胃がんにハーセプチン


ASCO は楽しい。毎年感じることだ。じっくり勉強もできるし頭の中も整理できる。私がレジデントの時に胃がんでエストロゲン受容体があるので、抗エストロゲン剤タモキシフェンが効くかもしれないという話があった。現在の免疫染色法では、ほとんど陽性にならないし、臨床的な効果もないので、結局使われなくなった。悪性黒色腫にもエストロゲン受容体が発現していて、タモキシフェンが効果があり、抗がん剤と併用して使われることもある。乳がんとか胃がんとメラノーマとか、癌の種類に関係なく、同じ特徴を持っていればそこを狙って薬が効くのだ、という着眼点は、私が腫瘍内科を目指した原点に近い部分にある。今回、ToGA試験の結果がでた。この試験のことは以前より聞いていた。しかし、これほどインパクトの強い結果がでるとは思わなかった。この結果から、また、いろいろな混乱が始まることが予想されるが、まず、ToGA試験の結果を詳しく見てみよう。
 
胃がんでは20%程度の患者でHER2が陽性である。ToGA試験でも、3807名の進行胃がん患者をスクリーニングし810人がHER2陽性。検査方法は、IHC3+ またはFISH陽性(2X以上)。乳がんでも大体20%程度で陽性なので同じ程度である。810名のうち、その他の適格条件を満たし同意が得られた患者584名を5FU+シスプラチン対5FU+シスプラチンにハーセプチンを加えた群にランダム化割り付けし、生存期間(Overall Survival:OS)を主たるエンドポイントに検討結果、明らかな差がでた。抗がん剤群の生存期間中央値が、11.3か月であったのに対しハーセプチンを加えた群は、13.8か月(P=0.0046)(図1)。
 
図1(胃がん)         乳がん
 
登録症例の50%強はアジアからの症例なので、この結果はダイレクトに日本人の胃がんに適応できる。このサバイバルカーブを、転移性乳がんに対してハーセプチンを使用し、生存期間の延長が報告されたデニス スレイモンのデータと比較すると驚くほどその形がよく似ている(図2)。生存期間の中央値は胃がんは乳がんの半分ぐらいだが、どちらもハーセプチン+化学療法による生存期間は、化学療法群による生存期間の125%である。つまり、乳がんと同程度の効果があるということができる。この結果から原発がどこであれHER2過剰発現を伴うのなら、乳がんでも胃がんでも同じようにハーセプチンを使用すべきである、という強いメッセージが伝わってくる。
それでいろいろな混乱を学ぶケーススタディが考えられる。
【症例】67歳女性、竹山さん、
【経過】昨年夏、早期胃がん手術、外科医はとり切れたといったので、術後の抗がん剤治療は受けていない。今年5月、定期フォローアップで肝転移が見つかった。担当のY先生はASCOに行くので、次の外来は6月10日となる。
【6月10日の外来予想】
竹山さん「先日の検査はどうでしたか、結果が気になって、先生、オーランドでしょ。名古屋でオーランドがえりの人が新型インフルエンザにかかったって騒いでいたんで、先生、無事帰って来られるか心配でしたよ。」
Y先生「僕は50歳以上だから大丈夫ですよ。さて、検査の結果ですがね、肝臓に転移が出ているようなんです。」
竹山さん「やっぱりね、ここのところ、なんか、みぞおちのあたりが張ったような感じがして」
Y先生「そうですね、転移は左葉に3個、そのうち1つは5cmぐらいですね。これが、すこし圧迫しているんでしょうかね。それと右葉にも5-6個転移がありますね」
竹山さん「先生、それって、手術できるんですかね」
Y先生「手術できる、できないっていうことではなくってね、手術をするという意味があまりないんですよ。」
竹山さん「じゃあ、抗がん剤ですか?」
Y先生「先週のアメリカの学会でね、胃がんのあるタイプでは、ハーセプチンという薬が効く、という発表があったんですよ。」
竹山さん「ハーセプチン?って、聞いたことありますね。たしか、隣の奥さんが乳がんでその点滴をうけていると言っていました。なんか、とても高いくすりなんですよねえ。」
Y先生「高いかどうか、ちょっとわかりませんが、もし、胃がんの型があえば、ハーセプチンが効くかもしれないから、検査してみましょうかね。」
竹山さん「検査って、また、あの苦しい胃カメラですか?」
Y先生「いや、手術でとった組織が保存してあるので、それを使って検査室に、HER2というタンパクが竹山さんの胃がんにあるかないか、わりと簡単にわかるんです。」
竹山さん「その検査って、高いんですか。今日はあんまりお金、持ってきていないんで・・」
Y先生「高いかどうか、ちょっとわかりませんが、乳がんという病名をつければ、保険がきくんですよ。結果がもし陽性ならハーセプチン治療をするわけですが、それも、乳がんということで問題ありません。」
竹山さん「先生、いやですよ、私は胃がんだって言うのに、乳がんにもなっちゃうんですか、それ、どういうことですか?」
Y先生「いや、実際に乳がんになるってわけではないけど、そうすれば保険での治療ができるからと思ってね」
竹山さん「まあ、難しいことはわかりませんが、先生がいいと思う治療をしてください。再発ときいて覚悟はできていますけどね、少しでも長生きして、孫の成人式は祝ってやりたいんでね。」
Y先生「じゃあ、2週間後、検査の結果がでていると思いますから、その時にご説明しましょう」
 
