今年はメラノーマに対するニボルマブとイピリムマブのランダム化比較試験、小児がん治療のサバイバーの長期フォローアップ研究、頭頸部扁平上皮がんにたいする頚部リンパ節郭清を最初からやる場合とリンパ節転移が出てからやる場合とのランダム化比較試験、脳転移に対して低位脳照射(ガンマナイフなど)に全脳照射を加えるか、加えないか、のランダム化比較試験の4演題、内容も充実していて疾患領域、地域性のバランスも良い選択でした。ランダム化比較試験が臨床研究でもっとも重視されるのは、バイアス、偶然を排除し、真実をあぶり出せるからです。4演題のうち小児がんサバイバーの追跡研究は、この時点ではランダム化比較という手法では検証できない臨床的命題を対象としていますが、他の3題は、臨床的平衡がなりたつ臨床的命題を対象としており、同意取得など、かなりの困難さを伴うものですが、見事にやり遂げたという感じです。現実の厳しさを知らないで育ったぼんぼんのように、ランダム化比較試験の意義や困難さも知らず、与えられた宿題をこなしただけで、いいこいいこ、と褒められて有頂天になっているようでは話になりません。もっとも宿題すらきちんとできないようでは困りますけどね。最初の演題は、今、もっともホットなホットモットな「Immune Checkpoint Blockade」がテーマであり、10社以上が関連薬剤の開発にしのぎを削っており、日本からも多数の製薬企業の開発担当者が最前列近くに陣取っておりました。彼らは、商売に結びつく自らの仕事、会社の死活、自らの将来、家族の生活がかかっているから必死で、会場がオープンするや、バーゲン百貨店玄関の破廉恥おばさんさながら我先に、と席を陣取っていました。また、最初の演題が終わると、大潮が引くようにどーっと会場を出て行き、約1/3の席が空きました。彼らにとっては、それ以降の演題は全く興味がないのですからそれも仕方ありません。オンコロジーを広く、深く学ぼうという姿勢は彼らには必要ないのであり、それで当然です。しかし、4演題の最後にDr.Leonard SaltzがPerspectives on Valueというタイトルで、要するに「薬が高すぎる!! どうにかしなくては」というレビューがありました。この問題は、アバスチン問題で、大間のマグロとマクドナルドハンバーガー、あるいはメルセデスベンツSクラスとスズキスイフトの比較を例にとり「値頃感(ねごろかん)」をテーマに、私もさんざん主張してきていますが、ASCOでも同じ切り口での問題提起がなされました。しかし、企業の開発担当者の中には「薬価は私たちには関係のない話、管轄外ですよ」と言い切るぼんくらちゃんもいるぐらいで、なかなか現実の厳しい問題に目がむいていないようでした。今回は、乳がんも肺がんもプレナリーセッションには取り上げれていませんので、カピパラ・ホズミン・ジュニアは部屋で自習していたそうです。それもいいかもしれませんが、学会の目玉であるプレナリーセッション、25年間、ASCOで学んできて、いつも強い感動を覚えます。
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ASCO乳がんで感じたこと
乳がんの口頭発表のセッション二つ(ER陽性HER2陽性 と TNBC/LOCAL THERAPY)が同じ日の午前と午後の割り当てられたのは25年でもはじめてでしたが、他の日には泌尿器科系とか消化器系とかのセッションを新鮮な感覚で聴講できたのでそれはそれで良かったかな、と。内容は、しかし、全体的には輝きは乏しかったと思う。NSABPB35(NRG Oncology)のDCIS手術後の再発防止効果でTAM対アナストロゾールの話も副作用まできっちりと見ていて緻密だけど、昔のNSABPのダイナミックなインパクトが感じられなかった。CALGB40503(Alliance)のLetrozole vs. Letrozole+Avastinの話は、例によってAvastinを加えてもPFSは有意に伸びるけどOSは変わらないというもので、AVADO試験などのホルモン療法版で、一般臨床で積極的に使おうとは思わないけど。。。PALPMA3もパルボシクリブを加えると激しくPFSは伸びるし、副作用もそれほど激しくないという結果。でもさーOSはどうなりそうなの? BORELO2のようにアフィニトールを加えたらPFSは延長したけどOSは全然伸びず、口内炎が強くてそれが研究対象となるほどのインパクトだけはある、といようなこともあったし。。 術後患者6000人ほどを対象として、飲み薬「クロドロネート」、「イバンドロネート」これらは飲み薬、それとゾレドロン酸、これは点滴、の三種類をランダムに割り付けて、PFSや副作用はどうでしたか、という検討。