成長したCRCセミナー


CRCは成長していないが、CRCセミナーは18回を数え、名実ともに成長したと思う。2000年2月に飯田橋のジ・アグネスホテルで開催された第1回、その後、年2回、趣向をこらし、これにも工夫を加え、ためになる、役に立つ、マンネリ化しない、セミナーを目指してきた。今回は、NSAS/CSPORおよびJ-GOGで取り組んだ臨床試験の結果がとりあえず公表され、初めてトンネルの出口がどこにあるのか、をCRCの皆さんに示すことができた、という点が大きい、CRCが一生懸命仕事をすると、こういう形で結果が世の中に公表され、患者の治療に貢献するものなんだよ、ということがわかれば、日々のCRC業務にも具体的展望を持てるのではないか、と思うのだが、そういった感想はほとんど聞くことができなかったのが残念である。親の心、子知らず、というようなものだろうか。CRCセミナーは成長したがCRCは成長していない。ああ、もうじき桜の咲く季節だ。3月はSt.Gallenがあるし、デジタルマンモグラフィーを導入したりと、あれやこれや、忙しい1か月になりそうだ。

おかしな話だ


癌患者は夜、不安で眠れないから、そんなとき電話で相談できる窓口を24時間対応で設置してほしい、だって~? そんなこと要求する患者団体って、ちょっとおかしいんではないかい? なぜ不安になるのか? 朝までまてないのか? 誰に対応しろというのか?
不安になるのはわかる。でもそれは、きちんとした主治医からのしっかりした説明がないからだ。きちんとした主治医がいないのか? しっかりした説明がないのか? だから、いっているでしょう、街角癌診療、歩いていけるコンビニ感覚の癌診療専門クリニック、オンコロジーセンター構想の実現が必要だっていうことです。24時間のお悩み相談電話窓口は2兆円の給付金と同じぐらい意味のないことだと、私は大きな声で言いたい。
不安になったらいつでも来てください。十分に説明しますよ、でも朝8時30分から午後5時までですよ、という対応で、うまく行くと思います。

いい勉強会の工夫


先週の土曜日は第5回浜松オンコロジーフォーラムを開催した。第1回からスポンサーとして支援してくれているのがサノフィアベンティス社、あれやこれや売らんかなという姿勢はなくオンコロジーを定着させたいという趣旨に前向きに協力してくれるので助かっております、まず感謝。しかし、今後は徐々にNPO法人がん情報局も力をつけていき、このような勉強会をきちんとマネージできるようようにしていきたいと思います。その方がより公平で中立でとらわれない勉強会ができると思うからです。

今回の参加者は120名近く、 箕面の飯島先生、栃木の藤井先生、静岡の高木先生と、加えて私が演者として発表、座長は浜松医大外科の中村先生と、浜松医大内科の生熊先生にお願いした。座長もきびきびとうまくまとめてくれたし、演者の話も実によかった。飯島先生は癌患者、癌治療と栄養管理の話で、目から鱗が何枚も落ちるような話であった。もう一度聞きたいという参加者の声が多かったので、またお願いします。藤井先生は頭頚部癌の化学療法という普通なかなか聞けない話であったが、ちょっと聴取の期待と話の内容に乖離があった。藤井先生も場数を踏めばよいプレゼンターとなるでしょう、また来てください。高木先生の話は力強い。同時に聴衆のレベルや理解度にも配慮した準備で、緻密さ、繊細さを感じた。さすが北大の同級生だ。聞くたびにグレードアップするので次回もお願いします。皆さんがとてもよい話をしてくれたのでフロアからの質問も結構あって3時から6時半まで勉強になったと思いますし、その後の懇親会も盛り上がったと感じています。このような勉強会は「事なかれ主義」でやるとマンネリ化する。やらなくてはいけないからやっていますという「アリバイ主義」でやるとだいたいがつまらない。楽しく充実していて勉強になった、いろいろな人々と語ることができてよかった、というようなよい感想を持ってもらえるようにして、継続するには様々な工夫が必要なのだ。

 

