読めない紹介状


大学病院婦人科の先生から紹介状を頂いたが、これがまるで読めない。以前神戸で起きた小学生殺人事件の犯人さかきばらなんとか、みたいな、変に癖のある字で本人はうまいと思っているのかもしれないが、少なくとも相手に読んでもらおうという字ではない。「字は下手でもいいからていねいに書け」と、研修医のころに指導をうけたことがある。最近はワープロ印刷が一般的になっているので、内容が頓珍漢というのはあるが、判読不能というのは久しぶりなのでブログに書くことにした。最近では、面白いネタがあっても、「先生、ブログに書かないで下さいよ」と言われる。しかし、判読不能、悪筆、なぐり書き、にはいろいろと思うところがある。(1)なぐり書きパターン 「先生にセカンドオピニオンをお願いしたところ、『そんなところに行っても無駄です』と言われたのですが、どうしてもとお願いして書いていただいたのです。」と患者がいうとおり、明らかに不機嫌(激怒)というような紹介状をもらうこともある。往々にして大病院、名門大学病で、プライド傷ついた、みたいな憤りが書面から沸き立っている。(2)スター気取りのサインパターン、自分がよほど有名人かと思っているのか知らないが、紹介状の署名欄に、ぐじゃぐじゃと。いくらサインといって乙葉や王貞治は読める。ぐじゃぐじゃサインはもともと字が下手、ということが多い。以前、どうしても読めない名前だったので、手書き入力で似たように書いたところ「颸」という漢字があったのでそれを当てた。正しいかどうかわからない。(3)もともと字が下手パターン 手術がうまい外科医は字もうまい、という話をきいて、大筋で納得することは多い。国立がんセンターにいたころ、13A病棟医長をしていた。月に一度ぐらい、院長回診というのがある。えらい外科医は回診に出てこないので、病棟医長が患者の前で、院長に「この患者さんは、診断○○で、昨日3回目のTAE実施しまして軽い発熱がある程度で、経過は順調です。明日退院予定です。」という風にプレゼンを代行する。今副院長をしているK先生の字が下手くそのなぐり書きで小学生以下だ。記載もろくにしてなくってカルテを読んでも外来での経過などを読み取ることができない。それを見たKKZE院長は「元気のいい字ですね」と。とほほのほ、どっちもどっちの人材不足を痛感させられた。
死亡診断書は、死亡を確認した医師が記載する。あるとき、私の部下であったK先生が、

カヌーに乗って


海の日の連休は、台湾にいる甥の竜太郎が帰国しており「亨おじちゃん、カヌーはやらないの?」と言うので、じゃあやろう、ということで、久し振りでカヌーに乗った。正確に言うと、ファルトボートといって、組み立て式のカヤックである。カヌーは2台目、最初のカヌーは、がんセンターのレジデントとして東京に行った時に購入した一人乗り。芦ノ湖などで乗っていたが二人乗りがほしくて10年ぐらい前に、フランスの「ノウチレイ(NAUTIRAID)社」製の二人乗りを購入した。全長5メートル、木製のフレームを外側のカヌーの形をしたスキンのなかから押し広げるように組み立てるもの。カタログでは組み立てに要する時間は10分となっているが、実際に組み立ててみると炎天下、汗だくで1時間ぐらいはかかる。購入した直後には、小学生だった息子の卓と一緒に、浜名湖、気田川(けたがわ)、英虞湾などで、毎年、年に数回は乗っていた。しかし、浜松オンコロジーセンターを開設した3年前からは、忙しくて、貧しくて、カヌーはほったらかしになっていた。今年はどこでやろうかなと考えたが、佐鳴湖(注:浜松市の西にある淡水湖、BOD:Biological Oxygen Demand(生物学的酸素要求量)日本一、つまり、日本一きちゃない湖、子供のころは底なし沼と恐れていたが、浜松医大、静大、浜松西高などのボート部の漕艇場がある)では汚いし、天竜川や気田川では、ちょっと怖いし、ということで、航行計画としては、「浜名湖の弁天島の裏の浜名湖大橋の駐車場脇の砂浜から出港し、昨年浜名湖花博が開催された会場跡地までの往復ツーリング」として、9時半頃に組立開始、11時頃に出発した。比較的風、波が強く、思うように進まない。また、舵の調整が不完全で、直進しにくくって苦労、苦労。さらに悪いことに、木のフレームが乾いていたためか、スターン(後ろ)からまたがって乗ろうとしたら、リブの1本がぽきっとおれた。それで、計画を変更して、少し出て橋をくぐったところの浅瀬でカヌーを止め、潮干狩りとした。これが、実は、おおあたりで、3cm以上もある大型のアサリがザクザクとれた。あっという間に2-3時間がたち、数キロの貝がとれた。近くをやかましく、うっとうしく、けたたましく走り回るジェットスキーの馬鹿どもは、自然の中にひたりきる、あるいは自然の一部になりきることのできるカヌーの魅力はわかるまい。エコロジーが一つのブームになっている昨今、カヌーの人気はきっと高まっているだろうとおもいきや、翌日、壊れた部品を探しに、神田~お茶の水界隈を歩いて、昔、カヌーを売っていた店を訪ねたが、驚いたことに、すべてカヌーは扱っていませんと。スノーボードやマウンテンバイクの専門店に衣替えしていた。インターネットで探しても、ノウチレイ社製のカヌーは、もはや日本には輸入されていないらしい。構造改革のせいかどうかはわからないけれど、日本から心の余裕が失われてしまったようで、さびしい限りだ。
 
