転移性乳がん治療 サンアントニオの寒空の下


二日目と三日目の昼には、サンアントニオの定番プログラム、CASE DISCUSSIONがあります。二日目は原発乳がん、三日目は再発乳がんの治療を討論します。壇上には、内科医3-4名、外科医1-2名、放射線科医1名に加えて患者代表があがります。司会は、3年前までは、Kent Osborneがやっていましたが、今年は、Jenny Chang(ジェニーちゃん)がやっていました。会場のマイクの前には、ずらり、列ができます。そして、順番に、自分が担当していて、治療に苦慮している症例を提示します。これは、実症例であるので面白いのであって、日本の乳癌学会地方会でやったようないいかげんな作り話ではありません。高齢者とか、妊娠中とか、アレルギーで薬が使えないとか、実に、さまざまな症例がここでは提示されます。壇上の専門家は、ホルトバジイとか、ピッカートとか、スレッジとか、論文では名前をよく見る人ばかり。超一流の研究者は、超一流の臨床家でなけりゃきけない、という原則どおり、彼らの、回答は実にすばらしいと感じていました、3年前まではね。ところが今年は、どうも感じがちがうのです。二日目の原発乳がんに関しては、数多くのエビデンスがありますし、また、ガイドランやコンセンサスなどが公表されていることもあり、だいたい、ほぼ全員が納得するような回答が示されます。ところが、転移性乳がんを扱った今日の場合、「ランダマイズドエビデンスがないので、答えは、ありません。患者と十分に相談して最良の方法を決めるのがよいでしょう」というような対応が実に多く不満を感じました。というよりは、檀上の専門家の力量の低下を感じた、というほうが正しいでしょう。「ER陽性、PgR陰性、HER2陰性、温存手術後半年で、温存乳房内に再発し、傍胸骨リンパ節と、肝臓にも2個の転移がでた。」という症例に対して、檀上の女外科医が、「私なら、デフィニティブサージェリーで治癒を目指すために、原発切除、傍胸骨リンパ節切除、関節所を行う。」といったのですが、ホルトバジもスレッジもワイナーも、そりゃだめだ、とは言わないで黙っている。司会者にうながさされると、ホルトバジがAIの内服も選択肢のひとつ、と。転移巣の手術など、やるわけないだろうし、原発についても、AIで小さくなれば、それでよい、というのが正解ではなかろうか。なんでこんなになってしまったのか? と考えてみました。転移性乳がんは結局、何をしても治らない、もし、患者が手術をしてほしいといって、それは意味がないといったところで、AIが効いて、ケモが効いて、QOLは保っていっても治癒することはないわけです。それは現実です。それで、もし、あの時、手術しなかったからこうなったんだ、といわれることのないように、なんでもありありの対応をする、ということかもしれません。ランダマイズドエビデンスがない、というのは確かにそのとおりです。ASCOでも、1990年代前半までは、転移性乳がんを対象とした治療概念を検証するようなランダム化比較試験が結構発表された。たとえば、TAMとACの同時併用か、TAMだけで開始するか、ACから開始するか、という3群を比較したオーストラリア・ニュージーランドグループの試験は有名で、こららが元になって、今の治療体系が成り立っているわけです。それが、199年代後半からは、対象は、転移性乳がんだけど、検証するのは、薬剤のよしあしであって、治療概念とか、治療方針の良し悪しを検証するような試験はすっかりと影をひそめてしまいました。確かに、ハーセプチン、タキサン、アロマターゼ阻害剤などの薬剤が、つぎからつぎへ、比較試験で評価され、治療薬としてのスペックが明らかになったということは歓迎すべきです。しかし、この間に、大切なものを忘れてしまったように感じます。つまり、「このような状況の患者には、どのような治療をするのがよいのか」といような、患者の病態に着目して、それをどうにかしようという取り組みがおろそかになっているように思います。いってみれば、薬に気を取られ、患者をみなみということに通じるのではないでしょうか。そのことを、今日、インタビューした、クレイグ・ヘンダーソンに話したら、「100%同意見だ、最近は、遠隔転移があっても原発巣を手術したほうがいい、というムーブメントがある。これは、エビデンスレベルの低い論文が一本出たのをきっかけにそうなった。こういうことは、医学以外の領域でもよくあることだ。それで、外科医が中心になって、遠隔転移のある患者に、原発巣をとる、対、とらない、の大規模比較試験をやるというから、それはいいことだ、どんどんおやりなさい、と言っておいたが、それと、今、臨床試験以外で、原発巣をとる、というのとは、まったく違う話だ。」と言っていました。これには私も同感です。ヘンダーソンや、ラリーノートン、マークリップマンなどの知恵袋が引退した現在、その後継者たちは、薬をみて病気、患者をみなみということにならないといいなあと思います。

