医師-患者関係


過日訪れた町の症例検討会で、医師-患者関係について考えさせることがありました。O先生が術後の患者さんに抗がん剤治療を提案したところ、患者さんが、抗がん剤はしない、という道を選択された。しかし、数ヶ月で遠隔転移が出た、ということで、そこからの治療方法の選択をどうしましょう、ということがポイントでした。すると、会場の後ろのほうに座っていらっしゃった、やや年配の地元の先生が、「何で術後の抗がん剤治療をやらなかったのか。患者が拒否するなら、説得してでもやるべきだろう。自分で説得ができない、と思ったら、先輩でもだれでも呼んできて、説得してもらうべきで、それもしないのは、怠慢ではないか!」と、喝~っ!!!!みたいな迫力で主張されたのです。担当のO先生は、とても理性的で、よく勉強されており、その地域にあっては、標準的治療普及の若きオピニオンリーダーとしてしっかりと診療をされている先生です。この患者さんにも、十分に時間をかけて、再発のリスク、抗がん剤治療を実施した際のリスク抑制効果、そして、抗がん剤治療をやることのハーム(副作用、時間、お金)をきちんと説明して、その上で患者さんが選択した道を尊重した、ということなわけで、私も、それでいいんじゃないかな、と思いました。ここで、医師ー患者関係の4つのパターンがある、という話、これに行き着くわけです。詳しくは、近々、朝日新聞社から出版される「がん常識のうそ」をお読みください。えっ、本の宣伝だったの? そ~なんですよ。

電子カルテ(3)


電子カルテのヴェンダー、つまり、電子カルテを作っている会社は、大病院と診療所では、かなり異なっているのですが、その理由がよくわかりません。大病院では、IBM, NEC、富士通、日立など、一般のコンピューターの開発も手がけている会社のものが多いのですが、診療所では、BML、サンヨー、シャープなど、大病院用のとは、別の会社が、高いシェアを持っているようです。どのような経緯でこういう棲み分けが定着したのか、病診連携を考えた場合、このような棲み分けが障害とならないのか、など、十分に理解できない点があります。明日は電子カルテを設置の日です。

説明と同意の難しさ


AKさん、お久しぶりですね。ご無沙汰しております。NSASBC01試験は、来年、いよいよ最終解析を向えます。確かに、臨床試験に参加して頂くためには、説明することが山ほどあり、同意を頂いたあとも検査や治療の内容やスケジュールについて、説明することが、山X山あります。ですから、試験に参加されないという方には、説明量がぐっと減るので、外来の時間も短くなりますし、患者さんからみると、手のひらを返したように、と、感じるのかも知れません。ほんとうは、そのように感じさせてはいけないのですが、なかなか、若いうちは経験不足もあり、つい、こちらの都合で話を進めてしまうことがありますね。以前にもAKさんから、同様の指摘を頂いたことがありましたが、そのような経験を通じて、我々も、段々対応がうまくなり円滑になっていくように、努力しなければいけないと思っています。ご指摘、誠にありがとうございました。お元気にお過ごし下さいませ。

55年通知


エビデンスに基づいて、しっかりとした抗がん剤治療が行われるようになってきたことは、それは、喜ばしい事だと思います。しかし、物事には何事にも、節度というか、常識的な判断も大切です。抗がん剤は、世界各国の製薬企業で開発されていますが、実際に新しい抗がん剤を開発するだけの力のある製薬企業は、アメリカ、フランス、イギリス、イタリア、ドイツぐらいに限られてきています。日本でも抗がん剤の開発力のある企業は、1ー2社あるかないかです。しかも、最近の厚生労働省のジェネリック医薬品を後押しする政策で、開発力のある製薬企業は、どんどん減っているのではないでしょうか。そうすると、どうしても、海外での新薬開発が先行します。昨今、よく話題になる「日本では有効な抗がん剤が使用できない」という話、あれは、半分は事実です。半分は、というのは、「新薬」イコール「いい薬」というわけではない、というのがひとつの理由です。海外で開発途上の薬剤の情報も日本に入ってきます。しかし、現在開発中、すなわち海外で治験中ということは、効果があるのかないのか、安全に使用できるのかできないのか、と言う問題を吟味している最中であって、海外開発品のなかで、安全性に大きな問題有りとして、開発が中止された薬剤もあります。つまり、開発途上の薬剤は、海の物とも山の物ともつかない、という状況であって、日本で使えないことが、むしろ安全である場合もある、ということです。半分の真実、という問題、これは、たとえば、ジェムザールという抗がん剤。これは、日本では、肺癌と膵癌で承認されています。しかし、これら以外に、乳癌、卵巣癌で腫瘍縮小効果が証明されております。延命効果はなくても、QOLの向上や症状緩和につながると考えられます。食道癌には、パクリタキセル、カルボプラチン、TS1など、膵癌にはTS1が有効、と言うことは海外や日本での臨床試験で明らかにされていますが、日本では、厚生労働省の承認がおりていない、という理由で、使用することができません。なかには有効性が確認され、承認手続き中のものもありますが、これもつかうことはできない、という認識にならざるを得ません。

