採点 電子カルテ


電子カルテが本格稼働して1ヶ月が経過しました。総合点は65点、どうにか合格、というところでしょうか。カルテの所見欄、SOAP:S(患者の主観的訴え)、O(医療者からみた客観的所見)、A(病状、経過の評価、診断、判断)、P(投薬、検査、経過観察、他院受診などの医療計画)、については、様々ツールもあり、画像もあつかうことができ、とても便利で、申し分ありません。過去所見欄も、時系列で表示され見やすく、前回の検査実施日なども容易に検索できます。本日所見と過去所見、これらのウインドウが画面の左側に上下に並びます。右側には、薬剤処方、検体検査、画像検査、超音波検査など、実施した医療行為と、それにより発生する診療点数が表示されます。導入した電子カルテは、これらの医療行為をすべて「処方」という呼び方をします。我々は「処方」というと、薬剤処方のことを意味すると思っているので、検査や画像診断まで、処方と呼ぶことに、違和感を感じましたが慣れました。
 
入力は、キーボード、完全にブラインドタッチでできますので、患者さんの顔を見ながら入力することは、いとも容易です。よく、患者さんから「先生は、コンピューターの方をずっと見ていて、私の顔を見てくれない」という不満を聞くことがありますが、私の場合、それは全くありませんね。
 
当院の電子カルテの決定的な弱点は、 
「計画的外来診療を支える未来予約機能がない」
という点。これが、決定的な不満です。未来予約とは、来週受診時に、診察前にレントゲン写真をとる、とか、抗がん剤治療を、前の週にオーダーしておいて、薬剤室でも、準備しておく、というようなことです。また、再来予約機能が全くのお粗末です。これは、診療所の診療形態が、計画的に行われるのではなくって、「具合がわるいから受診する」というような、かぜ、はらいたなどの急性疾患対応、「薬がなくなったら来て下さい」という形態の慢性疾患対応、が普通の姿であり、予約という概念が乏しかったためでしょう。このような、「未来予約機能」がない点は、外来抗がん剤治療を行う浜松オンコロジーセンターでは、致命的な不備、と感じます。しかし、診療所バージョンでは、未来予約ができるシステムは、私の知る限りは、ありません。一方で、最近、厳しく禁止されている、薬のみ、という、無診療投薬が、やりやすいようにできているのは問題でしょうね。社会保険事務所などでは、「患者を診ずして投薬するなかれ」ということを徹底しようとしていますが、街の診療所では、未だに薬だけとりにきて、再診料、慢性疾患指導料をとっているところが、後を絶たないと聞いています。いってみれば、電子カルテは、このような、いきあたりばったりの悪しき診療習慣に合わせて、チューンダウンしている、と言えるのではないでしょうか。
 

テレビに出るよ、バラエティだけど


【赤坂発】 3月24日(金曜日)夜7時から放送予定の2時間特番「みのもんたの医者ズバッ」のスタジオ収録が、3月14日赤坂のTBSで行われました。何故誤診がおきるか、ドクハラの現実、医師の給料の話、医師の謝礼の話、手術ミスは何故おきるか、夜間救急の怖い話、など、芸能人ゲスト6人と、医師20名が、激論を闘わせる、というスタイルです。司会は、みのもんた氏、久保田アナウンサー(動物奇想天外)。また、スタジオには3名の匿名看護師がすりガラスの箱のなかに座らされて、看護師は見た!みたいな切り口で、どうでもいいことを変な声で話していました。本物の看護師かどうか、よくわかりません。バラエティ番組なので当然低俗ですが、慶應の古川先生や心臓外科医の南淵先生らに久しぶりでお目にかかり、楽屋では話もはずみ楽しい収録でした。私も昔は「今日の健康」とか「生活ホットモーニング」とか「医食同源」とか、お堅い番組出演が多かったのですが、最近はこの手のバラエティばっかです。せめて「試してガッテン」ぐらいの医療情報番組から呼ばれるといいのですがね。お暇なかたは24日、TBS系(浜松はSBS)夜7時、「みのもんたの医者ズバッ」ご覧下さい。