サンアントニオ30年(改定第2版)


昨日からサンアントニオ乳癌シンポジウムに参加している。昨年、一昨年と2年続けて参加できなかったが今年は鈴木究子先生が留守中の診療をきちんとやってくれるのでSt.Gallen, ASCOに次いで3回目の長期出張が可能となって、しっかりと勉強できるのでうれしい。サンアントニオ乳癌シンポジウムも30回というからちょうど私の医師としてのキャリアと重なる。
今年の発表は、これと言って目新しいものはないようだけど、薬物療法の方向性ははっきりと見えてきた。つまり、本当に治療が必要な患者に、必要な治療をきちんとやりましょう、という方向である。そのような視点から今回の発表を見てみると・・・・
① 大量化学療法は標準治療と比べて優れているということはない、Dan Berryによりメタアナリシスの結果として発表された。大量化学療法が検討された時代から、ハーセプチンやアロマターゼ阻害剤など、すぐれた薬剤が多数、臨床応用され、有用性が検証されている。大量化学療法の時代は、はいっ、終~了~。
② INT0100試験の対象となった症例について、21遺伝子を評価する再発スコアを用いて、リスク別のCAF追加効果を検討した。するとCAF追加効果高リスク症例では明らかに認められるが、低リスク症例の場合は、効果はみとめられず、タモキシフェンだけでよい、という結果が、Cathy albainによって発表された。21遺伝子を使用した再発リスク評価とは、「Oncotype DX」という商品名の検査キットとして市販されている。日本でも使用は可能だ。今回の見当は、Oncotype DXを応用した検討としては初めてのものだが、ホルモン受容体の発現状況やHER2過剰発現状況のより、アンソラサイクリンが効くか、パクリタキセルが効くかというような検討は、かなり行われている。しかし、これらの検討には常に、レトロの解析であることの批判が付きまとう。確かにエビデンスレベルは低いが、多数の検討で同様の結果がえられていることから、そろそろ、臨床的方針として、ER陽性、PR陽性、HER2陰性(正常)の患者では、ケモをやらない、というような、あるいは、ACだけ、とかCMFとか、場合によっては、UFTのみというような治療の考えてもいいのではないだろうか。
③ お声のいいSteven JonesによるAC対TCの比較の結果が報告された。この試験の結果が発表されるのは2005年についで2回目だが、今回は生存期間もTCで延びているという結果である。確かに、AC4サイクルに比べて、TC4サイクルのほうが生存期間が延びているが、アンソラサイクリン→タキサンで、合計8サイクルとか、CEF100で6サイクルというのが標準になりつつあるようなポピュレーションでTC4サイクルはいかにも中途半端であろう。また、発表されたむくみとか、好中球減少性発熱など、TCの副作用の頻度が低すぎるように感じる。いずれにしてもTC4サイクルは標準にはなりえないようだ。
④ ATACトライアル100か月の観察でも生存期間では差はなしということであった。TAM5年とアナストロゾール5年の比較では、無病生存期間はアナストロゾールが優れているが、生存期間では差がないという結果は、今までの発表と変わらない。しかし、まるで徳川埋蔵金の特番のように、差が出る、差が出る、と言い続け、今度もだめか、と肩透かしを食らわされるようなものだ。発表では、ホルモン療法終了後の再発抑制効果が持続し、それは、タモキシフェンよりもアナストロゾールで大きいという報告もあった。しかし、最近では、術後のホルモン療法は、5年よりも10年、ひょっとするとそれ以上の期間必要だ、というデータもある。そうすると、アロマターゼ阻害剤の意義について、もう一度、考え直す必要があるかもしれない。
