失われた求心力 混乱から秩序回復への展望


高橋将人先生よりご指名いただきましたので乾杯の音頭をとりましょう。「カンパーイ」、どうもありがとうございました。時間がありませんので、以下の挨拶は割愛させて頂きます。ブログでお読み下さい。

シリア、イラクの地域は、数千年前からの混乱が現在にも及んでいるように思います。この辺りは、いろいろな民族、宗教、国家が入り乱れる地域で、構築されかけた秩序が、それぞれの利己的行動により破壊されて来ました。CSPORもそれと似ています。10年かけて構築した体制と秩序が破壊され、求心力が失われ混乱の様相を呈しているように私には見えます。

自らを客観的に吟味することを、我々は忘れてはいけません。その際、チェックポイントとして、(1)ミッション・パッション・ハイテンション、(2)ワーク・ライフ・スタディ―バランス、(3)利己を廃し利他に生きる、の3つの標語を上げましょう。

ミッションとは、本来、ミッション・スクールというように使われるように、「神から与えられたあなたの使命」ということですが、ここでは、自分が、その立場で果たすべき役回り、役割という意味で考えて下さい。大学に勤務する者、そのミッションは、教育、研究、診療です。しかし、見ていると大学者において、教育はおろそか、研究はおそまつ、診療もいいかげん、という、おろそか・おそまつ・いいかげん(OOI:おオオイ)の三拍子そろった人が多いように思います。診療も、本来の目的である患者のため、ということなら良いでしょうが、自分のため、教室のため、専門医の単位のためと、本質論が見失われています。正しいミッションを心得て、情熱(パッション)を持ち、そして、明るく元気にわかりやすく(ハイテンション)振る舞うことが大切です。ハイテンションではなく、言ってることも複雑で、暗い顔をしていては、いくらミッション、パッションがあっても、周囲に伝わりません。

ライフつまり衣食住と娯楽・快楽・悦楽・享楽のための財源確保(つまり給料)を求めて、しかも、最短時間に、最も安易にワークすることをワーク・ライフバランスと誤解している人が医療者の中にも多いのはとても残念に思います。ワーク・ラーフの2事項だけではいけません。医療者には、たゆまぬ学び(スタディ)が必要なのですから、娯楽・快楽・悦楽・享楽を削減してスタディのために一日数時間を費やさなくてはいけません。

利他主義は医療者の本質に関わります。医療者には、社会保障の一翼を担うというミッションが与えられているのです。医療者には、そもそも利他的発想、行動が求められています。何のために、医師になったの? ぼくは、リッチアンドフェイマス、つまりお金を儲けて有名になること、これが、医師になった目的さ、と胸をはる後輩がいます。彼はいまのところそれなりの地位にいますが没落傾向が始まっています。今なら間に合います。利己から利他に転じてほしいものです。看護師は原点であるナイチンゲール誓詞を読み返し、神から与えられたミッションが利他的発想、行動であることを確認してください。

イスラム教も本来、利他的な宗教です。それはキリスト教、ユダヤ教と、神を同じくしているのですから、当然でしょう。しかし、利己主義に走り、この世の生活、金銭、快楽、領土、名誉を求め続けて争いを繰り返してきた弱き人間が、思い出したように、いろいろとうまく行かなくなくなった時に、これではいけない、と一時的に反省し、自らを映す鏡として「神」を利用し、神に気に入られるために、本質から外れたルール、規律、戒律を無意味に多く作成した結果、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教の枝葉や下草がそれぞれに繁り、お互いを理解できないまでの密林になってしまったとも言えるでしょう。原点、つまり、神を畏れる、人々を愛する、という点にたちかえり、自らを客観的に評価し、ミッション・パッション・ハイテンションを自覚しワーク・ライフ・スタディ―バランスを保ち(3)利己を廃し利己に生きるように務めて、秩序を回復し、混乱を収束し、求心力を発揮したいと思います。