 

しかし、ジェムザール、パクリタキセル、カルボプラチン、TS1などは、すでに市場に出回っています。ただ、適応となる癌が限られているだけです。このような状況に対して、最近、がん専門病院では、「当院では使用できません」と、それらを全く使用しようとしません。この間、患者さんから聞いてびっくりしたのですが、私も隅々までよく知っている東京のがん専門病院の内科で「ジェムザールを使ってくれませんか」、という卵巣癌の患者さんに対して「死んでもいいんだったら使ってやる」と言い放った医師がいるそうです。これって、いったいなんなのでしょうか。

 

効果がない、あるいは効果があるかないかわからない、という状況ではなく、2割~6割の患者で、腫瘍が縮小する可能性がある、それにともなって症状緩和、QOL向上が得られる可能性がある、患者さんも希望を持つことができる、という状況です。木で鼻をくくったように「当院では適応のない薬は使えません」と、まるで厚生労働省のお役人にように言って患者さんを追い返すか、それとも、医師として裁量で、「可能性があるので、どうにか使ってみましょう」とするか。そうは言っても、卵巣癌の患者さんに、ジェムザールを使用すると、社会保険でも国民保険でもレセプトの審査で査定されてしまいます。査定される、というのは、医療機関から、保険支払い基金に患者負担分以外の医療費の支払いを請求した際、病名と一致しない診療内容があると、支払いを拒否される、つまり、医療機関がその分、赤字になってしまうということです。このような状況では、正々堂々と、抗がん剤の適応外使用を行うことは不可能です。と、だれでも思うでしょう。

 

ところが大丈夫なのです。「昭和55年通知」というのが厚生省(当時)から出されています。これは、2項目からなり「①医学、薬学上、公知の有効性が認められている薬剤は、保険適応外であっても、その使用に対しては、柔軟な対応をすべし。②この対応に関しては、支払基金間での相違がないように配慮すべし」というものです。つまり、医学的あるいは薬学的に、エビデンスのある薬剤は、保険承認の有無に関わらず使用すべきである、しかも、都道府県、社会保険あるいは国民健康保険など、支払い基金間で、対応が異なってはいけない、ということです。昭和55年といえば、まだ、日本医師会が行政にも影響力を持っていた時代で、良い意味で、医師の職業人としての裁量が認められていた時代です。行政というのは、律儀なもので、25年経った今でも1回出された通知は有効なのです。ですから、海外でのエビデンスがあれば、この「昭和55年通知」に従って、患者さんのベネフィットを重視して治療に使用することは正しいことと言えます。ただし、医療行為の責任や、患者に対する説明責任は、治療行為を実施した医師にあることは他の医療と同じです。

 

PS.

K君へ:死んでもいいんだったらジェムザールを使ってやる、なんていう態度は、論外であることは言うまでもありませんよ。驕らず、原点に返り反省しなさい。

 

 

電子カルテ(2)


電子カルテ、オーダリングシステム、診療支援システム、医事会計システム、など、病院や診療所で使用されるコンピュータを使った情報処理、管理システムは、いろいろな名称で呼ばれています。もちろん、これらは、少しづつ機能が違います。もともと、病院、診療所の会計を処理するために、レセプトコンピューター、いわゆるレセコンというのが1980年代にいろいろなメーカーのものが登場し普及しました。レセコンとは、医事会計コンピューターシステムです。
 