⑤ ポスターで穂積先生が、NSASBC03の副作用の経時的変化を発表した。NSASBC03は、タモキシフェン内服から、アナストロゾールに切り替えるか、そのままタモキシフェンを継続するか、という、ABCSG trial 8/ARNO 95 trialに類似した試験である。この発表のポイントは、GOT、GPTなどの肝機能障害、関節痛、ホットフラッシュなどの副作用を開始後、12ヵ月にわたり、推移をみたものである。通常、副作用は、全経過中で、出たか出ないか、出たときゃどの程度か、ということしか報告されないので、このように、続けていってどのように変化するか、という情報は意外とすくないのである。データセンターの緻密な集計作業のおかげであろう。
⑥ 二日目の午前中は、特に印象に残る発表はなかった。トランスレーショナルリサーチということで数題の発表があったが、どれもこれも、遺伝子発現とか、新しいバイオマーカーとか、ER陽性、PgR陰性のさらなる検討など、であったけれど、結局、現在、ルーチンに使われている臨床検査(ER、PgR、HER2など)で得られない情報の可能性がある、という感じではなかった。相当な研究費がつかわれているなぁ~、無駄やなぁ~、という発表もありましたね。そこで、ふと思い出したことがあります。私が米国留学から帰国したときに、慶応大学の上田先生が、医局の朝の勉強会で話してほしい、と言われ、米国でやった研究について、話したことがありました。最後に、阿部令彦教授が、「しかし、アメリカという国は、ずいぶんと無駄なことにお金をつかうんですねぇ~、えぇ?」と言われたことがありました。まあ、いいか。
⑦ 二日目の午前中、最も印象に残ったのは、William McGuire Memorial Awardを受けたMich Dowsettの講演。乳がんの内分泌療法や、内分泌学的生物学をづっと続けてきた彼の話をきき、あらためて歴史の積み重ねを確認することができた。また、ER陽性、PgR陰性問題の経緯やその結末も真摯な語り口とわかりやすく冷静な説明でよく理解できた。また、PgRの意義につついて、自らのデータを示しながら、 Dr. Petoの見解をやんわりと否定した。乳癌の内分泌学のエキスが集約された素晴らしい講演であったと思う。
⑧ Late Breaking Presentationとして、ATLAS Trialが、Dr.Richard Petoにより発表された。ATLASとは、Adjuvant Tamoxifen Long and Short。つまり、タモキシフェン5年と10年を11500人を対象として、ランダム化比較している研究。抄録でも発表でも5年より10年のほうが、無病生存で優れている、ということだが、データの提示の仕方が分かりにくく、結論がどうだ、というのが、ちょっとわかりにくい。大橋先生がスライドを持っているというので、2月のCSPOR年会の時に、解説付きで分かりやすく発表していただきたいと思います。大橋先生、よろしくお願いします。増田さん、調整をお願いします。
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⑨ 学会の収穫は、いろいろな人にあうことができる、ということは以前にも書いた。明日は、ダニエル・ヘイズとクレイグ・ヘンダーソン、ふたりの大物にインタビューすることになった。楽しみだなぁ~。