同じ日に北関東でブレストキャンサーエキスパートミーティングin北関東というのがあったらしく参加した全国連絡網メンバーからの情報では、この会のスポンサーはなにかとまぬけなTKD薬品だそうでエキスパートミーティングとは名ばかりのひどい会で演題も討論も内容も非常に微妙でしかもぐだぐだと進行し3時間の予定の会がなんと1時間半も押して終了、白熱した討論で時間が押すならいいけれど本当に「ぐだぐだ」という形容以外に適切な表現が見つからない二度と出席したくないような会だったとのこと、それはわからんでもないなあ・・・とにかくこの手の勉強会は何のためにやっているのか、つまり「原因と結果の法則」における原因としての「思い」がはっきりしていないことが多くて、当事者意識を持った人が誰もいないということもままあって、何となく義理とつきあいで開催して続けているというようなものが大半のように見える。そうならないように気を引き締めて、意味があるから継続するという会を継続させていきたい。

ところで、いつも腹立たしいのは情報交換会と名前を変えた懇親会の扱いだ。勉強会をホテルで開催するならそのホテル内で開催するのはよいが、ホテル以外で開催した場合は懇親会は開催してはいけない、とか、立食パーティーはよいが座して談笑してはいけない、とか、頭のわるい製薬協だかの、間抜けなコーキョーキという規約があって、そこにそのように書いてあるのだそうだ。実に知能指数の低い連中が作成した規約なのだが製薬企業がスポンサーになる場合にはこのまぬけ規約に従わなくてはならない。なんかホテル業界と癒着しているようにも感じるけどね。どこかにも書いたと思うが今までで一番間抜けだったのは、新潟に講演で呼ばれた時、あれは確かなにかと間抜けなTKDがスポンサーだっと思うがホテルでの講演会の後、別室の情報交換会場には円卓がいくつか用意され、そこには鍋料理などが並んいて箸やおとり皿とかが人数分並んでいるのだがなんと椅子がない!! 牧野先生がTKDになによ、ちょっとこれ、おかしいんじゃない、というと、立食でお願いしますとのことで、一同、ずっこけちまっただよ、まるで漫画だよね。懇親会というのも学問を深める上で重要なアクティビティーである。そりゃあ、昔のT先生らのころは銀座の倶楽部で10万円のワインを何本も空けた、なんていう時代もあったけど、今はそんなことを期待するおねだり坊やはいない。なのでこれを正々堂々とCSPORの年会のように開催するにはやはりコーキョーキなどに縛られないような公明正大な組織でもって運営していくのがよいのだろうと思う。

言わなきゃわからんだろう


今日は医大の講義にいってきた。4年目の学生、臨床薬理学で朝9時からの1講目「細胞毒性抗がん剤」、10時30分からの2講目「分子標的薬剤」と分けて薬剤について講義した。学生の講義は楽しくて大好きだ。■しかし、けしからんやつが多い。 ●えっ、またその話、居眠りしている人がいたっていうんでしょ。 ■ うんにゃ、居眠りにはもう慣れた。●じゃあ、なんなの? ■ 携帯をしょっちゅういじっている女学生とか、中空をぼーっと認めている女学生とか、きったない服で出たり入ったりしている男子とか、後ろの方でおしゃべりしている男子集団とか、いたけど、それもあまり気にならん、●気になっているみたいじゃん、■いちばん衝撃をうけたのは、最初から最後まで、文庫本を読んでいる男がいて、時々、目が合うようなんだが、ずーっと読んでたもんでね、さすがにこれは看過できぬと、講義終了後、まだ、読み続けているのでね、階段教室をあがっていって、キミキミ、授業中、ずーっと文庫本読んでたけど、講義中に読んではだめだ。そんな無駄な時間の使い方をしてはいけない。講義は集中して聞き給え。講義中に聞いたことを全部覚えるんだ。小説を読みたければ自宅とか休み時間とかに読みなさい。いいか、よく考えなさい。●え、どなりつけたわけ? ■ いいや、冷静に諭した。読んでいたのは、柳田邦男の犠牲、ってやつで、あれは確かにいいドキュメンタリーだけどね、でも、そういうことはいけないことだってことは言わなきゃわからんだろう。まじめとかふまじめとかいう話じゃあなくって、そういうことをしたら、わざわざ忙しい中を時間をやりくりして講義にきてくれている外部の講師に失礼だということがわからなきゃあ、だめだね。●確かにそのとおりね。 あなたの言っていることはただしいと思う。(夫婦の会話より)。