というような状況は来週からでも現実のものとなるだろう。これに対して行政はどう対応するのだろうか。「ToGA試験の結果をうけ胃がんに対するHR2検査を乳がんと同様に承認すること、転移性胃がん患者で、HER2陽性症例では、ハーセプチンの併用をすぐに承認すること」、これが絶対不可欠である。日本の胃がん診療に携わる多くの先生が真剣に取り組んだToGA trial、、この結果をうけ、次は行政が真剣に取り組む番である。ボールは投げられた、さあ、厚生労働省はどうするか。
 
 
 
 
 
 
 
 

Plenary Session


ASCO二日目、日曜日の昼からは「Plenary session」がある。日本語に訳すと「全体会議」。毎年もっとも注目すべき4演題が発表されるので会場はほぼ満席で、早めに行って席を取ろうというムードになる。HZM先生は「他の科の話だから」と及び腰で途中で出て行ったが「オンコロジー(腫瘍学)」の学会であり腫瘍に関する話なので他の科という認識はちょっと理解できない。と書いたらHZM先生から、途中でトイレにいっただけだよ、大腸癌も卵巣癌も乳癌も全部聞いてましたよ、と、おしかりをいただきました。イメージでものを言ってはいけないということで深く反省ばかりなり。さて、演題は4つ、ひとつづつ、じっくりとみていこう。
(1)卵巣がん
最初の演題は、卵巣がん初期治療後のフォローアップで、血清CA125の上昇を早く見つけて早く治療をする方が良いか、それとも症状や画像診断で再発が確認されたら、その時点から治療を開始する方がよいか、を比較した試験。血清CA125は3ヵ月ごとに測定し、これを医師患者に通知して治療を開始の参考にする群(早期治療群)と、結果は医師にも患者にも知らせない群(遅延治療群)にランダム化割り付けした。「えっ、結果を教えてくれないの、そんなのひどい~」「患者の検査の結果を教えないのは非倫理的だ。それで治療が遅れたらどうするんだ!」という反論が聞こえてきそうだが、ちょっと待ってください。「CA125を測定することがいいことだ」とわかっていれば、そのような反論ももっともだけど、いいか悪いのか、わかっていないから試験をするわけで、そのあたり、わかっていることとわかっていないことをきっちりと切り分けることが重要なのである。1442名が登録され、そのうち529名の患者が再発したのでランダム化割り付けの対象となった。早期治療群は265名で254名が再発後の治療を開始(中央値0.8か月後)、一方遅延治療群で265名のうち233名が治療を開始した(中央値5.6か月後)。57カか月間の観察の結果、オーバーオールサバイバルは全く差がなかった(図)。しかもQOLを比べると、早期診断群は、それだけ心配が増えたり、治療に副作用を早くから経験するため、遅延治療群にくらべて悪いという結果だった。これはちょっと驚きであるが、卵巣がんだけにいえることではないだろう。再発を早く見つけよう、ということはあまり考えなくてもよく、症状がでたりすれば、その時点で治療を始めても結果は同じですから、あせらずに行きましょう、というメッセージとして受け止めればよいだろうと思います。演者のゴードン・ラスチン先生は、この結果が出てから、自分の担当患者に、CA125をはかるかどうか、相談すると、多くの患者は測らなくてもいいですと言うそうだ。ただ、測って決めるか、測らないかは、相談のうえで、患者本人に選択してもらう余地は残しておくべきだと言っている。
 