劇団ひとりSPIKES


静岡厚生病院の院内カンファレンスで乳癌診療とSPIKESについて話した。11月3日の大阪巡業以来、SPIKES関係の講演は3つめ。火曜日には記者向けプレスセミナーで話したが反応はいまいち。看護師や医師、薬剤師などの医療従事者向けの書籍、雑誌を発行しているところのライターの中には、SPIKESの特集を組みたい、というありがたい反応もあったが、一般新聞などはそもそもドタキャン多数。やはり、免疫療法みたいな、うそでもいいから派手な話のほうが一般単純マスコミにはうけるのかなと、いじけちゃう。
静岡厚生病院の玉内登志雄院長は小学校、中学校の同級生。院内の乳癌診療勉強会には、2年前にも呼んでくれた。そのときは、彼も院長になって間もない頃だったし、勉強会の参加者もあまり多くなかったが、今回は、超満員で質問もたくさんでた。玉内院長は、昔とおなじ、ひょうひょうとした感じだけど、癌診療の本質をわきまえて、きちっとした診療体制を構築しているようだ。乳癌診療もかなりハイレベルに実践しており、看護師、CRCの取り組みも積極的だ。「結構、がんばってるじゃん、玉内くん。がん診療拠点病院になればいいじゃん」といったら、「うちはとてもむりだよ」、と。「そうだね、拠点病院にはなっていてもがん診療はまったく三流っていうところもいっぱいあるよね」、「そだよな、あるよな、でも病院の名前はブログには書かないほうがいいんじゃないの」「そうだな、これ以上、敵をつくらないようにしないとね。」「そうだよ」・・・、と、幼馴染の会話は続く。それはさておき、勉強会の話。
今回の勉強会では、それで、SPIKESを話してくれといわれていたが、講演だけはインパクト弱いかなと、ロールプレイを思いついた。しかし、今回劇団員はいないので、私ひとりで患者の夫役で研修の亀井佐知先生に医師役になってもらった。シナリオは、再発告知の場面、患者の変わりに夫が外来に来て、妻には再発のことは知らせたくないので、という設定。肝転移の説明、治療の説明、本人に説明したほうがいいという説明など、なかなかちゃんとできた。やるじゃん。亀井先生は来年から、腫瘍内科のトレーニングプログラムに進むそうだ。いい判断だね。 参加してくれた原壮先生から、こんなにすばらしい講演会ははじめてだよ、とお褒め頂きました(ミシュラン 三ツ星 ★★★)。

タバコ充満厚労省


地下鉄丸の内線改札から厚生労働省(合同庁舎5号館)に続く入り口で会議案内を守衛さんに見せて「会議です」と言って厚労省の地下1階に続く通路を進みます。すると、なんということでしょう、タバコの臭いがだんだん強くなるではありませんか。まさか、と思いつつ1階にあがるとますます強くなるタバコの臭い、相当の違和感を感じますし、正直言って抵抗を感じます。会議の時間が迫っていたのでとりあえず2階に行き会議終了後、時間があったのでタバコ臭の出所を突き止めてみました。わかりました、厚生労働省の敷地内、北側に「喫煙所」があり、そこにうだつのあがらない風情の役人が常時5-6人、2-3分見ていると、入れ替わり立ち代り、ワイシャツの胸のポケットにタバコの箱を透けて見せながら、休み時間でもないのに喫煙者多数!! そこの煙が建物内に流れ込んで来ていました。ちょっとまってよ、ここは日本の保健・健康・医療行政をつかさどる役所だぜ、しかも地下1階~1階と、多くの人が出入りするところでこの臭い、そりゃあないだろう、町工場じゃあないんだから。敷地内全面禁煙にすべきだ。医療機能評価では、喫煙所があると不合格となるのに、いったいこれはどのように考えたらいいのでしょうか。「タバコをすっているのは、旧労働省職員なので健康問題は関係ありません」ってか?? 

