ASCO 3日目


ASCOの3日目の月曜日には、乳癌の口演があり、今日一日を乗り越えれば日本に帰れる、と多少、ホームシック気味であるが、元気を振り絞って今日の演題をレビューしよう。最初の演題は、NCIカナダからの放射線治療に関する発表である。今回は、あちこちの領域でNCIカナダからの発表がやたらと目につく。NCC JAPANは一体どうなっているのか?
さて、この試験では、腋窩リンパ節転移1-3個陽性、または腋窩リンパ節転移陽性ハイリスク患者、約2000人を対象に、乳房温存術後(A)乳房照射単独と、(B) 乳房照射+領域リンパ節(内胸リンパ節、鎖骨上下リンパ節)照射を比較した。その結果、生存期間ではBが良好な傾向、無再発生存期間, 局所領域無再発生存期間、遠隔臓器無再発生存期間すべて、Bが有意に良好であった。しかし、肺炎、皮膚障害、リンパ浮腫、がBに高率にみられた。今後は、リンパ節転移陽性なら、陰性でもハイリスクなら、乳房のみならず、領域リンパ節へも照射が必要であるという結果で、Practice changing、つまり、日常診療のあり方を変えるほどのインパクトのある結果である。

アバスチンの術前治療に関する演題がふたつ。一つはNSABPB-40、

化学療法は、①ドセタキセル(100mg/m2)4サイクル→AC(60/600/m2)を対照群として、②対照群のドセタキセルの部分にカペシタビンを加えるアーム、③対照群のドセタキセルの部分にゲムシタビンをを加えるアームの三通り。そしていずれの群も、半分の症例はアバスチンを3週間に1回(10mg/kg)でくわえるという、「3 x 2」のファクトリアルデザインのランダム化比較試験である。病理学的完全効果(pCR)割合を比較した。pCRの定義はNSABPの「非浸潤部に癌は残っていても浸潤部に癌がなければOK」というものである。1206症例が登録された。化学療法の比較で、①対照群 61.5%、②カペシタビンを加えた群58.3%、③ゲムシタビンを加えた群60.4%と全く差なし、温存率も差がなし。ビバシズマブを加えた場合、ビバシズマブなしが28.4%のpCRに対して35.4%(p=0.027)と有意に良好でああった。これを病型別みるとホルモン受容体陽性では、ビバシズマブなしが15.2%のpCRに対して23.3%(p=0.008)、トリプルネガティブでは、ビバシズマブなしが47.3%のpCRに対して51.9%(有意差なし)であった。本来、ビバシズマブの効果が期待されたトリネガでは、全く効果がなかったと言う結果である。まとめるとカペシタビン、ゲムシタビン、ビバシズマブの追加効果は、極めて乏しいということになる。

もうひとつのネオアジュバントの演題は、ドイツからのGEPAR QUINTである。これは、EC4サイクル→ドセタキセル4サイクルに、ビバシズマブあり/なしのランダム化比較試験である。pCRの定義は「浸潤部も非浸潤部にも癌の遺残なし」と言う厳しい基準である。全体での検討では、pCR割合は、ビバシズマブなしで15%、ビバシズマブありで17.5%で全く差はなかったが、トリプルネガティブ症例でのpCR率は、ビバシズマブなしで27.8%、ビバシズマブありが36.4%(p=0.021)で有意差あり、と言う結果である。つまり、NSABPでは、ER陽性症例でビバシズマブの追加効果があり、トリネガではなかったのに、ドイツのGeparQuintoでは、トリネガで差があり、ER陽性では差がない、全体症例では、ドイツでは差がないのに、アメリカでは差があった、というまたもや悩ましい結果である。あ~、これでは、虫害山蛾の群れは益々眠れぬ日々が続くなぁ・・・(;一_一)。