勉強になったCRCセミナー


【白金(しろかね)発】3月11日、12日の2日間、CSPORとJGOGの共同運行による第12回CRCセミナーが、白金の北里大学薬学部で開催、参加者107名、これは、たぶん過去最高でした。スタッフも加えると146名、CSPOR 事務局、JGOG オフィスのみなさん、ご苦労さまでした。
 
今回も充実した講義、活発なグループディスカッション、楽しい懇親会で、教育研修小委員長としては、とても満足しています。
 
大橋靖雄先生のレビューによると、初参加者は60名、講師陣として初登場は6名でした。参加者の職種はCRC58名、医師22名、看護師、薬剤師CRAなどと、多岐にわたっています。
 
次回は、9月23日、24日、と秋の行楽シーズンをぶちこわして開催します。内容はSELECT-BCのデータマネージメント、CSPORから発表された研究の徹底討議、BNP7787のキーオープン(はたして、しびれ防止剤は有効か?)などなどなど・・・、盛りだくさんの内容だよ!

皆さん、次回お目にかかるまで、よくよく勉強しておいて下さい。

ちょっとお披露目 「がん常識の嘘」


「がん常識の嘘」 
第6章 抗がん剤は世代交代が起きている より

 

・・・・当時は乳がん、卵巣がん、肺がん、大腸がん、などの、固形がんの治療は、まだ手術で切るしかない時代でした。固形がんに対して抗がん剤の効果がある、と初めて報告されたのは1969年のことでした。全身に広がった乳がんに対してCMFVPを行ったところ70%の患者でがんが消えたというデータがアメリカ癌学会で報告されたのでした。ちなみにCMFVPとはCyclophosphamide(シクロフォスファミド、商品名「エンドキサン」)、Methotrexate(メソトレキセート、商品名「メソトレキサート」)、Fluorouracil(フルオロウラシル、商品名「5エフ・ユー」)、Vincristine(ビンクリスチン、商品名「オンコビン」)、Predonisone(プレドニゾン、商品名「プレドニン」)の5種類の薬剤の組み合わせ。現在のCMFの基本となった併用方法です。これはもう、がん治療の学会では天変地異に等しい衝撃がありました。しかし一度消えたがんも、やがて再発するということが明らかになり、二の矢、三の矢をしかけるように、二次治療、三次治療と、治療を繰り返すことや、もっともっと効果の高い薬剤の開発に、全世界の製薬会社が血道をあげたのでした。そして1970年台に登場したのがアドリアマイシン、1980年台にはシスプラチン、そして90年代にはタキソール、タキソテールが登場し、2000年頃までには、悪性リンパ腫、乳がん、胃がん、肺がん、食道がん、頭頚部がん、大腸がん、卵巣がん、子宮がん、などの、頻度の高い固形がんに対する細胞毒性抗がん剤治療が出そろったわけです。しかし、これらは、毒でもってがんを制することを基本的なメカニズムとして効果を発揮する薬です。副作用も強い、効果はかならずしも長続きしない、ということから、なんとかがん細胞だけを狙い撃ちするような薬ができないだろうか、その発想から考え出されたのが、分子標的薬剤です。一時期、ミサイル療法という呼び方をされたこともありました。がん細胞の特定の部分を標的にミサイルを撃ち込む、現在の分子標的薬剤の発想です。ミサイル療法という呼び方が今ひとつ定着しなかった理由は、ミサイルはいいが、なにを標的に撃つの?、テポドンじゃないんだから目標をはっきりさせてよ、という問いかけに答えることができなかったからです。それに比べるとハーセプチンは最初にHER2タンパクという、細胞増殖に深く関与する標的があきらかになり、あとから、ミサイルであるハーセプチンが作られたという経緯があるため、薬剤として成功したと考えられます。リツキサンもそうです。B細胞リンパ腫の表面にあるCD20という表面マーカーを、まず標的と定め、それに対する抗体として作成されてのが、リツキサンです。

 

この続きは「がん常識の嘘」をお買い求めくださいね。

電子カルテのかげひなた


浜松オンコロジーセンターに電子カルテを導入して1週間が経ちました。マニュアルを見ながら使いこんでいくうちに、だんだんと慣れてきて使いやすいなと感じる部分、どう考えても不合理な部分、いったい何を考えてこんな仕組みにしているんだとややむかつく部分、経験知が足りなくて稚拙な部分、など、があります。
 