結果は効果(PFS、OS)は差がない、差がないというか、そもそもABSG12 も長期のフォローアップのデータをみるとゾレドロン酸の効果はだんだん薄れて有意差はなくなっているので、差がでないのだろう。顎骨壊死は、ゾレドロン酸がやや高い、ということ。骨密度などは調べていないようで、話に出ませんでいしたから話になりません。患者様々のプレファランスを治療開始前と終了後の2回伺ったところ、飲み薬がいーい!ということで、やはり飲み薬がいいでしょう、という結論でしたしかし、昔で言うコンプライアンス、今でいうアドヒアランスはどうなのよ、ということで、それなら、次の演題のマイケルグナントの半年に一度のデノスマブの方が、確実に骨粗鬆症は抑制できるので、いいのではないでしょうか?という印象です。それで、次のABCSG18試験は、例のABCSG12で検討したように、Bone-Modifying agentをゾレドロン酸からデノスマブに変えて、閉経前を閉経後に変えて、ホルモン療法の比較は(アナストロゾールで死亡率が高かったというややこしい結果がでたのでかどうかわかりませんが)やらないで、エンドポイントは、骨粗鬆症およびそれによる圧迫骨折をプライマリーにおき、セカンダリーエンドポイントに、PFSとOSをいれています。結果は、デノスマブ60mgを半年に1回注射すると、骨粗鬆症も骨折も大幅に減った、ということで、ポジティブリザルトだ!と、マイケル・はったり・グナントは胸をはって頭を光らせていました。しかーし、そもそも、もそもそ、デノスマブ60mg半年に1回注射は「プレリア」という商品名で日本でも承認されている「検証された骨粗鬆症予防・治療薬」ですから、それでその通りの結果が出た、のは当たりまえです。問題は、ついでに見て、二匹目の「駒形どぜう」をねらって、60mg半年に一回投与で、運良く差がでれば、また、あの調子ではったり・おおいばりをされてもかなわんと、質問したのでした。要は、どうしてその投与量を選んだのか、その根拠はなんなの、投与量検討のために、2容量ぐらい設定したらどうなの、と思ってきいたわけですが、納得のいく答えはありませんでした。そんなこんなでスペースがなくなったので相良やっちゃんの活躍は、みんなが褒めまくっているので、それに水をさすようなことはいいませんが、やはり、科学的には、おおざっぱデータであるSEERプログラムを使って、レトロスペクティブに検討したものでは、明日から日常臨床を変えるものではないとモニカモロウも言っていました。あれだけのデータを良い指導者についてきちんとまとめたことは、パブリックヘルスの勉強としてはこれ以上のものはないでしょう。問題はその経験を用いて、これから、日本でどれほどの臨床試験、臨床研究、そして科学的臨床医学の実践ができるか、ということですね。また、ついでに言わせてもらお、やはり発音がわるい。THの発音が全部Zになっています Sの発音がほとんどSHになっています、すわるのsitを、シット(SHIT)というとそれは、畜生!!とかうんちとかおしっこのことですから、ちゃんとSとSHは注意して発音する癖をつけなくてはいけません。SEERもSHEERに聞こえました。RとLの区別はまったくついていません・・・。しかし、これらは、練習すれば確実に修正できるのでがんばらなければいけませんよ。1日1TEDを帰国後も続けるなど、継続は力です。なんとなく、みんなで、最高、すばらしいと、言うのも乳がん学会らしくていいけど、EBMと同じで、Critical Apraisal (徹底的吟味)が必要なんですよ、本当に友達のためを思うのならね!!!! ということで後、プレナリーセッションの話を近いうちに載せます。
景気回復ASCOにも
世界的な景気回復で、ASCOも冬眠から目覚めたように活気があります。参加者がとにかく多い。会場中心部の人々の往来は凄まじい。ASCOも「お金を湯水のように使っている感じ。たとえば、昨年までは、virtual meeting を買っておくと学会終了後1週間ぐらいで、oral presentation がインターネットで見ることができましたが、ことしは、発表が終わって数分で、今、見た、発表が会場で、iPadとかで見ることができるぐらい、その作業に関わる人数も膨大だろうし、相当、資金が投入されています。資金源はというと、えへん、私も毎年100ドルづつ、続けて10年ドネーションをしていますよ、もちろん、製薬企業からは膨大な資金が流れ込んでいるでしょう。それは接待費とか無駄な広告費を最近は倹約しているのだから、このような学術活動を支援するのは、また、支援できるのは当然出ありましょう。