レセプトというのは、月毎に、その月に行われた、診察や手術や検査や薬剤処方や点滴・注射などの保険点数を集計して、医療機関から社会保険、国民健康保険の支払い基金に請求する明細書のことです。手術したのにその分の請求がもれていたり、処方した薬剤の根拠となる診断名がついていなかったり、と言うことがないように、実施した医療行為に対して過不足無く請求するためには、レセコンが役立ちます。
 
オーダリングシステムというのは、薬剤処方とか、レントゲン検査の依頼・指示とか、採血検査の指示とか、医師の指示(オーダー)をコンピューターで行うものです。これがあると、処方した内容が、薬剤部門に伝わって薬剤が処方され、医事会計部門に伝わって、会計処理につながります。つまり、医師の処方、が発生したら、それから、すべての処理がもれなく、実施されるわけです。そういう意味で、発生源入力、ということですから、医師の処方内容をレセコンに打ち直す、という二度手間が省け、しかも間違いがなくなる、というものです。オーダリングシステムは便利ですが、オーダーしたことをカルテに記載しなくてはいけないので、その点が二度手間になります。国立がんセンターでもそうでしたが、オーダリングを導入すると、必ず、医師から、仕事が増える、ただでさえ忙しい外来がますます忙しくなる、などの不満がでます。とくに、コンピューターになじんでいない団塊の世代以上の皆さんは、マウスを使うには机が狭すぎる、など、訳のわからないことを言います。確かに、二度手間になるかも知れませんが、考えようによっては、JRの指さし確認のように、もれがないよう、二重チェックができるという事も言えます。
 
そして、この「二度手間のカルテ記載の部分」もコンピューター化したのが電子カルテです。電子カルテは1990年代に先進的な病院では導入されました。私も、いくつかの病院の電子カルテを視察してまわりましたが、いずれも、「単なる紙芝居」でした。カルテ、すなわち診療録記載の理念が全くわかっていないのではないか、と思われるような稚拙なシステムが、使われていた病院もありました。電子カルテのことを考える際には、やはり、カルテの記載とはなんぞや、ということをよく考えないといけません。日野原重明先生が1970年代の後半にPOS(problem oriented system)を日本に導入されました。POSはいまでもそのまま、使えるカルテの記載方式ですが、これは、たんなる「書式」ではありません。患者さんの主観的な訴え、医師が診た、あるいは検査した客観的な所見、にもとづいて、医師がどのような診断をして、どのような対応が必要と考えたのか、そして、処方するなり、追加検査をするなり、様子をみるなり、どのようなアクションプランをたてたのか、という一連の思考プロセスをカルテに記載する、というものです。紙芝居カルテを作っていた鴨川の病院を先日、何年かぶりに訪れたのですが、病院全体が紙芝居になっておりました。 
 

電子カルテ


新年、あけましておめでとうございます、皆さん。今年もよろしく御願いします。
 
浜松オンコロジーセンターでは、今年1月に電子カルテを導入することにしました。情報の効率的出し入れのためには、電子カルテは、必要不可欠なインフラストラクチャーですから。
 
浜松オンコロジーセンター開設を決めた時点で、すでに電子カルテの導入を決めていましたが、その前にまず、業務の流れをある程度、定型化しなくてはいけませんでした。また、電子カルテ導入してからも、業務手順は、ブラッシュアップされることが期待できます。
 
国立がんセンターにいたとき、IBMの診療支援コンピューターシステム「ミラクル」導入にあたり、ユーザー側のまとめ役をやるように総長だった阿部薫先生に言われました。それでがんばりました。現在、東大にいる小山博史先生や、北条文彦先生といっしょに2週間にわたるアメリカ視察旅行にも行き、医療情報化システムの最先端を見聞きした経験も「ミラクル」設計に十分に活かされたと思っています。ミラクルというニックネームも、この旅行中に考えたのです。ちなみにミラクルMIRACLE)は、Medical Information Systems for R esearch, Administration and Clinical E xpertiseの頭文字。奇跡という意味です。
 
アメリカ施設旅行では、小山先生が事前に周到な計画をたててくれ、かなりタイトなスケジュールであちこちを視察して回りました。なかでも、すごかったのはPubmedを作っているNLM(National Library of Medicine)を訪れた際、NLM所長ご自身が、すべてを案内してくれたことです。こうやってPubmedのコンテンツは作っている、検索システムは、こういう考え方に基づいて設計してある、など、丁寧に説明してくれたものでした。また、当時の電子カルテの最先端や、小山先生得意技のバーチャルリアリティなど、今では当たり前だけど、当時としては、狐につままれたような、必ずしも正確には理解できないような体験をたくさん積んできたものでした。1996年ごろの事だった思います。
 
