夏の雑感


ウインク 暑い暑いとうだっている間にあっという間に夏が過ぎ去りました。夏の間に某大学の研修医が外来見学にやってきました。将来、腫瘍内科になりたい、ということでしたので、熱をこめて指導、お昼にはうなぎまでご馳走しました。とても勉強になりました、といきいき帰っていきました。浜松に行くと外来見学もできるしぃうなぎも出るしぃ、という評判がたてば多くの研修医に腫瘍内科の真髄を教えてあげることができます。どうよ。
天才 小川道雄先生の本で、研修医のための早朝講義(へるす出版)は、実に面白い本だと思います。診察室においてあり、こま切れの時間があるときに読んでいます。ネクタイ締めて白衣のボタンは留めなさい、病院ではエレベーターは患者のもの、若者は歩きなさい、外科の歴史、麻酔の歴史、カルテ記載の意義など、今、読んでもなるほど~と関心します。ぜひ、ご一読をお勧めします。
ガマン 支店を結んだテレビ講演会というのが各社盛んに行われています。わざわざ遠くまで出かけなくても自分の町にある○○製薬の営業所や支店までいけばいろいろな講演会も聞ける、質問もできる、ということでとても重宝します。昨日の「よくわかるSt.Gallen2007(アストラゼネカ)」では20近くの質問がありました。学会での講演などでは、ちょっと聞くことができないような、奇抜な質問もありました。
質問その一 「開業医なんであまり勉強していないんですが、最近、治療を選ぶ際に役立つような、ミューテーションとか、ありませんかね?
回答「あほか、勉強しなくちゃだめだぞ」
質問その二 「うちの病院では、グレード1がやらと多いんで、僕の判断でケモやる患者をきめているんですが、通常、グレード1はどれぐらいの割合あるものでしょうか?」
回答「僕の判断ってなんですか。まず、病理診断医と話し合いの場をつくり、グレード診断のクオリティコントロールをしっかりやるほうがいいでしょう」
 
猫 夏の間、蓄えていたエネルギーを使って、二学期、またがんばろう~の合言葉、ミッション、パッション、ハイテンションってか。。。

第4回浜松乳癌情報局市民講座


浜松発 – –  浜松乳癌情報局主催、ブリストルマイヤーズ製薬共催、 第4回公開市民講座が、8月19日、浜松市のアクトプラザカンファレンスセンターで開催された。事前の予約も含め250名近くの参加者で、会場はほぼ満員であった。今回は、「顕微鏡でみる乳がんの性格」というタイトルで開催、基調講演は、癌研究所病理部、秋山太先生による、「顕微鏡でみる乳癌の性格、病理医って何?」と題するすばらしい講演であった。秋山先生は、病理医の不足を訴えた。静岡県はその中でも、全国47都道府県中、46位、つまり、びりから二番目の少なさだそうだ。せめて30位ぐらいかと思ったのだが、あまりの低さに驚きである。浜松医科大学での病理医師育成に期待するところ大である。
秋山先生は、また、病理診断の難しさについて、実際の病理標本の写真を提示しながら、専門家でも、癌か、癌でないのかの判断で、意見が分かれるような場合があることを説明してくれた。事前に寄せられた質問の中に、病理診断を指紋認証のように、コンピューターでできないかというものがあったが、講演を通じて病理診断の困難さを知ると、この質問の答えがおのずから明らかになるだろう。病理医師の不足、乳癌病理医のもっと不足、病理診断の難しさ、など、実態がわかりやすく解説された。これからは、秋山先生のような弁舌さわやかな病理医が、患者に直接病理診断結果を説明する「病理外来」の開設が必要だろう。また、一般の人々の間では、病理診断で白黒がばしっと決まる、というような誤解と、病理診断に対する過剰な期待があるようで、そのあたりも今回の講演で、明らかになったので、そのギャップをどうしたら埋めることができるか、ということも考えないといけない。
第二部、パネルディスカッションには、事前に56の質問が寄せられた。司会の大佐古先生を中心に、3回の打ち合わせを事前に行い、当日も午前中から開始直前まで、回答をみんなで準備した。浜松乳癌情報局市民講座では、全ての質問に、正面から、可能な限り正しく誠実に答えよう、というのが、われわれの基本姿勢である。過去3回、そして今回も大変よかったというお言葉をたくさん頂けたのは、このような真正面からの取り組みがあったればこそ、ということだと思う。これからも、同じように、がんばっていきたいので、皆さんも、どうぞ、ご遠慮なく、質問をお寄せ頂きたい。次回は、2月17日(日曜日)、「患者と医師との正しい付き合い方」というようなテーマーで、ワット隆子さんを基調講演にお招きして、浜松アクトプラザでの開催を予定、たくさんの皆さんのご参加をお待ちしています。