予防すべき時に予防


インフルエンザA型(香港)が流行っているとマスコミが大騒ぎ。近隣の病院でも、学校でもインフルエンザ患者が急増している。もともと重症化して大パニックになったこともある香港型だから、その流行を予測して、今年使用されているワクチンは、この型にはあっているけど、それでも、重症化する可能性は高いと知られていた。しかし、11月から12月にワクチン接種を勧める話はマスコミではまったく取り上げなかった。だから、テレビでも言っていませんから、今年はワクチンは打ちません、という人は多かった。ワクチンを接種しても効果がない、ということではないのに、予防医学の考え方が浸透していないようだ。朝のワイドショーなども、騒ぎを派手に報道して、視聴率を上げることがプライマリーエンドポイント、公衆衛生学的観点から、備えてワクチンを打ってください、というような、教訓めいた話題を提供しても、すぐにチャンネルを変えられてしまうから、結局、大変だ! 大変だ!という論調で、視聴者の恐怖心を煽る手法を取らざるをえない。これは、映画でも、テレビ番組でも、「評判になったら観る」という安易な行動決定パターンをとる人が、マスコミによる操作で定着してしまっている。予防は、発症前の対策なので、ピンとこないことが多いのだが、がんに関して言えば、肺がんにならないようにタバコはやめよう、胃がんにならないようにピロリ菌を除去しよう、乳がんにならないようにアルコールは控えよう、子宮頸がんにならないように「姦淫」はやめよう、いずれも重要な予防医学である。恐怖心や、虚栄心が刺激されなくても、科学的な報道に基づいて、理性的に正しい行動をとれるような、成熟した社会は程遠い。

三つの定年


年賀状を受け取ると1年ぶりの消息が伝わってきます。ご家族から喪中の連絡を頂く事もあれば、定年を迎えます、体調不良です、元気です、など様々な人生に、しかも昔からよく知った人の歩みに触れ、いろいろなことを考える年始であります。勤務者は60歳前後で社会的定年を迎えます。55歳から65歳の範囲に社会的定年が設定されているのはご存知のとおりで、大学、会社、病院、お役所など、それぞれに意味があって社会的定年が決まっていますが、肩たたきとか、出向とか、いろいろな仕組みで、能力、人脈力に合わせた社会的定年調整も行われますね。これが第一の定年です。第三は、人生の定年で要するにこの世を去るときです。その先がどうなっているかはこの世にいる間は憶測の域をでませんが、輪廻とか、神の国とか、千の風とか、宗教や文化により、いろいろな可能性があるらしい。第一の定年は、所属している組織、社会が決める事、また、第三の定年は、神様なりがきめること、いずれも自分で決める事は、ふつうはできません。問題は第二の定年です。そろそろ、好きな旅行を、長年無理をかけた女房といっしょに楽しみます、という感じで、第二の定年を自らが前向きに決定するという便りも多くあります。が、年賀状の中に、まだまだ現役で頑張ります!!(80歳代の医師)、とか、第一の定年のあと、第二、第二の職業を「卒業」し、第三の職業につきます、といって、検診関係の仕事に従事しますという70歳代後半の医師からの便りもありました。第二の定年を物ともせず、それを突破している方々に対しては、お元気でいいですね、という反応が当たり障りがないものでしょうけど、第二の定年は、自分から言い出さないと他人は決めてくれません。あちこちで、90歳に達するような、時には100歳を超えたような「妖怪人間」がいつまでも「理事長」とか「会長」とか現役で「頑張っている」。頑張らなくてもいいのに頑張っている。通常、加齢とともに脳の力は衰えます。全くお変わりなく、なんていうことはありえません。そう、見えるだけです。私の父も近くで見ていた私には85歳を過ぎたあたりから、判断がずれてきたのがわかりました。しかし、父を知る人々は、おおせんせいは90すぎてもお元気で、頭もしっかりしていらっしゃいましたね・・、と、思い出話で語ります。私もそうなるように頑張ります、と社交辞令で答えますが、それはしないほうがいい、と思います。第二の定年を決めるのは自分ですから、晩節を汚さぬうちに、身を引き、後進に道を譲る。いつまでもしがみつかない。『「老兵は役を終えても舞台を去らぬ」と言いますが、だれも仕事をしようとしている人を追い出したり、そういう人に対して冷たい態度を取ろうとは思わない。場違いに話の長い人に「もうお時間です!」とかも、いいにくい』んだって。自らをよく吟味して第二の定年の時を決めよっと、と思います、年頭のご挨拶とさせていただきます。