今回導入した電子カルテは、診療所向けの既製品、使い勝手が良かろうが悪かろうが、購入した以上、それに慣れるしかありません。大病院で電子カルテを導入する場合、病院側からのワーキンググループなどと呼ばれるユーザーの代表者グループと、電子カルテ制作業者の開発チームとが、毎週のように話し合いをして、その病院の運用にあわせて、システムをカスタマイズする、というプロセスを進みます。今はずっとずっと合理的に事が進むのでしょうが、私が国立がんセンターでTRUMPとMIRACLEという名称の2つのオーダリングシステム導入に関与した時は、まったく不合理かつ、わがままな要求がユーザー側から次々と出され、開発チームは、そのわがままをなだめる事にエネルギーを費やしていたようなこともありました。たとえば、まだマウスが一般的でなかった頃、ユーザー代表の中のわりと若い年代の○○先生から、「是非マウスを使えるようにしてほしい」との要求が出されました。開発業者側は「技術的には可能です。」と答えます。すると、ユーザー代表の中のわりと年配の医師が答えます。「○○君、マウスって意外と不便なんだよね、知ってる? 机が広くないと、全部動かせないんだよ、広い机は外来には入らないから難しいんだね。」 このような不毛な議論が延々と続き、マウスをつけるけど、使いたくない人は使わなくてもできるシステムにしてほしい、という結論になりました。しかし、開発業者側は、「技術的には可能だけどなあ~、予算的にどうなんだ!、いったい、いつまで、ユーザーのわがままにつきあわなきゃ、いけないんだ。斬り~」という心の底のさけびが聞こえてきそうな表情で、だまってやり過ごしておりました。こんな感じで、多かれ、少なかれ、大病院のオーダーメイドシステムは、その病院のわがままな要求に振り回せれて、ずぼずぼの作り込み になっており、それをそのまま他の病院で使えないので、開発経費に無駄が多い、また、他病院とのデータやりとりなど、とてもできなさそうなシステムがあちこちの病院に導入されたのでした。
 
一方、既製品の電子カルテ商品の場合、いくら不合理であると、10人中9人が感じたとしても、そういうことになっているので、そういう物として使って下さい、ということになります。その最たるものが「A5サイズ処方箋」対応です。私は、前からこの不合理は知っていました。というのは、国立がんセンター中央病院で院外処方を始めたときのこと、薬剤数が多くなり一枚の処方箋では、足りず2枚になって、患者さんが、そのうちの一枚だけを薬局にもって行ったので、薬剤が全部処方されなかったことがありました。その時、処方箋用紙をよくみると、A4の半分しか使ってなくって、残りの半分には、処方された薬剤とは全然関係のない薬剤の注意書きがずらずらとプレプリントされているのです。薬剤部長に、「このずらずらの部分は無駄だから、処方薬を記載する部分を広くしてほしい」と御願いしたところ、「院外処方箋はA5と厚生(労働)省が決めているので、それはできない」と言われました。A4の半分の部分だけを使えば、「A5サイズの処方箋」の基準を満たすので、それはそれなりに賢い対応です。しかし、どうしてA5でなくてはいけないのでしょうか? 世の中、A4が国際サイズとされ、いままでB5などが使用されていたカルテや公式文書もすべてA4に変更されているのに、なんでA5などという、みみっちいサイズの紙を厚生労働省は指定しているのでしょうか。なんでA4でもOKとしないのでしょうか、この時代に。
それで、当院で導入した電子カルテも、「A5サイズの処方箋」にしなくてはいけない、ということで、電子カルテ純正品のレーザープリンターは、すべてA4とA5の2種類の用紙をいれるダブルトレー方式なのです。最近の汎用機は、レーザーでもインクジェットでも、ほとんどがA4のみ対応なので、ダブルトレー対応のプリンターは、デザインもださい、音もうるさい、ずうたいもでかい、のです。A4で印刷した院外処方箋を縮小コピーしてA5にする、とか、A4も受け付ける院外処方薬局が繁盛しているとか、いわれなき「A5サイズの処方箋」のために、世の中、おかしなこと、無駄なことがいっぱいおきているように感じます。そこでひとこと、いっ・・・、おっと、あまり言うと小嶋社長やホリエモンのようになってしまうとこまるので、ここは、おとなしく、おとなしく、おとなしくおとなしくしなくてはいけません。しかし、言いたいことはいわないとストレスたまってやけ食いしそう。そこで、いっぱつ、いっか~ん、いっか~ん、いっか~ん、いっか~ん、いっか~ん、すこしすっきりしました。 では、次回、電子カルテシリーズは、「経験知がたりなくて稚拙な機能」についての独り言を聞いて下さい。
 