98カヌー

父を亡くして・・・


74日、午前635分、父、渡辺登が蜆塚の自宅で静かに息を引き取りました。享年92歳でした。私が息子として、主治医として最期を看取りました。父は内科医として昭和28年、祖父の医院を継承しました。まさに地域医療に粉骨砕身の人生だったと思います。毎日、午後になると、運転手「いっつぁん」が運転する緑色のフォルクスワーゲンで往診に出かました。当時は、病院も診療所も少なかったので、父は月曜日は「東方面」、火曜日は「南方面」、水曜日は「東方面」、木曜日は「北方面」、金曜日は「中心地」というようにうちから見て患者さんの家の方向別にわけて往診をしていました。東方面は、現在の磐田、掛川あたりまで、北は佐久間あたりまで、西は湖西ぐらい、南は遠州灘近くまで、かなり広い範囲に行っていたようです。幼稚園から帰宅して往診の車に乗っかるのが私にとっても毎日の楽しみでした。農家に往診に行くととうもろこしやスイカをもらい、金曜日には「まるたや」の喫茶店でチョコレートパフェを食べ車の中で寝てしまう、そんな毎日を過ごしていました。父は6時過ぎに往診から帰ると730分ごろまで夜の外来をやり、その後で家族で夕食でした。私が小学校に上がるころには、父は医師会の諸先生方と「浜松市医師会中央病院」を設立する準備していました。毎晩のように医師会の先生方が我が家に集まり、たばこの煙が充満する部屋で、遅くまで会議のような、打ち合わせのような話し会いをしておりました。医師会中央病院が佐鳴湖のほとりにできたのが、私が小学校の低学年のころでしたでしょうか、日本で初めてのオープンシステム病院として注目を集めたようで、父は、その活動を紹介するために、あちこちに講演に出かけていました。その後も、医師会の先生方との話し合いは続き、医師会中央病院は、現在の県西部浜松医療センターに発展したわけです。父も65を過ぎたあたりから、医師会の活動は、若い人に任せた方がいい、というようなことを言うようになりました。私は医学部を卒業するころで、少しは地域医療の実態がわかるようになっていました。父が誠意をもって招いてきた院長に公衆の面前で胸倉をつかまれて、オープンシステムは失敗だったと罵られたという話を人から聞いたことがありました。そんなことが原因であったかどうかわかりませんが、父は、医療センターのオープンシステムを積極的に利用する一医師会員という立場に徹し、毎週の診療協議会には欠かさず出席していましたが、医師会の活動からはフェードアウトしていったようでした。今、父を失ってあらためて父の足跡は大きかったと思います。しかし、何かを残すとか、名声を刻むとかいうことには全く興味がなかった父でしたら、葬儀でも世俗的な挨拶などはどなたにも依頼しませんでしたが、それでよかったと思いました。

