浜松オンコロジーフォーラム


昨日の土曜日は浜松オンコロジーフォーラムを開催しました。講演は三つ、余宮きのみ先生(埼玉がんセンター)による「緩和医療」、余宮先生がどんな考え方でがんの緩和医療のを実践しているか、ということがよくわかりました。今度は市民講座で緩和医療の話をしてください、とお願いするつもり、それぐらいよい話でした。早川昌子先生はリエゾンナース、患者のこころの悩みに正面からむかい、よくよく話を聞き、あっなるほどね、っと自分が納得するまでこころのひだをやさしく引き延ばし、悩みをずばっと、関西弁で解決するというノウハウを学びました。リエゾンナースをたくさん育ててほしい。しかも、早川さんのように明るくきれいでよくしゃべる人を。最後は、私の誇るべき一番弟子、勝俣範之先生。言わずと知れた日本の腫瘍内科の本流を行く博愛主義者です。日ごとの成長が感じられるすばらしい講演でしたね。こんなかんじで、すばらしい三人の演者による充実した勉強会でした。

多地点座談会


今日は、乳癌学会看護セッション広報のための座談会を多地点テレビ会議システムを使って開催しました。青森県立中央病院、東京御茶水杏雲堂病院、浜松オンコロジーセンター、大阪相原病院、鹿児島相良病院、沖縄宮良クリニックの6地点をつないで1時間半。楽しく中身濃く、よい座談会ができました。多地点テレビ会議はもうだいぶ前から全国10地点をつないで多地点医師、多地点看護と、二つの勉強会を毎月定例で開催しているので異空間を電子的に同時に共有することには参加者全員、全く抵抗がありません。画像、音声がときどきトラブルがありますが、経験知の蓄積で、それも克服できています。便利に慣れると、何も出張して遠くまで行かなくてもお茶の間座談会ができるようになります。ASCOで使うような大規模コンベンションセンターに数千人が集まるというような学会はそのうちなくなるでしょう。高性能インターネットで集まることのが当たり前になるでしょう。一か所に集まらないでは学会なんかできないよ、とか、学会半分、観光半分とか。でも、毎年シカゴでは観光もないし。昔のことを思い出してごらん。一家に電話は一台。友達から電話がかかってくると、○○ちゃんから電話だよ、お母さんのところに大事な電話がかかってくるから早く切りなさいね、と言われました。だから、親も○○ちゃんという友達がいることも知っていたし、夜遅く電話がかかってこようものなら、○○ちゃんは悪い子、みたいな評価が下ることもありました。いまは携帯電話、電子メールだから、便利この上なし、しかし子供がどんな悪い子と付き合っているか、親はわかりません。それがいいことなのか、悪いことなのか、両面あるでしょうけど、時代は、ITテクノで変わっています。そのうち、巨大コンベンションセンターなんていうのは、ねずみたちのすみかになるに違いありません。コングレコングレスセンターも前時代の遺物ですわ。

腋窩郭清はなし、断端は露出してなければよし、ということで


マイクロメタがあっても郭清しないというエビデンスも紹介され、ACOSOG Z0011の結果も益々支持者が増えています。また、浸潤がんの場合、断端もpositiveはダメだがcloseならよい、つまりtouch on inkでなければよい、という方向がコンセンサスになりそうです。

St.Gallen 初日バイオロジーの話


昨日から一転、今日は雨のち雪のわびしいSt.Gallen からこんにちは。 今日のセッションで、チャックペロウの発表がありました。彼はイントリンシックサブタイプ研究をとことんリードしておりPAM50開発者です。免染は、ラボ間での評価に差があるので、究極は、遺伝子診断に移行するのが望ましいが、とりあえず、免染をサロゲートとして使用する必要があるので、現在のLuminal Aの定義に、PgR20%以上を加えることを提唱しました。新たに手間をかける必要もなくルーチンにどこでもやっていることなのでPgR20%を以上をLuminal A Bの区別に使用するのには賛成です。203.full