さて、びっくりする程の結果は今のところ、何もありませんが、ポスターディスカッションでの話題をいくつか。
燃費の悪い研究:#513 2000-2003年の間に手術した閉経後乳がん、ER陽性、腋窩リンパ節転移1個〜2個〜3個でホルモン療法実施した1500症例、PAM50でRisk of Recurrenceを調べたところ、リンパ節転移1個〜2個のうちでは、低リスク、中間リスクと判定された症例では、結果的に再発していない症例が結構いるので、結果的に見ても抗がん剤はやっぱり必要なかった、という演題です。これは、予後因子と予測因子がごっちゃになっているし、ベースラインリスクと、リスクリダクションについても考えが及んでいない。後ろ向き研究なので、あとでケモなどの「インターベンション」を加えることは当然できなし、たまたま、データが利用できて、病理検体も使用できた症例の予後を見ているだけなので、PAM50は予後評価には役立つが、では、ケモをやったらもっとよかった、っていうことはないわけ、などの疑問には答えはでません。しかし、ばらつきのすくない、どこの施設でも利用できる多因子分子マーカーの導入は日本でも急務であります。
日本の外科医に意見を聞きたい研究:#1012 抄録を読んでちょっと、へーと思ったので、浜松の外科に先生にどう思う?と聞いてみました。
TW→KK「この演題、おもしろいと思います。外科的な観点から、どうでしょうか?」
KK→TW「渡辺先生、シカゴは暑いようですね。抄録ありがとうございます。米国の standard partial mastectomy(SPM)は腫瘍だけをくりぬくようなものなので、切除後にcavityの周囲を一周そぎ取る(CSM)を行うと断端陽性も再手術も減るということでしょうか。日本のように腫瘍から2cmもマージンを取って手術をする必要もないけど、ある程度のマージンも必要というように読み取ります。腫瘍径の中央値が1cmなので、かなり小さい腫瘍を対象にしているのかとも思いますが、CSMしても 断端陽性率、再手術率も当院と比較すると高すぎ。と思います。小さい腫瘍は切除量が少なくなるので、少しのずれが、断端陽性 につながるからでしょうか。腫瘍切除範囲の設定をどのようにしているのか興味があるところです。局所再発にどのくらい影響を与えるのかというところも考え、どこまで切除マージンを減らせるかというのは、外科手術の課題として必要なのだと思います。ありがとうございました。KK」
TW→KK「素早いお返事、ありがとうございます。シカゴは昨日から急に気温がさがり激しい雨がスコールのように降っています。♪つーめーたいー雨にうたれてー まちをさまよおったのよ〜♪ さて、まず、マージンについてですが、先生はSt.Gallenでさんざん検討された「Touch on ink」の話は知っていますね? 2cmのマージンという話は全くありません。touch on inkを基本として考えるとshavingの意義があるのでしょう。しかし、最初からGKBのように2cmもマージンをとっていては、このような取り組みの意義は見出せません。また、この論文では、患者の満足度も、治療群をマスクして上で調べている点が評価できると思います。この演題は、ポスターディスカッションで今日、取り上げられましたが、そのレビューの際に、NEJMに載っているとの話がでましたので、その論文を添付します。大事なことは、(1)このマージンの問題について、地域の外科医の間で共通の認識をもつこと、(2)日本ではそんなの関係ない、最初からマージンはしっかりとっているからね、といった「大和出羽之守」はしないこと、(3)患者満足度を評価しなければ医師の自己満足に終わること、(4)自分たちが取り組んでいる医療行為について、このような形で客観的に(=科学的に)(=臨床試験を通じて)評価する、などです。論文、添付しますので、よく読んで、○○先生、□□先生らと、共通の認識に至るように十分に討議してみて下さい。NEJM20150530
びっくりすることはないと言いましたが、上記のPAM50を用いた研究もそうですし、遺伝性がんの話では、次世代シークエンサーを用いて複数の遺伝子をいっぺんに調べる方法(遺伝子パネル)が主流になっているとのことで、これも、日本では、全く信じられない姿です。ミリアッドの特許がどうのこうの、その代理店が同じように日本では特許を盾に独占検査していてどうのこうの、などと言う話は、すっ飛ばして、ミリアッドの頭脳、知恵を使えるところは使えるけど、独占ゆえの優位は許しませんぞ、ということですね。独占の原因は行政の不作為にあります。行政が科学の進歩、医療の普及、国民の幸せを妨げている国は、日本と北朝鮮だけでしょうか!! キューバはずっと進んでいると言うし。
