治験やめたらどうよ?


CRCの方からのお尋ねがあった。「CRCとして治験業務はかなり忙しく興味もあるのだがいまひとつ、やりがいが感じられない。」ということである。その方は看護師であり内科病棟などで10年近くの勤務歴があり、病院が治験に積極的に取り組むことになったので治験管理室に配属となったそうだ。がん治療薬の治験も手掛けているが、モニターとのちまちましたやり取りや、意味があるかどうかわからない取り決めやら、また、自分の判断で進めていはいけないことが多かったりと、フラストレーションの毎日なんだそうだ。CSPORの臨床試験の仕事には関与していないそうだ。医師、看護師といった医療職を数年経験すると「患者さんに感謝される」ということがやりがいの根源であるということに気づく。日々の診療ではその連続であり仕事の主たる目標は「社会貢献」であり、その直接的な目印が患者さんからのありがとうございましたの言葉である。CRCとして被験者と接することは多いだろうし、CRCセミナーなどで話を聞いていると、治験業務を通じて、被験者である患者から深く感謝されるということもあるにはあるようだが、それほど多いことではない。自分が手掛けている治験によりよい薬が世の中に出て、それによって不特定多数の患者から感謝される、ということは理屈としてあるわけだが、最近のように、愚にもつかないような「承認申請のための治験」は、やってもやらなくてもいいわけで、製薬企業には利用され感謝されるが、看護師という医療職に身を置くものからしてみると、うれしくもなんともないだろう。その点、標準治療を変えうるような医師(研究者)主導型の臨床試験では、CRCとして参画した場合、被験者との接触も長期間に及ぶし、得られた結果が、多くの患者にとって役に立ちうるものである、ということを体験し実感できるのである。治験で雇われたCRCは治験以外の臨床試験には関与してはいけない、というみみっちいことを言っている病院は数多いが、そういうところでは、CRCの自己実現を通じた満足度はとても低いのだ。やりがいがないとかんじるのは、医療職としての活躍の場があたえられていないからなのだ。しょうもない治験の業務などやめて、CSPORの臨床試験業務を担当してみると、きっと、自分の立ち位置が見えてきて、さっそうと病棟や外来を動きまわる美しい自分の姿を見つけることができるだろう。製薬企業のお先棒をかつぐようなみみっちい治験なんて、やめてしまったらどうよ? とその方に言ったところ「そうですね、かんがえてみます。ありがとうございました。頭の中がすっきりしました。」と言っていました。しかし、治験を受託しないと病院に収入にならないし、あなたの給料もでないでしょうから、「治験は治験、ビジネスとして割り切り、CSPORの臨床試験の仕事を通じていきがいを見つけたらどうよ。」というのが現実的な助言となります。

CRCセミナーから透かしてみえてくること


世界的不況のなかでの生き残りをかけた製薬企業の強烈なエゴ、分子標的薬剤の乱発、手順主義の過剰重視、植民地支配的グローバルトライアルの横暴、あんぽんたんな開発モニターによる頓珍漢な対応・・・などに振り回されるかわいそうなCRCの姿を今回も認識しました。とくに分子標的薬剤が無秩序、無限にまるでガン細胞のように節操なく、各社のエゴで乱発される結果、グローバルトライアルの美辞麗句のもと、質の低いモニターが雇われて、行われる治験が多数行われているのが現状です。治験、治験に追いまくられ、本当に患者のためになる臨床試験に参加する機会を与えれず、自らの社会参画の成果を体感することなく燃え尽きていく哀れなCRCも多数いるようでした。