そんな経験もあり、医療情報の電子化には、積極的に取組んでいくつもりです。システムアップができて、運用が安定したら、超音波やレントゲンなどの画像も完全電子化して処理できるようにしようと思っています。それから、、システムの互換性の問題、個人情報保護の問題もありますが、病診連携に活用できるようなlocal,→regional,→nationwide→globalなシステム構築ができれば、と思っています。
 
しかし、導入を具体的に検討する段階になって、意外な新事実が次々と判明、まさにスタジオ騒然という感じです。今年は、連載物として、「電子カルテ導入奮闘記」をお届けしたいと思います。
 
 
 
 
 
 

医療経済の影


医療経済
医療経済というと、『高齢化社会をむかえ国民医療費を抑制しなくてはならない』という大義名分のもと、『開業医などの私立医療機関は儲けすぎ』という紋切り型の議論と、併せてコスト意識を先天的に持ち合わせていない医師が、経営効率など自分の管轄外とばかりにわがまま勤務を続ける公立病院の慢性的赤字が何となく許容される風潮、その狭間を縫うように、医師に薬剤選択権を与えず、スケールメリットを楯に薬品問屋を泣かせ薬価差益を絞り取るチェーン店形式の病院グループ、そして、そのようなやりかたで利潤を挙げている病院グループを自他ともに「勝ち組」と賞賛する風潮、などなど、どこが、なにが、だれが、正義なのか、全くわからない、混沌とした暗闇を歩いている様な、そんな不安を引き起こします。倒産さえさせなければよろしいという程度の、あっま~い 環境で、曲がりなりにも医院経営に携わってみて、私は国家公務員の時代には、全く見えなかった問題に目を向けることができるようになりました。最近、勉強したことの一端をご紹介し、一緒に考えてみたいと思います。
 
不可解な逆ざや現象
ハーセプチンの販売会社、日本ロッシュ(現・中外製薬、担当者は日高伸二さん)は、「トラスツヅマブ病理部会」を定期的に開催して、ハーセプチン治療の対象患者を選別するためのHER2タンパクの免疫染色(IHC)法や、遺伝子増幅を調べるFISH法の適正実施をまじめに検討しました。病理部会では、ハーセプチンの治療対象患者を選別するためのフローチャートを作成、これは国際的に受け入れられているものです。IHC法を最初に行う場合には、染色結果が「0」、「1+」は「陰性」、「2+」は「擬陽性」、「3+」は陽性 と判定されます。陰性患者はハーセプチンの治療対象とはなりません。陽性は、当然、治療の対象です。問題は、擬陽性である2+。2+の患者では、FISH法を行い陽性なら治療対象となります。一方、IHC法を行わないで、最初からFISH法で判定する場合は、陽性なら治療対象となります。IHC法で2+の場合には、とにかくFISH法を行わなければいけません。ここで、極めて深刻かつ、悩ましい問題が発生するのです。FISH法の保険診療点数は2000点、つまり、FISH法を行った場合、医療機関の収入は20000円、患者負担が6000円で14000円は国保なり、社保なりの支払い基金が負担します。ところが、FISH法を実施する検査会社では、検査料金として、A社は50000円、B社は40000円、C社は38000円と設定しています。その理由は、FISH法を行うためのキットなどの原価が約30000円だからです。実をいうと、A社もB社もC社も、実際のFISH法の検査は、H病理診断研究所に外注しています。医療機関は20000円の収入ですが、検査会社からは38000円から50000円を請求されることになり、「逆ざや」現象が発生しているのです。
 
 
逆ざや解消のためのさまざまな望ましくない工夫
この逆ざや現象を、ああそうですか、と、赤字覚悟で容認するおおらかな医療機関もあるでしょう。つまり、診療報酬としての収入は20000円、検査会社への支払いが38000円~50000円、2~3万円の赤字は許容しちゃうよ、っていうことです。しかし、医療機関の経営を考えた場合、唯々諾々と、赤字を容認するまぬけはいません。いろいろな工夫が、そこにはあるようです。
 
