ワーク・ライフ・スタディ バランスを目指したい


先日、「異色の青森」の独り言のなかで、ワーク・ライフ・スタディバランスのことにちょっと触れたところ、品川女帝からお褒めのことばを頂きました。
『おはようございます。ご無沙汰しております。いつもブログを拝読してます。26日の「ワーク-ライフ-スタディ バランス」なる用語にいたく共鳴致しましてメールを書かせて頂きました。
社員歴は長いですが、学ばなくてはいけない事が山積し、かつ本を読み感銘を受けるだけでは何も仕事は変わらないので、実行に移さねば、自分を変えねば、日々のプラクティスを変えねばと、ちょうど強く考えていたところでした。平日はワーク、週末はライフを優先しがちでしたが、先生の言葉にハッとし反省を致しました。「ワーク-ライフ-スタディ バランス」。今の私にはとても納得感があります。バリバリ勉強したいと思います。ありがとうございました。今後も触発されるブログを楽しみにしております。』

ワーク・ライフ バランスという言葉を聞くと、ちょっと不愉快になります。女性医師のワーク・ライフ バランスを考える、とかいって、仕事と家庭あるいは子育ての両立、みたいなことが論じられるのは、悪くはないけれども、そんなことは当たり前で、理解のある旦那さんを見つけて、それぞれがうまく時間をやりくりして仕事も家庭も、きりもりすればいいのです。ワーク・ライフ バランスを振りかざして、仕事は9時5時シフトで、労働基準法によって一日何時間、週何十時間以下の勤務・・なんて時代遅れの労働組合みたいな話を聞かされても、不愉快になるばかりです。国立がんセンターレジデントの頃に、市川平三郎先生の「若いうちは寝食を忘れて勉強に没頭しなくてはいけません。」とか、阿部薫先生の「青春の貴重な時間を切り売りするようなアルバイトは賛成しかねるな。」という御言葉は、若いこころにずんと響き、いまでも私の行動の規範になっています。それで、研修医とか若手医師とかに、『若いうちは』とか『青春の』とかをそのまま伝えているのですが、あまい(甘松医大)の連中には、からっきし響きません、家庭第一主義が学風のようです。そんな故郷生活を送る中、何かの本で、ワーク-ライフ-スタディ バランスを知ったとき、これだ!!と思いました。ワーク・ライフ バランスの不快感はなく、品川女帝が感じたものを私も感じたのでした。朝起きて仕事に行って帰ってきてテレビを見て食事して寝て朝起きて仕事に行って・・の繰り返しでは、心も頭も朽ち果てて行ってしまいます。毎日勉強、1時間でも勉強、1日1論文! 1日1TED・・・。ミッション、パッション、ハイテンション!!!で行きたいものです。

相変わらずの不適切


乳癌の領域では、シャンシャン大会とか、メーカーお抱えのよいしょの会が未だに横行しています。それもひとえに乳癌学会総会が参加者のニーズを満たしていないからだと思います。来年はそこに小さいけれど一石を投じたいと、日夜企画、計画、に励んでいます。昨日、N社のMRクンが、10月の終わりに若手を中心にしたシャンシャン大会を開催しますので一応、お耳に入れておきますと持ってきた。見ると、土日の二日間かけての若手洗脳シャンシャン大会である。ああ、嘆かわしくも嘆かわしく、情けなくもなさけなし。主催者は私が信じてきたO先生であるが、これでは信頼も失われるというものだ。この時代に一社お抱えで泊りがけで、一社製品の刷り込み洗脳大会をいったいどんな神経で計画するのか、わたしはとても不適切だと思う。