若い医師に送ることば


Mくんへ

医師としての人生は、患者からの要望や質問、恩師の助言や指導、同僚からの意見や批判、後輩からの質問や突き上げなど、周囲からの様々な刺激などをきっかけとしながら、自己研鑽を継続していくことがとても大事です。だれでも50歳近くになると、なんとなく、自分だけでなんでもできるし、他者からの批判や意見はうっとうしくなり、いつの間にかカンファレンスや学会などにも出なくなる医師がいます。医師という職業を選択した以上、勤務医であっても開業医であっても、患者に対して社会的責任を果たさなくてはなりませんから、決して自己都合や個人の欲望だけで行動していてはいけません。医師としての社会的責任を全うするには、ある程度、厳しい環境に身をおきながら、周囲と自分との相対的な距離みたいなものを意識しつつ、生涯にわたり学習を続けていかなければなりません。そうしないと唯我独尊的行動に陥ります。そのような状況に気がつかないことも多く、そうなると、そこから先の伸びがありません。医師としての長い人生を最後までさわやかに生き抜くことは容易なことではありません。軌道を逸脱してしまった事例をたくさん見ていますが、決して他人事ではなく、あすはわが身と心得なくてはいけません。これからの人生、integrityを失わず、研鑽に励んでください。

 

8月3日 先輩医師より

帯と襷の電子カルテ


国立がんセンターにいたとき日立の時代遅れの診療支援システム「トランプ」を使わされてあまりの使いにくさにひたすら文句を言い続けました。すると文句を言うならお前やれ、ということで次にIBMの診療支援システムを導入する際に小山博史先生たちといっしょに導入側ユーザーのまとめ役となり「ミラクル」を命名してこれを導入しました。ミラクルでは、とくにがん化学療法オーダリングシステムに知恵と工夫をつぎ込み、あらかじめのレジメン登録やインターバルチェック、体表面積当たりの自動計算など、をできるような仕様をIBMに要求しました。この際、あらかじめ登録するレジメンを薬物療法の専門家に審査してもらうように「レジメン委員会」を立ち上げたのですが、それが、なんと昨年度から導入された外来化学療法加算の算定要件として「レジメン委員会を定期的に開催すること」に採用されててしまっておおごとになってしまったわけです。IBMは我々がつぎ込んだノウハウをうまいこと利用し全国の病院の電子カルテ導入に大成功し大儲けしているそうです。
浜松オンコロジーセンターでは、2006年4月から検査会社BMLが作っている電子カルテ「メディカルステーション」を導入しました。大病院の電子カルテが富士通、IBM、NEC、東芝といった名の通った大手であるのに対して、クリニックではもともとレセプトコンピューターから発展しているので聞いたことのないような小粒メーカーが乱立しています。検査オーダーとのリンクがやりやすいことから、BMLのメディカルステーションを導入したのですが、使い勝手は全然よくありません。所見記録欄はどちらかというと「ワードによる紙芝居」程度。紹介状作製機能は最悪で、画面がフリーズしたようになって数分待たされます。これをBMLにいったところ「クリニックでそんなにたくさん紹介状をかくところはないので、そのような機能には対応していません。」とのことです。浜松オンコロジーセンターでは、セカンドオピニオンの患者さんが多いので、全国各地の病院の先生に返信を書かなくてはいけません。そうすると、宛先のデータベースは膨大なものとなりますが、BMLの電子カルテはとても非力なので対応できないわけです。文句を言い続けたら、エクセルで作ったアドインソフトみたいなものを持ってきて、これで我慢してくれ、ということで不便を強いられています。また、あらかじめのオーダーができません。来週の化学療法を準備しておくための未来予約ができない仕組みになのです。これは、クリニックがそもそも計画診療よりも、行き当たりばったり診療をするということが前提になっているのだろうと思います。ただ、レセプトコンピューターから進化しているので、検査、処置、処方などの医療行為の一つ一つの保険診療が何点か、ということはリアルタイムでわかります。また、医師当たり、診療科あたりの診療報酬が簡単に表示できるので、えすれい病院のように医師の給与明細に「今月の先生の稼ぎは○○点」と出すこともできます。
 