臨床EBM研究会浜松大会を終えて


昨日と今日、浜松楽器博物館の会議室で臨床EBM研究会を開催しました。約60人のご参加のみなさま、どうもありがとうございました。また、サポートカンパニーの3社、アストラゼネカ、中外、ブリストルマイヤーズのみなさん、ありがとうございました。今回は、ASCOの発表を検証する、というもくろみで計画しました。EBM初学者も多い中、一日目の終わりごろには、はてなマークが飛び交っていた方たちも、二日目をおえると、よくわかった、勉強になったと、それぞれにそれぞれの収穫をもっていきいきとして散会となりました。反体制クレーマーの批判も何のその、聖路加の若手の先生方も大変よくやってくれたともいます。今回のポイントはASCOの演題だからといって、うのみにするな、という点です。題材として使用したのが、不出来発表の代表のようなHERTAXトライアルです。要は、偶然とバイアスを全然排除できていないような内容の発表であるHERTAX試験は、なんら信頼できる真実を提示していないので、転移性乳がんに対するHERCEPTIN使用方法に関する腫瘍医療者の判断、行動、言動は、ASCO前後で全然かわらないということです。ASCOの口演演題でこんなにひどいのは、めずらしいし、その分、今回の浜松大会では、絶好の題材だっと思います。ところで、サンアントニオでは、転移性乳がんのハーセプチンの使い方に対して、判断、行動、言動が大きく変わるような発表があるという噂があります。皆さん、楽しみにしていてください。

そんなことやっている時代じゃないでしょ②


乳癌学会では、おもなセッションの最後に「特別発言」として、名誉会員の先生にご発言頂くという習慣がある。でも、そんな昔からあったわけではないような気がする。名誉会員の先生のご発言ですから、それなりに重みがあり、良い意見だあ、と感銘深く聞き入る場合もある。しかし、中には重すぎて、大幅に時間を超過して座長に途中で発言を中断された、という場面が去年はあった。あの座長は礼儀を知らん、けしからんという意見もないことはなかったが、それは少数であり、大方の意見は、あの特別発言はやめたほうがいいというものだ。今年も特別発言が用意されている。やめたほうがいいのではないか、という意見を理事会でしたところ、慣習だから、とか、あれがないと名誉会員の先生にご活躍していただく場がないから、とかいう理由で、やめにしようという結論にはいたらなかった。どうだろう、今年は特別発言を採点したら。しかし、何もそんな形で発言の場を用意しなくても、発言したければ、若者でも、年配者でも、一会員として発言、あるいは質問すればいいだろうと思うのだが。

そんなことやっている時代じゃないでしょ①


某外資系製薬企業から、「来年の1月に東京でフォーラムを開催します。T京大学のI先生が座長ですが、渡辺先生にぜひ、御講演いただきたいとのことですが。。」、この手の無意味なフォーラムが毎年、各企業、1月から4月ごろまで、高輪Pホテルとかで、400-500名の参加者で開催される。参加者はあごあしつきで、MRも同行。昔はどうどうと夜は銀座でおもてなし、ということだったがさすがにそれは陰でごそごそと。裏ではえぐいで。 でもでもでもでも、そんなばかみたいなシャンシャン大会、やっている時代じゃあないでしょう。地方会などもあるわけだし、「お断りします」。としました。

ASCOの過ごし方 part 2


今年のASCOで驚いたこと、それは、早期乳がんのセッション(local-regional and adjuvant therapy)が、ガラガラだったことだ。前代未聞である。その理由は、二つあるだろう。ひとつは、ネタがやや枯渇していること、もう一つは、今回のASCOでは会長が乳がんの専門家のNancy Davidsonであることもあり、HER2過剰発現乳がんの治療、triple negative 乳がんの治療、ホルモン耐性乳がんなどが、clinical science symposiumとして、別セッションが建てられたことによるのだろう。ネタ不足にかんしては、ここ数年、注目をあつめているアロマターゼ阻害剤や、ハーセプチン、などの新規治療薬や、オンコタイプDXなどの新規臨床検査方法などの話がひと段落ついたためだ。全号で書いたように、どの領域も、ニブ、マブの世界であり、それらは、まず、転移性がんで評価されるので、久し振りで、転移性乳がんのセッションの方が、熱がこもっていた。
 