 
 
 
 

医師-患者関係


過日訪れた町の症例検討会で、医師-患者関係について考えさせることがありました。O先生が術後の患者さんに抗がん剤治療を提案したところ、患者さんが、抗がん剤はしない、という道を選択された。しかし、数ヶ月で遠隔転移が出た、ということで、そこからの治療方法の選択をどうしましょう、ということがポイントでした。すると、会場の後ろのほうに座っていらっしゃった、やや年配の地元の先生が、「何で術後の抗がん剤治療をやらなかったのか。患者が拒否するなら、説得してでもやるべきだろう。自分で説得ができない、と思ったら、先輩でもだれでも呼んできて、説得してもらうべきで、それもしないのは、怠慢ではないか!」と、喝~っ!!!!みたいな迫力で主張されたのです。担当のO先生は、とても理性的で、よく勉強されており、その地域にあっては、標準的治療普及の若きオピニオンリーダーとしてしっかりと診療をされている先生です。この患者さんにも、十分に時間をかけて、再発のリスク、抗がん剤治療を実施した際のリスク抑制効果、そして、抗がん剤治療をやることのハーム(副作用、時間、お金)をきちんと説明して、その上で患者さんが選択した道を尊重した、ということなわけで、私も、それでいいんじゃないかな、と思いました。ここで、医師ー患者関係の4つのパターンがある、という話、これに行き着くわけです。詳しくは、近々、朝日新聞社から出版される「がん常識のうそ」をお読みください。えっ、本の宣伝だったの? そ~なんですよ。

55年通知


エビデンスに基づいて、しっかりとした抗がん剤治療が行われるようになってきたことは、それは、喜ばしい事だと思います。しかし、物事には何事にも、節度というか、常識的な判断も大切です。抗がん剤は、世界各国の製薬企業で開発されていますが、実際に新しい抗がん剤を開発するだけの力のある製薬企業は、アメリカ、フランス、イギリス、イタリア、ドイツぐらいに限られてきています。日本でも抗がん剤の開発力のある企業は、1ー2社あるかないかです。しかも、最近の厚生労働省のジェネリック医薬品を後押しする政策で、開発力のある製薬企業は、どんどん減っているのではないでしょうか。そうすると、どうしても、海外での新薬開発が先行します。昨今、よく話題になる「日本では有効な抗がん剤が使用できない」という話、あれは、半分は事実です。半分は、というのは、「新薬」イコール「いい薬」というわけではない、というのがひとつの理由です。海外で開発途上の薬剤の情報も日本に入ってきます。しかし、現在開発中、すなわち海外で治験中ということは、効果があるのかないのか、安全に使用できるのかできないのか、と言う問題を吟味している最中であって、海外開発品のなかで、安全性に大きな問題有りとして、開発が中止された薬剤もあります。つまり、開発途上の薬剤は、海の物とも山の物ともつかない、という状況であって、日本で使えないことが、むしろ安全である場合もある、ということです。半分の真実、という問題、これは、たとえば、ジェムザールという抗がん剤。これは、日本では、肺癌と膵癌で承認されています。しかし、これら以外に、乳癌、卵巣癌で腫瘍縮小効果が証明されております。延命効果はなくても、QOLの向上や症状緩和につながると考えられます。食道癌には、パクリタキセル、カルボプラチン、TS1など、膵癌にはTS1が有効、と言うことは海外や日本での臨床試験で明らかにされていますが、日本では、厚生労働省の承認がおりていない、という理由で、使用することができません。なかには有効性が確認され、承認手続き中のものもありますが、これもつかうことはできない、という認識にならざるを得ません。