今年もASCO
水曜日の新幹線で東京へ 東京駅の近く宿泊し 木曜日7時30分の成田エキスプレスで成田第一ターミナルへ。訳あってJALには乗れないので毎年のANAです。今年は今までと違って東京駅も成田空港も人・人・人。。。Wi-Fiルーターレンタルカウンターも長い列。出国手続きは、去年までは閑古鳥が飛んでいて待つことなく通過でしたけど、今年はここも長い列です。景気がいいってことで、いいことだと思う。今年はこちらも景気良くぱーっと、ぱーっと・・、といってもここから先は去年と同じかな。
選挙談合
医療レベルのブラッシュアップは関心の外、オリジナリティーの高い良い講演で聴衆を魅了するよりもお土産、懇親、根回しを主目的とした講演活動が目につき鼻につきます。また、学会選挙の季節がやってきて、談合鳥、根回し鳥、票集め鳥があちこちで巣作りをはじめて始めています。能力も胆力も人間的魅力もない、さんぴんから面と向かって「私も立候補しますので宜しく」と言われたら、「もちろん先生に入れますよ」と答えるのですが、それもわびしさを添える風物詩。すべて組織票で動く世界、ここは、有権者が、個人の判断でこれぞという候補に一票を投じればいいと思うのですが、そうはいっていません。。司令塔からの指示で投票行動が決まるという情けないソサイエティー、悪しき習慣が続いているのです。そもそも、そのソサイエティーが形作られたのは、司令塔が一派の投票用紙を集めて当落線を予想、33票と予想したら34-35票となるよう、手分けして同門一派候補者の名前を記載する、という明らかにモラル、マナー的に間違った方法による代議員選挙です。代議員選挙の改革も進まず、いにしえの風習を踏襲した学会選挙、これではよい代表者が選出されるはずはなく世界に勝負して患者のための医療レベルを上げることなど、遠い遠い山の夢物語であります。これは、ルール違反ではありませんが、明らかにモラル、マナー違反でありましょう。ですから、マスコミもあまり関心を示しません。選挙談合こそが実は学会活動モチベーションの原動力であり、同時に改革のターゲットであるということを知らないのです。
驚愕のインフォームドコンセント
夕方、医療センターの1階ロビーでのできごと
医師「命を失うことになるかもしれません」
家族「それはどういうことですか?」
患者は車いすで意識もうろうの様子、
えー!! なにぃ〜!! 廊下の立ち話で話すようなことではないだろう!!!!、と思いました。そう言うとT先生が「あの先生ね、循環器ね、いつもああいう言い方するのよ」ということで、これがルーチンなのか、見て見ぬふりなのか、近くにいた数名のナースも特に反応なし。驚愕したのは僕だけなの??
看護の日に少しだけ思う
5月12日はナイチンゲールの誕生日を覚え、看護の日と言うことになっている。浜松医療センターにも看護の日を記念して廊下に展示があったが何を主張したいのかわからない。自分たちはこんなに一生懸命やっているのよ、認めてね、わかってね、という自己主張だろうか?。また、静岡市では人手不足訴え白衣姿の看護師が市内をデモ行進した、ということだが、これもばかげている。そもそも、ナイチンゲール誓詞という、看護師として心の底に保ち続けなければならぬ誓いが、浜松医療センターの展示にも含まれていない。いったいどういうことか?? むかし、むかし、その昔、国立がんセンターに猛烈な看護婦長がいて、必要以上に看護婦の独立・自立・主体性を強調していた。その猛烈看護婦長の薫陶をうけたミニチュア版の猛烈中沢看護婦が「これはおかしい。『心より医師を助け』は間違っている(文末のナイチンゲール誓詞(8)行目参照)看護婦は看護婦、医師の手足ではない!!」と言っていたのを思い出す。しかし、それは間違った考え方だ。看護師は医師を助け、医師は看護師を助ける。これが、チーム医療の基本となる相互に他職種を尊重する心だ。その根底には、他者を思いやる愛があり、その愛の基本には、キリストの教えの中核をなす「隣人を愛せよ」があるのだ。「厳かに神に誓わん」は、これもキリスト教の「神を畏れ」を意味している。それなのに、待遇改善・楽して高収入の労働要求、ライフを中心としたワーク・ライフバランスの主張、「ワーク・ライフ・スタディバランスの欠落」など、看護の日のお粗末な活動には、看護師の実践教育の貧しさが根底にあるように感じたので、ここにささやかな独り言を記す。
これを知らなきゃ看護師の資格なし! ナイチンゲール誓詞