早期乳がんのセッションでは、興味深かったのは、TanGo Trial, CALGB79809それとビタミンDの話。
TanGo Trialは、乳がん術後の3000症例を対象として、EC(エピルビシン90mg/m2, シクロフォスファミド600mg/m2) x 4(3週毎) → パクリタキセル175mg/m2 x4(3週毎) を標準アームとして、試験アームは、これのパクリタキセルの部分にゲムシタビン(1250mg/m2 day 1&8, 3週毎)を上乗せするものだ。この試験の背景には、転移性乳がんで、タキサン単独よりもタキサン+ゲムシタビンの方が優れていたという結果がある。しかし、TanGo trialでは、まったく差がなかった。その理由は、何だろう。EC→パクリタキセルで、すでに効果は飽和していて、そこに加えられたゲムシタビンでは、上乗せ効果がない、ということだろうか。つまり、ステーキをたらふく食べたあと、食後のアイスクリームは、別腹ではない、ということだろうか。では、AC→3週1回パクリタキセルよりも、AC→毎週パクリタキセルの方が優れていた、という1199試験はどう解釈すればいいのか。ステーキは、小刻みによく噛んで食べると身になるということだろうか。たとえが、分かりやすいようでかえって混乱するね。

CALGB79809は、65歳以上の乳がん術後症例を対象に、CMF(クラシカル6サイクル)またはAC(60/600 4サイクル)を標準アームとして、試験アームは、カペシタビン(2000mg/m2を2週間内服し1週間休薬、これを6サイクル)。カペシタビンアームは、再発抑制、生存ともに、ACまたはCMFに全く歯が立たない、という結果であった。具体的には、ハザード比(試験治療/標準治療)はRPSで2.07、OSでは1.85と、いずれも2倍前後の値であったのだ。この結果は内外(読み:ないがい)に大きな衝撃をもたらしたが、中外(読み:ちゅうがい)としても激しくがっかりでしょう(悲しい)。原因として考えられるのは、カペシタビンの投与期間が短すぎやしないかね、という点。この試験では、2週投薬1週休薬で6サイクルということなので、実際に内服している期間は12週間だ。UFTがCMFに劣っていないという結果が出たNSASBC01では、UFTの内服は2年間であった。このあたりが原因ではないだろうか、どうよ、うん? 濱尾さん、ご意見ください。

ビタミンDの話はちょっと驚き。術後の時点で、血清中のビタミンDは測定して、予後を検討したところ、ビタミンDが低い人は高い人に比べて再発率が高い、という話だ。詳細は、次号で報告するが、すでに大部分の発表は、Virtual Meetingで見ることができる。この速さは驚きだ。これなら、スライドをデジカメで撮る必要はないようだ。会場には、いつもすらりとしたお姉さんが、名刺ぐらいの大きさの紙に、No Photoと書いて、控え目に示して歩いているが、こんなに早くVirtual Meetingが見られるのならお姉さんは正しいと思う。ASCOの底力を感じる。

 

ASCOの過ごし方


今年も5月31日(土曜日)からASCOのアニュアルミーティング(年次総会)が始まった。何年か続いたシカゴでの開催だが、来年からはオーランドで開催される。シカゴは日本から直行便で来ることができるがオーランドとなるとどこかで乗り継ぎをしなくてはいけないので時間のかかるし手間もかかる。特に9.11テロ以降、機内への持ち込みも、預ける荷物のチェックも厳しくなって乗り継ぎのために2時間ぐらい、見ておかないといけないようだ。シカゴでは、市の南、ミシガン湖に面したところにあるマコーミックプレースが会場である。はじからはじまで歩いて移動するだけで30分ぐらいかかるほどの巨大な会場だ。おそらく全米一ではないだろうか。ASCO GI, ASCO Breast など、領域ごとに別開催にはなっているものの、やはり年次総会の参加者は多く、巨大な会場の中心部は朝夕の満員電車なみの混雑ぶりだ。
さて、今年も昨年以上に「ミブマブ」の発表が多い。、プレナリーセッションでは、4演題のうち2演題は「マブ」。転移性大腸癌に対するセタキシマブ(商品名「アービタックス」)の効果はKRAS変異のない症例で認められるというCRYSTALトライアル、進行非小細胞癌にたいする同じくセタキシマブの効果を認めたFLEXトライアル。この試験では、サブセット解析ではアジア人では効果がほとんどなく、白人で効果があった、というものだがEGFR変異の頻度や非喫煙者の割合の違いなど、その他の因子との交絡も考えられるようだ。その他、2演題は乳癌のゾメタ、セミノーマのカルボプラチンの演題だ。
ABCSG(オーストリア乳癌研究グループ)のプレナリーセッションでの発表は、「?」が多くつく。この試験は閉経前乳癌症例を対象に、ゴセレリン(ゾラデックス)を毎月注射(3年間)して卵巣機能を抑制したうえで、①タモキシフェン内服群、②アナストロゾール内服群、③タモキシフェン内服にゾメタを6カ月毎に注射を加える群、④アナストロゾール内服にゾメタを6カ月毎に注射を加える群、の4群を比較した試験。よくみると、タモキシフェン vs. アナストロゾールという比較ファクターと、ゾメタあり vs.ゾメタなしという比較ファクターの二つのファクターを検討する、2x2(ツウーバイツウーファクトリアルデザイン)で、症例数の節約を図っている。それででた結果というのが、① タモキシフェンとアナストロゾールは差がない(アストラゼネカ真っ青気持ち悪い)、②ゾメタを加えると再発率が三分の二に抑制され、、死亡率も抑制される傾向にあった(ノバルティスにこにこスマイル)というもの。 
 