野にくだりて思うこと


 2003年7月31日、私は国立がんセンター中央病院を退職し、宮仕えに終止符を打った。昔から国家公務員は自分にはむいていないと思ってはいたが、一度は宮仕えを経験しておくのもいいだろう、という父の勧めもあり、国家公務員を20年も続けてしまった。2003年8月は、丸々1ヶ月間夏休み、久しぶりで自然の中で思う存分養った英気もその後の強烈営利外来ですっかりと消耗してしまった。宮仕えの放漫経営から強烈営利追求医療への180度の転換で、ある種のカルチャーショックを感じたが、それにも2年で見切りをつけ、現在は、自ら経営者の立場もかね、宮仕え放漫経営の良さと悪さ、強烈営利医療の悪さと悪さ、を冷静に見極める力もついたと思う。そのような視点でみると、かつて宮仕えをしていた頃の自分や、現在、大学やがんセンター、公立病院などにいる仲間のぬるま湯的気質を見るにつけ、なんと、燃費の悪い医療をやっているのだろう、とつくづくあきれる。若い人でも、目が曇ってくるのではないかと感じることが多い。野にくだりて学んだことを、どうにか、宮仕えの連中にフィードバックできないものだろうか。

若者よ、真剣に生きなさい


最近、医学部学生とか、研修医と接する機会が多くなり、新たな刺激を受けることも多い毎日です。臨床薬理学実習では浜松医大6年目の学生が毎週二人づつ、週1日、外来研修に来ます。臨床薬理学のポリクリとして来るので、薬のことを勉強したい、という内科系、小児科系を志す学生が大部分です。俺、外科志望なんで、難しい薬の事とかよくわからないっす、でも、手術好きっす、みたいなバカは来ません。患者で使用している薬剤について、その理屈を学ぶ、これが、臨床薬理学ですから、どのような、作用機序で? どのように吸収され?どのように体の中に分布し? どのように分解され? どのように体外に排泄されるの? とか、抗癌剤だけでなく、内科で使うスタチンとか、ARBとか、抗生物質とか、診療の合間に、学生に尋ねます。愛情を持って尋ねるのですが、わからなくて、どぎまぎするのを見るのもこれも楽しいです。それで、薬剤添付文書をインターネットで入手する方法を教えます。学生さんは、薬剤添付文書のなんたるかを全く知らないので、読み方や、既知の有害事象と、未知の有害事象など、お話するのです。時たま、薬で皮疹がでたり、下痢したり、熱が出たり、という訴えの患者さんがいるので、この副作用は、既知なの?、と聞くと教えたとおり、インターネットですぐに調べる。それで、「添付文書に載っているので既知です。頻度は5%未満となっているから、結構、多いのでしょうか?」ぐらいは、すぐに答えられるようになります。また、UpToDateや、役に立つインターネットサイトや、EBMの実践方法など、いろいろお話することができます。概して、医学部6年目までの内科系を志す若者はとても真剣に生きているように感じます。しかし、それ以降が問題なのかもしれません。
がん関係の勉強会やカンファレンスが多いので、手術大好きっす、みたいな20世紀型外科医の無精卵(あたためてもものにならない)タイプの研修医によく出会います。私が北海道で研修していたころ、外科のお偉い先生でも、俺たち外科医は、難しいことはわからないから、考えるよりも手が動いてしまうんだよね、とかいって、思慮のない無謀な手術を正当化している先生がおりました。そのようなのりで、一日中、術衣の上下に白衣を羽織り、スリッパで院内をずるずると歩いているような、そんな研修医、これがよくないのです。
 
Q 先生は、何年間の予定でこの病院に来ているのですか? (研修医に対しても、一応の敬意を表して、先生と呼びます。)
A わからいっす。教授にいけって言われたから来たので、帰って来いっていわれたら、たぶん、帰るとおもいます。
 