はりぼて・見せかけ・作り事


ディズニーリゾートが地球上でいちばん幸せな場所、というコメント正月番組で聞きましたが、本当にそんな馬鹿なこと信じているのでしょうか? 地球上には素晴らしい自然、歴史、人々が存在し、ディズニーなどには、まったく魅力を感じない、あれは、にせものです、作り事、ハリボテ、ということを子供達に教えなくてはいけないのです。はりぼて、という言葉から連想するのは、「はりぼて標語」。「女性の社会進出」とか「地方創生」などの標語が一人歩きして、「女性だから」といって実力、人間力、洞察力、胆力、調整力も全然備わっていない人が「女性だから」という理由だけで登用されはじめていますが、どこの職場でも、化けの皮がはがれ始めている、というニュースも見ました。たしかに思い当たる人事も幾つかありますね、北にも南にも。肝心なことは、女性だからというような「形だけ」「外形基準」から決定、判断するのではなく、男性であろうと女性であろうと、実力、人間力、洞察力、胆力、調整力のある人間を育成すること、それにつきると思います。それには、幼少期、学童期、思春期、青年期を通うじて、男の子も、女の子も、心、精神、肉体、を育て、ここ一番で頑張る力、神を畏れ、人を愛することのできる自立した人間を育成することです。 他人にどう思われているかを第一に考えるような指導も廃止しなくてはいけませんよ、製薬協の皆さんもね。今日から新しい年の仕事が始まります。

「祈り」の違い


サンアントニオスパーズ対ロスアンジェルスレイカーズのバスケットボールの試合、ほずみんに誘われて観戦してきました。101対101で決着がつかず、延長戦でレイカーズが辛勝、スパーズは惜敗という結果、ものすごくもりあがった一戦でした。ほずみんは、かつてムルアカとよばれた林先生に誘発されてNBA の試合観戦は毎年行っているそうで、おおはし先生もフロアレベルの最前列で毎年観戦しているらしい。わたしは、今まで、サンアントニオでは、毎晩、委員会とか、セミしゃんしゃん勉強会に駆り出され、夜の時間を浪費していたのだが、ボレロ三試験、いずれもポシャリの結果で委員会も終わりになり、セミしゃんしゃんもやらないことになり、夜の時間をやっとすこし楽しむゆとりとことりができたわけです。その白熱した試合展開の最中に気づいたこと、日本だと、楽天対巨人、まーくん連続登板最終回、ツーアウト、最後のバッターは、あべしんぞう、という場面でスタンドが大写しになると、多くのファンがお祈りのポーズを取っている。また、クイズ番組やバラエティ番組なんかでも、結果発表します、でけでけでけ・・というときは、三流芸能人が、みんなお祈りのポーズをとる。それが習わしとなっています。ところが、白熱したスパーズ対レイカーズ戦、あと1分という場面でも、スタンドでお祈りポーズを取っている人はだれもいないのですね。クリスチャン大国のアメリカだから、たかがバスケットボールの勝ち負けぐらいでは神へは祈らないのでしょう。神様だって、ゲームの勝ち負けまで祈られたって困るよ、って感じでしょうか。芸能人がクイズ番組の結果発表でお祈りのポーズをとっている姿をみると、目先のご利益を求める日本の複合宗教のお祈りと、神を畏れ、隣人を愛するクリスチャンのお祈りでは、全く意味が違うのかなー、と感じたのでした。サンアントニオ雑感でした。

聞かれなくても話します


セカンドオピニンで治療のことを聞きにきた人たちにも次のようなことは聞かれなくても押し付けがましく話します。

(1)アガリクス、メシマコブ、フコイダンなどのサプリメントとか健康食品とかいわれるものは、何の意味もありませんから手をださない方がいいですよ。(2)がんと診断されると、肉がいけない、牛乳がいけない、と惑わされて、栄養失調になってしまうひとがいます。どんな食材でも、バランス良く摂れば問題ありませんよ。(3)抗がん剤治療中は、なまものがいけないっていっている病院もありますが、それもまちがってますよ。新鮮なお刺身、よくあらった生野菜、あたらしめの生卵など、全く問題ありませんよ。その他、旅行に行ってもいいし、温泉(注:玉川温泉は除く)にいってもいいし、日常生活になんら、制限はありませんよ。など、他になにかあったっけ? それと、多くの患者に真正面から向き合って接してきて習得したご教訓、「がんになったことは不運かもしれないけど、だからといって不幸になるわけではないですよ、まえを向いていっしょに進みましょう」も伝えることが多いです。