研修医山田君(突然登場): でもちょっと待ってください。、アナストロゾールとタモキシフェンの比較では、ATACトライアルでも、ITAトライアルでも、ABCSG8/ARNO95トライアルでも、相原先生がやったNSASBC03トライアルでも、いずれもアナストロゾールの方が、再発抑制効果が優れていたという結果でしたよね。
 
渡辺先生: おお、君も来ていたのか。そういえば、ASCOに参加するって、言っていたね。
 
山田君: 乗るはずの飛行機が故障で1日遅れてしまってんです。ですから、Perez先生とLake先生をおよびした勉強会も、ばたばたしていて参加できなかったんです。
 
渡辺先生:そうか、大変だったんだね。それで、話を戻すとね、確かにそうだけど、ATACなどは、すべて閉経後症例を対象とした試験だよね。でも、このABCSG12では、閉経前症例にゴセレリンを注射して見かけ上、閉経後のようにして、そこで、タモキシフェンとアナストロゾールのどちらが、再発抑制効果が優れているか、を検討しているんだ。だから、ATACなどは、完全に閉経した症例を対象としている。本当の閉経と、ゴセレリンで卵巣機能が抑制された状態とは、内分泌的には、まったく異なるので、そのあたりの違いかもしれない。なので、アストラゼネカちゃんも機嫌をなおしてね(恥ずかしいうん、わかった)。
 
山田君: 先生、アストラゼネカの昌本さんが、口を尖がらせていますよ、大丈夫ですか。
 
渡辺先生: ああ、そうね、いつもそうだから気にしなくていいよ。
 
山田君: それでね、先生、次にゾメタはどうなんですか? ゾメタはそもそも、骨転移のある患者で骨転移の進行を遅らせて、骨折、疼痛、高カルシウム血症などの「骨関連合併症を防ぐ」という目的や、骨粗鬆症の予防、治療で使われる薬剤であって、なぜ、再発率の低下につながるのでしょうか。
 
渡辺先生: そこなんだよね。そこがちょっと不思議なところだけど、ビスフォスフォネートの第一世代の薬剤、クロドロネートで、骨転移の予防になる、という報告もあるんだよ。 ビスフォスフォネートに関するASCOのガイドラインにも出てるから、一度読んでおくといいよ。
 
山田君:はい、わかりました。つまり、骨転移を予防するということですね。
 
渡辺先生: ふつうはそう思うよね。でも、骨転移だけでなくて、局所再発や臓器転移も抑制されるんだそうだ。なぜ、そうなのかということはわかっていないようだけど。プレナリーセッションでは、各演題毎に、discussionというのがあるのだけど、discussionを担当したPiccart先生は、種と畑、ということで説明していた。つまり、癌細胞が種だとすれば、転移先は畑ということで、畑が
それなりの条件が整わないと種も育たないということだ。しかし、この論調は、どうも骨転移のことを想定しているように感じたけど。ビスフォスフォネートは、癌細胞に対して直接作用もあるのではないかという意見もあるしね。
 
山田君:じゃあ、術後の患者さんには、ゾメタを点滴すればいいってことですか?
 