ミラノがおわり次は熊本


ミラノ乳がんカンファレンスが先ほど終了しました。昨日の昼前に招待講演も無事終了したので昨日の午後と今日は演題をじっくりと聞いておりました。スタイルは、ザンクトガレンカンファレンスの最初の三日間のような感じで、「転移病巣の放射照射」とか「術後フォローアップはどうするのがよいか」とか「IV期乳がんの原発病巣手術は意味があるか」とか「サイトカインと転移」「肥満と乳がん」「糖尿病治療はがん治療、がん治療は糖尿病治療」「オンコプラスチックサージェリーの現状」いうようなテーマごとに15分ぐらい、イタリア、アメリカ、その他ヨーロッパ諸国の専門家がレビューします。レビューはもちろん、ランダマイズトトライアルなど、エビデンスレベルの高いものを中心に展開され、ASCOの発表内容になども紹介されており、また、臨床試験促進の原動力となるような話題が多いです。日本のデータというものは紹介されず、あるのに紹介されないか、というとそうではなく、とりあげられるようなデータがないのです。日本人はランダム化比較試験に向いていない国民だ、とか、日本人はボランティア意識がないから、試験は適さない、といっていたかつての大御所の悪影響がまだ残っているように感じます。大御所といえば、ご当地は、ウンベルト・ベロネジーがいます。かれはしかし、手術を引っ張り、術中照射のERIOTを引っ張りと、今回のカンファレンスでも、手術室から1時間ぐらいの手術ライブ中継がふくまれており、これも、しっかりとした背骨のある外科医が情熱を燃やして外科学の普及を図っているからだと思います。イタリアでは外科医は外科医らしく外科医の仕事をしているなと感じました。ということは、日本はどうなの、というと、外科医は乳がんの手術なんて簡単だから誰でもできるとか言いながら、乳腺科だからと検診のことばっかりやっていたり、へたくそな薬物療法をやったり、どうも、プロフェッショナリズムの線引きをし直さなくてはいけないと感じました。また、専門医の話も、一悶着ありそうな風向きですが・・・。 話をもとにもどす→ 会場は一つだけで二日間、ほぼびっしりと聴講して、討議をする。これがあるから、情報、知識、理解の共有ができるのだ、とつくづく感じました。腫瘍内科医の私でも、手術ライブ中継をみて、あそこで、つかっていた紙みたいなのは、なんなの?とか、今回、ミラノに来ていた小川朋子先生に教えてもらうことができ、これも知識の共有のひとつだと思いました。あちこちの会場に分散してしまう日本の学会の標準型がいかに不合理なもの、他国ではやっていないようなもの、であることを改めて認識し、来年の浜松乳癌学会の取り組みが、やはり、いい線いっているのだね、ということを再認識しました。また、オンコプラスチックサージェリーを浜松でも取り上げるので、小川朋子先生に、そのセッションのコーディネーションをお任せしてしましました。任せてちょうだい!!と言ってくれていますので、安心しました。また、今日の最後のセッションは、国際術中照射学会との共催でしたので、そこに来ていた澤木先生、藤澤先生、唐沢先生に、来年の浜松乳癌学会で、術中照射とか、ハイパーフラクショネーションネーションとか、強度変調照射など、新しい放射線の取り組みについて、セッションのコーディネーションをお願いしてしまいました。わっかりました。やらせてください!!というお返事でしたのでまたまた安心しました。今月は月初のASCOにはじまり今日でミラノがおわり次はくまもと~、くまもと~ です。

あたりまえですよね ゾメタ


4月から外来化学療法加算1 がAとBに分かれた。外来化学療法加算Aは、infusion reactionとかアナフラキシーショック等の重篤な合併が起こる可能性のある薬剤には十分な専門的な観察が必要なので、それなりの陣容と体制を整えなくてはいけないので580点、Bは、そうでもないので430点。先生のところはゾメタはどうしていますか、という問い合わせがあります。どうもこうも、そもそも静注の薬剤だし、歯科治療既往、現症などに注意を払い顎骨壊死など重篤な合併症に対して十分な観察が必要なので、当然Aを算定していますよ、とお答えしています。当然ですよね。

青森の友人への手紙


橋本直樹 先生 CC;川嶋啓明先生、大田富美子さん

浜松は3月の声を聞くと共に、だいぶ春めいてきました。青森の道路の雪も、少しは減りましたか。
さて、橋本先生が3月中旬、青森で久留米の免疫療法の演者と一緒に、市民相手に講演をするような話を聞きました。NHKの無定見な番組などが原因で世の中が、青森がやや混乱しているようですから、先生にはきちんとした話をして頂きたいと思います。先日、青森でお目にかかった患者さんも、現在の治療がとてもよく効いているにも関わらず、体に優しい免疫療法を久留米まで行って受けたいと言っていました。
ご存じのように、免疫療法は、まだまだ、未完成です。乳癌では効果があるかないか、わかりません、というよりは、現時点では、ないと断定していいと思います。効くか効かないか、まだわからない段階です。安全なのか、危険なのかもわからない段階です。しかし、臨床試験を推進することは大切ですし、現在、臨床試験の段階です。ですから、講演では、患者さんの中で将来の乳癌患者さんのために、自分の体を試験台として免疫療法の安全性、有効性を検討してほしい、というボランティア精神のある方は是非、久留米まで行って臨床試験に参加して頂きたい、という論調でアッピールして頂きたいと思います。