ザンクトガレン マイナス1日 マイナス3℃


フランクフルト空港について、チューリッヒ(ズーリック)への乗り継ぎをのんびりラウンジで待っていたところ、案内ディスプレーに黄色い字で軒並み、キャンセル、キャンセルと。 天候が天候だけに便を変更しても乗れるか、飛ぶか、行けるかどうか、わからないので、鉄道で行った方がいいよ、ルフトハンザのカウンターのお姉さんが、好意的な助言をしてくれて、鉄道 Deuch Bahnの時刻表までプリントアウトしてくれました。個人の卓越なのか、民族の卓越なのか、アメリカでは経験できない建設的な窓口対応でした。空港に直結する駅のホームでこごえそうなカモメ見つめ泣いていました、あ~あ~ああ~という感じで、かもめはいないけど、内陸だから。バーゼル経由でズーリックにはいり、ザンクトまで移動。こちらはぽかぽか陽気です。部屋にはいるとすべての学会グッズとチョコレート、クッキーなどがウェルカム。資料を見ると、次回、2015年はザンクトガレンカンファレンスと言いながら、場所はオーストリアのウィーンで開催、その次の2017年は開催場所未定となっています。ザンクトガレンもしばらく来られないかな、ということです。今日は初日で午後からのスタート、その前に、企業スポンサーのセミナーがあるけど、野口眞三郎先生が話す、と言うことなので、応援に行こうか、と思います。

朝日連載 「やっぱりふつうの食事がいちばんです」


信じ込んだら何を言っても行動パターンを変えない人、若くても高齢でも、結構いますね。若い頃から毎晩ビールは大瓶2本飲んでいる、それが習慣だからそれを変える必要はない、と私の父も年老いてから、そう言っていました。周囲も習慣だから、と許容するし、本人もそれで当然と思う。しかし、加齢によるアルコール代謝力の低下とか、脳細胞の老化でアルコール感受性が高くなるとか、そういった変化には気づかないものなのでしょうか。 晩年には、ウイスキーにビールを水割りのように加えてべろべろになっていました。息子として、医師として、心を鬼にしてやめさせましたが、明日は我が身かも知れませんね。 さて、今日は、朝日新聞の連載記事に対して大豆は絶対にダメなのに、どうしてよい、と言うのだ!! 間違ったことを書くナー!! という投書をもらいました。返事をよこせーと、返信用封筒まで入っていましたが、個別のお尋ねには答えませんよ、と書いて返信しました。豆腐、納豆、すべて害悪!! と、信じ込んでいるような人もいて、大豆食品は口にしないとう生活パターンは絶対に変えない、それで、自分は乳がんにもならず、元気でいるのだ!!という人もいるのですが、そんなにすることはないよ、というコラム記事を今週は書きました。

タイトル やっぱりふつうの食事がいちばんです としましたが、編集者が手直しすることが多い。今週は投稿してすぐにスイスに来たので変更は確認できまっしぇん。

がん患者は○○を食べてはだめ、▽▽はがんにいい、といった話がマスコミなどでまことしやかに語られています。絶食や断食などの間違った食事で低栄養状態に陥ったがん患者が餓死したという痛ましい話もありました。栄養や食事療法、温泉などの物理療法をまとめて補完代替医療と呼び、本当に効果があるかについて、科学的に証明しようという取り組みも行われています。
大豆に含まれるイソフラボンは、その化学構造が女性ホルモンに似ており、大変弱いのですが女性ホルモンのような働きを持つことが知られています。乳がんの発生や増殖は女性ホルモンによって促進されることから、大豆製品は乳がん患者によくないのではないか、と言う意見が古くからありました。一方で、日本、韓国、中国では、乳がんの発生率が欧米に比べて低いことが知られています。しかし、ハワイや米国本土に住む東洋人の二世、三世の女性の乳がん発生率は欧米人と同じであることから、食事、とくに東洋人が多く摂取する大豆食品は、乳がんには予防的に働いているのではないか、という説もあります。豆腐を多く食べる沖縄県、納豆を多く食べる茨城県では他県に比べ、乳がんが少ない、という日本の研究結果もこの説を支持しています。乳がん患者から、大豆は避けた方がいいのか、それとも積極的に食べるほうがいいのか、と尋ねられることがよくありますが、私の答えはこうです。「大豆イソフラボンを大量に濃縮したサプリメントは、女性ホルモンのような働きで、ひょっとしたら乳がんの増殖が刺激されるかもしれませんからやめておきましょう。しかし、毎日食べても納豆、味噌汁、豆腐、おから、煮豆などの大豆食品に含まれるイソフラボンの量は少ないもので、ひょっとしたら乳がんの増殖が抑制されるかもしれません。沖縄や茨城で乳がんが少ないのはこのよいほうのひょっとしたら、に該当するのではないでしょうか。ですから、おいしいねと、毎日の糧を神様に感謝しながら、普通の食事を楽しむのが一番よいと思います。