 
  
(2)悪性リンパ腫
次の演題は、濾胞性リンパ腫に対する「ワクチン療法」の演題。濾胞性リンパ腫は、低悪性度に分類されるリンパ腫で、欧米ではリンパ腫の25%ぐらいを占めるが、日本人ではやや少なく15%ぐらい。でも増加しているようでリンパ腫の領域でも「欧米か!?」が進んでいる。低悪性度というだけあって、リンパ節が腫れるだけで他に症状がなく長期間にわたってゆっくりと進行することも多く最近ではリツキシマブ単独治療という選択もある。今回のワクチン療法は、患者のリンパ腫細胞を取って培養し細胞表面に存在するイディオタイプ抗体をKLHという担体に結合させて抗原性を高め、これをGM-CSFと一緒に元の患者に注射して免疫反応を刺激しよう、というもくろみである。このての話は10年以上も前からあり、できるといいですね、という感じで、でもやっぱりだめなんじゃない、という話になってきて、いつの間にか、がんワクチンとか、民間療法のわけのわからないものに話だけが応用されて胡散臭くなっていたように思う。それでこの発表は濾胞性リンパ腫の患者で、10年前にはよく使用された化学療法レジメンPACE後、CRとなった患者を対象に2:1の割り付けでランダム化比較した。177人が対象(ワクチン群118名、対照群59名)となったが割り付け後、再発したりして、結局、ワクチン群76名、対照群41名が計画した試験治療、あるいは対照治療をうけた。その結果、試験治療または対照治療をうけた患者では、再発までの期間は確かに延長されたが、結局、生存期間は同じ。この結果から、ワクチン療法の臨床的意義は、まだまだ、確立できていない、という結論。上述のように最近では、リツキシマブ単独でも長期間の生存も報告されているので、やっぱりワクチン療法は定着しないだろう、というのが専門家の意見のようだ。
 