戒律主義の復活


地域講演会には、○○懇談会、○○疾患研究会、○○セミナー・・なんちゃらのタイトルがついていて、私たちはよく、その「to特別講演」というところに呼ばれる。その講演の前に、製品説明会という10分程度の前振りがあり、そこは主催している製薬企業の学術担当者がスライド10枚ぐらいを使って説明するのだが、通常、だれも聞いていない、質問も出ないし、拍手もない。むしろ、参加予定者が集まるまでの時間稼ぎのような感じだ。ところが、今後、われわれも講演では、そのような製品説明以外の話はしてはいけない、ということになるかもしれない。そもそも、地域講演会を企画する立場の、その地域ごとの先生方(使い慣れた表現でいういうと地方の豪族)からしてみると、特別講演では、最新の情報とか、学会の速報ネタとか、わりと奇抜な話とか、洞察深き講演とかを期待しているのであって、スポンサー企業の薬剤の保険適応となっている使い方の話を聞きたいと思っているひとは少なかろう。もっとも、我が国で保険適応になっている用法、用量での、卓越した治療経験とか、その根拠となった有名な臨床試験の話、というのも、味付けをうまくすれば聞いてみたい講演となるだろう。最近、例の製薬協の取り決めがまた、ばからしくなったようで、昨日は、その説明にわざわざ東京の本社から担当者が来た。「月末にお願いしている弊社主催の講演会で承認されている用法、用量以外の内容の話しはしないでください。」という内容である。「わかりました。御社の製品の話は一切するつもりはありません。別社の製品の最新の話題ならば問題ありませんね。別虎銭火の閉経前乳癌での最新の話題などをしようと思っていますが、どうでしょう?」と話すと担当者は、「それならば問題ありませんが、何かさびしいものがありますね。」との反応。あなたはさびしいかもしれないが、講演を聞きたい人はうれしいのではないでしょうか。世の中は、くだらないルールが益々、横行しはびこっておいる。この件もそうだし、COIの話も拡大解釈する馬鹿もいるし、これではまるで、ユダヤの戒律主義である。安息日に仕事をしたキリストイエスは、きっと同じような心境だったのではないだろうか。