いい加減にしないか、血管内治療よ。


原発病巣に対しては血管内治療を行った後、収束超音波で小さくさせ、前にかかった病院で実施した針生検でホルモン受容体陽性ということらしく全身治療は海外から輸入したファスロデックスとラリスタの内服。この治療でよいでしょうかセカンドオピニオンをお願いしますと言われたら、だめです、話になりません、と答えるしかない。ご主人が、でもテレビでやっていましたし、患者さんも全国からたくさん集まって来ています、と言う。世の中、テレビに出たということは、無反省にすばらしいもの、という誤解があるようだ。なぜだめか。意見(1)ファスロデックスは日本でも治験をやってタモキシフェンとランダム化比較で負けた。個人輸入までしてなぜ負けた薬を使うのか。なぜ、タモキシフェンを使わないのか、または、なぜアロマターゼ阻害剤を使わないのか。意見(2)ラリスタは一般名ラロキシフェン、日本ではエビスタという商品名で、骨粗鬆症の治療薬として市販されている。ラロキシフェンはSERMであるが乳癌発がん予防効果はあるが乳癌治療効果はとてもよわい。なんでラロキシフェンを個人輸入までして使用しなくてはいけないのか、しかも乳癌の治療薬ではないのに。理由(3)血管内治療としていったい何を注入したのか? テレビで紹介したのはTBS夢の扉。このまやかし医療をやっているクリニカはいったいどのように反論するのか。また、これを紹介したテレビ番組制作会社はどのように考えているのか、聞いてみたい。

PET神話崩壊事例


久しぶりで聞いたナンセンスプレゼンテーションは、あまりのナンセンスぶりに驚愕し、思わず研究会会場から発信したが、そのナンセンスぶりに対する感動は1日たってもまださめやらない。そもそも、この研究会というのも、もはや時代遅れだ。1製薬企業がスポンサーで、年に2回開催される典型的な「地方の研究会」、持ち回りで当番世話人という古風な名称で毎回毎回世話人がかわる。どうでもいいような世話人会というのが会の開始前に執りおこなわれる。20年以上前から行われているこの会では、なんのデータもでない、科学的にも評価に耐えられない臨床試験まがいのおままごとをやったり、静岡県の症例登録をしたり、倫理も科学もありやしない。確かに20年ぐらい前だったら、これでよかったかもしれない。しかし、今や、歴史的使命を完全に終了したような典型的な「痴呆の研究会」である。それで、PETの話だが、画像をみるとPET-CTなど、すげえなあ、と確かに関心する。一時期、新幹線の中にも日立のPETCTのコマーシャルが乗降口の壁に載っていた、じっくりと見た人も多いだろう。えっ、ここまで見えちゃうの?これなら診断の専門家なんていらないじゃん、と思ってしまうほど、猫も犬もPET、ペットの雰囲気があった(だじゃれです)。夢の検査PETCTで見つかった癌病巣を夢の治療法トモセラピーで照射すれば癌は治る、とうたっている病院が未だに帯広のほうにあるらしいが、それも時間の問題だ。

ウィキペディアで春山茂雄を調べると出てくるが、『「「脳内革命」で得た利益を元に1996年4月、総事業費50億円を投じて東京都新宿区に健康テーマパークと銘打った「ザ・マホロバクラブ」を開業。和風高級人間ドックとして営業したが、数年で閉鎖に追い込まれている。1998年には東京国税局から約6億5000万円の所得隠しを摘発された。2006年12月26日に春山個人と関連する6法人が破産、田園都市厚生病院も閉院となった。』という原因の一つに、PET導入にかかった数十億の負債が原因との記事もあった。

