サンアントニオ報告 その2


第二のシクリブ「リボシクリブ」 閉経前症例を対象とした第III相試験

今回のサンアントニオでは、清宮幸太郎くんのような新人として今後の活躍が期待されているサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害剤(Cyclin Dependent Kinase 4/6 Inhibotor)に関する演題がポスターから口頭発表まで大変多かったです。CDK4/6 Iの第二弾、リボシクリブの成績の発表がありました。タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤 プラス ゾラデックスと、リボシクリブ(300mg×2/日)を加えた場合と、プラセボを加えた場合、PFSがどうなるかの試験。

どうなったか、というとパルボシクリブ(イブランス)とほとんど同じ程度の成績でOSの成績の発表はありませんでした。リボシクリブは欧米で「Kisqali 」という商品名ですでに発売されています。日本のノバルティスは日本では発売しません。まあ、こっのー、この薬が日本で発売されないからといって困る患者はいませんが、やはりファイザー1社独占ではV9時代の巨人軍のようなものでちょっとこまりますね。それでは問題です。

リボシクリブを日本で発売しない理由を次の中から一つ選びなさい。

(1) パルボシクリブにはかなわねーや、と諦めたから。

(2) いろいろあった会社なので当局からも睨まれており自粛しているから。

(3) 開発戦略を間違えて300mg製剤を日本で試してなかったから。

(4) V9時代の巨人軍の意味が分からないので眠れなくなったから。

正解者1名に野村監督がかぶっていたのと同じ材質、同じサイズのヤクルトスワローズ(YSマーク)の帽子を見せてあげます。

San Antonio の感想 (1)


今回で40回目となるSABCS、朝一番では40年を振り返りあんなこと、こんなこと、あったよね、Co-Chair のKent Osbornによる回顧のひとときでした。
さて、今日のGeneral Session(1)はなかなかおもしろかったです。

(1) EBCTCGによる「Dose Intensity Chemotherapy」のによるメタアナリシス
一定期間あたりの抗がん剤と投与量(通常 mg/m2/weekという単位で表す) をDose Intensityといい、これを高める方法には3つあります。〔1〕各サイクルの投与量を増やす:例えばアドリアマイシンを60mg/m2 →90mg/m2とする(JCO 2003;21:976)。〔2〕治療サイクルの間隔を縮める(3週間間隔→2週間間隔)(これはdose-dense chemotherapyと呼びます)。〔3〕同時投与を順次投与にする。術後に行われた〔1〕のタイプ12試験:対象15、512症例、〔2〕のタイプ6試験:対象11,028症例、〔3〕のタイプ6試験:対象11,028症例を対象とし再発、死亡の差を検討したメタアナリシスです。結果は、タモキシフェンなどの効果を発表した時の「あの図」でタイプ毎に表現されました。10年後の再発率は、Dose Intensive Chemotherapyで3−4%改善、10年後の死亡率は2-4%改善でした。たった数%の差ですがメタアナリシスですからp<0.00001といった具合になります。この結果をどう受け止めるか? 理解に苦しみます。つまり「有意差はあるだろうけどたった3-4%の差で意義があると言えるのだろうか」と思い、質問してみましたが「発表のとおり」ということでした。メタアナリシスは、エビデンスレベルが最も高い「信頼できる情報」とされていますが、果たしてそうなのだろうか? 24週間かかる治療が16週間で終わる、GーCSF を使用すれば安全にできるのだからいいじゃん、ということか、それとも手間とお金がかかる割には効果は乏しい、と見るか、そこの所をよく考える必要があると思います。

(2) 術後HER2陰性症例に対象する抗がん剤 vs. 抗がん剤+ハーセプチン(1年)の比較

NRG Oncologyという名でまとめられたNSABPの発表です。NSABP B31試験(HERA試験、N9831試験、BCIRG006試験と並んで2005年ごろに発表された術後ハーセプチンの効果を確認した試験)(1)では、対象症例の9.7%(174 症例)がHER2-FISH陰性かつIHC2以下、つまり陰性でしたが、これらの症例でもハーセプチン追加効果が認められました(再発相対リスク:0.4)。そこで、HER2発現の低い症例(IHC1+、2+→FISH陰性)を対象に抗がん剤(AC→weekly PaclitaxelまたはTC)単独vs. 抗がん剤+ハーセプチン1年間を比較し、Invasive Disease-free Survival(IDFS)(2)を3270症例を対象として比較しました。その結果、差はありませんでした。