 

しかし、ジェムザール、パクリタキセル、カルボプラチン、TS1などは、すでに市場に出回っています。ただ、適応となる癌が限られているだけです。このような状況に対して、最近、がん専門病院では、「当院では使用できません」と、それらを全く使用しようとしません。この間、患者さんから聞いてびっくりしたのですが、私も隅々までよく知っている東京のがん専門病院の内科で「ジェムザールを使ってくれませんか」、という卵巣癌の患者さんに対して「死んでもいいんだったら使ってやる」と言い放った医師がいるそうです。これって、いったいなんなのでしょうか。

 

効果がない、あるいは効果があるかないかわからない、という状況ではなく、2割~6割の患者で、腫瘍が縮小する可能性がある、それにともなって症状緩和、QOL向上が得られる可能性がある、患者さんも希望を持つことができる、という状況です。木で鼻をくくったように「当院では適応のない薬は使えません」と、まるで厚生労働省のお役人にように言って患者さんを追い返すか、それとも、医師として裁量で、「可能性があるので、どうにか使ってみましょう」とするか。そうは言っても、卵巣癌の患者さんに、ジェムザールを使用すると、社会保険でも国民保険でもレセプトの審査で査定されてしまいます。査定される、というのは、医療機関から、保険支払い基金に患者負担分以外の医療費の支払いを請求した際、病名と一致しない診療内容があると、支払いを拒否される、つまり、医療機関がその分、赤字になってしまうということです。このような状況では、正々堂々と、抗がん剤の適応外使用を行うことは不可能です。と、だれでも思うでしょう。

 

ところが大丈夫なのです。「昭和55年通知」というのが厚生省(当時)から出されています。これは、2項目からなり「①医学、薬学上、公知の有効性が認められている薬剤は、保険適応外であっても、その使用に対しては、柔軟な対応をすべし。②この対応に関しては、支払基金間での相違がないように配慮すべし」というものです。つまり、医学的あるいは薬学的に、エビデンスのある薬剤は、保険承認の有無に関わらず使用すべきである、しかも、都道府県、社会保険あるいは国民健康保険など、支払い基金間で、対応が異なってはいけない、ということです。昭和55年といえば、まだ、日本医師会が行政にも影響力を持っていた時代で、良い意味で、医師の職業人としての裁量が認められていた時代です。行政というのは、律儀なもので、25年経った今でも1回出された通知は有効なのです。ですから、海外でのエビデンスがあれば、この「昭和55年通知」に従って、患者さんのベネフィットを重視して治療に使用することは正しいことと言えます。ただし、医療行為の責任や、患者に対する説明責任は、治療行為を実施した医師にあることは他の医療と同じです。

 

PS.

K君へ:死んでもいいんだったらジェムザールを使ってやる、なんていう態度は、論外であることは言うまでもありませんよ。驕らず、原点に返り反省しなさい。

 

 

電子カルテ


新年、あけましておめでとうございます、皆さん。今年もよろしく御願いします。
 
浜松オンコロジーセンターでは、今年1月に電子カルテを導入することにしました。情報の効率的出し入れのためには、電子カルテは、必要不可欠なインフラストラクチャーですから。
 
浜松オンコロジーセンター開設を決めた時点で、すでに電子カルテの導入を決めていましたが、その前にまず、業務の流れをある程度、定型化しなくてはいけませんでした。また、電子カルテ導入してからも、業務手順は、ブラッシュアップされることが期待できます。
 
国立がんセンターにいたとき、IBMの診療支援コンピューターシステム「ミラクル」導入にあたり、ユーザー側のまとめ役をやるように総長だった阿部薫先生に言われました。それでがんばりました。現在、東大にいる小山博史先生や、北条文彦先生といっしょに2週間にわたるアメリカ視察旅行にも行き、医療情報化システムの最先端を見聞きした経験も「ミラクル」設計に十分に活かされたと思っています。ミラクルというニックネームも、この旅行中に考えたのです。ちなみにミラクルMIRACLE)は、Medical Information Systems for R esearch, Administration and Clinical E xpertiseの頭文字。奇跡という意味です。
 