週1回勤務している杏雲堂病院では、電子カルテは東芝製のものを使っていますがとても使いにくい。その原因はユーザーの要望がほとんど考慮されていないようで、たとえば、先週に事前処方しておいた抗がん剤レジメンで、投与量を変更するような場合、一度、オーダーをキャンセルして画面をとじて、もういちど、その患者のカルテを開き、新しくオーダーしなおさなくてはならないという、手間がかかり、ユーザーフレンドリーではありません。紹介状作製機能もいまいちどころかいまごです。ワードで作製すべき文書をエクセルで作る仕組みになっているので、紹介状文面で、改行もできなければ段落もつくれず、太字にするとかの、編集機能が全く使えないのです。東芝がエクセルで手紙を書くという判断をしているのが理解できません。この電子カルテは、私が生涯、出会った中で最低ランクです。
 
月一回勤務している青森県立中央病院では、電子カルテはNEC社製です。これは、かなり使いやすいのですが、ユーザーの声を聞きすぎているのか作り込みが激しく、機能満載ととなっていて、どこにどの機能があるのかわかりにくいという難点があります。しかも、月一回の勤務なので、前回学習したこともすべて忘れているので、いつも、えーっと、えーっとという感じですけど、毎回看護師の太田富美子さんが手伝ってくれるので、その日の午後には自分でも操作することができるようになります。でも1か月後には、また忘れる、という繰り返し。過去の抗がん剤治療履歴などが、もう少しわかりやすく参照できるともっとよいでしょう。
 
電子カルテは今後すべての病院、診療所に導入されていくでしょう。ご年配の先生で電子カルテに不向きな先生もいるようですが、その場合には傍らにかわいいクラークのお嬢さんが常駐してくれるので、電子カルテできませーんのふりをしたほうが労務環境は良くなるかもしれません。使い勝手が悪いもの、機能が不十分なもの、逆に、機能満載で、めちゃくちゃ高価なものなど、どれをとっても帯に短し襷に長し、というのが現状でしょうか。病診連携を考えた場合、現在のように、メーカーが違うと全く互換性がないような仕様では話になりません。互換性があれば携帯をドコモからソフトバンクに切り替えるように、電子カルテも他社製品に乗り換えることも容易となり、だめなところは消え去っていくということになるでしょう。ホスピタル仕様とクリニック仕様を区別することも不合理なことです。これも考え直してほしいものです。

しゃんしゃんの夕べ


お薬は効果あっての副作用 リスクばかりをなんで強調? (読み人知らず)
 
タイケルブが発売され、しょうーもないしゃんしゃん大会にも参加してきた。いつも思うことだが新しい薬剤で、たとえタイケルブのようにそんなに副作用を心配する必要のないような薬剤でも、とにかく、副作用には注意しろ、副作用には気をつけろ、副作用を見逃すな、効果よりも副作用、安全性あっての薬剤だからと、どなたもこなたも強調する。薬は効果あってなんぼのものじゃろうが、と思うが、なぜ、こんな風潮が定着したのか。それは厚生労働省がわるい。薬系の技官が念仏のように、QT延長は大丈夫か、間質性肺炎は大丈夫か、というのが現在のはやりである。そんなにいうのなら根拠のないゼローダとの併用は見直すべきだ。

乳癌学会が終わって


乳癌学会が終われば少しは楽になるかなと思っていましたが、そんなことは全然なくって毎日毎日診療に、講演講義に、カンファレンス、座談会などなど、めまぐるしい日々を過ごしております。そんな日々のさなかでも、日曜日には帰省した息子の卓(たく)と浜名湖にカヌーツアーに出かけ豊かな自然のなかでとてもうれしい一日を過ごしました。日焼け対策を全然しなかったのは失敗でしたが・・・(痛い)。また4月から浜松オンコロジーセンターに参加している田原梨絵先生も、持ち前の明るく積極的なキャラ、さすがわが後輩北大卒だけあって冷静沈着で思慮深く、なるほど聖路加育ちの臨床力の奥深さを発揮して頑張ってくれています。山形のお母さん、ご安心ください。

 