チームビルディングのこころ


愛する友へ:寒い毎日が続いていますが、お仕事、ありがとうございます。多くの人間が同じ目標に向かい、全力で走っていると、ついついお互いに対する配慮が薄くなります。新しいメンバーも、一生懸命、真剣に、誠実に仕事を覚えようとしていますが、まだまだ、うまくできない、何回教えてもできなということもあります。指導する人たちも一生懸命だと思いますが、全体に忙しいとついつい、言葉もきつくなったり、態度も意地悪に見えたりすることがあり、それを受け取る側も悲しい思いをしていることがあります。大切なのは「愛」です。キリスト教では、「神を畏れて、隣人を愛せよ」と、この二つだけを守ることが、人類の平和、繁栄をもたらすとされています。愛してください。あなたの周りの人が困っているかもしれない、いじめれているかもしれない、心配しているかもしれない、おちこんでいるかもしれない。大丈夫ですかの一言が、上手にできるようになりましたね、の思いやりが、わからないことがあればなんでも聞いてくださいね、遠慮しなくてもいいですよ、というふところ深い受け入れが大切です。それが、周囲の人に愛を伝える表現です。神を畏れるとはわかりますか? ちっぽけな自分の能力だけでは、到底、できないこと、わからないこと、それを神には、わかっている、あなたがどこで何をしていても、神はあなたのことを見ている、知っているのです。神にはかなわない、とてもかなわないのです。空の彼方から、あるいはあなたの心の中から、あなたの行い、言葉、思いを、じっと見守ってくれています。もっともっと優しい人間になるようにするにはどうすればいいか、考えてみましょう。それが、よいチームを形成し、維持するために、最も大切なことです。よろしくたのみます。

さらばサンアントニオまた来年 これで帰ります


サンアントニオ乳がんシンポジウムも終了となり、とりあえずとり急ぎここに二つの演題についてまとめた感想と独り言をお伝えして帰国の途につきます。

(1)TIL Tumor Infiltrating Lymphocyte(腫瘍浸潤リンパ球)

乳がん組織にリンパ球の浸潤があることは、昔から病理医の目には止まっていました。最近、リンパ球浸潤の多い乳がんは予後がいいとか、様々な治療による効果の良し悪しもリンパ球浸潤の多寡と相関するという研究が多数報告されるようになりました。ザンクトガレンコンセンサスカンファレンスでも2011年から、間質のリンパ球の多寡は予後因子か?という質問がでています(1)。また、昨年には、乳がん組織中のリンパ球浸潤評価に関しての推奨が出ました(2)。今回のサンアントニオでも、イーデス・ペレーツが、術後trastuzumabの有用性を検討した報告(3)で対象となった臨床試験N9831に参加した症例のうち945症例(AC-paclitaxel:489症例、AC-paclitaxel+trastuzumab:456症例)のアーカイブマテリアルを使用して、間質のリンパ球浸潤の程度と予後を検討して報告しました。リンパ球浸潤の多い症例群(全体の10%)と少ない症例群(全体の90%)にわけて、いろいろな検討を試みてしまいました。まず、AC-paclitaxel群では、リンパ球浸潤が多い症例の10年無再発率は90.9%、少ない症例は64.3%(HR 0.22, P<0.009)と差が出ていますが、AC-paclitaxel+trastuzumab群では、リンパ球浸潤が多い症例の10年無再発率は80.0%、少ない症例は79.6%(HR 1.13, P=0.79)と差がありませんでした。なんということでしょう。次に、リンパ球浸潤が多い症例で、抗がん剤治療だけの症例と、抗がん剤+trastuzumabの症例をくらべてみました。抗がん剤だけでは、10年無再発率は90.9%、抗がん剤+trastuzumabの症例は80.0%(HR2.43, P=0.22)と,有意差はありませんが、trastuzumabをくわえると、かえって予後が悪い、という結果でした。リンパ球浸潤の少ない症例では、抗がん剤だけでは、10年無再発率は64.3%、抗がん剤+trastuzumabの症例は79.6%(HR0.49, P<0.0001)と、trastuzumabを追加することの効果がはっきりでたのであります。この現象は、多変量解析(ホルモン受容体、腫瘍径、リンパ節転移などの因子を加えて)でもかわならいという結果でありました。リンパ球ががん細胞をやっつけようとしているのに、trastuzumabが、その作用を弱めてしまうのでしょうか?