納得診療


11月3日は大阪クリスタルタワーで、SPIKES普及協議会主催 「コミュニケーションスキルワークショップ」を開催した。このワークショップは名古屋、秋田に続いて3度目となるSPIKES-BCによるロールプレイを中心とした普及活動の一環。最初に「医療崩壊をくいとめるために医師の付加価値を高めよう」という趣旨で私が講演、SPIKESのポイントも整理して話した。開始前、会場の参加者からは、「セッティングはセッティングやろ、次のパ・・、何やこれ、わからんわ、日本語にしてもらいたいわ、まったくぅ~。」という会話が聞こえた。大阪弁だけに怖い。例によって、そう言っていた本人に、質疑応答のときに「何か質問してください」と当てたところ、「病名告知などで、私たち看護師は、どのようにかかわればいいのでしょうか」と、すばらしい質問をしてくれた。すごいじゃん。
ロールプレイは2題、病名告知のシナリオは、和歌山の粉川先生に、転移再発のシナリオは高知の杉本先生にお願いした。粉川先生12年目のバリバリ、杉本先生は25年目のベテランで、CSPORなどでもご協力いただいている。患者役、夫役は、劇団SPIKES-BCが担当。当初より、思いっきり突っ込んで、ごねて、困らしてやろうか、みたいなのりで、てぐすねひいて本番を迎えた。粉川先生は、こんなはずじゃあなかった、と事前にはずいぶんとぼやいていたが、粘り強い語り口で、乳癌と診断され、これから、最適な治療を行うために全力で取り組みましょう、というメッセージを20分できちんと伝えた。患者役の井上さん、夫役の橋爪先生も、聞きたいことは全部聞いて、十分に納得した、という境地に達したようだった。杉本先生は、シナリオをきちんと把握し、主治医が急遽出張になり、代役として説明する研修医という設定で、肝転移が出たこと、これからパクリタキセルを行うこと、脱毛にこだわる患者の意向にも十分に配慮しつつ、治療の意義をわかりやすくしっかりと説明する、という流れで、これも20分で、患者、竹原先生、夫、福内先生、十分に納得診療であった。
今回のワークショップで認識したことは、「病名告知、転移の説明、治療の説明など、いわゆるBad Newsの説明は、SPIKESを使えば大体20分で患者が納得するレベルまでの説明は可能である。」といういうことだ。一人の患者に20分もかけられない、というのではなく、このような説明をするためには、20分はかけなくてはなりません、ということが真実なのだ。そうすると、20分かけても、病院の固定費、人件費などがまかなえるようにするには、2000点程度の診療報酬を「納得診療加算」として算定しなくてはならないだろう。、患者負担は3割で6000円、安いものだよ。これを、加算なしでやれといったら、医師は疲弊し病院は崩壊する。納得診療加算を算定するためには、説明を受けた患者が「納得しました」という意思表示を署名の形で残さなくてはいけない、というふうにすればいいだろう。
話は変わるが、「情報はただ」、と思っている患者もあり、頭を冷やせといいたいようなことが最近、増えている。突然病院に電話がかかってきて、患者団体の○○に聞いたのですが、先生に伺いたいことがあるのでお願いします、と。今、診療中ですので、セカンドオピニオンの予約をとってから受診してくださいますか、と電話で受付担当者が対応すると、がちゃん、と電話を切る。そんな、不心得ものが増えている原因のひとつは、患者団体をちやほやする、最近の風潮があるのではないかと思うが、どうよ。

10月の毎日(2)


診療に、教育に、研修に、研究にと、あれやこれやとやっているうちに10月も今日で終わり。もうじき楽しいお正月、おっ、ちょっと早いか。10月の後半には、患者向け講演会ふたつと癌治療学会が目玉だったかな。患者向け講演会も、毎年二回の浜松乳癌情報局でやっているようなスタイルがいいと思っている。浜松乳癌情報局の市民公開講座(次回は2月19日ゲスト、ワット隆子さん)では、基本姿勢を、あなたの疑問に何でもこたえます、として、ごまかさず、煙に巻かず、一般論で逃げず、専門家として答えられることは答える、ということにしている。がんサポートの講演会、事前に寄せられた28の質問に全部答えた。一生懸命やったのだけれども、主催者からは、何の連絡もない。あそこはいつもあんな感じだ。あけぼの会の講演会、再発した患者さんだけを招いた会はおそらく初めてだろう。これは、最初から最期まで、筋がきちっととっていた。とてもつかれたけど、充実していた。一般論で逃げない、常に、前を向いて取り組んでいく、ミッション、パッション、ハイテンションが大切。癌治療学会、モーニング教育セミナー、笹子先生の胃癌の話、実に明快で学ぶところ多し、それ以外の教育セミナーはありきたり。それと、最終日午後の教育セミナー、玉石混交の感あり。病理診断の話、外科の話、これはすばらしかった。そのほかはひどいものだ。時間の無駄。どうして病理診断の話、外科の話がよかったか、というと、その道の仕事をやりこんでいるプロが、自らの行動哲学を基盤に理念がにじみ出るような話だったからだ。それ以外は、まるで、間抜けな羅列的な一方的講義で、聞いてるほうも、話しているほうも、意味がないな、と思いつつ過ぎ去った数時間であった。ランチョンセミナー、2-3聞いたが、内容的には、見るべきもの、学ぶべきことまったくなし。こういうプレゼンはしてはいけないな、という意味で、他山の石。今月も、100点満点で85点、来月もがんばろっと。