(3)乳がん
乳がん薬物療法の最近の話題は、ER陰性、PgR陰性、HER2陰性のトリプルネガティブ乳がんの治療薬はないかという問題である。トリプルネガティブ乳がんの割合は10-15%と全体の占める割合は低いがホルモンは効かない、抗HER2療法は効かない、ケモしかないか、という嘆息と同時に、何かないだろうか、何かないだろうか、という期待もある。BRCA1遺伝子変異をともなう乳がんはトリプルネガティブ乳がんであることがおおく、BRCA1遺伝子自体が、DNAの修復に関与する酵素の設計図になっていることから、DNAダメージ、DNA修復に関与するような抗がん剤、酵素、遺伝子などが探究されている。たとえば、プラチナ製剤やアルキル化剤などは細胞周期非特異的にDNAを障害するので、このあたりのケモがいいかもしれないとかいう話もあるがはっきりしない。今回のJoyce O’shawnessyの発表は、PERP1(パープわん)阻害剤という聞きなれない作用をもつ薬剤の話で、これが、結構いけそうである。サノフィアベンティスは、この薬剤を開発したベンチャー企業「 BiPar Sciences(http://www. BiParSciences.com)」を5000億円で買収したそうだ。5000億円といってもぴんとこないが、将来性を期待しての企業買収は吉とでるか凶とでるか。
PERP1というタンパクは、細胞核内にあって、DNA が障害されると、障害されたDNAをいち早く見つけて自動的に修復する、というすぐれた酵素なのだ。DNAは、細胞の大切な設計図なのでこれがダメージを受けると細胞は生きていけない。DNAのダメージは、抗がん剤、放射線照射、ウイルス、などの外敵の影響や、細胞分裂の途中などでも、比較的頻繁におきているらしい。これを速やかに見つけ、さささ、と修繕してしまうのがPERP1である。同様のDNA修復機能は、BRCA1にもある。正常の細胞では、常に、BRCA1くんとPERP1くんが協力してDNAのダメージを修繕しているのだ。BRCA1遺伝子に変異がある細胞では、PERP1くんが一人で頑張っている。PERP一家は、PERP17 までいるらしいが、DNAダメージを修復するのは、長男のPERP一郎と二男のPERP二郎ぐらいであとは他の仕事をするらしい。二郎も見習いでレジデントぐらいの働きしかしない。それで、ついつい負担が長男にかかって、長男が過剰労働となっている。超過勤務の連続、つまり、PARP1の発現が高まってくる(upregulate)。この状況で稼ぎ頭の長男、PERP一郎が倒れてしまえばDNAが修復されなくなり、細胞は死滅し一家は離散することになる。そこをねらったのが、PERP1阻害剤「BSI-201」だ。Joyce O’shawnessyの発表は、PERP1阻害剤「BSI201」の注射を、カルボプラチン(AUC2)+ジェムザール(1000mg/m2)に加えた場合と加えない場合を比較して、クリニカルベネフィット割合(CRとPRとSDの割合)、副作用をおもなエンドポイントに設定して検討した。生存期間、効果持続期間は、副次的なエンドポイントに設定している。これは生存期間や効果持続期間を検討できるほど、まだ、情報が充分な段階ではないし、症例数算定をクリニカルベネフィット割合でどれぐらいの差が見込まれるか、ということに主眼を置いているので第II相試験である。試験計画は、やや控え目であるが、得られた結果は、かなりいい線いった、という感じだ。対象は、トリプルネガティブの転移性乳癌で、先行化学療法は、2レジメン以下。120症例をランダム化割り付けして、CG(カルボジェム)対CG+BSIー201、オープンラベル試験なので、この患者は、BSI201の点滴あり、BSI201の効果をよくしてやろう、そうすればサノフアベンティスの株があがるだろう、と思って株を買って、BSI201治療群の効果をノギスの加減で、「実に良く効いていますねえ、素晴らしい薬ですね」とSDVの時にやるような医師がいてもおかしくない。このような株価バイアスを防ぐには、プラセボを使って二重盲検にしなくてはならないが、それは第3相以降では必須となる。しかし、最近は、盲検、ブラインド、ということばが、差別用語になる、ということで、「マスクする」という言葉をつかう。これは、ミルマスカラスのFJTさんとは関係のない話だが、ブラインドがだめたら、窓のタチカワブラインドはどうなるのか。話がずいぶんとそれたが、とにかく、試験計画は控えめである。123名が登録され、ケモ単独群に62名、BSI201あり群に61名が割りつけられた。奏効割合は、16%対48%、臨床的恩恵割合は21%対62%、といずれもBSI201 あり群で、激しく優れていた。(株価上昇50円高!!!、というとらえ方をする人は実際かなりたくさんいる。資本主義だから仕方ないといえば仕方ないが、ASCO会場を行き来する人の8割はこの手の人、という見積もりもある。) 副作用は、血液関係、その他関係でも全く差がない、ということだか、これもマスクしていないので、信頼性は少し乏しいが、まずまず、むかむかや下痢もなく、白血球減少などもケモの影響で説明ができ、問題となる副作用はほとんどない、ということでこの段階では主たるエンドポイントの検討終了なのでまとめ、結論に行かなくてはいけない。しかし、人間の情けとして、ここまでいい結果がでると、効果持続期間、生存期間はどうなんだろう、と知りたくなるし、また、企業の本性としても、第2相試験であることをいつしか忘れ、立て続けにDFSとOSのグラフがでた。
 
 
DFSでは、ハザード比が0.342、ピーバリューイズゼロポイントゼロゼロゼロワンということで、この差が偶然の結果として観察される確率は1万回に1回、というわけで、そうすると帰無仮説「DFSに差はない」を棄却するつまり「差がある」という対立仮説に軍配を上げても1万回のうち9千9百9十9回は大丈夫だよ、ということになる。だから、この観察結果が、将来ひっくり返るというようなことはないだろう。
 
 
OSでも、ハザード比が0.348、ピーバリューイズレスダンゼロポイントゼロゼロゼロファイブ、こちらもこの差が偶然の結果として観察される確率は1万回に5回未満、というわけで、OSにも必然的な差がある、ということになる。
 