Iniparibの悲劇


ある勉強会で、「ASCOのトピックスを話しますけど、どの話題がいいですか?」と尋ねたところ、「PARP阻害剤の話は、あちこで聞いたので他の話をしてください。negative dataだし、おもしろくないから。」と言われた。Iniparibの試験は確かに、negative dataということになっているけど、なぜ、そうなったのか、本当にnegative dataなんだろうか、なにか、カラクリがあるのではないだろうか、だって、2009年のASCOで、今回と同じ、ジョイス・オショーネッシーが発表した、第II相試験の結果は、あれほど、インパクトがあり、それゆえに、NEJMにも今年の初めに掲載されたし、今回、発表された第III 試験があっという間に症例集積が進んだわけ、そのあたりのカラクリを「もういい。」と言った人たちがどのように理解しているか、を聞いてみたかったので、簡単に話しましょう、と言って話した。私の理解では、まず、①試験計画、試験実施、結果解析において、統計的考慮があまりに厳密すぎ、臨床的なあいまいさを排除しすぎた点、②第II相試験のインパクトがあまりに大きく、Iniparibはいい薬に違いない、ということから、倫理的配慮ということで、対照群でPDになった場合、クロスオーバーを許容せざるを得なかったたこと、そして実際、96%の症例がクロスオーバーしており、そのため、OSでの差が希釈されてしまった点、③統計学的考慮が厳密であった割には、抜けていたところがあり、我々が1998年のJCOで発表した再発乳がんの予後因子として重要であるDisease Free Interval(手術から再発までの期間)を層別化因子にしていなかったため、これが両群間で大きく偏った(化学療法単独群に有利に働いた)ことからOSの差がはっきりと表れなかった点、などがあげられる。また、PFSとOSを共に主たる評価項目としαエラーを、OSに0.04、PFSに0.01と振り分けたため、ふつうなら、PFSで有意差ありと判定されるような結果(P=0.02)が、有意差なしという判定になったことも、統計学的厳密さによる、何となくわかりにくい結果である。Iniparib Negative Dataをいろいろと考えていくと、そもそも、第II相試験はいったいなんだったんだろうか、というところに話が行きつく。一言で言えば、中途半端なサイズのランダマイズドフェーズII試験は、間違いのもと、第I相試験で安全が確認され、手ごろな投与量が見つかったら、一気に、第III相試験にもっていき、下手にクロスオーバーなどは許容しないこと、そうしないとOSでは絶対に差はでないだろうし、そうなるとFDAの不機嫌そうなおばちゃんは認めてくれないだろう。今回のデータで、Iniparibはどのような方法で失地回復がなされるか、見ものである、という話をしたところ、聞きあきた、と言っていた人たちが、「えー! そう言うことだったのですか! 先週聞いた話では、Iniparibは、セカンドラインで効く薬、という説明だったけど違うんでしょうか?」と言うレスポンスだった。その解釈も、臨床試験学を理解していない浅はかな解釈であることを丁寧に説明しておいた。臨床試験学を習得し、EBMを実践できていないと、なかなか、理解できない問題である。また、あまりにお作法にとらわれすぎたサノフィ・アベンティスだが、フランス的いい加減さで、どのような次の一手が打たれるか、注目していこう。

ASCO 3日目


ASCOの3日目の月曜日には、乳癌の口演があり、今日一日を乗り越えれば日本に帰れる、と多少、ホームシック気味であるが、元気を振り絞って今日の演題をレビューしよう。最初の演題は、NCIカナダからの放射線治療に関する発表である。今回は、あちこちの領域でNCIカナダからの発表がやたらと目につく。NCC JAPANは一体どうなっているのか?
さて、この試験では、腋窩リンパ節転移1-3個陽性、または腋窩リンパ節転移陽性ハイリスク患者、約2000人を対象に、乳房温存術後(A)乳房照射単独と、(B) 乳房照射+領域リンパ節(内胸リンパ節、鎖骨上下リンパ節)照射を比較した。その結果、生存期間ではBが良好な傾向、無再発生存期間, 局所領域無再発生存期間、遠隔臓器無再発生存期間すべて、Bが有意に良好であった。しかし、肺炎、皮膚障害、リンパ浮腫、がBに高率にみられた。今後は、リンパ節転移陽性なら、陰性でもハイリスクなら、乳房のみならず、領域リンパ節へも照射が必要であるという結果で、Practice changing、つまり、日常診療のあり方を変えるほどのインパクトのある結果である。

アバスチンの術前治療に関する演題がふたつ。一つはNSABPB-40、

化学療法は、①ドセタキセル(100mg/m2)4サイクル→AC(60/600/m2)を対照群として、②対照群のドセタキセルの部分にカペシタビンを加えるアーム、③対照群のドセタキセルの部分にゲムシタビンをを加えるアームの三通り。そしていずれの群も、半分の症例はアバスチンを3週間に1回(10mg/kg)でくわえるという、「3 x 2」のファクトリアルデザインのランダム化比較試験である。病理学的完全効果(pCR)割合を比較した。pCRの定義はNSABPの「非浸潤部に癌は残っていても浸潤部に癌がなければOK」というものである。1206症例が登録された。化学療法の比較で、①対照群 61.5%、②カペシタビンを加えた群58.3%、③ゲムシタビンを加えた群60.4%と全く差なし、温存率も差がなし。ビバシズマブを加えた場合、ビバシズマブなしが28.4%のpCRに対して35.4%(p=0.027)と有意に良好でああった。これを病型別みるとホルモン受容体陽性では、ビバシズマブなしが15.2%のpCRに対して23.3%(p=0.008)、トリプルネガティブでは、ビバシズマブなしが47.3%のpCRに対して51.9%(有意差なし)であった。本来、ビバシズマブの効果が期待されたトリネガでは、全く効果がなかったと言う結果である。まとめるとカペシタビン、ゲムシタビン、ビバシズマブの追加効果は、極めて乏しいということになる。