つづく PARP阻害剤のはなし、と全体の感想。

ASC0 day 2


ASCOは参加者3万人を超える巨大な学会である。関連の産業まで含めれば莫大な経済効果を生むこの学会には当然、様々な思惑で人々が参加しているし、群がってきている。金の亡者、我利我利亡者などの悪霊が会場のあちこちでうろうろしている。にこにこしてたぶらかしにかかってくる。しゃんしゃん大会や洗脳大会も学会期間中に活発に行われているが、私たちは、無配慮、盲目的にではなく、しゃんしゃんされていないか、洗脳されていないか、常にある程度の警戒心をもって臨まないといけない。具体的な問題提起は、時期がきたらしたいと思う。今年度から政府の委員の任期も終了したこともあり、いろいろなしゃんしゃん大会に自由にでて自由に発言できるためさらに見聞を広めていきたいと思う。
さて、今日、2日目は、ホルモン療法の2演題、抗HER2療法の3演題についてお伝えしよう。
Paul Goss が発表したのは、Gailモデルで乳癌発症リスクがやや高いとされる閉経後女性に対するエキセメスタンの乳癌発症予防試験である。結果は、昨日の発表に前日に、すでにNew England Journal of Medicineに掲載される、という早業で、この手順の良さにも、企業のしたたかさが感じられる。2300人対2300人の女性が、かたやプラセボ、かたやエキセメスタンを5年間内服、浸潤性乳管癌が、プラセボ群で32人に、エキセメスタン群で11人に発症した。これは、ハザード比でみると0.35になる。表立った骨粗鬆症、心血管合併症などは見られないが、ホットフラッシュとか、精神的な症状とか、性機能低下、関節痛など、日常生活を悩ませるような副作用が結構みられているようだ。発表後のDiscussionに立ったイタリアのDr.Andrea De Censi、かれもタモキシフェンなどの予防研究の専門家であるが、「予防研究の目的は、病気発症による精神的なダメージを如何に減らすことができるかであり、病気による死亡を減らすことではない。」と発言した。そうなのかな? たとえば、乳癌検診は、乳癌を見付けることが目的ではなく、乳癌による死亡を減らすこと、ということで研究が行われているが、検診(二次予防)と、エキセメスタンや、タモキシフェンなどによる乳癌発症予防(一次予防)とは違うのだろうか? いずれにしてもファイザーのしたたかな企業戦略の勝利と言える。
もうひとつ、ホルモン療法に試験であるが、昨年暮れのサンアントニオで相良のやっちゃんがポスター発表した、タモキシフェン+ゾラデックス対アリミデックス対ゾラデックスの閉経前乳癌の術前ホルモン療法の比較試験で、今回はKi67の抑制に注目した発表である。やきなおしっちゃあ、やきなおし。結果は、アリミデックスの方がよい、というものだが、国立がんセンターの木下先生の発表、頑張ったがいまいちだな~、申し訳ないけど。発表終了後に、フロアから、Dr. Mathew Ellisが質問した。「アリミデックス+ゾラデックスで、血中エストロゲン値が徐々に上昇しているが、あれは統計学的に有意な推移か?」。これに対して申し訳ないけど、う~ん、ちゃんと答えられなかったな~、う~ん・・。この現象は、しばしば指摘されていることで、タキフィラキシー、つまり、治療を続けていくとだんだん反応が衰えてくる、ということで、ホルモン刺激などは、刺激を継続しても、反応が徐々に低下することはよくあること。これがために、アロマターゼ阻害剤などは、途中で休薬をいれるような試験も行われているのである。だから、もうちょっときちんと、ぱーどん、とか言わずにこたえてほしかったな、いっしょにベルリッツに行こうかね。