それで、結論は、言うまでもなく期待できる薬剤ということである。2009年6月の終わりから第3相試験が始まるそうだ。それでそれで、日本はどうなるんだ? サノフィアベンティスが治験やるのかな。でも、カルボプラチンもジェムザールも日本で承認されていないので、やっぱり、今回もこの臨床試験には参加できない。おそらく、この試験が開始されれば、期待の大きさからみて一気に症例登録が進むだろう。3年後ぐらいのASCOで、その結果が発表されるとき、一番最初に世界地図がでる。参加国一覧だ。その地図の日本は白いまま。台湾、香港、シンガポール、韓国、中国など、アジア周辺諸国は赤く塗られている。つまり、試験に参加してエビデンス構築に貢献したということ。ひょっとしたら北朝鮮も赤くなっているかもしれない。別の意味で今でも赤いけど。日本の患者さんは本当にかわいそうだ、行政が余分なレギュレーションを行っているので、ますます周回遅れになる。いまでは1周ぐらいの遅れだったが、ジェムザールも未承認、カルボプラチンも未承認、そして、BSI201 などのパープ兄弟(注:プロレスファンのお友達にはシャープ兄弟の方が馴染みが深いかな)も開発めどが立っていないことから、3-4周遅れで日が暮れてスタンドには誰もいない。厚生労働省分割案が出されているが、抗がん剤審査承認部門は仕事が遅すぎるので、いっそのこと廃止して、すべてFDAの決定に従います、としてくれた方がわれわれ国民にとってはよっぽどありがたいのだ。
 
(4)大腸がん
その次の演題は、NSABPC08,大腸癌術後にFOLFOX6にアバスチンを加えても、いいことは一つもなかった、という話。細かな検討は興味深いが、やはり今の時点では、アバスチンを術後に積極的に使う、ということにはならないようだ。乳がんでもアバスチンは、あまり旗色がよくない。結局、高いお金を払って長期間使用しても、はたしてどの程度の効果なの?????ということだ。ここから、企業の商魂と、エビデンスとのつばぜり合いが始まる。この話はこれでおしまい。
 
 
 
 
 
 
 
 

閑古鳥


ミルマスカラスはついにマスクをとった。如何に周囲から浮いていたかということがやっとわかったみたいだ。同時に今年のASCOはやはりスワインフルゥの影響で日本人も少ないが全体的に参加者はかなり少ない。プレナリーセッションの発表抄録が配られた。卵巣がんでCA125 を頻繁に測定して再発を早めに診断しても予後は変わらないという日ごろ、勝俣先生が言っている通りの結果がでた。以上閑古鳥のなくASCO会場より

シカゴ空港風物詩


日本から11時間のフライトでシカゴ空港についてオーランド行き乗換まち。成田から一緒の飛行機できたFJTさんは機内でずっとマスクをしていて降りてからもマスクを外さずまるでミルマスカラスのようだ。こちらではマスクをしている人はいない。ミルマスカラスはいつまでマスクをするのだろうか、興味深い。例年、ASCO前日はSJO先生やSMD先生、SSK先生、NKGW先生などと空港で行きかうのだが今年は組織に生きる人たちにはほとんど見かけない。リスクを上回る経済的利益が期待できる企業開発担当者は命がけでマスクして乗り切ろうという構図と読める。ゲートB10で出発をまっているとオーランドからの到着便から続々、いままでビーチにいたよ、という感じの日焼けした健康そうな家族連れ、カップルなど降りてきた。だれもマスクなんかしていない。これに乗って私はASCOに行く。ディズニーランドもエピコットセンターもユニバーサルスタジオもシーワールドも・・、今回は無縁だね。

僕の病診連携構想(1)


病診連携の構想は、常に病院側が原案を作り地域の診療所に「これでいいでしょうか」という具合に諮問される。原案を考える側の病院は、病院のもつ本来の機能とは何かとか、診療所はどうあるべきか、というような本質的な議論や考察を全く行っていない。今の自分の立場で、診療所の先生に業務を分担してもらうとすれば、どのような形になるか、というような、きわめて近視眼的、現実妥協的な形でしか、考えていないのが実態である。したがって出来上がった病診連携パスとかは、残念ながら全く使い物にならない。患者の視点から見れば、はなはだ不便な診療を強いられることになる。