10月の毎日


10月は千葉→小山とか沖縄→栗橋とか、東京泊まりの翌朝移動など阪神タイガースの死のロードのような講演行脚でちょっときついね。千葉大乳癌認定看護師3期生の講義では「自らの付加価値を高めるような勉強をしてほしい。」という期待にばっちりこたえてくれそうな質の高い認定看護師が多数輩出されそう。でも一番前で居眠りしていたのは国立のがん専門病院の看護師だった。寝ている場合か? 半年間給料もらって勉強させてもらっている幸せをかみしめてみれば寝ている状況ではないだろうに。しかもその給料をはらっているのはわれわれ納税者なんだぜ。私は居眠りにはとりわけ厳しいのだ。栃木でも沖縄でも栗橋でも、医師だけでなく看護師、薬剤師、学生なども講演を聴講してくれ、ポイントをついた鋭い質問もたくさん出た。一連の講義、講演で感じたことは、乳癌診療においては正しい方向にチーム医療が成熟しているということ。医師、看護師、薬剤師などが、厳しく激しい議論を通じ、切磋琢磨によりそれぞれがそれぞれに付加価値を高めることによって、トータルで医療チームの質がぐんと向上する。長い間、チーム医療はかなり誤解されてきた。みんな仲良く和気あいあいというのも違う、看護師が点滴をしないというのも当然違う、MDアンダーソン式の効率の悪い分担業務も違う。チーム医療の伝道師だと言ってきた上野先生本人が、私はチーム医療の専門家ではありませんと言い切ったのにも驚いた。日本の厳しい医療環境ではアメリカ式の分業を導入することは不可能だし無意味なのだ。MDアンダーソン礼賛はそろそろ見直す時期にきているだろう。

当局って呼ばないで


CRCと臨床試験のあり方を考える会議というのがCRCセミナーの1週間前にありました。私はランチョンセミナーで、腫瘍内科医の立場で最近感じているCRCの働きぶりなども踏まえて、がん薬物療法の治験の問題点などを話してほしいという、司会の斎藤裕子さんから依頼されたので話してきたわけです。常々、私は「考えるCRCになってほしい」と思っているので、斎藤さんとのメールでの打ち合わせで、そのように伝えたら、是非、そのように、とのことでした。斎藤さんからは学会などでお目にかかる度に、いろいろと役に立つことを教えてもらっており、以前、CRC業務として、重箱の隅をつつくような細かいことばかりが求められ「過剰品質」が問題になっているという話を聞いたことがありました。つまり、治験の本質から見ると、全く意味のないような業務、記録、文書保存、承諾書、同意書、訂正印、訂正記録、委員会審査が求められ、その対応にCRCはてんてこ舞いになっているのだそうです。実際、治験を担当すると、やれ、文書受領のサインをしろ、訂正印を押せ、計画書の改訂を審議しろ、などなど、どうでもいいじゃん、というような些事(佐治ではない)を企業の開発担当者は求めてきます。また、試験計画書には、どうでもいいような検査が必須になっていたり、とにかく、くだらない決め事が多すぎる!! プッツン!!となって、何でこんなことが必要なの?と聞くと、「申し訳ありません、当局の指示でして」、とか、「これは、グローバル試験ですので日本だけ変えることができないんです」とか、とにかく、『当局の指示』っていうのと『グローバル試験』っていうのを盾にして、その場だけ、すまなさそうな顔をしている開発担当者が日本全国に大量発生しているようです。ひょっとしたら、そのようにマニュアルに書いてあるのかもしれません。これでは開発担当者としての説明責任を一切果たしていないのですが、とにかく、当局グローバル試験というのがくだらないことが依頼される際に、金科玉条のごとく使われており、これが、過剰品質、過剰対応、CRC消耗の元凶であるらしい、ということを突き止めたわけです。