結論は、HER2陰性の患者さんにはハーセプチンは使わないこと、ということで、当たり前といえば当たり前、不確かなことを確かにするのがサイエンス、ということでしょうか。立派な試験だと思いますよ。

下記の論文は必読だよ

  1. Perez EA, Reinholz MM, Hillman DW, et al. HER2 and Chromosome 17 Effect on Patient Outcome in the N9831 Adjuvant Trastuzumab Trial. J Clin Oncol 2010;28:4307-15.
  2. Hudis CA, Barlow WE, Costantino JP, et al. Proposal for Standardized Definitions for Efficacy End Points in Adjuvant Breast Cancer Trials: The STEEP System. J Clin Oncol 2007;25:2127-32.

(3)手術前後のアロマターゼ阻害剤投与による長期予後への影響と長期予後予測
(ニックネームはPOETIC試験)

イギリスからの興味深い研究結果ですが術前ホルモン療法の背景を知らないと、この試験の目的がちょっとわかりにくいかもしれません。

この試験は、ER、PgR 陽性閉経後乳がん患者4480人を対象に、ベースラインの針生検を行い、2:1の比率で術前2週間+術後2週間の計4週間アロマターゼ阻害剤(AI)を内服する群と内服しない群にランダムにわりつけます。術前後のAI有無にかかわらず、割り付け前の針生検検体と手術検体でKi67を測定しブラインド化しておきます。つまり、ベースライン針生検→ AI内服2週間→手術 → AI内服2週間 のグループと、ベースライン針生検→2週間あけて手術のグループで、 ベースライン生検と手術検体のKi67を調べます。このあと、各施設の方針に基づいて、ホルモン療法が5年間行われました。314人がTAM、3695人がAI、251人がTAMからAIに切り替え、109人がAIからTAMに切り替えです。主たる評価項目はTime to Recurrence (TTR: ランダム割り付けから、局所・領域・遠隔再発または乳がん死亡まで)で、術前後AIあり・なしで差があるかどうかを見る(ここまで読むとたった4週間AIやって差がでるのかよ、と思う)。約60ヶ月の観察の結果、差はなかった。(そりゃ、そうだろう)抄録にはここまで。知りたいのは、術前・後の短期間にKi67が低下した場合には、術後のホルモン療法が効くから続けた方がいい、とか、効かなかったら、ホルモン療法はやめて、ケモにするとか、それはどうなんだろうか?

発表された結果です。

5年時点の再発率  ベースラインKi67低値(10%未満)症例  4.9%
ベースラインKi67高値(10%以上)症例  12.1 %    (P<0.0001 )

ベースラインKi67低値 →手術検体Ki67低値の症例 4.5% (95%CI 3.1-6.6)
ベースラインKi67 高値 →手術検体Ki67低値の症例 8.9%(95%CI 7.2-11.0)
ベースラインKi67 高値 →手術検体Ki67低値の症例 19.6%(95%CI 15.9-24.1)           (P<0.01)

ベースラインKi67が2週間のホルモン療法により低下していることが手術検体で確認された場合、つまり 低→低 と高→低、は、手術後もホルモン療法を継続する意義がある、といえるのか? あるいは、手術前後の4週間だけでホルモン治療を終了してしまってもいいのか?

ベースラインKi67が高く手術後も高い症例は、ホルモン療法が効かない、としてケモに移行したほうがいいのか? しかし、そうしてしまうと、ケモが効いたか効かないか、がわからなくなりはしないか?

それだったら、ベースライン①検体採取 → ホルモン療法2週間 → ベースライン②検体採取して、低→低、あるいは高→低は、ホルモン療法を「増大傾向がないかぎり継続」、高→高の場合は、定型的抗がん剤治療を行ってから手術、というのがいいのではないか、と思います。しかし、外科医は手術しないで療法を長期間(2年、3年、5年、10年・・・)続けることは耐えられないと感じていることが多いようです。ルミナル乳がんに手術が必要か? という命題に答えをだせるような臨床試験が必要です。

もっと勉強したいお友達には下記の論文がお勧めだよ

  1. Smith IE, Dowsett M, Ebbs SR, et al. Neoadjuvant treatment of postmenopausal breast cancer with anastrozole, tamoxifen, or both in combination: the Immediate Preoperative Anastrozole, Tamoxifen, or Combined with Tamoxifen (IMPACT) multicenter double-blind randomized trial. J Clin Oncol 2005;23:5108-16
  2. Dowsett M, Smith IE, Ebbs SR, et al. Short-Term Changes in Ki-67 during Neoadjuvant Treatment of Primary Breast Cancer with Anastrozole or Tamoxifen Alone or Combined Correlate with Recurrence-Free Survival. Clin Cancer Res 2005;11:951s-8s.