 

究極の病院機能

病院の機能を究極的に考えれば(1)手術、(2)画像診断、(3)処置入院、(4)分娩、(5)ホスピスケア。(6)二次以降救急医療、(7)放射線照射に限定される。

 

(1)  手術室、回復室機能をもち、それに付随する医師(外科医、麻酔科)、看護師、薬剤師、検査技師などのスタッフがいればよい。手術をするのは、必ずしも病院医師の必要はない。

(2)  PETCT,MRIなどの大規模検査機器および医師(放射線診断医)、看護師、診療放射線技師などのスタッフがいればよい。入院設備は不要。

(3)  処置入院は、胸水、腹水排液など。これは、小手術と考えて(1)に分類してもよい。

(4)  分娩は、在宅でも可能であるが、NICUを使用しなくてはならない、リスクの高い分娩には、医師(産科、新生児科)、助産師、看護師、薬剤師などのスタッフがいればよい。入院設備は必要。

(5)  終末期医療は在宅でも可能である。今後、在宅での看取りがふえてくるだろうから、この機能は診療所に移行できる。

(6)  一次救急は必ずしも病院で提供する必要はない。

(7)  重厚な機器が必要な放射線照射は、病院機能として提供する。通常は、通院、長くて1泊二日程度の入院が必要。

 

これらの「病院機能」は、単独で存在することも可能である。たとえば、サージカルセンター、として、(1)の機能のみを有する施設を設置することも可能である。しかし、入院設備など、他の機能との共有が可能なので、上記をまとめて、病院として、入院部門を設置すればよい。

 

外来は、24時間対応で、上記の機能の受け入れ窓口として機能するだけでよく、継続通院機能は、全く不要である。

手前勝手な病診連携構想

外来通院はすべて、診療所で行い、病院機能を使用する必要があるときだけ、患者は病院に行くようにすればよい。その変わり、診療所の機能充実、とりわけ、医師の専門性の強化が不可欠となってくる。現在のように、病院が忙しいからとか、教授になれなかったからとか、お金を儲けたいとかといった不純な理由で、診療所を開設してもうまくいくはずがない。実際、お金はほとんどもうからないのだ。やってみてわかった。まず、赤字である。大切なことは、正しい思いを持ち続けることができるかどうか、それが、よい診療所経営の基本である。

病院のエゴイズム


吹けば飛ぶような弱小診療所で孤軍奮闘していると病院のエゴにムカつくことがしばしばだ。最近遭遇したゲゲゲのあきれたストーリーです。HER2陽性乳癌でハーセプチンが効かないような場合に効果が期待できるラパチニブ(タイケルブ)がもうじき発売になる。今日、薬価算定会議があった。患者さんにしてみれば待望の薬剤だし我々も心待ちに処方開始の秒読み段階である。ところが、びっくりするような話を聞いた。「うちの病院ではラパチニブが承認されても最初の1年は使用しません。安全性が確認できるまでは、われわれの病院(とある鵜飼で有名な県立病院だが)では新薬は導入しないという病院の方針です。」と言われた患者さんがはるばるセカンドオピニオンを求めてやってきた。家の近くだし県立だし、きっと力になってくれるだろうと今後の診療を託したのに、木で鼻をくくったように「病院の方針」ということで突き放され、患者さんは涙にくれている。この対応は明らかにおかしい。まちがい(1)そのような方針がどうして許されるのか? 新薬は確かに使用経験が少ないから未知の副作用がでる可能性だってある。使用経験を積むのは、では、いったいだれなんだ? 県立病院がやらなくて、どこがやる? しかも、その病院は、がん診療拠点病院なのだ。がん診療の実力はないに決まっているが、拠点病院となっている以上、癌治療の新薬を積極的に導入しないとは何事だ。大バカ者だね。まちがい(2)かりにそのような間違った方針だとしてだ、どうして医師はその方針に従うのか? おかしいと思わないのか。拠点病院としての社会的使命を果たしていない病院に勤務しているその医師の意見はないのか? 病院の方針ですから、としおらしく言うが、それなら、病院の方針にすべてしたがっているのか? 同じようなことが別件でもあった。輸血拒否の宗教団体の患者さんの抗がん剤治療を関西のがんセンターに頼んだところ、そこの腫瘍内科医が、病院の方針ですからお引受けできません、と事務サイドを通じて断ろうとしてきた。その腫瘍内科医は優秀な男でとても信頼できるので頼んだのだが、その対応でこちらも切れた。その腫瘍内科医に直接電話し、「断るのなら自分で患者さんに説明しなさい。しかし、抗がん剤治療をやるのに輸血が必要になったことなんかないのだから、引き受けてほしい。」というと「病院の方針ですから、僕の一存ではどうすることもできません。」と答えた。そこでさらに熱をこめ「いいか、先生を信頼して、他の病院でことわられた患者さんをお願いしているのだから、そこのところ、よく考えてみなさい。医療はそもそも社会的な活動であり、別に滅私奉公をする必要はないが、社会のニーズに対しては責任をもってきちんと答えなくてはいけないだろう。説教を聞きたくはないかもしれないが、もう一度よく考えてみなさい。」
病院の方針というのが間違っていることが多いのは、よく知られた事実です。そういう方針を打ち出すような病院も、医療機能評価でまる適マークをとっているのだから、評価するほうもされるほうも、終わっているね、ゲゲゲのゲッ!!!