また、東京の西台クリニックもPETで名を売ったが、過剰投資がたたって倒産した。PETあるいは最近ではPETCTが主流だが、これらの画像検査は確かにびっくりするような画像が出るので、説得力はあるように思える。しかし、待てよ、びっくりするような画像が見えるのは確かだが、見えることにどのような意義があるのか、という点が問題なのだ。絵画鑑賞をしているわけではないんでね、それは、MRIでもいえることで、PETCTで診断することで、どのようなよいことがあるのかがポイントなのだ。よいこととは、検査でわかったことで治療が変わった、あるいは早く手をうつことができて長生きすることができた、病気をなおすことができた、他の検査をしないですむ、特に他の検査が痛い検査だったりする場合は特にである、病気がないことがわかって安心につながる、など、で、こういった、よいことがあれば検査としての意味があるが、ただ、すげえ画像が見えちゃう、だけでは、MR.マリックと同じ。いろいろ検討していくと、何もPETCTでなくてもよい、PETCTでなくても他の検査でも同じ、とか、PETCTでは意外と見えないこと、わからないこともあるので、そんなにいい検査ではないね、とか、かえっていらぬ心配が増えた、というようなこともあって、PETCT神話は現在、音を立てて崩れているように思う。保険点数が低く設定されたから、PETCTでは採算があわないんだ、点数設定がおかしい、という意見も聞くが、意味のない検査に、そんなに高い点数はつけてはだめだし、その点、厚生労働省保険局は先見の明もちょっとはあるね。熱病のごとくPET、PETと言っていた時代に導入を決めた病院では、数億から数十億の負債がずんと重くのしかかっており、それに加えてこの「みぞうゆ」の不況だ。当院でも確実に患者数、セカンドオピニオン数も減っているので、さすがに今回の不況は、「世の中の景気にはあまり左右されない」と言われる医療機関や製薬企業も例外なく影響を受けているはずだ。虫害製薬だって例外製薬ではなく中外製薬だ。我が県立総合病院では、な、なんとPETCTを3台も導入、しかも検査につかう放射性同位元素を含んだFDG(フルオロデオキシグルコース)を作るサイクロトロンも自前で持っているというから、その投資額は30億円を超えたという話も聞いた。浜松えすれい病院でもそうだが、PETCTを依頼すると翌日でも予約できる。どこも同じような状況で、閑古鳥が「くえっ、くえっ、ひまだ、ひまだ」と朝から晩まで鳴いている。PETCTを導入している病院では、集客のためにパンフレットを配ったり、各診療科に検査件数のノルマを課したりと躍起になってもとをとろうとしているわけだ。でも数十億を診療報酬でもとをとるのははっきりいって不可能である。「もとはとれないが有意義な検査であるので設備投資として必要」と言うぐらいの取り組みでないとこんな大がかりな検査は導入できないのだ。そんな背景を知らないtnizm先生が、あっけらかんと「約150例の乳癌患者の術前にPETをやりましたが、いいことはなかったです。でも、病院の経営改善のためには、今後どんどんPETCTをやらなくてはいけないじゃあないかな、と思います」とやったものだから、会場騒然、で、私も思わず質問に立ったわけである。

それにしても静岡がんセンターの夢の庭園にしても、静岡空港にしても、PETCT一挙3台購入にしても、草薙球場ドーム化構想にしても、静岡県知事石川 嘉延の治世にろくなことはないようだ。爪に火をともして生活している我々県民の血税をこれ以上、無駄に使ってもらっては困る!!! no more 石川 嘉延 だよね。

ナンセンスプレゼンテーション


久しぶりで目が飛び出るようなナンセンスプレゼンテーションを聞いた。静岡乳癌研究会での話。静岡県立総合病院といえば、日本のMGHを自認している医師もいるぐらいの病院だが、そこで、乳癌術前診断でPETをやっているという話。経営を助けるために今後、全例にPETを実施するって??? 冗談じゃあないね。びっくりしました。

第5回浜松オンコロジーフォーラム


第5回
浜松オンコロジーフォーラム
 
2009年2月21日(土曜日)
15時~18時
 
楽器博物館研修センター
 
(1)がん患者の栄養管理 飯島正平 (箕面市立病院)
(2)頭頚部がんの治療 藤井博文 (自治医科大学)
(3)食道がんの治療 高木正和 (静岡県立総合病院)
(4)乳がんの治療 渡辺 亨 (浜松オンコロジーセンター)
 
参加無料
対象 医師、薬剤師、看護師、栄養士、放射線技師、学生
 
お申し込みは、がん情報局まで

「お金と医療文化」in NEJM


 
浜松オンコロジーセンターを立ちあげたときに、経営者として読んで役に立った本は「さおだけ屋はなぜ潰れないか」である。その中で「いずるを制しはいるを計る」ことが重要だ、ということを学んだ。確かに今でこそエアコンのスイッチはこまめに切るし部屋の電気も消すようになった。山王メディカルプラザに勤めていたころは銭ゲバに対する腹いせもあり夏には夜中もクーラーをキンキンにかけていたことを考えると180度の更生である。少し前にIWT大学の医局を見せてもらった時のこと。日曜日の朝だったが研究室、医局、実験室など、すべての部屋には電気がこうこうと灯りテレビもガンガンとつけっぱなし。古き良き時代を感じた。
 