抗HER2療法に関しては、ベイラーのジェニーチャンのトラスズズマブ+ラパチニブの併用で、充分に高い病理学的完全効果が得られるからケモはいらないよーという発表が一つ。それから、サンアントニオでクリスマスシーズンにシカや、サンタの帽子をかぶって時々質問してる、あの突拍子もないお姉ちゃんフランキーホルメスが、まともな格好して演題にたち、ケモ(FEC→Paclitaxel)に、トラスツズマブ単独、ラパチニブ単独、両者併用により、様々なバイオマーカーがどのように動くか、というUSOncologyの発表。それからイタリアのバレンシナグアネリの、CHER-LOB trial。これも、ウィークリーパクリタキセル→FECにトラスツズマブ単独、ラパチニブ単独、両者併用して病理学的完全効果がどうか、という検討である。いずれも、術前治療での検討で、しかも、アンソラサイクリンとトラスツズマブンを同時併用して、心機能問題なし!!というものである。この三つに試験から、HER2病に対しては術前治療で、しかも、トラスズズマブ+ラパチニブの併用で、さらに、トラスツズマブとラパチニブを同時併用するのがよい、ということが言える。これらの発表は、先の昨年暮れのサンアントニオで、ルカジアーニ、ホセバセルガ、マイケルウンチが発表した3試験ほどのインパクトはないが、同じような結論といえよう。GSKは、ラパチニブの使用について、いまだにゼローダとの併用の承認しか取得していない。単独でも再発乳がんでは意味があるのに、また、術前治療ではトラスツズマブとの併用が当たり前になっているのに・・である。当局が認めてくれない、浦野さんが厳しくて、などと、他人のせいにしているが、企業としてやるべきことを、きちっとやってください、品川美津子さん!

ASCO day 1


土曜日の午後、乳癌についてのポスターディスカッションセッションで、FDAの発表があった。FDAといえば、新薬の承認を管轄する連邦行政機関である。日本で言えば、医療機器医薬品機構(PMDA)と厚生労働省医薬安全局の機能を合わせて、それらを100倍ぐらい、しっかりさせたものである。日本のPMDAでの新薬承認のロジックは100%、FDAのサルまねであることからみても、FDAからの発表となると、我々ジャパニーズオンコロジストもちょっと気になる。
何の発表だったかというと、転移性乳癌治療薬としてFDAに申請された12の薬剤についてPFSとOSとの間には相関はなかった、と言うものである。考察はなく、単なるデータの提示で、質問者から、「こんな裸のデータ(naked data)を発表する意味は何なんだ」と挑戦的な質問をしたところ、逆に、「あなたはどう解釈するの? 判断はあなたに委ねるわ。」みたいなことをいって如何にも、自分の意見を言わないという、いかにも役人的な態度である。それでも、発表するだけ、また、ポスターの前に立っているだけPMDAとは違い、偉いものだ。このPFSとOSの問題はMarc Buyseらのグループが既に乳癌は大腸がんと違ってPFSが延びてもそれがOSには反映されないことを発表している{Burzykowski, 2008 #2332}。今回のFDAの発表では、二点、興味をひいた。一つは、12の試験のなかで、Triple Negativeを対象としたものが、唯一、弱いながらもPFSとOSとの間に相関があったこと、発表者の態度がいかにも不愉快そうで、人の質問を最後まで聞かないで、自分の言いたいことだけを言う、と言う二点だ。「TNBCで相関がある理由は何ですか?」と質問したところ、相関と言っても弱いものだ、とかわした。「弱いながらも他のサブタイプとは違うのは、何か理由があるのか、仮設でもいいから、何が考えられるか?」と食い下がると、さらに不機嫌となりブスがますますブスになる。Let me tell you my hypothesis といって、TNBCは、他のサブタイプと違って、有効な薬剤が少ないので、臨床試験前後の治療の影響が入りにくい、というのはどうだ?と言ったら、Possibly ふん、という感じでポスターの前を立ち去ったのである。FDAの姿勢、考え方をこのような形で発表するのはいいことだが、考察とかをもっときちんとしなければ学問とは言えないと思った。

キャンサーコンビニと薬剤師の役割


21世紀を迎えすでに10年が経過した。がん治療の主役は「外科手術」から細胞毒性抗がん剤、分子標的薬剤などによる「薬物療法」へと交代しつつある。また、がん医療も「入院医療」から「外来・在宅医療」へと急速に移行している。また、二人に一人ががんに罹患し、三人に一人の死因ががんであるという現実を冷静に考えてみると、薬剤師はこの時代の地殻変動を肌で感じ、いつまでも20世紀型の医療に拘泥していてはならない。