渡辺先生: 今の時点では、まだ、確定というところまでは行っていないと思うよ。ポジティブデータは、今回の試験と、Dr. Pawlesが2002年にJCOに発表したクロドロネートの論文で、あと、もう一つは、クロドロネートは、遠隔転移を抑制しない、という報告がある。だから、まだ、確定というわけではないと思う。ノバルティスくん、落ち着きなさい(天才 池井戸です。わっかりました)。でも、半年に1回の点滴で再発率が抑えられるのなら、こんなに楽なことはないね。骨は、たんなる硬い、白い、こんこんという塊ではなくて、さまざまな細胞や無機質は有機物や活性物質が織りなすとても複雑な臓器なんだよね。
 
山田君:でも、骨の話は、分かりにくいですよね。破骨細胞と造骨細胞のバランスで、骨粗鬆症になるとか、骨転移したがん細胞が、破骨細胞を手下のように操って骨を溶かすとか、イメージがわかないですね。
 
渡辺先生:そうかもしれないけど、癌治療、とりわけ乳癌治療は骨と切っても切れない関係があるし、これから、RANKL阻害剤といったあたらしい骨転移治療薬も出てくるから、一度、きちんと勉強しておくのといいね。こんどの、臨床EBM研究会はASCOの発表を検証する、というテーマだけど、ABCSG12を取り上げる予定にしているんだ。だから、臨床EBM研究会に参加すれば勉強できると思うよ。そのほかにも、ASCOでの発表をEBM的にどう解釈するか、ということで、内容充実しているよ、中村清吾先生も来るしね。
 
山田君: ええ、参加する予定にしています。
 
渡辺先生:もう、申し込んだの?
 
山田君:いや、まだです。
 
渡辺先生:早くしないと、締め切っちゃうよ。ホームページをみて、早く応募したらいいよ。
 
山田君:では、いまからやります。

若手医師との往復書簡


渡辺 亨 先生

いつも楽しくブログを拝見させて頂いております。SPIKES研修医版は山本君が問題を解決していく様子が面白く、また私も非常に勉強になります。厚生労働省の役割分担の件についての先生のブログに啓発されました。当院も病棟クラークを導入してもらい、入退院計画書や先渡し処方、手術申込書等々の殆どの事務作業を、お願いすることになりました。今まで事務作業で忙殺されていたのが、かなり負担が減るのではないかと思います。また勉強会の方も宜しくお願いします。先生のシャープなご講演も楽しみにしております。日程調整をしたいと思いますので、ご都合をお聞かせください。

 えすがら

 

えすがら先生

ご連絡ありがとうございました。喜んで講演、伺いたいと思います。原則として、土曜日の夕方から、という形で最近は講演をお引き受けするようにしています。というのは、土曜日の午前中に外来化学療法を希望する患者が多く、土曜日外来をやらなくてはなりません。よろしくご検討ください。

 渡辺 亨

 

 渡辺亨先生

ご講演の件も了解致しました。先生も土曜日お忙しいのですね。当院でなにか企画出来ればいいなと思っております。また、ご連絡致します。

 えすがら

 