アメリカ施設旅行では、小山先生が事前に周到な計画をたててくれ、かなりタイトなスケジュールであちこちを視察して回りました。なかでも、すごかったのはPubmedを作っているNLM(National Library of Medicine)を訪れた際、NLM所長ご自身が、すべてを案内してくれたことです。こうやってPubmedのコンテンツは作っている、検索システムは、こういう考え方に基づいて設計してある、など、丁寧に説明してくれたものでした。また、当時の電子カルテの最先端や、小山先生得意技のバーチャルリアリティなど、今では当たり前だけど、当時としては、狐につままれたような、必ずしも正確には理解できないような体験をたくさん積んできたものでした。1996年ごろの事だった思います。
 
そんな経験もあり、医療情報の電子化には、積極的に取組んでいくつもりです。システムアップができて、運用が安定したら、超音波やレントゲンなどの画像も完全電子化して処理できるようにしようと思っています。それから、、システムの互換性の問題、個人情報保護の問題もありますが、病診連携に活用できるようなlocal,→regional,→nationwide→globalなシステム構築ができれば、と思っています。
 
しかし、導入を具体的に検討する段階になって、意外な新事実が次々と判明、まさにスタジオ騒然という感じです。今年は、連載物として、「電子カルテ導入奮闘記」をお届けしたいと思います。
 
 
 
 
 
 

医療経済の影


医療経済
医療経済というと、『高齢化社会をむかえ国民医療費を抑制しなくてはならない』という大義名分のもと、『開業医などの私立医療機関は儲けすぎ』という紋切り型の議論と、併せてコスト意識を先天的に持ち合わせていない医師が、経営効率など自分の管轄外とばかりにわがまま勤務を続ける公立病院の慢性的赤字が何となく許容される風潮、その狭間を縫うように、医師に薬剤選択権を与えず、スケールメリットを楯に薬品問屋を泣かせ薬価差益を絞り取るチェーン店形式の病院グループ、そして、そのようなやりかたで利潤を挙げている病院グループを自他ともに「勝ち組」と賞賛する風潮、などなど、どこが、なにが、だれが、正義なのか、全くわからない、混沌とした暗闇を歩いている様な、そんな不安を引き起こします。倒産さえさせなければよろしいという程度の、あっま~い 環境で、曲がりなりにも医院経営に携わってみて、私は国家公務員の時代には、全く見えなかった問題に目を向けることができるようになりました。最近、勉強したことの一端をご紹介し、一緒に考えてみたいと思います。
 
不可解な逆ざや現象
ハーセプチンの販売会社、日本ロッシュ(現・中外製薬、担当者は日高伸二さん)は、「トラスツヅマブ病理部会」を定期的に開催して、ハーセプチン治療の対象患者を選別するためのHER2タンパクの免疫染色(IHC)法や、遺伝子増幅を調べるFISH法の適正実施をまじめに検討しました。病理部会では、ハーセプチンの治療対象患者を選別するためのフローチャートを作成、これは国際的に受け入れられているものです。IHC法を最初に行う場合には、染色結果が「0」、「1+」は「陰性」、「2+」は「擬陽性」、「3+」は陽性 と判定されます。陰性患者はハーセプチンの治療対象とはなりません。陽性は、当然、治療の対象です。問題は、擬陽性である2+。2+の患者では、FISH法を行い陽性なら治療対象となります。一方、IHC法を行わないで、最初からFISH法で判定する場合は、陽性なら治療対象となります。IHC法で2+の場合には、とにかくFISH法を行わなければいけません。ここで、極めて深刻かつ、悩ましい問題が発生するのです。FISH法の保険診療点数は2000点、つまり、FISH法を行った場合、医療機関の収入は20000円、患者負担が6000円で14000円は国保なり、社保なりの支払い基金が負担します。ところが、FISH法を実施する検査会社では、検査料金として、A社は50000円、B社は40000円、C社は38000円と設定しています。その理由は、FISH法を行うためのキットなどの原価が約30000円だからです。実をいうと、A社もB社もC社も、実際のFISH法の検査は、H病理診断研究所に外注しています。医療機関は20000円の収入ですが、検査会社からは38000円から50000円を請求されることになり、「逆ざや」現象が発生しているのです。
 
