し、考え続ける姿勢に基づく診療のレベルの高さに圧倒されました。そして、先生が薬物治療を通して癌の患者さんを支え、安心を提供しておられるお姿を拝見し、腫瘍内科のあり方と、その素晴らしさとを知る事が出来ました。また、癌治療に関して他院で納得のできる治療を受けられず紹介されてこられた患者さんや、自らの治療について疑問や納得出来ないものを抱えておられる患者さんがこれだけおられるという現状も知る事ができました。「薬物の作用機序について学ぶ事の大切さ」
「外科に負けないために知識を学ぶ大切さ」「裾野は広く、頂点は高く」「基礎医学への理解は、臨床医としての発展の基礎」「医療は社会インフラである」
最先端の癌診療を実施しながら同時に花粉症や副鼻腔炎、白癬などのcommon diseaseの診療も的確にこなされる先生の「裾野は広く、頂点は高く」を正に実践された診療目の当たりにし、自分の知識の不足を思うと同時に、今回先生から授かったひとつひとつの教えの重さを噛み締めております。
内科として癌の根治を狙える科として消化器内科、内視鏡治療や肝治療などを進路として考えておりましたが、一方で癌薬物治療の急速な進歩、そして日本でも腫瘍内科学が芽吹きつつある現状に非常に関心を持っておりました。今回先生の診療を見学させて頂いたことで、腫瘍内科専門医という進路をますます魅力的に感じた次第です。まだまだ未熟な自分ではありますが、これから少しでも先生のレベルに近づけるよう、精進して行く所存です。これからの病院実習で各科の知識をより深め、またご紹介頂いた書籍や、Up to dateなどを活用し、鑑別診断学の学びを深めて参りたいと思います。今後とも、御指導、ご鞭撻の程を頂ければ、誠に幸いです。