(1)われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん、(2)わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを。(3)われはすべて毒あるもの、害あるものを絶ち、(4)悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし。(5)われはわが力の限りわが任務の標準を高くせんことを努むべし。(6)わが任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて、(7)わが知り得たる一家の内事のすべて、われは人に洩らさざるべし。(8)われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん。
St.Gallen 2015論文
Annals of Oncology On the Web に受理論文が掲載されましたのでお知らせします。まだ、フォーマットされておりません。
うわっつらのこと
というタイトルの「ご教訓」を紹介しよう。
私はラムゼー司祭長のこの話が大好きである。彼はバラを愛していた。彼が客に、「庭に出てみませんか。私のバラを見て頂きたいのです。」というとき、それはすばらしい好意の印であった。ところが、ある日、大変美しい婦人が彼を訪れた。「庭に出てみませんか。」と彼は言った。「私のバラたちに是非あなたを見せたいのです!」これは、女性に対して捧げられた最大の賛辞である。
それにしても、なぜ、多くの女性たちは皮一重(かわひとえ)の美を求めて美容院に殺到するのだろうか。人生を美しくする魂の美にたいしてはどうしてかくも無関心なのだろうか。皮一重の美を手に入れることは、お金さえあれば、難しいことではない。しかし、そのような美は、美容院にいけばビンづめや箱づめで買うことができる。これに反して魂の美しさ、すなわちすべての生を美しくする生のの内面的なすばらしい魅力は、そう簡単に手にいれることはできない。それを手に入れるためには、克己、自己否定、努力、奮闘、祈りという代価を払わなければならない。箱づめのものを買う方がはるかに容易である。皮一重の美は人に満足を与えない。第一に、そのような美は仮面によって現実の姿を隠しているにすぎない・・。
昨年だったか、テレビのニュースで国立がんセンターで、「アピアランス支援センター」というのをつくり、がん治療中の患者の「アピアランス」を支援する業務を国家機関として開始したというのを見た。なんで、我々の貴重な税金を使って、皮一重の見かけのとり繕いを支援しなくてはいけないのか??? と思った。私も腫瘍内科医として数多くの女性が抗がん剤治療を受ける現場をよく知っている。患者が家庭でどのような姿でいるのかも家族を見て知っている。脱毛、皮膚の荒れ、皮膚の色素沈着など、トラブルは多いので、QOLが損なわれるのもわかっている。しかし、化粧ができない状態で外来を訪れる患者が「こんな顔になっちゃって・・」と涙する場面で、上のご教訓を思い出す。「ぼくはあなたの内面を見ているので全然気にならないですよ。治療をしっかり受けながら仕事もして育児もしているあなたの姿はとても美しいですよ。そういう美しさはご主人もわかっているはずですよ、ねえ」と、隣に座っているご主人に問いかけると「そうです、そのとおりだよ!!」と、患者さんとふたりで、満面の笑みを浮かべていた。その笑顔は、さらに美しく、まさに魂の輝きであった。アピアランス支援センターのような活動は、皮一重といえども大切ではあると思う。しかし、そのような支援活動は、ボルネクストとかピアとか、民間の、よっぽどセンスのいい企業(美容院、支援グッズ販売、副作用皮膚のお手入れ指導など)が、既に存在し活動し普及し、患者:医療機関:企業間で、win:win:winの関係が成り立っているではないか。だから、その活動は、そちらにまかせておけばいい。医療者は医療者として、皮一重を支援するのではなく、患者の心を支援し、サイエンスを実践するのが本来業務である。国家機関が皮一重に手を出し口をだすのは、民業圧迫でさえあり、言語道断だ。
そもそも、最近の国立がんセンターの活動を見ていると、日本国のがん医療の方向性を提言できていないのではないか。アピアランス支援だったり、がん登録手続き論の細かな話だったり、へんに上から目線でやらなくてもいいようなことをやっている。そんな上っ面なことではなく、がん地域医療、がん介護、がん診療、がん医療、がん研究、がん教育、がんビジネス、など、がんにかんして国の政策として強く提言するのが、腐っても「国立」を冠する機関の使命である。まさか「くにたち」ではないだろうし。私が所属していた時代の国立がんセンターは熱かった。Krebs-Abendという集まりがあり、そこには総長、研究所長とかの年寄りや、我々のような平職員、レジデントも参加して、国立がんセンターはどうあるべきか、を、ワインを飲みながら深夜まで語り尽くす会があった。「2228(にーにーにーはち)」と呼ばれた吉田部屋もそう。そこで語られたことが、やがて、がん医療の国策になっていったのを知っている。ところが、今はどうだ。うわっつらのこと、小役人が考えたがん医療ごっこの実践、登録だの、規則整備、研究費使途の全面公開だのといった、二次的な枝葉的な話題ばかりが、がんセンターニュースの堀田理事長の挨拶に並んでいる。昔はよかった。侍がいた。今の理事長は単なる御用聞き、という批判もある。うわっつらのことにとらわれず、本質に突き進まなければ、日本のがん医療はさらなら周回遅れを重ねるだろう。