さて、第6回乳癌学会中部地方会も運営委員会メンバーの努力と工夫で、着々と準備が進行しています。口演、ポスターも演題決まり、ポスターは領域ごとに分類して配置、会場での自由な討議の展開を期待しています。「すそのを広げよう、中部乳癌診療」というテーマですので、初学者、初心者にも乳癌診療にこれから参加してもらえるように、教育セミナーを充実させてあります。中部以外の地域の医師(臨床も病理も)、看護師、薬剤師、病理技師、診療放射線技師や、医療系の学生さんたちも、是非、ご参加ください。詳細はホームページをご覧ください(http://www.med-gakkai.com/jbcs-chubu/)。練りに練った当番世話人挨拶を下記にはりつけました。学会は医療関係者限定です。

 

患者さん、ご家族の皆さんには、823(日曜日)開催の「浜松乳がん情報局 市民公開講座」をご案内します。これは、今回で8回目です。恒例の「あなたの疑問にすべて答えます」では、事前にお寄せいただいた質問、疑問に可能な限り、正面から取り組みお答えいたします。また、今回は九州がんセンターの大野真司先生を迎え、「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」をご紹介いたします。専用申し込み用のホームページをご覧ください(http://www.ganjoho.org/entry/hamamatsu.html )。参加費は無料ですが、会場の都合上、先着240名といたします。

 

 

 

当番世話人挨拶

 

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 浜松オンコロジ-センター

渡辺 亨

 

  乳癌診療は、予防・疫学、検診、画像診断、病理診断、外科手術、放射線照射、薬物療法、精神腫瘍学、緩和医療といった幅広い領域に立脚しています。乳癌患者数と治療体験者(サバイバー)は依然として増え続け、女性の癌罹患率の首位を占める疾患として対応が求められています。我々医師、看護師、薬剤師、検査技師、診断技師はどのような取り組みが必要なのでしょうか。

 乳癌の対応策として、マンモグラフィを用いた検診の普及のための努力が払われています。検診の実施、精度管理に関わる検診医、診療放射線技師の育成、技術力の向上や体制の整備により、検診の量的、質的改善を図る必要があります。さらに超音波診断がどの程度、検診手段として役に立つものか、MRICTを、果たしてスクリーニングとしての検診に活用できるものか、といった検討も現在進行中です。

 しかし、それだけでは解決できない問題も多いのです。「治癒可能な乳癌」イコール「早期乳癌」という単純な時間的概念だけでなく、「悪性度」という生物学的概念にも意を向けることが重要です。それには、まず、正しい病理診断が必要ですが、乳癌を診ることのできる病理診断医は大幅に不足していますし、サイトスクリーナー、病理検査技師も十分とはいえません。病理診断もHE染色標本を使用した診断に加え、機能するタンパク質の発現を知る免疫組織化学染色、遺伝子の機能発現診断、染色体検査などの高度な技法も日常の臨床検査の範疇に含まれるようになってきました。このように一人一人の患者の乳癌を、生物学的特性という観点からとらえることが、治療の個別化の出発点となります。

 治療は、最小の負担で最大の効果をあげなくてはいけません。画一的な治療ではなく個別的治療、生物学的特性に合わせた治療を目指さなくてはなりません。乳房温存術は標準的術式であり、そのためには術前化学療法が役立ちます。センチネルリンパ節生検は不可欠な外科的検査であり、腋窩リンパ節郭清の省略は、術後のQOLを大幅に向上させます。ハイレベルな乳腺外科医の手による手術はすばらしい結果をもたらしますが、そのような外科医は充足しているとはいえません。術前あるいは術後の薬物療法は予測因子(ホルモン受容体HER2)と予後因子(リンパ節転移、異型度、腫瘍径など)に基づいて、抗がん剤、ホルモン剤、トラスツズマブが使用されますが、正しい病理診断に基づく適切な薬剤選択、患者のニーズに合わせた情報提供、そして周到な治療計画に基づく万全の副作用対策が必要とされます。

 

 

 

 