San Antonio -1dayのたわ言


シカゴ経由でサンアントニオに着きました。シカゴは寒くサンアントニオはぽかぽか陽気です。今年は月曜日に出て月曜日に到着、前日現地入りというわけです。いろいろと便利になって空港も機内もWI-FIが低額で使え、ホテル、学会場も無料WIFIが飛んでいてさくさくと仕事がはかどります。ホテルで学会の下調べをしていたらMicorsoftアカウントチームからメールがきて「不審なサインインが確認された」と以下の連絡がありました。アンドロイド端末にパスワードを送るからMAC側に送ったファイルに入力して自分がアクセスしたことを認証しなさい、ということ。ゲッ、「消防署のほうから来ました」みたいな、インチキ消火器押し売りのようでもあるけど、「私はあなたのことをこんなに知っていますよ」と言わんばかりに、MAC iPAD  アンドロイド端末の履歴一覧が表示され、自分です 自分です 自分です 自分です と、まるで取り調べをうけているよう。今や、地球上どこにいてもすべて見はられているのであります。見はってくれていると感謝したほうがいいのでしょうか。

昔の話をしましょう。その話、100回聞いた、とか言われるかもしれないけど、そうでもないと思うよ。むかし、つまり1992年にザンクトガレンカンファレンスに最初に参加して、アインシュタインホテルに泊まったときのこと、小さなホテルでフロントやレストランや廊下で顔見知りにオンコロジストに行き会います。右隣のピーター・ラブディンの部屋からは、ちょうどAduvant Onlineの試作段階の頃で、壁越しに夜通し、あちこちと電話でのやりとりする声、特徴的なハスキーボイスが聞こえてきました。左隣はバーナード・フィッシャーが奧さんをつれて泊まっていました。朝食に行く時に廊下で出くわしたらエレベータの前で、Go ahead と言って先に私を乗せてくれて奧さんの後をゆっくりと歩く老紳士でした。それで私はというと、当時、少し出始めたインターネット、「モザイク」という今はどこにもないブラウザを小山博史先生が使いこなしていたので同じのを導入、研究費で阿部先生に買ってもらった走りのころのラップトップコンピューター(当時はノートパソコンという呼び方はしていなかった)を持っていって電話回線につないで使おうとしましたが、部屋の電話機は壁を貫通する太い電線に直接つながっていてモジュラージャックがありません。それでどうしたかというと、電話機の底を持っていったドライバーで開け、電話線にモジュラージャックをつなぎ、モデムと結んで、ぴーひょろひょろーと通信は大成功!! 違法って言えば違法かも知れないけど、良くやったね、と褒めてもらってもいいぐらい、まるでスパイ大作戦のような手際良さの工作だったと今でも思っています。だれにも迷惑はかけていないし、その後、パネリストになって毎回、アインシュタインホテルに泊まってもとくに問題もなく25年の歳月が流れ、あの頃の建物はもうありません。不便なあの頃が良かったのか、便利だけどどこにいても見はられて、やれコンプライアンスだの、やれプロモーションコードだのにがちがちに縛れ、行動、言動が全て、透明化される時代がいいのか、それはわかりません。でも、自分で考えて精一杯工夫して好きなようにやっっちゃえ、というのは今でも同じスタンスであります。

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美しきプロモーションコード


しゃんしゃん大会、途中まで出たけど、ああいうのはもうやめなくてはいけません。お金かけ過ぎ、真実ちゃんと伝えていない、発売記念講演会としたかったのだろうけど薬価算定が遅れており「承認記念講演会」というネーミング、そんなの聞いたことないぞ!! 写真撮るな、録画するな、友人つれてくるな、医師以外立ち入り禁止、プロモーションコードできまっているんだぞ! くだらない取り決めにも従順に従うことをコンプライアントという世の中だ。前からつめて座れ、間をあけるな・・と会場係なのかコンパニオンなのか、マスクの似合うお姉さんたちがうるさく指図する。 しゃんしゃん芸人として登壇した皆さんはああいうふやけた話になるのはわからないでもないけれど、それにしても内容は最低レベルであった。ご祝儀、ご祝儀、と、みんなで盛りまくるのはプロモーションコードでは禁止されていないらしい。サイエンスではなくビジネスだからつべこべ言うなということか? ではパルボシクリブについてサイエンスはいつ討議するのだろうか? ランチョンセミナーでただで弁当食べておいて難しいことを言ったらだめだよ、と遠い昔、忠告されたことがありました。