 
逆ざや解消のためのさまざまな望ましくない工夫
この逆ざや現象を、ああそうですか、と、赤字覚悟で容認するおおらかな医療機関もあるでしょう。つまり、診療報酬としての収入は20000円、検査会社への支払いが38000円~50000円、2~3万円の赤字は許容しちゃうよ、っていうことです。しかし、医療機関の経営を考えた場合、唯々諾々と、赤字を容認するまぬけはいません。いろいろな工夫が、そこにはあるようです。
 
最も妥当な工夫としては、検査会社は20000円で検査を実施する代りに医療機関も利益なしという「両者痛み分け」方式。まゆをひそめる工夫その①としては、IHC法で2+なら、FISH法は行わないで、ハーセプチンを使ってしまう、という「現状容認型退行解決」方式。まゆをひそめる工夫その②としては、検査会社は16000円程度で検査を請負い、4000円の収益を医療機関にもたらす。その見返りとして、ちょめちょめを医療機関に御願いする、このちょめちょめ、は、いろいろあるのでしょうが、このような不透明な部分が新たな問題を引き起こしかねません。そして、「混合診療」となりかねない工夫として、医療機関は、20000円の保険診療収入とは別に、患者から検査費として20000円を徴収。併せて40000円のうち、30000円~36000円程度を検査会社に支払い、残りを医療機関の収益とする、というやり方。これは、どう考えても犯罪行為ですが、このやり方がまかり通っている状況が実在するのです。
 
これでは姉歯問題と同じです。そして、このようなゆがんだ医療経済構造を生み出しているのは、不適切な保険点数の設定にあると私は思います。FISH法は原価が高いのだから、それなりの点数を付けなくてはいけないのです。または、国民医療費を押さえるためならば、たとえば、1件あたり20000円を超える検査の場合には、差額を患者から徴集する混合診療を行ってもよい、というのならそれもいいでしょう。しかし、、いくら大義名分があったとしても、本音と建て前を使い分ける、このような行政の姿勢が諸悪の根源であると感じざるをえないのは、私だけでしょうか。
さあ、ご唱和ください、久しぶりに、さん、はいっ!
いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん

市民講座のお知らせ


浜松乳がん情報局 主催
 
第1回 市民公開講座
 
 「乳がんの治療、治療中の生活、あなたの疑問に何でも答えます!」
 
 
私たちは、乳がんに関する正しい情報を一般市民の方、乳がんの患者さんやご家族のみなさん、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者、製薬企業、マスコミの皆さんに存分に提供するため、浜松乳がん情報局を開局致しました。
 
浜松乳がん情報局では、第1回市民公開講座を開催します。240人が参加できる部屋を用意しました。是非、ご参加ください。
 
 
平成18年2月19日(日曜日) 14:00~16:30
 
アクトシティ浜松 コングレスセンター4階
 
 
基調講演
 
乳がんと乳がん治療
 
司会 吉田雅行(聖隷浜松病院)
講演 渡辺亨(浜松オンコロジーセンター)
 
パネルディスカッション
 
あなたの疑問に何でも答えます
  
あらかじめ、皆さんからおよせ頂いた質問に対して
私たちパネリストがお答えします。
 
パネリスト 曽我千春  
              (乳がん患者生活支援コーディネーター)
パネリスト 武石優子  
              (乳がん看護専門看護師をめざして勉強中)
パネリスト 吉田雅行  
              (聖隷浜松病院乳腺外科)
パネリスト 徳永祐二  
              (浜松医療センター乳腺外科)
パネリスト 小倉廣之  
              (浜松医科大学病院第1外科)
司会進行 渡辺 亨  
           (浜松オンコロジーセンター腫瘍内科)
 
 
参加申し込み、お問い合わせ、パネルディスカッションで取り上げてほしい疑問、質問などは、もうじき、専用のホームページをご案内できると思います。
それまでは info@oncoloplan.com   へおよせ下さい。