おまえは、あほか!! この医局崩壊の時代に、何を時代錯誤的なことを言っているのか!! 自分の運命を他人に託すようなことをしてはいけない、自分の人生は自分で切り開け!!真剣に生きなさい、と言いたい。
 
また、カンファレンスでも、意見を言わせると、妙に、おちょくって、くだらない冗談を言い、その場だけを取り繕うとする若者も見かけます。これは、最近のテレビのひな壇芸人バラエティーショーの影響のように思います。その場でうけるような面白いことを言えるかどうか、これが磨くべき芸風だ、みたいな、そんなのりで、おちゃらけて、まあまあまあ、と、その場だけをやり過ごそうとする態度では、事の本質を習得できないでしょう。くそまじめな暗い顔をしている必要はないけれど、若者よ、真剣に生きなさい、わからないときはへろへろせず、わかりません、勉強します、と言いなさい。 自分の付加価値を高める、それが、研修医時代にめざすことです、と言いたい。

第3回浜松乳癌カンファレンス印象記


浜松発 台風4号の接近する7月14日(土曜日)、浜松オンコロジーセンター圭友ホールにおいて第3回浜松乳癌カンファレンスが開催されました。悪天候にもかかわらず、会場はほぼ満席、今回は静岡県西部地区のみならず愛知県東部地区の病院からもご参加いただきました。今回のテーマは「乳癌患者における骨の健康を考える」、国立長寿医療センター先端医療部長の細い孝之先生による公演「乳癌治療における骨粗鬆症の基礎と臨床」では、骨粗鬆症のガイドラインの解説を中心にお話で、エビデンスに基づいた骨粗鬆症の予防、診断、治療、さらに乳癌薬物療法との関連について、明快、簡潔、最新の情報を提供して頂きました。参加者からは、さまざまな角度からの質問がありましたが、細井先生のお答えは、ズバッと軽快、わかりやすいお答えでした。次に、ミニレクチャーとして、St.Gallen2007に沿った日常診療の進め方について、資料を作成したので、それを配って説明しました。しかし、「千の情報より一の実践」ということで、毎月第2、4水曜日、浜松医療センター乳癌症例カンファレンスについてご紹介いたしました。後半は、恒例の「治療に難儀する症例検討会」です。今回は、菊川市立総合病院外科、久保田修先生、浜松医療センターレジデント、植田猛先生、聖隷浜松病院外科、吉田雅行先生、浜松医科大学外科、小倉廣之先生から、ディスカッションポイント豊富な症例をご提示いただき、中身の濃いカンファレンスを展開することができました。細井先生ほか、症例を提示してくださった諸先生、および共催のファイザー製薬株式会社の皆さん、どうもありがとうございました。次回、第4回浜松乳癌カンファレンスは10月6日(土曜日)16時から開催いたします。治療に難儀する症例は知恵を集めて治療に取り組み、標準治療の普及を目指したいと思います。多数の皆さん(医師、薬剤師、看護師、製薬企業の皆さんなど)のご参加をお待ちしております。次回からはNPO法人「がん情報局」主催となります。

時代錯誤2題


最近、聞いて調べた看護師関係の時代錯誤的話題をふたつ。

その一

H市医師会では市の中心部の一等地に地上8階地下2階、免震構造の新医師会館を建設するそうです。すばらしい!しか~し、その中に入る看護学校は、看護師養成ではなく准看護師養成の学校だそうです。時代の過渡期としての移行措置ならともかく、どうもそうでもないらしい。えー!? この時代に准看護師養成? 時代コンセプトが明らかにずれているように感じます。

その二

S県がんセンターでは、抗癌剤点滴の際の静脈確保は、いまだに医師の仕事とされており、多忙な医師が静脈確保のための当番に割り当てられているそうです。また、別の病院では、患者であふれかえっている外来中に、医師が点滴のために処置室に呼ばれ、看護師が眺めている横で静脈確保して、その後、抗癌剤点滴への切り替えは看護師がやるそうです。え~?? それって、今の話なの?