  1. Goldhirsch A, Wood WC, Coates AS, et al. Strategies for subtypes—dealing with the diversity of breast cancer: highlights of the St Gallen International Expert Consensus on the Primary Therapy of Early Breast Cancer 2011. Ann Oncol 2011; 22(8): 1736-47.
  2. Adams S, Gray RJ, Demaria S, et al. Prognostic Value of Tumor-Infiltrating Lymphocytes in Triple-Negative Breast Cancers From Two Phase III Randomized Adjuvant Breast Cancer Trials: ECOG 2197 and ECOG 1199. J Clin Oncol 2014; 32(27): 2959-66.
  3. Romond EH, Perez EA, Bryant J, et al. Trastuzumab plus Adjuvant Chemotherapy for Operable HER2-Positive Breast Cancer. N Engl J Med 2005; 353(16): 1673-84.

 (2)65歳以上の高齢者を対象としたイバンドロネート ± カペシタビン

65才以上の高齢者では、骨粗鬆症を高率に伴うので、イバンドロネート(日本では売ってません)を術後に使い、それに、抗がん剤「カペシタビン(日本ではよく売れています)」を加える、加えない場合の、PFSを検討した試験がドイツのフォンミンクウィッツ率いるGBG(German Breast Group)により発表されました。イバンドロネートだけ群(707人)、イバンドロネート+カペシタビン(702人)が対象です。結果は、浸潤がん再発、遠隔転移を見ても両群間に差がありませんでした。つまり、65才以上の高齢者では、カペシタビンの効果は認められなかった、というネガティブデータでありました。フォンミンクウィッツは、カペシタビンが無効であった原因として、対象症例でLuminalが多く、長期間のフォローアップ結果を見ないとわからないと考えています。CG製薬のこぐまさんは、これはCG製薬がやった試験ではないからと考えています。CG製薬のかわうそさんは、これはカペシタビンの投与期間がたった12週間と短すぎるからだと考えているようです。カペシタビンの投与期間の比較試験をやるのでしょうか? やらないのでしょうか?

医師の本分


我ながらいいこと言ってるね(自我自賛の落とし穴)

渡辺 亨 のアバターオンコロジストの独り言

医師は患者を診るのが仕事である。臨床力「Clinical Expertise」とは、知恵と知識と経験とたゆまぬ努力によって熟成される能力で、それには、診断力、治療力、コミュニケーション力、洞察力、情報処理力、忍耐力、判断力、指導力など、様々な成分が含まれる。臨床力は、一朝一夕に身につくものではないが、単に長期間、臨床に携わっていればよいというものではない。患者を診ることと、患者を対象とした臨床研究を行うことは車の両輪、コインの裏表と言うような感じで、両方の能力と活動を併せ持っていくのが望ましいかな、と常々思っている。先日、メディアセミナーで大野善三さんから、「渡辺先生は、立場が変わる度に、新しい問題点を見出して取り組んでいますね。先生の話が面白いのは、常に、現場を持っていることなんだなと思いますね。」と言われた、大野さんは、医学ジャーナリスト協会の重鎮で、NHKにいらっしゃった1990年代前半から取材を受けたり、メディアセミナーで講演を聞いてもらったりと、年に数回だがお目にかかる機会がある。西條先生とはしばらくご無沙汰していたが、先日、日経新聞の座談会でお目にかかった、「いかがですか、先生」と聞いたら、「暇や、暇やから、勉強ばっかりしとる。」と。確かに、分子標的薬剤の最新情報の詳細まで、よくご存じだが、今一つ、話に迫力がない。ご本人もおっしゃっていたが「知識は吸収できるが、現場に携わっていないから、頭でっかちや。」ということだ。昨日、引退牧師と話をする機会があった。彼は、信州の方の教会で長年、牧師をしており、その時に入院、手術を経験した。内科医として担当したのが、有名な○田實先生だという。手術前に、「頑張ってください」、といわれたそうだが、牧師先生は、「私は、全身麻酔をかけられて、いわば、冷凍マグロのようなもの。何を頑張れというのですか?」と思わず聞いてしまったそうだ。また、「彼は、最近、有名医になって、頑張らない人生、なんて言っているが、冷凍マグロの私に頑張ってくれ、といった同じ人間とは思えないな。」と。また、面白いことをおっしゃった。「有名医だけど、彼は全然、名医じゃあないよ。名医になってから有名医になるのが筋だけど、先に有名医になっちゃったものだから、講演とかで忙しくて、名医になりきれないんだな。」 これは、まさに、他山の石とすべき指摘である。この1カ月ぐらいで出あった、大野さんも西條先生も引退牧師先生も、人生の先達は、大切なところをきちんと評価しているな、と感心した。やはり、本分をわきまえ、それに情熱を持って取り組むこと、まさに、MISSIONを心得て! PASSIONをもって臨み、HIGH TENSIONで取り組むことが大事であると理解した。本分をないがしろにしては足元すくわれるぞ、ということは常に、あんきもに銘じておくよ。

