先週、データセンターに行き、NSAS試験データのMDCを行った。MDC(Medical Doctor Check)とは提出されたCRFから中止、再発、死亡などのエベントを確認する作業。データセンター側は野村さんがきちんとデータをまとめてくれる。何をチェックするかというと、提出されたCRF(Case Report Form:症例報告用紙)から、再発がいつどのように診断されたかとか、試験薬が有害事象のために患者の希望で中止された、というすじみちが読みとれるか、など。MDCの段階では原資料である診療録と照らし合わせるわけではないのでCRFに書かれていることを読みとって、事実として扱うのだが、中には、今まで再発の報告がないのにいきなり死亡報告が来ているというような、なるほどね、というすじみちが読め取れないCRFもある。そういう場合は、担当医師に連絡し再調査を行う。症例のすじみちを、チェックボックスや記号選択、記入ボックスなどだけで、デザインされたCRFで把握できればいいのだが、なかなか難しい。そのため「narrative=物語、談話」」として自由記述欄を備えるCRFもある。これだと下手な字、憎しみをこめた殴り書きで書いてあってもなるほどね、make sense!という場合もあって重宝することが多い。自由記述欄を設けるのは邪道だ! というストイックなデータマネージメント原理主義者もいる。最近では、電子媒体を用いて症例データを報告するEDC(Electrical data capturing)が効率がいい、優れている、ということで多くの治験、臨床試験で導入されているが、これだと自由記述ボックスはお呼びでない、となることが多いため、よほど完成度の高いCRFでないと、データセンター側では、ますますnarrativeが分かりにくくなってしまうようだ。野村さんが虫害ヒメダカに頼まれて、データセンターの立場から臨床試験のノウハウを話してほしいと頼まれたと困っていた。へー、そういう会があるんだ、最近、全然こっちにはそういう話、来ていないけど、まあ、それはそれとして、narativeが見えないということを話せばいいじゃん、と勧めておいた。電子カルテ導入の話と似ていて、導入前の運用をきちんと、とことん整理しておかないと使いにくい電子製品になるということはよくある話です。データマネージメントといえば、1990年にEORTCデータセンターに留学した時、CRFのデザインを専門としている部門があったことに驚き、帰国後、さっそくJCOG臨床試験にCRFという用語をとりいれ、それまでは症例報告帳になっていたCRFを単票形式にしたりと近代化をはかったものでした。また、1995年、ハーセプチンのグローバルトライアルのミーティングに参加したとき、参加者が「イナネ、イナネ」と連呼していたが意味がわからず、「イナネ」とメモって友人に後で、What is イナネ?と尋ねたら、Internetと教えてくれた。まるで、What time is it now? を、ほったいも、いじるんでねえ、ときいてきた農協おじさんみたいなもんで、隔世の感がありますな。