厚生労働省によると94%の医師が看護師・准看護師に静脈注射を指示しており90%の看護師・准看護師が日常業務として静脈注射を実施しているそうです(2001年厚生科学特別研究)。ところが(旧)厚生省医務局長通知(1951915)では、静脈注射は「医師または歯科医師の業務で、看護師の業務外」としており、前記の実態と、局長通知での解釈とのかい離が目立っていることが指摘されています(厚生労働省)。看護師の業務外とされた理由は、①薬剤の血管注入により、身体に影響を及ぼすことが大である、②技術的に困難である、の2点。しかし、最近では、厚生労働省では医療施設や在宅においても、看護職員が静脈注射を実施することへの国民のニーズが高まっていることや、大学、さらに大学院レベルでの高度の看護教育が普及しており、静脈注射に関する原理原則、薬剤の作用および特性、緊急時の対応等が習得され、緻密な観察に基づく的確な判断力と技術力のある看護職員が育成されているとして、2002930日、上記の局長通知を廃止し、新たに「医師または歯科医師の指示の下に、保健師、助産師、看護師及び准看護師が行う静脈注射は、保健師助産師看護師法第5条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱う」との医政局長通知を出しました。この通知に基づき、医師は医師らしい仕事、看護師は看護師らしい仕事を患者のためにしなくてはなりません。がん医療の領域ではチーム医療の充実が叫ばれており、それには、業務の適正な分担が大切です。抗がん剤点滴と言っても、静脈確保は、生理食塩水なり、ブドウ糖液なりで行うわけですから、通常の静脈確保と同じこと。今の時代、静脈確保は、患者に信頼される看護師の業務として認識しなくてはいけません。医師は、静脈確保に走り回るのではなく、SPIKESの実践による正しい情報提供のために時間をかけなくてはいけません。

ゾメタ外来化学療法加算


「オンコロジストの4月17日の独り言」で書いた「ゾメタの外来化学療法加算」についてご報告します。先ほど、静岡県社会保険支払基金から電話があり、厚生労働省から、正式に加算を認めるとの連絡があったとのことでした。顔の見える厚生労働省の対応は、大変合理的であり、すばらしいと思います。ちなみにこの問題については、乳癌学会からも正式な要望書として提出しておりました。各都道府県毎に、社会保険も国民保険も足並みをそろえて、ちぐはぐにならないようにゾメタの外来化学療法加算については、これを認めるようにお願いします。そのようにすることにより、がん薬物療法の健全な普及が支えられることになると思います。長いものには巻かれない姿勢は、いつも大切であることを改めて痛感致しました。

乳癌学会は楽しいが・・・


今年の乳癌学会も楽しく終了しました。今年はガイドラインの改訂、教育研修委員会主催の教育セミナーなどの発表もあり、いつも以上に過密スケジュールでした。二日目のプレジデンシャルシンポジウムの司会中には、前の日の夜更かしが原因か、発表内容の突拍子のなさが原因か、途中、頭痛で一時退席しバファリン服用。そうそう、思い出した、あの発表はいったい何なんだ、指導者は予行演習したのか、プレジデンシャルシンポジウムをなめるんじゃないぞ!!と心の底では煮えたぎる思い、隣の光山先生も、あきれ顔・・・。冷静に演者に質問しましたが、返ってきた答えが、これまた、(とんちんかん)X2、話にならない。
楽しいことは数々ありました。それこそ、1年に1回、このときしか会わない人たちと、旧交を温めるのもとても楽しい。今年は何故か、二日連続で同じようなメンバーで盛り上がりました。また、恒例となった土曜日夕方からのCSPOR研究者会議。これは、新しいプロトコールの説明、プロトコールコンセプトの検討など、毎回毎回、内容も充実し、参加者からも、乳癌学会で一番勉強になるのは、CSPOR の会議です、というご意見を多数頂きます。この会は、「排他の理論」は全く持ち込まず、勉強したい方、臨床試験に参加したい方、臨床試験のプロトコールコンセプトを提案したい方、CSPOR財団にご寄付頂いていている個人、企業の方、などなど、どなたでも参加OKとしています。今回は、近々始まる臨床試験プロトコール二つの説明と、新しいプロトコールコンセプト三つの提案がありました。コンセプト提案は、始めて提案というものもありましたし、何回か目で、だいぶ内容整理されものもあり、新しい試験計画の卵がだんだん孵化に近づいていくという感じです。もっとも、何回か提案されたけど、内容の充実が得られず、孵化しなかったものや、いつの間にか、勝手に取り下げられたと思ったら、アイデアぱくって、他で試験として進められているものもあったりで、歩留まり100%ではありません。しかし、智恵を磨くのはいいことですから、ここにも排他の理論を持ち込まず、正しい志を尊重したいと思っています。ASCOでは、会期中、早朝6時から、あるいは夕刻7時から、毎日、このような、investigators meetingが開催されています。あれだけのエビデンスが毎度、毎度提示されるわけですから、そのためのミーティングなど、たくさん、たくさん、開催されるわけです。日本ではどうかっていうと、会期中、毎晩、○○大学第○外科同門会、とか、○○県人会とか、旧交を温める方が先で、勉強のプログラムは後回し、それもいいけどほどほどに、っていった感じでしょうか。日曜日、午前中は、恒例のコアセミナー。演者の、Dr.DIANA LAKEは、緻密にレビューをこなしてくれました。事前の打ち合わせで、2時間のセミナーを、ただ、一方的な講演だけではなく、5つの部分((1)taxan update, (2)HER2 testing and herceptin, (3)Carboplatin in Breaset cancer, (4)Lapatinib and beyond, (5) Newer agents,)にわけて、meet the professor 形式でQ and Aをやろう、ということになりました。会場からはたくさんの質問があり、これも参加者から、実に勉強になりました、とお褒めのお言葉を頂きました。ってなわけで、ASCOほどではなかったけれども、横浜での乳癌学会も楽しく終了しました。おっと、それともう一つ、あの「追加発言」というやつ、温故知新というコンセプトのようですが、年寄りの繰り言、思い出話に終始し、乾杯の挨拶ならまだしも、タイトなスケジュールの学会のセッションでやるようなものではありません。やっぱり意味がないと思います。よっぽど、インプレッシブなお話とか、ご教訓なら話は別ですが、あの程度のものならば、今後は、あれはなしにしよう、時間の無駄です。