2っK・KZKさんへ
先日の浜松オンコロジーフォーラムにご参加下さり、ありがとうございます。ONCOTYPE DXの交渉が暗礁に乗り上げているようですね。転覆目前でしょうか?我々も、ONCOTYPE DX,、PROSIGNA、MAMMAPRINT、 ENDOPREDICTといった、MULTI-PARAMETER MOLECULAR ASSAYSを診療の現場で1日でもはやく使用できるようになってほしいと思いますが、厚労省の担当者ののらりくらりとした、無責任な対応では、日本はますます、世界の孤児になりますね。MULTI-PARAMETER MOLECULAR ASSAYSが使えないのは、日本と北朝鮮だけ、ということにもなりかねません。どうにかしなくてはいけません。最善の道は、MULTI-PARAMETER MOLECULAR ASSAYSで、ある一定の要件を満たすのならば—-たとえば、乳癌学会の学術委員会が承認し、推薦し、厚労省の所轄部署で迅速に「先進医療として承認する」というような流れを作らなければいけないと思うのです。それで、民間の保険会社で出している「先進医療をカバーする保険」に加入している患者ならば、わずかな自己負担で検査ができる、という方向にすればいいのです。これらの検査は、大変高価であるので、「保険での償還」は、はじめからあきらめた方がいいと思います。公助、共助ではなく、自助を基本とするのがいいと思います。また、ONCOTYPE Dx, PROSIGNA・・・を一つ一つ対象として、個別に当局と折衝していたのでは、時間が掛かりすぎます。まとめて、MULTI-PARAMETER MOLECULAR ASSAYSの枠で、承認される流れを作らないといけません。いずれにしても、現状の免疫組織化学染色検査では、不確かな医療を国民に提供せざるをえない、これは、本来なら、規制当局が是正を求めるべき内容です。
そもそも、2011年のザンクトガレンカンファレンスで、突如脚光を浴びた感のあるKi67ですが、これは、以前より乳がん、脳腫瘍など、多岐にわたる疾患で、がんの増殖活性を表す指標として予後を定性的に推測する検査としては使用されてきました。しかし、単一のカットオフ値を用いて、病型をふたつに区分し、片方には、副作用の軽微なホルモン療法だけ、他方には、副作用の強い細胞毒性抗がん剤の使用が必要、と判断するというような、まさに裁判員裁判のような重責が、Ki67に突然、課せられたわけです。しかし、その後の科学的な検討で、乳がんにおけるKi67測定は、施設間での再現性、施設内での再現性ともにきわめて乏しく、臨床検査が満たすべき用件を満たさない、analytical validityが検証できないと言うことになりました(Polley M-YC, Leung SCY, McShane LM, et al. An International Ki67 Reproducibility Study. J Natl Cancer Inst 2013; 105(24): 1897-906.)。このため、もはや、信頼性の低いKi67を含め、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の4つのタンパクの免疫組織化学染色で、サブグループ分類、あるいは、治療法選択の根拠とすることは、「PRECISE MEDICINE」の考え方から全く逸脱するものであり、4指標の免疫染色では、乳がん患者に最善の治療を提供することができないという状況は明らかであります。世界は、すでにONCOTYPE DX, PROSIGNA, MAMMAPRINT, ENDOPREDICTといった、MULTI-PARAMETER MOLECULAR ASSAYの応用が、臨床研究のみならず、一般臨床においても前提となっているのですから、それを日本の行政が、前向きに承認しようとしない、ということは、日本国民に対する背信行為とも言えるでしょう。ここは、強い態度で臨むべきであると思います。これからもよろしくお願いします。