もうひとつのネオアジュバントの演題は、ドイツからのGEPAR QUINTである。これは、EC4サイクル→ドセタキセル4サイクルに、ビバシズマブあり/なしのランダム化比較試験である。pCRの定義は「浸潤部も非浸潤部にも癌の遺残なし」と言う厳しい基準である。全体での検討では、pCR割合は、ビバシズマブなしで15%、ビバシズマブありで17.5%で全く差はなかったが、トリプルネガティブ症例でのpCR率は、ビバシズマブなしで27.8%、ビバシズマブありが36.4%(p=0.021)で有意差あり、と言う結果である。つまり、NSABPでは、ER陽性症例でビバシズマブの追加効果があり、トリネガではなかったのに、ドイツのGeparQuintoでは、トリネガで差があり、ER陽性では差がない、全体症例では、ドイツでは差がないのに、アメリカでは差があった、というまたもや悩ましい結果である。あ~、これでは、虫害山蛾の群れは益々眠れぬ日々が続くなぁ・・・(;一_一)。

つづく PARP阻害剤のはなし、と全体の感想。

ASC0 day 2


ASCOは参加者3万人を超える巨大な学会である。関連の産業まで含めれば莫大な経済効果を生むこの学会には当然、様々な思惑で人々が参加しているし、群がってきている。金の亡者、我利我利亡者などの悪霊が会場のあちこちでうろうろしている。にこにこしてたぶらかしにかかってくる。しゃんしゃん大会や洗脳大会も学会期間中に活発に行われているが、私たちは、無配慮、盲目的にではなく、しゃんしゃんされていないか、洗脳されていないか、常にある程度の警戒心をもって臨まないといけない。具体的な問題提起は、時期がきたらしたいと思う。今年度から政府の委員の任期も終了したこともあり、いろいろなしゃんしゃん大会に自由にでて自由に発言できるためさらに見聞を広めていきたいと思う。
さて、今日、2日目は、ホルモン療法の2演題、抗HER2療法の3演題についてお伝えしよう。
Paul Goss が発表したのは、Gailモデルで乳癌発症リスクがやや高いとされる閉経後女性に対するエキセメスタンの乳癌発症予防試験である。結果は、昨日の発表に前日に、すでにNew England Journal of Medicineに掲載される、という早業で、この手順の良さにも、企業のしたたかさが感じられる。2300人対2300人の女性が、かたやプラセボ、かたやエキセメスタンを5年間内服、浸潤性乳管癌が、プラセボ群で32人に、エキセメスタン群で11人に発症した。これは、ハザード比でみると0.35になる。表立った骨粗鬆症、心血管合併症などは見られないが、ホットフラッシュとか、精神的な症状とか、性機能低下、関節痛など、日常生活を悩ませるような副作用が結構みられているようだ。発表後のDiscussionに立ったイタリアのDr.Andrea De Censi、かれもタモキシフェンなどの予防研究の専門家であるが、「予防研究の目的は、病気発症による精神的なダメージを如何に減らすことができるかであり、病気による死亡を減らすことではない。」と発言した。そうなのかな? たとえば、乳癌検診は、乳癌を見付けることが目的ではなく、乳癌による死亡を減らすこと、ということで研究が行われているが、検診(二次予防)と、エキセメスタンや、タモキシフェンなどによる乳癌発症予防(一次予防)とは違うのだろうか? いずれにしてもファイザーのしたたかな企業戦略の勝利と言える。
もうひとつ、ホルモン療法に試験であるが、昨年暮れのサンアントニオで相良のやっちゃんがポスター発表した、タモキシフェン+ゾラデックス対アリミデックス対ゾラデックスの閉経前乳癌の術前ホルモン療法の比較試験で、今回はKi67の抑制に注目した発表である。やきなおしっちゃあ、やきなおし。結果は、アリミデックスの方がよい、というものだが、国立がんセンターの木下先生の発表、頑張ったがいまいちだな~、申し訳ないけど。発表終了後に、フロアから、Dr. Mathew Ellisが質問した。「アリミデックス+ゾラデックスで、血中エストロゲン値が徐々に上昇しているが、あれは統計学的に有意な推移か?」。これに対して申し訳ないけど、う~ん、ちゃんと答えられなかったな~、う~ん・・。この現象は、しばしば指摘されていることで、タキフィラキシー、つまり、治療を続けていくとだんだん反応が衰えてくる、ということで、ホルモン刺激などは、刺激を継続しても、反応が徐々に低下することはよくあること。これがために、アロマターゼ阻害剤などは、途中で休薬をいれるような試験も行われているのである。だから、もうちょっときちんと、ぱーどん、とか言わずにこたえてほしかったな、いっしょにベルリッツに行こうかね。