今日から秋葉原


毎週火曜日の腫瘍内科外来(外来化学療法、セカンドオピニオン)、今日から秋葉原に移りました。東京オンコロジーセンターの小さな出発です。
電気街口を出て左に行き道を渡って正面、「東京ライフクリニックアキバ診療所」という看板が掛かっています。お越しやす。

治験


治療薬や診断方法、診断機械などが、ほんとうに患者にとって役に立つかどうかを決めるには、患者に被験者として協力してもらい、臨床試験をきちっとやらないとわかりません。ときどき、マスコミに紹介されるがんの血管内治療、あれは、臨床試験をきちっとやっていないので、ほんとうに役に立つものか、わからないし、多分、だめだと思います。だめなのに、あたかもすばらしい治療方法であるかのように、宣伝されているものがあまりに多いのは、日本国民の「中学校、高等学校での科学教育」の不備が原因だと私は思っています。今日の新聞に、「コラーゲン、たくさんたべて、お肌プルプルは幻想」という記事が載っていました。前から、そんなもの、効くはずはない、と思っていましたが、お肌つるつる、という宣伝文句に多くの日本人女性はだまされていたのでした。しかし、そのとなりに、「元気の源、発酵コエンザイムQ10」とか「歩いたり、すわったりグルコサミン+コンドロイチン」というコマーシャルが堂々と出ています。いったい、何を考えいるんだ、朝日新聞、科学部は!! 斬り~!!(ふるーい)。新しい薬、新しい診断機械、診断試薬などが、本当に役に立つのか、どの程度、安全なのか、と言うことを、きちっと調べるためには、ネズミやウサギ、サルやキジを使った動物実験で、いくら、よいよい、と言ったって、話にならないのです。いつのことだか、思い出してごらん、シークワーサーが胃癌に効く、なんていうネズミ試験の新聞記事が那覇空港の売店のあちこちに貼られ、売り子のおばさんが、胃癌に効くよ、言っていた。あれ、どうなったの? ネズミ試験の結果は新聞では報道しない、ということにしたらどう? 
 