① 外来化学療法がデフォルトスタンダード
外来化学療法加算は2002年に新設され、2004年には診療所での加算も可能となった。日常生活、社会生活を犠牲にしないで安全に実施できるため、初回治療からの外来実施が標準である。使用薬剤も細胞毒性抗がん剤に加え分子標的薬剤が広く用いられるようになってきた。そのため、薬剤師による情報提供も、初期治療と転移・再発後治療を本質的に区別し、治療目標を正しく認識しなければならない。

② 病院医療から診療所医療への移行
外来治療の普及に並行し入院医療の必要性は低下し、四桁の病床数を誇ってきたメガホスピタルもその存在意義に疑問が投げかけられている。周術期医療や救急医療を除いては入院の必然性がほとんどないがん医療において、今後のがん医療は診療所へと、その実践の場が移行していくことは確実である。患者の生活圏の中に位置する「キャンサーコンビニ」あるいは「街角がん診療」というコンセプトで表現されるような高機能がん診療所の普及が求められている。

② 診療所薬剤師の必要性
薬剤師の診療活動の場として、かつては病院または診療所があった。しかし、調剤薬局制度の強引な導入・普及や、診療所をかかりつけ医機能に特化させた結果、診療所は弱体化した。その結果、診療所から薬剤師の姿が消えて久しく、いまや、薬剤師の診療活躍の場は、超多忙な病院薬剤師か、夫婦そろって子供の運動会に参加できる調剤薬局薬剤師か、二極化したいずれかの選択しかできない状況となっているのではないだろうか。しかし、高機能がん診療所の普及とともに、調剤能力、管理能力、情報提供能力、情勢分析能力、協調調和能力、語学力などを備えた診療所薬剤師の育成が求められるようになるだろう。

③ がんを取り巻く医療と介護の融合
「抗がん剤治療中の患者にモルヒネを点滴することは是か非か」、かつてこんな馬鹿げた議論があった。がん治療と症状緩和は不可分の関係にある。高機能がん診療所で抗がん剤治療をうけた再発がん患者は、やがて、症状緩和医療が主体となり、さらには終末期医療へと以降していく。がん医療からがん介護へは、当然のことながら連続的に移行するものであって、ここまでが医療、ここからが介護という不連続ギアチェンジはないことが望ましい。抗がん剤などを用いた抗腫瘍治療、オピオイドなどを用いた緩和治療、そして医療、介護、薬剤、医療機材、療養機材を効率的に支援する在宅療養まで、がん患者の人生を連続的に、切れ目なく支援し、誰でも最後まで安心して生活できるがん医療体制を整えることが、私たち医療者の果たすべき役回りなのだ。