えすがら先生

 週休二日制が完全に定着し、ゆとり教育で小学生までもが土曜日休みです。そして、医療機関も土曜日休診があたりまえのように考えられています。しかし、はたしてそれでいいのだろうか、と最近、疑問を感じています。JCOGなど、非常識にも土曜日の朝8時から会議を開催しています。あほかと思いますね。基本的には、医療はサービスですからいつでも利用できるという体制を提供するほうがよいと思います。しかし、それを実現するには、医師の自己犠牲が前提とならざるを得ないほど、現在の保険診療報酬体系は厳しいものがあります。自己犠牲ではなしに「いつでもサービス」を提供するには、医師も2交代制とか、3交代制になる必要があるでしょう。しかし、そうするには、人件費などから、採算が合わないということになります。ほとんどすべての公立医療機関が赤字経営となっているという現実は、どう考えても異常ですね。私も昔は、経営効率などは全く考えていませんでした。しかし、現在、経営者の立場になって周りを見渡してみると、公立病院勤務の医師たちが、如何に効率の悪い働きをしているか、ということを痛切に感じます。ということで、土曜日午前中は、公立病院がどこも休診のため、医療過疎の状態になるのです。特に癌治療がきちんとできるような病院は、ただでさえ少ないため、土日で抗がん剤治療を行うことのできるような病院も、これからはニーズが高まるのだろうと思います。ところで、先生の病院では、外来化学療法加算1を算定していますか。浜松オンコロジーセンターでは、もともとカンファレンスで、レジメンの検討をしており、「レジメン検討委員会」という要件は満たしていますので、加算1の算定を届け出ました。しかし、算定要件である「レジメンを検討する委員会が開催されていること」、というのも、誰が考えたのかわかりませんが、全く形骸化した、形式的なものであるようにも感じます。どうして、小役人は、こうまで考えが浅いのだろうかと、呆れてしまいます。私が国立がんセンターで、コンピューターオーダリングを導入を検討する係をやっていました。当時は、医師の数だけ化学療法レジメンがある、ACでも、投与量はまちまち、吐き気止めはばらばら、薬を溶かすのも生食だったり5%ブドウ糖だったり、100ccだったり250ccだったり、10分でおとせ、だったりワンショット静注だったりでした。コンピューター処方導入するにはこれでは、どうにもなりませんので、ACならACで統一レジメンを作るように、各診療グループに依頼したのですが、これがまた大変で、おれの処方が一番だ、みたいでさらにどうにもなりませんでした。そこで、数名の専門家でレジメンを審査するという委員会を立ち上げたわけです。それは今でも国立がんセンターではきちんと機能しているはずですが、おそらく、今回、平成20年度の診療報酬改定で、外来化学療法加算1と2をわけたのは、いずれ「2」を廃止にするという形で、従来よりグレードアップするにはどのような要件を加えればよいか、そのあたりを目先の利く小役人が、国立がんセンター中央病院にでも相談したのではないだろうかと、直感しました。木を見て森を見ずみたいな行政はやめにして、もっと現場の状況をもう少し考慮したほうがいいと思いますけどね。長くなりましたが、土曜の夕方から、ということでよろしくお願いします。

 渡辺 亨

 

 渡辺 亨 先生

 当院も外来化学療法加算1はなんとか取ることができました。申請に関しては、私の5年間のがん診療経験を証明し、通常行っている術後カンファレンスや外来化学療法ミーティングで、従来から外来化学療法室連絡委員会を開催していますので、その内容で申請したと聞きました。先生のおっしゃるとおり、医療はサービスだと本当に同感いたします。「リッツカールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと」林田正光著を読まれたことがありますでしょうか? 非常に感銘を受けた本です。まさに病院は、ホスピタル、その語源はホスピスやホテルと同じホスピタリティーですので、手厚いもてなしを提供しなくてはと思います。それに加えて、専門性や知識も備え、経営感覚も持たないといけないので医者って本当に大変な仕事だなと痛感しています。 私が一番今許せないのが、がん拠点病院の制度です。地方のがん治療をあまり行っていない国立・県立病院ががん拠点病院に認定されるのは、効率の悪い赤字経営や技術を余り持っていない高給な大奥看護師の給料を、補う為だけのものだと思います。当院もがん専門病院の自負はありましたので、申請したのですがもちろん却下でした。浜松オンコロジーセンターも非常に高い専門性があると思います。がん拠点病院の制度がそのようなクリニックや専門病院に少し考慮していただきたいと思っています。

えすがら

 