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SABCS恒例CASE DISCUSSION


サンアントニオ乳がんシンポジウムは、毎年、少しづつ、時に大幅にプログラムが変化しています。学会は時代のニーズに応えて、あるいは時代の変化を先導する形で成長するのは当然です。しかし、SABCSで長年、変わらないのが、二日目、三日目のお昼に開催されるCase Discussionです。このブログでも過去に何回か、触れていますが「一流の研究者は一流の臨床家」というのがこのセッションに参加するたびに、再認識されます。モニカモロウ、リサカリー、マシューゴエツなど、よく知られた人たちが、ぶっつけ本番で会場からの治療相談に応じました。今回関心したことは、今日の午前中のジェネラルセッション3の発表を聞いて、判断が難しくなったという2症例が提示されたことです。30才女性、BRCA1変異のあるT2N1M0のTNBC.。午前中のセッションで、イギリスの無精髭TUTTの発表で、カルボとドセタキセルの比較試験、BRCAの変異ありでは、カルボが良いと。症例数も少なく、エビデンスとしては弱いものですが、それでも、今日の今日なので、質問者も「カルボを含んだ術前化学療法は必要か?」との問いかけでした。リサカリーは、自分でも、コンサバですから、といって、手術→パクリ・ACみたいな標準を選ぶべき、との答え。つまらん、こいつのはなしはいつもつまらん、そんなんだったらGKITでもいえる。マシューは、術前のカルボ+パクリも選択肢の一つでしょう、とのよい答え。これぐらいの柔軟性がいいなあと思いますね、腫瘍内科医は。もう一例は38才、8cmの大きさの局所進行乳がん、ER陽性、PgR陽性、HER2陰性、肥満。術前化学療法でAC・パクリをやって手術した。その後の治療、どうしようか。今日の午前中のセッションで発表されたSOFTトライアル、TAM vs. TAM+LHRHアゴニスト、全対象症例では、PFSのP値は0,1、35才以下のサブセットでは有意差あって、併用がよろしという結果。しかし、それよりも、エキセメスタン+LHRHアゴニストの方がよいことが、今年のASCOのプレナリーセッションで発表されたのは、ご存知のとおり。しかーし、肥満女性では「おおおんな、そうみにAIまわりかね(大女AI不可循環於総身)がABCSG12で示されているので、この症例では判断が難しい。AI+LHRHアゴニストがよいか、それともTAM+LHRHアゴニストがいいのか。意見がまとまらなかったが、TAM+LHRHアゴニストで良いだろうと私は思った。そんな感じで1時間ちょっとのセッションで、9例のディスカッションがあって「臨床医の真髄は科学的推論である」ことがあらためてに示されました。若い先生とかに、CASE DISCUSSIONは、がちんこ道場だから、出た方がいいよ、と毎回勧めるのですが、日本の若者はどうも臨床の現場での真剣勝負は興味がないようで日本人の参加者はまばらでした。ざーんねーん!