発送電分離≒開発販売分離


 ある研究会でザンクトガレンなどの「最新情報」をお話ししようとしたところ、事前のうちあわせでスポンサー企業から「承認されていない用法・用量については触れてもらっては困る。削除せよ!!」とかなり高圧的な態度で内容の変更を求めてきた。最新情報を提供するということは最新のエビデンスを提示し論ずることであって、承認された用法・用量についてしか話せないのなら最新情報ではないだろう。聴衆が期待しているのは、これからどんな使い方が出来るようになりそうか、これからどんな薬が出てきそうか、どうすれば患者の役に立つような治療が組み立てられるのか、ということに関する情報である。企業の言い分は、『日本製薬工業協会が自主的に設定してる「医療用医薬品プロモーションコード」というものがあり、その3章にある、医薬情報担当者の行動基準 (3) 効能・効果、用法・用量等の情報は、医薬品としての承認を受けた範囲内のものを、有効性と安全性に偏りなく公平に提供する。』ということらしい。そりゃ、あんたたちの行動基準だろう、我々の講演内容まで、どうして規制するのか? 講演を依頼された我々の発言まで日本製薬工業協会の自主規定に縛られるのか? そんなんだったら薬剤添付文書をコピーして配ればいいじゃん、と思ってしまう。私の横に座ってじっと私の作業を監視していた若手社員に、この規定、おかしいと思わないか、と聞いたところ、「多くの先生にお叱り頂いておりますので・・」とますますふざけたことを言う。つい「多くの先生って、いったいだれがそんなばかなことをいっているのだ? 名前を言ってみなさい、名前を」と追及したらたじたじしていた。ばっかじゃなかろうか、本当に。 発電と送電を分離するという話のように、新規薬剤を開発する企業と、販売する企業を完全に分離すればこのような不合理は解消される。臨床試験までを実施し、効果と安全性が確認されたら、開発会社はその薬剤の販売にはたずさわらず、販売会社にすべてを売却し開発費を回収するのだ。現在、ジェネリック販売会社が台頭してきているが、これをもっともっと徹底し、ジェネリック販売会社がすべての販売を引き受ける。開発会社は、一切、開発後の販売にはタッチしないことにすればよい。新薬の薬価審査に携わったみてわかったことだが、新規薬剤の開発には確かに膨大な投資がなされているため、それを回収するため、製薬企業には数々の優遇措置が施されている。たとえば、販売利益率は20%が保証されていたり、10年間の特許で守られ独占販売が保証されていたり。だから、この不況でも製薬企業だけが都心の超一等地に超豪華なオフィスを移し、のうのうと利益追求に走っている。ついでにいうと、上記のプロモーションコードの同じ章にある(5) 他社および他社品を中傷・誹謗しない、という項目は全然守られていないのではないか? ん? どうよ、AZ vs. TKDとか、虫 対 G●Kとか、がん領域なんてかわいいもので、糖尿病の領域なんてもっともっとひどいものだよ。

つばめ君 入居


リフォームを完了したツバメ君夫婦 昼間はあたりをしきりと飛びまわりときどき巣を覗きに来ていたのですが、どうやら入居が完了したようです。黒くて丸い頭が見えます。これから卵を産んで抱卵しヒナがかえるという段取りになると思います。

つばめのリフォーム


2005年の開設直後、オンコロジーセンターの玄関軒下にツバメが巣をつくりヒナがかえったことを独り言した。そうしたら、「渡辺先生、自然に囲まれ故郷に帰りゆっくりと余生を過ごしてください。」と変な励ましを頂いたことがあった。その翌年もツバメがきた。しかし、ツバメの巣の下で浜松祭りの大騒ぎの接待をしたら夜通しじっと耐えていたツバメ君、ヒナが巣立つとそうそうに巣を半分壊し、家族で帰国してしまった。それからというもの、ツバメの来訪なく軒下の巣は経年変化で朽ち果てつつあった。今年は4月の中頃から市内でもツバメが飛来し始めたがオンコロには来ないと思っていた。ところが連休あたりから、東海道ぞいの電線にとまって遠くからじっと巣の方を見つめたり、時々、壊れた巣を覗きに来たりするスワローズを見かけるようになった。1週間前から2羽が交代で巣のがれきを撤去したり、かけたお椀を継ぎ合わせるように巣の壁を土で修繕しはじめた。そして、なんということでしょう、昨日、今日あたりには、ほぼリフォームが完成し巣の中で休憩するヤクルトスワローズがいるではありませんか!なぜ、5年の空白ののちに再度、営巣したのか、ツバメ~に聞いてもわからない。深く考察してみるに、①東北地方での営巣が困難になったこと、②放射能のため立ち入り禁止区域を避けたこと、③浜松祭りを市長が自粛中止したことがツバメに評価されたこと、④なにかおめでたいことが起きる前兆かもしれないこと、などが原因として考えられる。ヒナの巣立ちを心待ちに、5年間しまっておいた専用ツバ糞シート今朝、敷設した。