腫瘍内科医からみた手術の意義


約30年前、私が腫瘍内科医になった頃、大腸がん、卵巣がんでは抗がん剤ははなはだ非力で手術が王道でした。しかし、抗がん剤などの薬物療法の進歩は著しいものがありますゆえ、現在、手術対薬物療法のバランスオブパワーはどうなっているでしょうか。

現在でも初発の大腸がんでは依然として手術の役割は大きいです。また、肝臓に転移した場合でも切除で寿命が延びる、治癒できることが証明されています。大腸がん肺転移も世界中で得られてきた長年の経験から数個以下の転移なら切除が当たり前とされて、ガイドラインにもそう書いてあります。ところが、切除の意義、つまり寿命が延びるのか、病気を治癒させることができるのかということを、きちんとした科学的な方法で検討されたことは一度もないのです。技術的に切除できるので、大腸がん肺転移を繰り返し、何回も切除するという話はよく聞きますが、ひょっとしたら手術してもしなくても寿命は変わらないかも知れません。他臓器に広く転移した大腸がんでは、複数の抗がん剤、分子標的薬剤を組み合わせることで、寿命が2-3倍に伸びるようになったのですから、肺転移を繰り返し切除することの意義はますます薄れているのではないでしょうか。
卵巣がんに対し現在、パクリタキセル、カルボプラチンなどの抗がん剤が著明な効果を発揮するようになりました。しかし、今でもお腹の中全体に広がった卵巣がんに対して、できる限り多くがん組織を取り除く「腫瘍減量手術」が行われます。その理由は、卵巣がんは抗がん剤がよく効くので最初の手術でできるだけ多く腫瘍を切除しておいた方が化学療法の効果も良好で、患者さんの平均生存期間が長い、ということになっています。しかし、これも手術する、しないを比較したデータはないのですが、長年の経験から手術が必要と言うことになっているのです。大腸がんも卵巣がんも、薬物療法がここまで伸びてきた現在、これらの手術が本当に必要なのか、腫瘍内科医としてははなはだ疑問を感じております。

医薬分業は誰のため?


病院にかかって飲み薬が必要な場合、院外処方せんが発行され、調剤薬局で薬を買わなくてはなりません。この医薬分業と呼ばれる仕組みは、約2/3の病院で採用されています。高血圧や高コレステロール血症などの場合は、薬局の薬剤師が処方せんを見れば、その患者の病名や、注意事項などは容易にわかりますから調剤薬局で薬を処方してもらい、説明を受ければ大概問題なく、多くの患者さんにとって医薬分業は便利な仕組みと言えるでしょう。しかし、抗がん剤の場合、事情がすこし違います。処方せんには、薬剤名、分量、日数しか書いてないので受け取った薬剤師には、患者が肺がんなのか、乳がんなのか、はたまた胃がんなのかもわかりませんし、ご病気はなんでしょう、と聞けないことも多いそうです。また、白血球数や腎臓、肝臓機能の良し悪しもわかりませんし、家族が代わりに薬を取りに来た場合など、全身状態を知ることもできないまま、指示された通りに処方しなければいけないことになっているので、不安を抱く薬剤師もいます。点滴抗がん剤の副作用を抑えるため、ステロイド剤を1日16錠内服する場合があります。これは、ふつうの量の数倍なので、以前、東京の病院に勤務しているとき、抗がん剤治療を受けていることを知らない調剤薬局薬剤師から、これは多すぎるのではないかと、問い合わせが来たことがありました。調剤薬局薬剤師は、患者に薬を安全に、間違いなく服用できるよう、一所懸命説明しますが、たった一枚の処方せんから謎解きして対応するのには限界があります。浜松オンコロジーセンターでは、8年前の開院以来、医薬分業は採用せず、院内調剤を続けています。薬剤師が患者の病状や検査結果を正しく把握し、適切に対応してくれています。時には、腎機能が悪いので内服抗がん剤の分量を減らしたらどうか、と我々医師に提言してくれることもあります。ますます複雑になるがん治療ではチーム医療は不可欠、医薬分業はあまり適切な仕組みではないように思います。

市民講座は誰のため?