臨床試験のなかで、新しく開発された治療薬や診断機械での「性能を調べる」、そして、結果をもとに、厚生労働省に、製造あるいは、輸入承認を得るための、データ収集の試験を、とくに「治験」と呼びます。癌治療薬は、ほかの薬剤とちがっていて、安全性を調べる段階の第1相試験を、がん患者に被験者としての協力を求めて行います。たとえば睡眠薬、では、安全性を調べる段階の試験(第1相試験)、有効性を調べる段階の試験(第2相試験)でも、一般の健康人に協力してもらい、被験者となって性能評価をすることができますが、癌治療薬は、そういうわけには行かないのです。第1相試験では、史上始めて、あるいは地球上で始めて「ヒト」に、その薬が投与される、という場合もあります。いったい、どんな種類の副作用が出るものなのか?、どれぐらいの投与量で副作用がでるものなのか?? 体内に入った薬は、何時間ぐらいたったら、血液中からなくなるのか??? どれぐらいの投与量ならば、まずまず、安全に投与できるか???? 体内で分解され、排泄されるのは、肝臓から、腎臓から????など、様々な疑問について、検討するのです。それまで、動物で、ある程度、あたりをつけてはありますが、所詮、ネズミ、サル、などの動物での出来事ですので、ヒトとは違います。第1相試験では、せっかく、ヒトに投与するのだから、ついでに有効性も見ておこう、という程度であって、有効性を検討する段階は、次の第2相、ということになります。しかし、第1相試験で、ある程度安全、ということが証明されないと、第2相には進みません。
では、第1相試験に被験者となって協力する患者にとってのメリットはいったい何なのでしょうか? 他に有効と思われる治療方法がないというがん患者に被験者としての協力を依頼するのですが、第1相試験に協力しても、どんな副作用がでるかすらわかっていない、ましてや、がんが小さくなる、痛みなどの症状がとれる、寿命が延びるといった治療効果も、あるのかないのか、わかっていないわけです。第1相試験に参加した被験者では、20人に一人程度は、がんが小さくなるというメリットがあるから、それに望みをかけて、試験に参加してもらうよう、説明する、という意見も聞いたことがあります。次世代のがん患者への贈り物として、自らはボランティアとなって、新しい薬剤の開発に協力してほしいと、そういう話もありますが、果たして、自らががんで苦しんでいる患者にとって、このような発想が自然にわいてくるでしょうか。第1相試験を、第三者的に見ていると、こういうような理屈しか見えてきません。しかし、実際は、かなり違うのです。
昨日、癌治療薬の第1相試験の症例検討会があり、私も「企業側の医学専門家」として参加しました。症例検討会とは、治験に参加し、規定の治療を受けた被験者で、いつ、どのような副作用がでたのか、とか、レントゲン写真やCTで、なにか、異常がみられたか、とか、わずかな検査値異常、軽い症状でも、それを主治医はどう考えているのか、薬剤との因果関係はあると思うのか、ないと考えているのか、効果は少しでもあったのか、治験が終わったあとの患者はどうなっているのか、など、一被験者あたり、30分ぐらいかけて、討議するもので、極めて真剣、真摯で、薬剤の評価ということだけにとどまらず、被験者の病状について、まさに徹底的に討論するものです。この治験は2病院の共同参加で行われているのですが、当然、それぞれの病院では、毎週、場合によっては毎日のように、治験に参加した被験者の経過について、徹底的に討論しているわけですが、治験の症例検討会では、さらに、つっこんだ討論が展開されます。症例検討会では、主治医は、被験者の臨床経過の細部、たとえば、熱が出たときの状況や、そのとき院内のカンファレンスでは、どのような討論がなされたか、など、実によく覚えています。いや~、実に関心しました。治験に参加することにより、多くの専門家が、力を合わせて、これほどまでに細部に亘ってよく気配り、目配りしてもらえる、というのは、被験者となる大きな、いや、最大のメリットではないかと思います。治験に参加して、症例検討会を経験していくうちに、担当医師のプレゼンテーション技術も磨かれますし、治験をきちんとこなすためには「臨床力」も鍛錬されます。また、なによりも、患者に治験参加を依頼し、参加後の被験者に経過を逐一説明するための説明力が身に付きます。この説明力は、治験に参加した被験者に対してだけではなく、それ以外の患者に対しても自然と活用されるので、総合的な癌診療力が大幅に向上するものです。臨床試験や治験のことを全くわかっていない中途半端な患者団体などは、モルモットにされる、標準的治療があるのにわけのわからない新薬を検討する意味はない、薬剤は100%安全でなければだめだ、など、とんちんかんな議論を展開し、臨床試験を妨害することもありました。(トラウマです)。治験の症例検討会での臨床研究者の真剣な態度を見れば、きっと、○デア○○○も目から鱗がおちるでしょう。