ケモをするとき


分子標的薬剤、ホルモン剤など、非・細胞毒性薬剤が各領域で台頭してきた。でも、細胞読師絵抗がん剤(ケモ)が役立つ場合もまだまだある、という移行期を迎えているのは間違えない。乳癌ではタモキシフェンの登場により1980年代にホルモン療法が普及した。しかし、タモキシフェンは閉経後しか効かない、閉経前には効かない、というような誤解が当初あった。そのため、ホルモン療法は、若い人にはあまりきかない、とか、若年者にはケモが必須、という誤解が今でもはびこっている。ザンクトガレン2009からは、リスク評価から年令という因子が外されたにも関わらず、いまだに若い人にはケモ、という「超専門家」もいる。ザンクトガレンカンファレンスの歴史は、「ケモをしなくていいひとを見付けて無駄なケモはしないようにしよう」というのが重要なコンセプトとして底流を流れている。今回、Luminal Aには、よっぽどのことがない限り、ケモはしない、ホルモンだけでいい、というコンセンサスが得られ、ひとまず、上記の底流の完成型をみたのだ。先日の大阪での講演会、地元の中堅の精鋭が壇上に上がり、ケースカンファレンスを展開した。しかし、驚いたことに名だたる施設の中堅医師たちが、Luminal A 閉経後、腋窩転移1個症例に、ケモをやるという。その心は、1%でも2%でも再発が抑制できるのならケモを勧める、というのだ。確かにLuminalAだけを対象に、ケモ対 ケモなしの比較は行われていない。しかし、ER陽性、閉経後では、Luminal A・Bひっくるめた形での検討はたくさんやられていて、ケモの上乗せ効果は、限られている、ことがしめされており、Luminal A的なキャラクターを持った症例では、やはりケモのベネフィットは極めて乏しく、この1%、2%というのも根拠のない話だと思う。思わず、壇上の若手たちに、「では、先生たちは、ハルステッド手術をやりますか」と聞いてしまった。かつては確かに標準とされていた治療が、その後の知恵の蓄積で、もはや過去の遺物となっている例はいくらでもある。Luminal Aに対するケモも同じような認識で考えるべきではないか。反論として、2007年まではリンパ節転移が1個あればケモするのが標準だったのに、それが、急にケモ不要といわれても・・・というもの。確かにガイドラインでもそう書いてあるが、それは、知恵が蓄積する前の話しで、既に知恵が蓄積した今、昔の知恵で患者を苦しめてどうする? 菰池先生、ご意見どうでしょう?

開業は敗北と思っていましたって?


ジャパニーズサージャンを自他共に認める外科の先生から「がんセカンドオピニオン迷いのススメ」読みましたよ、分かりやすくていい本ですね」とおほめの言葉を頂きました。細かいところまでよく読まれているようでうれしく思いました。彼が特に強調したのは、今後の診療所のありかた、高機能診療所の提言のところ。「僕は今まで、開業は敗北だと思っていました。だけど、あの本を読んで、先生がやっている高機能診療所というのがものすごく重要だっていうことがわかりました。それでいままでなんとなくつかえていたものがとれてすっきりしました。」と言うのです。私は祖父、渡辺兼四郎、父、渡辺登のDNAを受け継ぎ、診療所医師としての自己実現の姿を目の当たりにして育ち、また親族にいた大学教授の姿を見て、こんなものかとも思い、今やっているような高機能診療所を目指す流れが自然にできあがったもので、開業は敗北なんていいう感覚は全くもちあわせていません。しかし、2005年に浜松オンコロジーセンターを開設したあたりに、周囲から色々言われたことを題材に、「がんセカンドオピニオン迷いのススメ」の中に記述した医療界における開業医の評価のところで、彼は痛く感銘をうけたようです。確かに彼の出身大学では、志をもって診療所を開業している先輩がいないそうで、尊敬できるワーキングモデルがいないこともあり、診療所を開業することは敗北であり、情けないこと、という認識が蔓延しているようです。とにかく、大学にしがみつきたい、大学教官としてのポジションにつけるのならやったこともない救急医学の教員として大学に残っている情けない奴もいるくらいです。そんな文化、風土のなかで育ったジャパニーズサージャンに感銘を受けた、と言われれば、思わず、♪きいろとくーろは勇気のしるし♪と謳ってしまいそうな気分でした。

コーチシンセイって何なの?