大橋靖雄先生との26年


大橋_交友抄

今日の日本経済新聞のコラム「交遊抄」に大橋靖雄先生が私のことを書いてくれました。大橋先生との26年の交遊は、まさにこの通りです。たいへん、よくまとまった素晴らしい文章だと思います。

スイスとの国境に近いLake Orta(オルタ湖)のほとりのホテルに1週間缶詰になって統計を学ぶ合宿でした。それをきっかけに大橋先生との協力の歴史が始まりました。

情熱を傾けて取り組んだNSAS試験は今振り返って見ても、貴重な経験でした。

そして現在、お互い、それぞれの過去を大事にしながら「今」を熱く生きている、そんな感想を抱きました。

台風一過


DSC_1144超大型の台風21号が静岡県に上陸、深夜から明け方にかけて大雨、強風で庭木は倒れ植木鉢が割れ、建物が揺さぶられた。我が家は免震構造なので地震には強いが風には弱いのだ。朝をむかえ一安心、台風一過の晴天! 今日は青森出張、空路はあきらめて新幹線🚄を乗り継いで青森に移動中。水位の上がった富士川鉄橋は徐行。川の濁流と美しい富士山が撮れた。+

ちーがーうーだーろーぉ!


Dr.Spoon 日本名さじ先生がm3でレチノブラストーマのことをレチノイドブラストーマと、信じられないような間違ったことを言っていた。耳を疑ってしまった。おいおい、専門家のふりをするなら基本的なところを抑えておきなさい。スポンサーのファイザーもファイザーだよ。原稿チェック、音声チェックしていないのだろうか? 画面のスライドにも、レチノイドブラストーマって書いてある。11月11日のしゃんしゃん(香香)大会、楽しみですね。

https://mrkun.m3.com/mt/onepoint/2584/view.htm?mkep=mrq2.0&pageContext=gp-58524&displaysite=pc_rhs_mrkun_05_limited&mke=1&directQfb=true

乳腺外科の先生に伺います


Q1:インプラントを用いた乳房再建、かつてはIWHR先生、NGM先生に依頼していました。今は浜松総合病院(仮称)の形成外科医に依頼しています。できばえ? そりゃあ当然、NGM、IWHR先生の方が圧倒的に素晴らしく、形成外科医といっても乳腺については駆け出しに近い浜松総合病院の作品は「ひどいもの」です。乳腺の再建は、乳腺という臓器を熟知している乳腺外科医が行うのがいいとつくづく思います。浜松総合病院の形成外科医は、そのうちうまくなるのでしょうけど、このラーニングカーブの間にしくじり再建をやられた患者はたまったものではありませんが、どう思いますか?

Q2:インプラントを用いた再建が保険承認されて以来、温存できるのに全摘・再建になってしまうケースが実に多いのですが、他の施設でこのような傾向はありますか?  あるいは、乳腺外科医の先生方、ちまちま温存するよりざっくり乳切してしまって「あとはよろしく」と形成外科医に頼んで手を下ろして休憩室でお茶を飲む方がいいのでしょうか?

Q3: 現在30才以下の乳腺外科医は、もし、外科医としての人生を歩むのなら、形成外科医と乳腺外科医のダブルライセンスを獲得して、外科医の人生を全うする、というのをどう思いますか? SGR先生の言うように「腫瘍内科医が足りないので、腫瘍内科医の仕事である薬物療法を外科医が担当する」というのと、「腫瘍内科から見てもとても手術を依頼したいとは思えないような薬物療法の治験に情熱を燃やし手術に興味が薄い乳腺外科医が存在する」というのとはニュアンスが異なります。今後、「薬物療法の治験に情熱を燃やし手術に興味が薄い乳腺外科医」が増えることは望ましい事でしょうか?