さて今週号のNew England Journal of Medicineに「Money and the changing culture of Mediciene」という論説記事が載っていた。訳せば表題のとおり。医療の分野にもビジネスの考え方が強烈に入り込んできており、医師の医療行為、行動もすべて、市場原理、経済原則の物差しで判断されるようになっているのは、日本でもアメリカでも同じ。しかし、医師が医療を行う際、やりがいとか、達成感とか、充足感とかは、必ずしも「収入」とか「給料」とかではなく、社会から期待される医師としての専門性が発揮できたとき、とか、日頃の勉強や鍛練の成果が診断や治療に役立ったときにえられるのである。それが、この不況で医師の働きをすべて、経営効率で評価される風潮が強くなっている。浅薄な若者は「最小限の努力で最大限の収益をえよう」ということを考える。そうすると見かけ上9時5時シフトで勤務時間が限られていて楽そうに見える麻酔科や放射線科や眼科なんかを志向するものが増えて、がん医療や小児科、産科に進む若者がへってしまうのだ。我々はよく患者の治療方針や画像診断や病理診断などについて同僚や先輩に非公式に助言を求めることがある。こういうのも専門家としての責任感や向上心から自発的におこなっているのだが、ここにビジネスを持ち込んだらどうなる?「先生、今のコンサルテーションは15分ですので4500円プラス消費税になります。それでよろしかったでしょうか」なんていうことになったら、お前はアホか、と愛想を尽かされてしまうでしょう。それで、NEJMで主張しているのは、医療をビジネスの尺度だけで計ると医療の質は低下し、かえって効率が悪いよ、ビジネス対応と、やりがい対応とのバランスをうまくとらない限り、医療の劣化はさけられませんよ、ということです。激しくうなずいてしまいます。

アルバイト・パラサイト


年が明けて受け取ったメールの中に「せっかく国立がんセンターレジデントをご紹介頂きましたが○●◎病院で研修することにしました。」というようなのがいくつかあった。講演や見学などの機会に会って、腫瘍内科の勉強をしたいと言ってきた若い医師には、国立がんセンターのレジデントがいいよ、と言って紹介し窓口として勝俣範之先生に連絡を取るようにと勧めている。どこのどの先生だか、すべて覚えているわけではないので、だれだっけ、これ? というのもあるが、受け取ったメールのなかで「国立がんセンターはアルバイト禁止なのですがあの給料では妻子を養えません。アルバイトができるGNKN病院にしました。」というのがあった。勉強のためだから、といっても背に腹は代えられないということだ。確かにその通りだと思う。一方、大学の勤務医のなかには二つも三つもアルバイトを掛け持ちしろくに研究もしないで高級外車をのりまわし家のローンや海外旅行と贅沢三昧。それでも、もっと給料を上げろとメールを送りつけてくる元気のよいお坊ちゃまもいる。ところで国立がんセンターでもアルバイト完全禁止というわけではなかった、昔はね。今は厳格なのかもしれないけど。それでも二つも三つもかけもちするようなやつはいなかった。恩師阿部薫先生はレジデントのオリエンテーションのときに「君たちは国立がんセンターに勉強をしに来たのだから青春の貴重な時間を切り売りするようなアルバイトの是非についてはよく考えなさい。禁止するとか許可するとか、そういった次元の話ではないのです。」とおっしゃった。その精神がわれわれの間にはなんとなく浸透していた。阿部先生といえば思い出す。阿部先生は横須賀のご自宅に帰るのは土日だけで、あとは部長室に泊っていた。毎晩11時頃になるとランニングシャツ姿でタオルを首にかけ研究所のシャワーを浴びに来る。「お前たちもいつまでもこんなところにいないで早く帰りなさい。」と言って回るので阿部先生回ってくるまではみんな帰れないでいた。毎週土曜日の5時半から日本テレビのプロレス中継があって阿部先生はそれを見てから横須賀にお帰りになる。そのため、週末もみんなで集まってジャイアント馬場の出るプロレスを見ていた。それが終わるまでは何となく帰れないというような雰囲気であったが、プロレスが終わると阿部先生は「さあ、帰るか、お前たちも土曜日の夜なのにほかにいくところはないのか?」と勝手なことを言って帰って行った。冷静に見れば理不尽だが、そんな雰囲気のなかでぼくらは育った。昨今のご時世、労働環境が厳しく待遇も悪いと報道されている勤務医や大学院生だが、医師不足の追い風のなかでアルバイト代も高騰し優雅な生活を送っている、というのが実態で、そんなパラサイト的ぶら下がり医師が、実は医療崩壊の本質なのかもしれない。