 

HER2-豊穣乳癌の術前、術後、再発後、いずれの状況でも週1回、または3週1回投与のすべてが承認され、日高さんの言うところの「きれいな添付文書」となったことは喜ばしいかぎりである。こうなったからくりは行政お得意のガス抜き超法規的3段飛び論法である。今回は「公知申請承認」という形の超法規的ウルトラCが使われた。公知申請(こうちしんせい)とは、適応外処方について科学的根拠に基づいて医学薬学上公知であると認められる場合に、臨床試験の全部又は一部を新たに実施することなく効能又は効果等の承認が可能となる制度である。外国において承認されていて、使用実績があるとか、一流論文に試験結果が出ているとか、日本でもその使い方で臨床研究を始めたいグループがいるとか、ちょっとやって形だけ整えたとか言う場合に公知申請ができる。公知申請が受理された適応外薬については、適応外だけど保険適応OKということになる。
あるMRくんが、「これで先生方もハーセプチン、術前治療、今までみたいにこそこそやらなくても、大手をふって使用できますから」というので、「別に今までだってどうどうと使っていたジャン」というようなやりとりがあるぐらい、何が違うわけ、どこが変わったわけというのが正直な感想である。ただ、行政的に形をつけたということなのだ。
この不可解な状況は、ハーセプチンが最初に承認されたときに、それまで、外科社会で使っていた「進行再発乳がん」という用語をあえて、内科社会の用語である「転移性乳がん」を使って適応承認したところに端を発するわけである。もし、あのとき、我々内科が変に頑張らないで、進行再発乳がんで、ハーセプチンの適応をとっていれば、その中に進行乳がんとして術前治療も当たり前の古都として実施でき、こんなややこしい公知申請の枠組みで承認を待つことはなかったのだ。進行再発乳がんという外科言葉は、手術のできない乳がんというテクニカルスタンドポイントオブビューに立った、如何にも外科的な用語で、私たちはそれを嫌っていた。それであえてメタスタティックブレストキャンサーを転移性乳がんと訳してバイオロジカルスタンドポイントオブビューにたった用語をハーセプチンの最初の適応疾患として無理やり押し込んだ、という経緯がある。その後、転移性ということばはおかしい、おかしいという、化石のような外科医もいたので、確かにおかしいかも、という話になって、最近では転移乳がんというふうに用語統一をする、という話になった。

それはおいといて、公知申請というのは、「つまり、公知 みんな知っていることジャン、海外ではばんばんつかっているじゃん、なんで日本で使えないの?」というやつを、「では、特別に認めてあげよう、特別だよ、特別だからね、臨床試験なしで認めてあげるんだからね、気をつけてね」というものである。

「なんに気をつけるわけ? 効果もあって、安全性も確認されているわけでしょ? じゃあ、ふつうの承認と同じジャン」ということで、本質的に特段、気をつけることなどなにもないのだ。ふつうに、他の薬剤に払う注意と同じように注意すればよい。しかし、なんか、行政の対応を見ていると認めたという責任を回避しているように感じるなあ。。それじゃあまるで東京電力問題や、生肉ユッケ問題とおんなじではないでしょうか? このタマムシ色、二枚舌的行政対応が我が国の様々な問題の根底にあるのではないか。HER2豊穣乳がんにはどんな状況でもハーセプチンは使用すべきであろうし、また、カルボプラチンも、同様に、公知申請が承認されたのであるから、エビデンスがある使い方を確かめて患者さんにベネフィットをもたらすような使い方を積極的に導入していきたいものだ。
MR君に聞いたところ「先生方に使ってもらってもいいんですが、お前ら、宣伝はしてはいかんとか言われているんですよ、情報提供活動もやっていいいだか、いけないんだか、わけわからないっすよね。」と。確かにそのとおりだ。行政は、行政なりに筋を通したつもりだが、そんな屁理屈は、世の中には通用しないということを、小役人は分かっていない。東京電力問題や生肉ユッケビビンバ問題と同様の火種は日本全国、あちこち、あらゆる問題でくすぶっているのだ。