先日、アバスチンの大腸がんの市販後調査の集まりが静岡であったのですが、そのときにも、なぜ、サードラインではアバスチンは使用してはいけないのか、たとえばFOLFIRIが終わってFOLFOXをちょっとやって手の痺れで中止した場合、その後のアバスチンはどうしてだめなのか、と聞いても、虫害の担当者は、当局の指示でしてとしかと答えません。思わず、出たーぁ、と叫びたいようなお決まりフレーズでした。担当者としての説明責任を全く果たしていないじゃないか、と指摘しても、へこへこしているだけで、その場限りの対応にむなしさを感じたものでした。

では、本当に当局はそういっているのでしょうか? そういうデータもあったほうがいいかもしれませんねー、とか、調べるに越したことはありませんね、とか、念のため、治療と治療の間に、患者の電話するというのもいいかも知れませんね、とか、当局担当者のその程度の発言が、当局の指示となってしまうこともあるのかもしれません。また、「担当官は、首を縦にはふらなかったようだ」ということで、「当局の了解が難しい」という話が伝達されたり、徳川幕府260年の頃と何も変わっていないみたいです。

新薬導入直後というのは、とかく過剰な期待があります。イレッサ(ゲフィチニブ)は、世界初の肺がんの分子標的薬剤ということで、夢の薬みたいな扱いで、行政も、医療界、患者も、熱病にかかったように暴走しました。冷静だったのは製薬企業だけだったかもしれません。それで、数々の特例

を設けて、市販される前に、自費で使用できるような行政の仕組みまで、つくられ、その間に、とんでもない不適切使用が横行しました。エルプラット(オキザリプラチン)も、薬の実力をはるかに超えた前評判がたち、超法規的ともいれる措置で発売が早められました。古くは、イリノテカン、イダルビシンが発売された直後に、多くの患者に使われました。中には、とても具合が悪い状況のこの薬の発売を待って、やっと間に合った、と治療されたけど、もともとの病気が悪くって不幸にして亡くなった方もいます。それが、「発売直後の副作用死亡多数」と新聞紙上でも取り上げられました。しかし、それらの薬で、病状が一気に好転した患者もいたでしょうが、そのような奏効例は報道されません。そうすると、企業も行政も事なかれ主義となります。企業は、とくに、社運をかけて開発した新薬が、悪い評判が立つのが怖い。そのため、効果よりも安全、安全よりも会社の評判を重視するのでしょう。その結果、発売直後の使用制限は異常ともいえるほど厳しくなり、治療すべき患者に使用できないという状況になってしまいます。ハーセプチンもそうでした。心毒性、インフュージョンリアクションが起きるから大変な薬剤です、専門医がいないと使えません、ICUがない病院では使ってはいけません、使用記録は逐一、すべての症例で提出しなくてはいけません、などなど、ものすごい高いハードルが設けられました。私も施設を2回異動し、その都度、虫害担当者が立ち入り調査に入りました。そして、ICUがないなど、要件を満たさないからハーセプチンの使用は許可できないといわれたことがありました。このような過剰な使用制限のおかげで、発売後、ハーセプチンは新聞沙汰になるような副作用は出なかったようですが、「ハーセプチンは、アドリアよりも危険な薬」という風評がたち、使いにくい薬剤という印象から、治療を受けるべき患者が治療されなかったという不適正使用の状況が定着してしまったのです。今だに、「ハーセプチンは、危険な薬だから、なるべく使わないで、最期までとっておく」、という間違った考えを持っている外科医は結構多いです。治療が必要な患者でも、「死んでもいいのなら使ってやるが責任はとれないぞ」と担当医に言われたという患者もいました。羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)という感じ。虫害にきくと、これも当局の指示ですので、とわれました。当局も、うまいこと利用されているのかもしれない。

