朝日新聞連載


先週も大阪大学で白血病に対するワクチン療法の臨床試験が始まった、というニュースをやっていました。どんな治療でも、安全で効果があることを確認するには臨床試験が必要です。裏を返せば、臨床試験をやっているということは、その治療が安全なのか、効果があるのか、まだわからない段階にあるということなのです。それなのに、テレビニュースに出ていた研究者は、「この治療の副作用はほとんどなく、効果も期待できると思います。」とコメントしていました。ワクチンは、抗がん剤と異なり、副作用は確かに軽いようです。だからといって臨床試験を実施する前から、「副作用はほとんどない」と言い切るのはいかがなものでしょうか。安全性を確認する段階を第一相臨床試験と呼びます。この段階では、どんな副作用があり、どれぐらいの投与量でそれが現れるのかまだわかっていません。抗がん剤の場合、第一相臨床試験に参加するのは、既存の治療すべてを終了し、有効な治療方法がないがん患者です。3-6人づつの被験者を対象に、極めて少ない投与量から段階的に増やしていき、副作用のために、それ以上、投与量を増やせない段階に達したら第一相試験は終了です。この時の投与量を最大耐用量と呼びます。第一相試験に参加する被験者は、効果は全く現れない場合の方が多いということも一般にはあまり知られていない現実です。次の第二相試験で効果を検討する段階となります。まったく効果が認められないで中止になる治療法も数多くあります。第二相試験では、まず、14人の被験者を対象に、第一相試験で確認した最大耐用量より一段階少ない投与量で治療をして、一人も効果が認められなかったら、その治療は無効と判定され試験は中止。もし、最初の14人のうちで一人でも効果が認められたら、さらに数十名の被験者が参加し、全体で何名中、何名で効果があったという「奏効割合」を治療の有効性の指標として、次の第三相試験段階に進みます。

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投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

“朝日新聞連載” への 1 件のフィードバック

  1. はじめまして。
    私は(元)看護師で白血病骨髄移植後患者です。
    偶然このブログにめぐりあい、3か月前くらいから読ませて頂いております。
    こんな素敵な先生が、(過去)すぐ近くにいらっしゃったことに感激しております。
    (先生もよくご存じの)がん専門病院で勤務しておりましたので、それも生かし、ピアサポートのため勉強しています。
    臨床試験、治験など一般の方々にはまだまだ複雑ですが、この記事は分かりやすいのでどうかシェアさせて下さい。

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