   初期治療を受けた患者の約3割は遠隔転移を来します。遠隔転移を来した場合、そこから治癒に持ち込むことのできる確率は1割以下というのが現実です。ここには、初期治療とは全く違った治療戦略があります。適切な目標を設定した包括的な治療計画を立てた上で、医療者も患者、家族も根気よく治療を進めていく必要があります。治療には「適応」と「限界」があるという現実をいかにして患者と共有するか、ということは我々、医療者にとっては、極めて困難かつ重要な課題です。緩和医療の専門的知識、技術は、すべての乳癌治療医が備えるべき臨床力です。また、しばしば、精神腫瘍学の専門家との協力が必要になります。

このように、乳癌診療には、多くの人材が必要です。本学会のテーマである「すそのを広げよう!中部乳癌診療」とは、中部地区での乳癌診療に従事する医療者の数を増やし、質を高めることです。この二日間の学会で、それが達成できるよう、関係各位の皆様のご協力、ご支援をよろしくお願い申しあげます。

 

完成!! 患者さんのための乳がんガイドライン


九州がんセンター乳腺科の大野真司先生が中心となって1年がかりで作成した「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」が完成しました。これは、日本乳癌学会で作成したもので、2006年に作成したものを全面的、徹底的に改訂したものです。Q and A形式で60のクエスチョンを用意しました。患者さん、ご家族の皆さん、そして、医師、看護師、薬剤師や、ケアマネージャー、また、医療関係の学生さんにも、きっとわかりやすい、良くできていると、お感じになることでしょう。患者さんにはガイドラインをぜひ役立てていただき、安心して乳がん診療を受けていただきたいとおもいます。患者さんのための乳がん診療ガイドライン 日本乳癌学会編 金原出版株式会社 2300円、ISBN 978-4-307-20262-6
 
ガイドライン目次は大野真司作「MindMapで描くガイドラインの内容」をご参照ください。
 
 

海外学会の動向と我が国の現状 - いつまでたっても周回遅れ –


第10回オンコロジーメディアセミナー

 6月30日(火曜日) 17時50分

経団連会館 6階 パールルーム

 

海外学会の動向と我が国の現状

– ああ、これではいつまでたっても周回遅れ-

 

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罹患率、死亡率ともに「欧米型」の疾患と言われる乳癌は、日本での臨床試験はいつも海外の後追いである。米国ではASCO(米国臨床腫瘍学会)とSABCS(サンアントニオ乳がんシンポジウム)の二つの学会で世界の最新情報が報告される。最新情報とは多施設共同ランダム化比較試験の結果である。最近の特徴は、「日本以外の諸国が参加するグローバル試験」結果が続々と報告されることである。なぜ、日本以外なのか? その理由の一端はがんじがらめの規制にある。たとえば、今年のASCOのプレナリーセッションで発表された「PARP1阻害剤」の試験は、抗がん剤治療群 vs. 抗がん剤+PARP1阻害剤」のランダム化比較試験である。この試験では、抗がん剤治療群が、対照群であり、「PARP1阻害剤」を上乗せすることで、効果持続期間や生存期間がどれぐらい延長するのかというのが、この試験での検討課題であった。結果は会場からどよめきが起きるほど見事なものであった。次の段階では、さらに症例数を増やし、観察期間を延長し、「PARP1阻害剤」の真の実力を評価する第III相試験に進む。当然、global trialとなるだろう。日本からも参加すれば得られた結果は、速やかに日本の乳癌患者の治療に利用できることになる。しかしそうはいかない。試験に使用された抗がん剤は、カルボプラチンとゲムシタビンであり、いずれも、我が国では乳がん治療薬として承認されていない。承認されていない薬剤は対照薬として使えないことになっているので、この2剤が承認されないかぎり参加できないのだ。今回も日本からの参加不可能ということになれば日本は3周遅れ、ということになる。以前、このような積み残しをまとめて承認しよう、ということで、「抗がん剤併用療法検討委員会」(黒川清委員長)というのが開かれ、何品目かを手続きを簡略化して承認したことがあった。しかし、あれから3-4年が経過し状況は、全く改善しておらず、周回遅れ、積み残しの山だ。