医局に人生を預けるな


書籍タイトル(予定) 医局に人生を預けるな

目次 新書版 250ページ

 

1       医師不足の現況は

(ア)  医局管理から自己管理への移行

(イ)  自己管理ができていない医師

(ウ)  医局(=置き屋)の崩壊

2       教授さまさま時代の終焉

(ア)  古きよきごっつあん体質

      学位授与のお礼

      仲人のお礼

      開業おゆるしのお礼

      製薬企業たいこもちのお礼

      あご足つき国際学会の実態

      鴻池官房副長官とおんなじだよ

(イ)  人事権の喪失

(ウ)  置き屋の崩壊

3       三丁目の医局: 入局から定年、非常勤、嘱託、顧問・・・・

     医大外科助教の優雅な生活

      時間はなんのため

       バイトに明け暮れる青春の日々

       研究やる気あんの?

       カンファレンスは不要ですか?

4       ある回顧録

定年は想定外? 〇藤○一の信じられない感性

5       独立開業のすすめ

6       夢破れて開業なし

7       お前こそもったいないだろう

いつまで奴隷をつづけるの?

8       人生設計 15年かける5

9       医療は社会主義

10    開業は立ち去りがたサボタージュか

11    お局様(おつぼね様)の老後

12    新しい時代の新しい医療

13    もつべき3感覚とは

14    医局に人生をあずけるな

 自分の付加価値を高めよう

自己研鑽のすすめ

医学生は子供として扱うべし


医学部学生のお父さん、お母さん方へ
浅○君、君は授業中に小説を読んでいたね。読書は大切だ。しかし、授業中に、先生の話を無視して最初から最後まで読んでいた。それから、そっちの君。西○くんといったね、授業の半分を過ぎた頃にテニスラケットをかついでこれからクラブ活動にいくついでに教室に入ってきたね。運動は大切だ。しかし、さすがにあのときは先生も見過ごしてはいけないとおもったよ。だから、君には教室から出て行ってもらったんだ。いいか、わかるか、君たち。大学から授業を頼まれて、忙しい診療をやりくりしてだな、しかも、とんでもない安い給料で3時間、君たちのために講義をする。事前の準備だって大変なんだよ。そとから先生が来てくれるのだから失礼のないように気をつけよう、というような気持は君たちにはないね。また、相変わらず半分以上の学生が激しい恰好で居眠りをしている。大学生は大人だから、という扱いで、生活指導、社会人教育、人間教育には全く意を注いでいない大学の姿勢にも問題があるだろう。大学生を大人として扱うことが間違っているみたいだ。いいか、とくに医学生は、将来医師という社会で誰からも信頼され、社会的にも尊敬される職業に就くのだ。なぜ、信頼され尊敬されるのか、わかるか。それは、君たちが自分のためよりも、社会のために力になりたい、他人の力になりたい、という心意気を持ち、それを実践するために、絶えず自己研鑽を積んでいるからなのだ。それが、授業中に小説を堂々と読んでいたり、テニスの恰好をして、何の授業なのかもわからず、へらへらと教室に入ってくる。君たちを大人扱いすることはどうやら間違っているようだ。君たちは、もう一度、自分の置かれている立場を考え、自分たちの行動を反省してみたまえ。    お父様、お母様方もご家庭でかわいいお子様たちとよくお話しください。