抗HER2療法に関しては、ベイラーのジェニーチャンのトラスズズマブ+ラパチニブの併用で、充分に高い病理学的完全効果が得られるからケモはいらないよーという発表が一つ。それから、サンアントニオでクリスマスシーズンにシカや、サンタの帽子をかぶって時々質問してる、あの突拍子もないお姉ちゃんフランキーホルメスが、まともな格好して演題にたち、ケモ(FEC→Paclitaxel)に、トラスツズマブ単独、ラパチニブ単独、両者併用により、様々なバイオマーカーがどのように動くか、というUSOncologyの発表。それからイタリアのバレンシナグアネリの、CHER-LOB trial。これも、ウィークリーパクリタキセル→FECにトラスツズマブ単独、ラパチニブ単独、両者併用して病理学的完全効果がどうか、という検討である。いずれも、術前治療での検討で、しかも、アンソラサイクリンとトラスツズマブンを同時併用して、心機能問題なし!!というものである。この三つに試験から、HER2病に対しては術前治療で、しかも、トラスズズマブ+ラパチニブの併用で、さらに、トラスツズマブとラパチニブを同時併用するのがよい、ということが言える。これらの発表は、先の昨年暮れのサンアントニオで、ルカジアーニ、ホセバセルガ、マイケルウンチが発表した3試験ほどのインパクトはないが、同じような結論といえよう。GSKは、ラパチニブの使用について、いまだにゼローダとの併用の承認しか取得していない。単独でも再発乳がんでは意味があるのに、また、術前治療ではトラスツズマブとの併用が当たり前になっているのに・・である。当局が認めてくれない、浦野さんが厳しくて、などと、他人のせいにしているが、企業としてやるべきことを、きちっとやってください、品川美津子さん!

開業は敗北と思っていましたって?


ジャパニーズサージャンを自他共に認める外科の先生から「がんセカンドオピニオン迷いのススメ」読みましたよ、分かりやすくていい本ですね」とおほめの言葉を頂きました。細かいところまでよく読まれているようでうれしく思いました。彼が特に強調したのは、今後の診療所のありかた、高機能診療所の提言のところ。「僕は今まで、開業は敗北だと思っていました。だけど、あの本を読んで、先生がやっている高機能診療所というのがものすごく重要だっていうことがわかりました。それでいままでなんとなくつかえていたものがとれてすっきりしました。」と言うのです。私は祖父、渡辺兼四郎、父、渡辺登のDNAを受け継ぎ、診療所医師としての自己実現の姿を目の当たりにして育ち、また親族にいた大学教授の姿を見て、こんなものかとも思い、今やっているような高機能診療所を目指す流れが自然にできあがったもので、開業は敗北なんていいう感覚は全くもちあわせていません。しかし、2005年に浜松オンコロジーセンターを開設したあたりに、周囲から色々言われたことを題材に、「がんセカンドオピニオン迷いのススメ」の中に記述した医療界における開業医の評価のところで、彼は痛く感銘をうけたようです。確かに彼の出身大学では、志をもって診療所を開業している先輩がいないそうで、尊敬できるワーキングモデルがいないこともあり、診療所を開業することは敗北であり、情けないこと、という認識が蔓延しているようです。とにかく、大学にしがみつきたい、大学教官としてのポジションにつけるのならやったこともない救急医学の教員として大学に残っている情けない奴もいるくらいです。そんな文化、風土のなかで育ったジャパニーズサージャンに感銘を受けた、と言われれば、思わず、♪きいろとくーろは勇気のしるし♪と謳ってしまいそうな気分でした。