では、当局っていったい誰なんでしょうか? ゾメタの外来化学療法加算の話のときには、当局の担当者の氏名年齢内線番号まで把握してやり取りしたのですが、製薬企業が間に入ると、当局くん、になってしまい、突き詰めると、担当者の顔が見えず、厚生労働省の建物が言っている、みたいな話しになってしまうのです。当局くん、さようなら。

継続の力


CSPOR CRCセミナーが昨日、終わった。関係者の皆さん、ご苦労様でした。今回で15回目、まさに継続は力なりである。CRC育成のための勉強会は、当初あちこちで開催されたが長続きしているものは少ない。CSPORでこのように継続できている理由は、その企画力であろう。ありきたりのプログラムにはならないよう内容の充実にいつも心がけている。しかし、問題も多い。

問題として一番に感じていることは、参加者からの質問がない、ということ。「学会や研究会に行ったら必ず一つは質問して来い」、これが、国立がんセンターレジデント時代、恩師、阿部薫先生から教えられた教訓だ。質問しよう、という姿勢で取り組むと、一生懸命に聞くようになる。最初から、受け身の姿勢だから質問も出ないのではないか。もちろん、講義の内容が難しすぎて、ということもあるかもしれない。そのときは、難しすぎてわかりません、と質問してもかまわない。そういえば相変わらず、居眠りしている人が多い。とくに、若いCRCは講義で居眠りする習慣が学生時代からついているようだ。今度から寝ている人はつまみ出す。質問が全くでないので、ついつい、チューターであるわれわればかりが質問することになり、そうすると、どうしても質問の内容は専門的となり、時には楽屋ねたで盛り上がることもある。せっかく時間と労力とお金を使って参加しているのだから、居眠りせず積極的に質問してもらいたい。

今回、参加者の6割は初めて参加するという人、さすがに15回すべて参加という人はいないが、それでも10回以上参加している人は20%ぐらいいる。このようなベテランリピーターは、スーパーバイザーとして、グループワークなどでの指導者としての役割を担ってもらっている。グループワークの形態も定着してきた。スーパーバイザーも、それぞれが工夫をしてうまいことやっている。CRCのひよこ組では、一日目はなかなか話が盛り上がらなかった。しかし、二日目の終盤になると、何を目指して仕事をすればいいのか、わからないときにはどのような本を読んで、どうやって勉強すればいいのか、など、CRCがこれから育っていく上で習得すべき基本的な知識や、勉強の仕方が共有されていたようで参加者(顧客)満足度点数も高い。

継続的な勉強と言っても個人のレベルでの継続とセミナーとしての継続は違う。初回参加者が60%となると、いつも初心者向けのプログラムも用意しつつ、上級者でも満足できる内容を提供する必要がある。ポイントは、グループワークを増やして、卵、ひよこ、アヒルの各レベルを並行して行えばいいのだろう。

今回、一番気になったのは、がん情報センターの話。あれはいったいなんなんだ、といいたいような内容である。そもそも、患者への情報提供は、医師患者関係の枠組みの中で対応すべき問題であろうに。とくにピンボケは「がんは怖いですか?」というアンケートをとりました、って、いうじゃない。 昔、スネークマンショーというパロディがあった。現場からの実況という感じで「私は、戦場に来ています。今、あちらにちょうど、たまにあたられたかたがいます。伺ってみましょう、『いたいですか?』『戦争、お好きですか?』」というのとおんなじだ。私たち、高額納税者の税金をもっと有効に使ってくれないと困るよ。

外部から来てくれた講師にいちゃもんをつける、というのも問題、という意見もあるが、なあなあで済ませていい、ということはどこにもありません。 

2009年乳癌学会地方会


第6回 日本乳癌学会中部地方会
2009年9月12日-13日(土・日)
浜松アクトシティ コングレスセンター
 
 
再来年の話ですが
役に立つ企画を考えますので
多数の皆様のご参加、ご支援
をよろしくお願い申し上げます
 
 
第6回日本乳癌学会中部地方会
世話人 渡辺 亨
 
第5回は来年、金沢で開催です。こちらも多数のご参加お願いいたします。