えすがら先生

 がん診療拠点病院については、私も同意見です。行政がやることはいつもこんな具合です。内容よりも外形基準で判断します。がん診療拠点病院は、肺癌、乳癌、胃癌、大腸癌、肝癌の5癌腫について、診療体制がととのっていることが条件となります。そのため、先生の病院のように乳癌の専門病院は、いくら実績があり内容が充実していても、がん診療拠点病院の条件を満たさないということになります。つまり、がん診療拠点病院は、三流の百貨店であり、先生の病院は一流の専門店なわけですが、三流でも百貨店を尊重し、専門店は対象としないという姿勢です。患者にとってみれば、乳癌で診療を受ける際、その病院で肝臓癌診療をやっていようが、胃癌の専門家がいようが、まったくと言っていいほど関係ないですよね。だから、どうして、なんでもそろった百貨店でなくてはならないのか、われわれには理解できません。世間では、がん診療拠点病院のほうがレベルの高い診療を行っている、というふうに理解する人は多いと思いますが、実際、がん診療拠点病院に指定されているこの地域の病院の中にも、目を覆いたくなるようなひどい診療をやっているところがあります。詳しくは言えませんがね・・・(えへへのへ)。とはいえ、がん対策基本法という法律ができたことは、評価してよいと思いますね。法律ができると区役所レベルでも、豆役人がそれなりにがん医療について仕事をするようになりましたからね。しかし、肝心なことは、地道に日々の診療を行い、EBMを学び、最新の情報を把握し、臨床試験にも参画していく姿勢をきちんと守っていくことです。そうすれば世の中に役立つ医療、医学の実践ができるということは間違いありません。そのことを肝に銘じて、もてなし、優しさ、公正、正義を心に据えてやっていきましょう。今日は、息子が帰省しているので、これから家族でお買い物です。先生も休日、楽しくお過ごしくださいね。

 渡辺 亨

 

大過なき3周年


浜松オンコロジーセンターも5月6日で開設3周年を迎えます。これもひとえに皆様のご支援の結果と厚く御礼申し上げます。この3年間でわかったことは以下の通りです。
①外来化学療法は、安全に安心できるような形で提供できる。
①の(1) ハーセプチンは38度程度の発熱は25%程度の患者で認められるが初回から外来で問題なくできる。初回は入院でハーセプチン点滴を行っている病院もあるが、そんな必要ない。
①の(2) ACやECなら、術後でやる場合には、day 8あたりで、わざわざ外来に来てもらい、採血する必要は全くない。さらに、day 1、つまり点滴当日も、採血しなくても全く問題ない。よく、点滴当日に採血して、問題ないことを確認してから点滴を行う、というようなことをやっているところがあるが白血球が2300であっても、特に問題なくフルドーズの点滴は問題なく実施可能。
①の(3) weekly paclitaxel@80mg/m2ならば、術前、術後化学療法で実施する場合にはこれも白血球を調べる必要はなったくない。
術前、術後で使用する限り、全身状態がよければ、好中球数、白血球数のみならず、肝機能も特に調べる必要はない。

術後でも、CEF(100)、Docetaxel @100mg/m2などでは、30%程度の好中球減少性発熱を起こす。これらのレジメンを使用する場合にはそれなりの対応が必要となり外来ストレスレベルが上昇するので、どうしても必要な場合でない限り、これらのレジメンは選択しない。

②セカンドオピニオンは、SPIKESプロトコールを用いて行えば、だいたい30分以内には、患者あるいは家族の満足のいくような情報提供が可能である。
③セカンドオピニオンでは、治療経過がうまくいっている場合でも今のままの治療でよいだろうか、何か他の治療はないだろうか、という質問も多い。その場合には、現在の治療がなぜ、どういう根拠に基づいて選択されたのか、現在の治療の目標はなにか、などについて説明すると、あぁ、そんなんですか、と初めて聞いた、というような患者もいる。それはそれで、セカンドオピニオンの意義があるわけだと思うようにしている。
④がん診療拠点病院といえども、極めてお粗末な治療、説明しかできていないところが結構多い。当然、箱もの行政的発想から、拠点病院というのができたわけだが、早急に、内容の充実を図っていかないと、看板に偽りあり、ということになる。特に、A病院、B病院、・・・(この程度のイニシャルなら問題ないでしょうか? HDKさん)。

3年間の経験知を元に、少し、グレードアップします。今回の一番の目玉は、外来化学療法室の充実です。これがすごい!! これについては、後日、改めてご報告しましょう。それ以外に、薬剤師、看護師の質、数ともに補強して診療ボリュームの増加、標準手順の合理化を図っています。IRBも立ち上げ臨床研究も開始できる見通しとなりました。そんなこんなで、1月から4月まで、めまぐるしく過ぎた第一四半期でした。あらたに、リセットするところはリセットし、過去のしがらみを断ち切り、新しい目標に向けて、また舵をきります。そんな明かるい希望に燃えていたある日、一枚の封書がJCOGから届きました。その内容は、