医学の歴史 消化器外科編


胃潰瘍の薬「シメチジン」商品名「タガメット」が、我が国初のH2ブロッカーとして発売されたのが1982年です。その翌年、私は国立がんセンター病院レジデントとして札幌から築地に移りました。

今ではH2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤、その新型であるタケキャブなど、豊富な薬剤があり、胃潰瘍は薬で治る病気です。しかしシメチジン登場前は、粘膜保護剤といわれる「胃薬」と食事療法で厳しく食事管理を行い、それでも治らない場合は、胃全摘をしたり、迷走神経遮断術などの外科的治療が行われており、胃潰瘍手術専門の病院もあったほどでした。私は札幌で研修していた時、担当患者が入院中に胃潰瘍から出血、吐血して深夜に亡くなり、悔やんでも悔やみきれない思い出があります。朝日の中で遺族に会ったときの光景が今でも目に浮かびます。その時に胃潰瘍の事をいろいろ勉強して論文、雑誌でよく見た名前が東京のK先生。外科で迷走神経切断術とかやっていて潰瘍外科の専門と紹介されていました。

その後、築地に移って、がんの勉強をやっているとき、胃がん手術の専門として、K先生の名前をよく見るようになりました。あるとき、都内の講演会を聞きにいったらK先生が胃がん手術の歴史みたいなことを話して、昔から胃がん手術に取り組んでいるようなことを言っていました。

その後、ピロリ菌感染が萎縮性胃炎をへて、胃がんの発生をもたらすということが明らかにされ、「ピロリ除菌で胃がん予防」、「胃がんは感染症」、「塩蔵から冷蔵への移行で胃がん減少」ということが常識になったころ、大教授として学会を席巻していたK先生がテレビの健康番組で、「私は長年、胃潰瘍と胃がんの関係を研究してきました」と言っておりました。定年後のK先生、最近はあまり名前を聞きませんが、門下生の教授が50人近く全国にいるそうです。

節操がないと批判するか、変わり身の早さを揶揄するか、はたまた、50人の門下生を恐れて沈黙を守るか、あるいは、数々の業績を褒め讃えるか、賢い道はどれだろうか。

 

灰色の調剤薬局?


「ジェネリックはやめて下さい」という患者がいる。レトロゾールを処方している患者や患者家族から、しかも複数の、しかも市の北の方の地域の人たちばかりから。ジェネリックにも松竹梅があって、梅(粗悪品)もあるようだ。しかし、「松」なら、問題なし、ということになっている。お上(厚労省)は医療費削減の施策としてジェネリック使用を推進している。浜松オンコロジーセンターは開院以来、院内調剤を原則としている。患者は便利だし、チーム医療の一員として薬剤師は診療の流れをきちんと把握し、医師、看護師からの説明との整合性も取らなくてはならないからだ。しかし、在庫薬剤品目数は厳しく制限しなくてはならないので、ジェネリック先発品も両方院内在庫、というわけには行かないので、全ての品目について、可能な限り「松」レベルのジェネリックを採用している。

ジェネリックはやめて下さい、という患者に理由を聞くと、ジェネリックは粗悪品、先発品が高品質、と信じているようだ。だれがそんなことを言っていますか? と聞いても、言葉を濁す患者が多いが、希望ということなら「フェマーラ」と書いて院外処方箋を発行してきた。そこで、おや? おーや〜? と、あることに気づいた。フェマーラに変更を希望した患者は、同じ地域の同じ調剤薬局に行っている。調剤薬局が先発品を推奨するのは悪いことではないけども、なにか、怪しい臭いがする。厚生省(当時)の薬剤師の牙城である医薬安全局(当時)が医師の独断・専横にはどめをかけるため、院内調剤から院外調剤薬局への移行を後押しし、ジェネリック導入を推進している。医療の透明化という点では院外調剤はいいことかもしれないが、診療所にも有能な薬剤師を配置すれば、前述のようにチーム医療の実践の下で、質の高い調剤が達成できる。院外調剤は患者には不便だし、情報提供も不十分だ。それにくわえて、灰色の調剤薬局がおかしな誘導をしているとしたら、院外調剤推進も考え直さなければいけない。また、子供医療費無料を悪用して、お兄ちゃんの薬を弟の名前で処方してもらいなさいと、親をそそのかす調剤薬局の親父もいるらしい、という話は以前、このブログで触れた。

「すべての民のうちから、有能な人で、神を恐れ、誠実で不義の利を憎む人を選び、それを民の上に立てて、千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長としなさい。(出エジプト記18:21)」

「不誠実で不義の利を愛する」ことがあるとしたら、そこは改めなくてはいけないのだ。