ASCO day 1


土曜日の午後、乳癌についてのポスターディスカッションセッションで、FDAの発表があった。FDAといえば、新薬の承認を管轄する連邦行政機関である。日本で言えば、医療機器医薬品機構(PMDA)と厚生労働省医薬安全局の機能を合わせて、それらを100倍ぐらい、しっかりさせたものである。日本のPMDAでの新薬承認のロジックは100%、FDAのサルまねであることからみても、FDAからの発表となると、我々ジャパニーズオンコロジストもちょっと気になる。
何の発表だったかというと、転移性乳癌治療薬としてFDAに申請された12の薬剤についてPFSとOSとの間には相関はなかった、と言うものである。考察はなく、単なるデータの提示で、質問者から、「こんな裸のデータ(naked data)を発表する意味は何なんだ」と挑戦的な質問をしたところ、逆に、「あなたはどう解釈するの? 判断はあなたに委ねるわ。」みたいなことをいって如何にも、自分の意見を言わないという、いかにも役人的な態度である。それでも、発表するだけ、また、ポスターの前に立っているだけPMDAとは違い、偉いものだ。このPFSとOSの問題はMarc Buyseらのグループが既に乳癌は大腸がんと違ってPFSが延びてもそれがOSには反映されないことを発表している{Burzykowski, 2008 #2332}。今回のFDAの発表では、二点、興味をひいた。一つは、12の試験のなかで、Triple Negativeを対象としたものが、唯一、弱いながらもPFSとOSとの間に相関があったこと、発表者の態度がいかにも不愉快そうで、人の質問を最後まで聞かないで、自分の言いたいことだけを言う、と言う二点だ。「TNBCで相関がある理由は何ですか?」と質問したところ、相関と言っても弱いものだ、とかわした。「弱いながらも他のサブタイプとは違うのは、何か理由があるのか、仮設でもいいから、何が考えられるか?」と食い下がると、さらに不機嫌となりブスがますますブスになる。Let me tell you my hypothesis といって、TNBCは、他のサブタイプと違って、有効な薬剤が少ないので、臨床試験前後の治療の影響が入りにくい、というのはどうだ?と言ったら、Possibly ふん、という感じでポスターの前を立ち去ったのである。FDAの姿勢、考え方をこのような形で発表するのはいいことだが、考察とかをもっときちんとしなければ学問とは言えないと思った。

投稿者: 渡辺 亨

腫瘍内科医の第一人者と言われて久しい。一番いいがん治療を多くの人に届けるにはどうしたらいいのか。郷里浜松を拠点に、ひとり言なのか、ぼやきなのか、読んでますよと言われると肩に力が入るのでああそうですか、程度のごあいさつを。

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