最も妥当な工夫としては、検査会社は20000円で検査を実施する代りに医療機関も利益なしという「両者痛み分け」方式。まゆをひそめる工夫その①としては、IHC法で2+なら、FISH法は行わないで、ハーセプチンを使ってしまう、という「現状容認型退行解決」方式。まゆをひそめる工夫その②としては、検査会社は16000円程度で検査を請負い、4000円の収益を医療機関にもたらす。その見返りとして、ちょめちょめを医療機関に御願いする、このちょめちょめ、は、いろいろあるのでしょうが、このような不透明な部分が新たな問題を引き起こしかねません。そして、「混合診療」となりかねない工夫として、医療機関は、20000円の保険診療収入とは別に、患者から検査費として20000円を徴収。併せて40000円のうち、30000円~36000円程度を検査会社に支払い、残りを医療機関の収益とする、というやり方。これは、どう考えても犯罪行為ですが、このやり方がまかり通っている状況が実在するのです。
 
これでは姉歯問題と同じです。そして、このようなゆがんだ医療経済構造を生み出しているのは、不適切な保険点数の設定にあると私は思います。FISH法は原価が高いのだから、それなりの点数を付けなくてはいけないのです。または、国民医療費を押さえるためならば、たとえば、1件あたり20000円を超える検査の場合には、差額を患者から徴集する混合診療を行ってもよい、というのならそれもいいでしょう。しかし、、いくら大義名分があったとしても、本音と建て前を使い分ける、このような行政の姿勢が諸悪の根源であると感じざるをえないのは、私だけでしょうか。
さあ、ご唱和ください、久しぶりに、さん、はいっ!
いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん いっか~ん

市民講座のお知らせ


浜松乳がん情報局 主催
 
第1回 市民公開講座
 
 「乳がんの治療、治療中の生活、あなたの疑問に何でも答えます!」
 
 
私たちは、乳がんに関する正しい情報を一般市民の方、乳がんの患者さんやご家族のみなさん、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者、製薬企業、マスコミの皆さんに存分に提供するため、浜松乳がん情報局を開局致しました。
 
浜松乳がん情報局では、第1回市民公開講座を開催します。240人が参加できる部屋を用意しました。是非、ご参加ください。
 
 
平成18年2月19日(日曜日) 14:00~16:30
 
アクトシティ浜松 コングレスセンター4階
 
 
基調講演
 
乳がんと乳がん治療
 
司会 吉田雅行(聖隷浜松病院)
講演 渡辺亨(浜松オンコロジーセンター)
 
パネルディスカッション
 
あなたの疑問に何でも答えます
  
あらかじめ、皆さんからおよせ頂いた質問に対して
私たちパネリストがお答えします。
 
パネリスト 曽我千春  
              (乳がん患者生活支援コーディネーター)
パネリスト 武石優子  
              (乳がん看護専門看護師をめざして勉強中)
パネリスト 吉田雅行  
              (聖隷浜松病院乳腺外科)
パネリスト 徳永祐二  
              (浜松医療センター乳腺外科)
パネリスト 小倉廣之  
              (浜松医科大学病院第1外科)
司会進行 渡辺 亨  
           (浜松オンコロジーセンター腫瘍内科)
 
 
参加申し込み、お問い合わせ、パネルディスカッションで取り上げてほしい疑問、質問などは、もうじき、専用のホームページをご案内できると思います。
それまでは info@oncoloplan.com   へおよせ下さい。
 
 
 
 

診断と治療


乳癌学会関東地方会のランチョンセミナーで、ケースカンファレンスをやりました。ケース、つまり、実際の患者の状況を提示し、どのように診断するのか、どのように治療するのか、をみんなで話あう、これがケースカンファレンスです。ケースカンファレンスは、我々、臨床医が毎日の診療の研鑽のためには、とても大切な勉強方法ですが、これを、学会でやろう、という動きは、日本でも数年前からありました。今回、第2回の関東地方会は、会長の中村清吾先生(聖路加)が、いろいろと工夫を凝らして、プログラムを考えたなかで、このランチョンセミナーは、めだまのひとつでした。
 