5月のがぜ掲示板


今年の連休は、晴れ~曇りで、浜松まつりの人出も例年以上のようだ。5月からあれやこれやのバージョンアップがある。
(1) 東京勤務
東京勤務は、5月から金曜日にお茶の水の杏雲堂病院にお世話になることになった。杏雲堂病院は創立125周年を迎える老舗病院で、母体の佐々木研究所は吉田肉腫が有名。現在の院長は、海老原敏先生、国立がんセンター東病院名誉院長で、私ががんセンターに勤務していたころから大変お世話になった先生である。秋葉原で一緒にやってきた看護師(中田さん、佐々木さん)と薬剤師(森くん)も一緒にチームとして移動することができた。金曜日には杏林大学から井本滋先生も乳腺外科外来に来ているので、今後は乳がん診療激戦区のお茶の水で最強の乳がん診療チームを構築するつもりだ。セカンドオピニオン外来や外来化学療法、術後のフォローアップなどは従来通り。
 
(2) 青森勤務
毎月第4火曜日に青森県立中央病院で腫瘍内科の外来を担当することになった。担当といっても月一回なので、薬物療法のコンサルテーションとか、患者相談などが主な仕事になる。院長の吉田茂昭先生の構想、展望を実践できるように頑張りたいと思います。青森弁も習得したいと思います、んだ、んだ。
 
(3) 浜松勤務
4月から参加している田原梨絵先生が診断、治療に安定した力を発揮してくれ患者の評判もよろしい。薬剤師(宮本くん)も参加し、抄読会や勉強会も開催することができ学会への抄録もおくることができるようになった。また、5月からは診療放射線技師(新井さん)も参加し、これで当院も「ピンクリボン活動」の仲間入りでございます。でも、無意味なマラソンやあちこちピンクに染める活動とは一線を画したい。
 
 

4周年記念特別ひとりごと「理想の病診連携とは」


QOLを損なわない癌診療を行うポイントとして病院と診療所の効率的な役割分担がある。固形癌の化学療法の9割は外来通院での実施が可能である。ということは癌化学療法をうける患者は、大部分の時間を日常生活、社会生活を送りながら過ごすということになる。以前、このブログに「まるでやくざのなわばり争いのような病診連携の会」についてのひとりごとを書いた。その後、問題意識をもちながら、癌の外来化学療法における病診連携について考えている。癌化学療法における病診連携は次の3型に分類できる。I:病院外来で化学療法実施、副作用対策を診療所が担当する、II:病院外来で化学療法の主たる部分を実施、化学療法の従たる部分と副作用対策を診療所が担当する、III:診療所外来で化学療法および副作用対策を実施、重篤な副作用のため入院が必要な場合、病院が対応する。理想形はIII型、やはり、患者の生活圏内における高機能診療所を主として、その後方支援施設、あるいはインフラストラクチャーとして病院を位置づけるのが良いと思う。病院の下請け的に診療所を位置づけている現在の考え方ではうまくはいかないだろう。

いずれの型においても、患者のための安心、安全の確保が最も重要であるが、診療所、病院においても、しかるべきベネフィットが得られなければならない。病院としてのベネフィットは、限られたリソースを有効活用し、病院としての機能すなわち、外科手術、放射線照射、大規模画像診断検査、ICU、終末期医療の提供などに特化することにより収益構造を保ちながら、求められる医療を提供し、研究、教育にも寄与できる点にある。診療所としてのベネフィットは、地域密着による高品質の医療を提供することによる自己実現と収益構造の確保である。このように効率的な病診連携により癌患者の外来化学療法を実践するためには、患者病院診療所がWIN-WIN-WINの関係を築くように配慮しなくてはならないと思う。5月の連休で浜松オンコロジーセンターも4周年を迎える。毎年、この時期には初心に返り街角癌診療構想のバージョンアップに思いを巡らせるが考えれば考えるほどますます、なんて素晴らしい構想を思いつんたもんだ、どんなもんだい!と自我自賛でハッピーエンドだ。よかった、よかった。