では、日本からの情報発信はどうなっているのか? NSASBC01試験では日本発のエビデンスを構築することはできた。これは、世界の標準薬CMF vs. 日本の汎用薬UFTのランダム化比較試験である。患者団体の激しい妨害により、試験の進捗は大幅におくれ、結果が得られた時には、既にCMFは世界の標準薬の座を失っていた。ホンダがF1から撤退したように、日本の腫瘍医療は、臨床試験から撤退せざるを得ないかも知れない。臨床試験ただ乗り論でglobalからのバッシングを受けることにもなりかねない。

土曜日外来


週休二日が定着して病院は土曜日休診があたりまえのようになっている。一方、診療所は土曜日午前中、外来診療をするのが常となっている。浜松オンコロジーセンターも開院以来、原則として土曜日午前中は外来を開いている。外来化学療法も土曜日に実施しているし、セカンドオピニオンもある。また、がん診療以外の患者さんで、平日は仕事で来られない、土曜日の朝一で、という人も結構いる。最近の不況で、平日でも休みという工場勤務者もあり、好景気の頃よりは土曜日にぜひ、という人は減ったようだ。東京都内の大病院は、相変わらず週休二日を貫いているところもあるが、最近、大病院も良好なサービスを提供するという観点から、土曜日終日外来を開いているところが増えてきている。土日も外来診療をしている病院もある。今まで土曜日完全休診であった杏雲堂病院も土曜日に外来を開くという院長の方針で、そのようになるが、これには、スタッフの反発がいろいろとあるようだ。看護師はもともと交代勤務なので土曜日外来をすんなり受け入れているが、問題は、自分が一番偉いと思っているような使いものにならない医者からの自己中心的、唯我独尊的反発である。これはいつの時代もあるようで、医療がそもそも社会的活動である、社会保障の一翼をになっているという意識が希薄な、わがままぼんぼん医師によくある行動パターンだ。
浜松で問題なのは、医療センターが土曜日休みで、病診連携室も休みという点。町中の診療所は土曜日、夕方まで診療しているところも多く、検査とか、専門外来受診を予約したくても月曜日まで待たなくてはならないのだ。これは困る。てても困る。浜松医療センターも労働組合のわがままが日本一の病院らしく、医療が市民のためのサービスであるという意識をどこかに置き忘れてきているようだ。いつも、いつも、病診連携室を土曜日に開くように、要望は出しているが、全く対応してくれないのだ。これでは、独立民営化したらカラスと閑古鳥の集まる病院になってしまうのではないだろうか。

がん診療拠点病院見直しの恐怖


箱もの行政の最たるものとして批判を浴びてきた癌診療拠点病院が来年4月をめどに見直されることになり、帳尻を合わせて癌診療拠点病院のふりをしている全国のキョトン!病院は、指定取り消しにおびえ、さらなる帳尻合わせにやっきになっている。病診連携で癌診療を地域に普及しています、という張りぼて看板を掲げているところは、その実態があまりに偽善的、手前勝手的であるがゆえに、指定取り消しは避けられない。また、緩和医療をやっています、緩和医療の専門家がいます、と急遽、別の部署の内科医を緩和ケアチーム医師にしててたけれど、診療科間での協調が全くとれておらず、逆に患者、家族は不安、心配、失望の中で涙を流しているという現状もいたいたしい。こんな、名ばかりの、羊頭狗肉的ながん診療拠点病院は、当然、指定取り消しである。そもそも旧態依然とした20世紀型組織論に基づく、がん診療拠点病院構想自体、無理があり、非才浅薄小役人の浅知恵では、もうどうにもならないところに来ている。安心、安全のがん医療を提供できる体制を整えるには、「街角癌診療の考え方」に基づく「高機能がん診療所」の発展の方が、ずーっと素晴らしいと思うのだ。