私と秋山太先生(癌研)が司会をして、壇上には関東一都七県から「若手」とされる医師24名(1県あたり3名をそれぞれの県の大御所から推薦してもらったらしい、いかにもバランス重視の中村正吾先生らしい選び方だな~と関心!!)が、壇上でアンサーパッドを使って、予め用意された質問に答え、その答えを元に、また議論というやり方です。ケースは2例、1例目は診断がテーマで、マンモグラフィや超音波、病理診断をもとに診断をすすめ、手術方針を決めるプロセスを学ぶもの、2例目は、術後にホルモン療法をやるか、抗癌剤をやるか、あたりの治療の話です。私は治療のところの司会を担当しました。はじめに、壇上の「若手」とされる医師24名に「診断と治療は、どちらが得意ですか」と尋ねてみました。すると、治療が得意!と答えたのはたった2-3人、あとは、みんな診断系が得意、あるいはお好きのようでした。いまのトレーニングシステムを考えてみると、それもそうだろうな~、と思いました。やはり、治療が得意!!と、胸をはってはつらつとして、手を挙げることができるような知識と経験を持った本当の若手の出現を多くの国民と共に強く期待するものであります(天皇陛下の口調で)。
診断系と治療系とは、全然べつものでしょうから、そろそろコウモリの里でも、業務分担を考えて頂けないものかと思います。

Bird/Bat Score


Bird/Bat Scoreの有用性の検討
 
ブログ先週号で掲載した「鳥なき里のコウモリ」話は、予想以上の反響がありました。我が地域はどうなんでしょう、というお尋ねが最も多かったのですが、お叱り、お褒めもありました。
鳥 = 本物、専門家、コウモリ = 偽物、非専門家なのに専門家として振る舞う者、というくくりは、確かにわかりやすく、人々の心を捉えたのだろうと思います。これを、もう少し具体的にするために、鳥およびこうもりの数、質を根拠に、AA、A、B、C、Dと、概念的ではありますが、乳癌診療について、地域の分類を考えてみました。
 
AA: 領域毎に腫瘍内科医が配置されており、薬物療法は、すべて腫瘍内科医が担当する地域、あるいは、病院。米国のがん専門病院では、このような形が当たり前です。乳癌、肺癌、婦人科癌、頭頚部癌、消化器癌、などに特化した腫瘍内科専門家が配置されているのは、日本では、国立がんセンター、癌研など、極めて限られた医療機関です。がんセンターと名の付く地域のがん専門病院では、AAスコアをみたす病院はありません。
 
A: 複数のがん疾患を担当する腫瘍内科医が配置されており、がんの薬物療法の基本方針は、腫瘍内科医が決定し、治療の実際のおおかたは、腫瘍内科医が行いますが、外科医、泌尿器科医、婦人科医なども、薬物療法に携わる病院、地域。地域がんセンターでも、Aスコアをみたす施設は、九州がんセンター、埼玉県立がんセンター、栃木県立がんセンター、新潟県立がんセンターなど、極一部です。
 
B: 腫瘍内科医が配置されていないが、がんの薬物療法は、外科、外科系医師が担当している病院、地域。乳癌を例にとれば、乳腺外科、あるいは乳腺科という診療科の中で、外科医が薬物療法に専門的に取組んでいる地域、病院。外科医であっても、手術以外に薬物療法も十分にトレーニングを積んでいるので、まずまず、標準的なアプローチができるが、難解な場合や、こみいった場合には、つい、こうもりの足がちらつく。具体的には、「では、切除しましょう。」となる。
 
C: 腫瘍内科医、乳腺外科医、乳腺科医は配置されておらず、一般消化器外科医が、がんの薬物療法を担当している病院、地域。地方の基幹病院などでは、5人から10人いる外科医のなかで、乳癌診療の責任番として、一般消化器外科医のなかで、かなり乳癌薬物療法の知識と経験を有する医師がおり、通常の薬物療法に関する判断と実践は可能だが、複数の薬剤を使い切った後での治療に関するソリューションを提供するなどの、高度の助言はできない。
 
D; 腫瘍内科医、乳腺外科医、乳腺科医、乳癌診療責任番が配置されておらず、複数の一般消化器外科医が、それぞれ独自の考えで乳癌診療を実践している地域、病院。これぞ、まさに鳥なき里のコウモリなり~! いっか~ん!! 薬物療法も当然、標準治療とは程遠い。
 
Bird/Bat の比率は高いほうがいいがAAスコアをみたすようなところでは鳥がやや小粒で頼りない場合もある。とくに、羽化したての雛が店番をやっていることがあるので要注意。こっわ~い、きゃわい~い。