浜松に本拠地を置くNPO法人がん情報局では、2006年から乳がん市民講座を年2回開催しています。今週の市民講座には、患者、家族、医療関係者あわせて約250名が参加、うち約100名は初参加ですが、全15回参加の皆勤賞の方もいらっしゃいました。また、広島、三重、東京など遠方からの参加者もいらっしゃいます。この市民講座の特徴は、事前に参加者からの40-50の質問を医師、看護師、薬剤師など9名の回答者で分担して回答スライドを作成、すべてに対して正直に、真正面から答えるやり方です。抗がん剤の副作用を乗り越える方法、主治医とのコミュニケーションの取り方、手術後の痛みがとれない、再発が心配、がんによい食事や食品はない、など、似たような内容はまとめて答えるようにしていますが、毎回、2時間半を超える長丁場になります。終了時には会の進め方や感想をアンケートで尋ね、終了直後の反省会で、スタッフ全員で目を通すのもこの会の定番となっています。よく準備してわかりやすく解説してくれてありがとう、という感想が多く、準備した甲斐があったね、と皆で悦び讃えあうのも反省会の楽しみです。しかし、時間が長すぎる、会場が寒い、スライドの字が小さい、声が小さい、回答者がふざけすぎ、内容が難しすぎる、など、次回への反省材料となる厳しい指摘も多く寄せられます。反対に、もっと長くやってほしい、回答者はユーモアがあってよいという感想もあります。個別の医療相談はやめてほしい、個人的な話は病院で聞けばよい、という意見もあります。でも、私たちの考えはこうです。個別相談を題材に、先々の事は思い悩まないようにしましょう、痛みは我慢しなくてもいいですよ、これから使える治療薬もたくさんあるので決して悲観する必要はないですよ、明るい未来はすぐそこに、といった答えを、参加者全員で共有することが、この会の大切な目的だろうと思います。次回も楽しみしています、と笑顔で帰って行く参加者を見送るとき確実な満足を感じるのです。

出版 N・SAS試験 阿部薫先生に感謝


NSAS試験 - 日本のがん医療を変えた臨床試験の記録- (小崎丈太郎著、日経メディカル開発)が、著者の小崎さんから送られてきました。アマゾンでも「ただいま予約受付中」になっています。(アマゾンへ)。この本、ドキュメンタリーとして、丁寧な取材に基づいて書かれており大変読みごたえがありますし、がんの臨床試験に携わる方々には是非、読んで頂きたいと思います。あらためて、患者の皆さんをはじめ多くの人たちの協力で臨床試験が計画され、実践され、解析されて、その結果が世に問われ、そして、診療が改善されていくということがわかります。私も、この本を読んで、初めて知ったことがたくさんありました。たとえば; 103ページ、坂元吾偉先生に最初にお目にかかった時のエピソードの紹介のところ 『「これは間違いなく慶応ボーイだ」坂元は渡辺を慶応義塾大学出身の医師と誤診した。「あとで北大だと聞いて腰がぬけるほどびっくりした。」というのが坂元の渡辺評だ。』 これはどういうことでしょうか???、褒められているのか、だめだしされているのか、微妙であります。また、だいぶあとになって佐藤恵子さんのところにイデアフォーのメンバーがやってきて「申し訳ないと謝罪した」話(119ページ)。ちなみに、佐藤恵子さんが作ってくれたNSASBC01の説明同意文書に宇宙怪人シマリスがデビューしました(アマゾンへ)。また、大鵬の高木茂さんが患者を名乗る人物からNSASBCを非難する執拗なメールが、まるでストーカーのように送られてきた、それは、半年以上続いたそうです。高木さんが、私の知らないところで、そんなに頑張ってくれていたことを知り大変感銘を受けました。ところでこのストーカーのような人物、思い当たるところあり、イニシャルで言えばIKではないかと。などなど、つらかったけれど、中身の濃い長い歳月が走馬灯のようによみがえってきます。この本の副題 「日本のがん医療を変えた臨床試験の記録」は、当事者としてまさにその通りだと思います。しかし、最初から最後までの緻密な青写真を書いたのは阿部薫先生なのです。この本の最後に、阿部先生の使徒である吉田茂昭先生と私がそれぞれの立場で書いている阿部先生の追悼文を読むと、涙でパソコンの画面が曇ります。阿部先生、どうもありがとうございました。